人気の「東電に入ろう(倒電に廃炉)」 浜岡廃炉にむけてにDVDができました!!YouTube動画で試写できます。
★憲法9条、未来をひらく | ||
Q&A災害時の法律実務ハンドブック(平成18年発行) 平成23年3月25日 新日本法規出版株式会社 | ||
wam第8回特別展 女性国際戦犯法廷から10年 〜女たちの声が世界を変える〜 (2010年7月3日〜2011年6月26日) |
2010年7月 〜2011年6月 | 東京 |
「関東大震災時の朝鮮人等虐殺」 〜虐殺を目撃した子どもたちの作文から〜 | 8/27 | 横浜 |
| ツアー |
back to Top
back to Top
back to Top
back to Top
back to Top
back to Top
back to Top
back to Top
back to Top
back to Top
back to Top
back to Top
back to Top
back to Top
back to Top
back to Top
back to Top
back to Top
back to Top
back to Top
back to Top
back to Top
back to Top
back to Top
back to Top 浜岡廃炉にむけてにDVDができました!!YouTube動画で試写できます。 http://www.youtube.com/watch?v=y-zKvpXF8Ks 『ハマオカDVD(浜岡原発完全廃炉に向けて) 』(19分50秒) 映像提供 壷阪道也 協 力 内藤新吾 東井 怜 演出 撮影 構成 込山正徳 製作著作 ファルーカ DVDのお求めは、 込山正徳 090-3803-4061 Mail komiyan@joy.hi-ho.ne.jp まで 一枚あたり、300円+送料 込山さんのブログに、報道ステーションの「シリーズ原発私は こう思う」 原子力推進派の親分、石川迪夫と(7/1)、広瀬隆氏(6/ 30)の録画があります。 http://papanamida.exblog.jp/ 石川氏のはなし、見てください。 ●福島のこどもたちに、異常が出ている! NPJニュースより http://www.news-pj.net/genpatsu/2011/0620.html 福島の子ども達を救え小児科医ネットワーク NPJ代表 梓澤和幸 6月19日(日)、福島市のホリスティカかまたで、原発の放射 能のことで悩むお父さん・お母さんと子ども達の健康相談会が 開かれた。子どもたちを放射能から守る福島ネットワークと全 国小児科医ネットワーク(20名の医師、当日は11名参加)によ る医療や避難、食事などの相談会であった。 500人をこえる親 と子どもの参加があった。 12時から、相談の途中の時間を割いて記者発表があり、母 親代表の丸森さんと医師山田 真さんのスピーチがあった。丸 森さんによると、子ども達の体に異常が起きている。鼻血が出 る、甲状腺が腫れる、今までにないだるさを訴える、入退院の 繰り返し等である。母親達が地元の小児科医に受診するが、こ のくらいの線量(報道では毎時1.5マイクロシーベルト。実 際はもっと高いころ、たとえば3ないし5マイクロのところも ある)では、体に放射能を原因とする異常は出ないはずだとい うのが医師のリアクションだ。母親のストレスが原因で、子ど もに影響が出ると言われる例も少なくない。だが、とにかく子 ども達には今までにない変化が起こっている。 丸森さん達は、必死で相談にのってくれる医師を探した。 そして、森永ヒ素ミルクの子ども達を新人ドクターの頃に診療 し、ヒ素ミルクによる身体への影響を突きとめた医師の一人で ある山田さんたちに行き当たった。最近、低線量医療被曝の研 究をしていることもわかり、丸森さんの相談にのってくれ、福 島の子ども達を救え小児科医ネットワークが結成され、この日 の相談会となったという。 山田医師は語る。「子ども達の体にかつてなかったことが 起こっている。低線量の継続被爆は、医療の世界で経験がない ことだ。森永ヒ素ミルクのとき、乳幼児の体にミルクを通じて ヒ素が摂取されるということは、新しい医療体験だったけれど も、これも新しい医療体験である。ならば私たちは事実をみな ければならない。」 山田医師は、マスメディアのインタビュ ーに答え 「福島のものを食べようキャンペーンが地元で起き ているが、子どもには福島の野菜を食べさせてはいけない」 と静かな口調ながらはっきりと語っているのが印象的だった。 相談会の会場は、200人ほど入る大きなホールだったが、避 難・退避相談コーナーもあった。 北海道、新潟、山形等福島の県外へ子どもを退避させたい という動きはずいぶんあるようだ。子どもたちをまもる福島ネ ットワークの人達によると、福島県当局は、県外への子どもの 退避に協力的ではなく、学校で相談すると校長が思いとどまる よう父母を強く説得する事例もあるという。子どもを育ててい る父母の親世代、周辺地域との葛藤もある。政府や地方自治体 が「県外退避も有力な選択肢の一つ」と公に表明することが急 がれる。 会場には、マスメディア各社の取材陣、遠くはジャカルタ から来たというアルジャジーラの取材陣の姿もあったが、共同 通信以外、全国ネットでは報道されなかったようだ。これでい いのか。
back to Top ほんとうのことが知りたい! 原爆・原発・日米関係◆◇◆ > ****平和・協同ジャーナリスト基金(PCJF)講演会**** > > 世界を震撼させた東京電力福島第一原子力発電所の事故被害はさらに拡大、長 > 期化しています。しかし、情報公開が不十分で、「小出し」であり、日本国民も > 世界の人々もいまだに事故の全容を知ることができない状態が続いています。 > > 福島原発で何が起きたのか、スリーマイル島やチェルノブイリの原発事故とど > う違うのか、どんな事態が予想されるのか、米軍・米国との関係は……など、核 > 問題に明るい両ベテランに話をきき、語り合いましょう。 > > <講演1> > ◎フクシマ ― 新たな地球被ばく > 講師★豊崎博光さん(フォトジャーナリスト) > 1995年『アトミック・エイジ』(築地書館)で第1回平和・協同ジ > ャーナリスト基金賞受賞 > > 1978年から日本や世界の核被害と被曝者、反核・反原発運動などの取材を始 > める。主著:『核よ驕るなかれ』(講談社)、『写真・絵画集成 核・原発』 > (日本図書センター)、『マーシャル諸島 核の世紀』(同)など。 > > <講演2> > ◎日米安保と原発 Atomic for Peaceからトモダチ作戦まで > ※Atomic for Peace 1953年、アイゼンハワー元米大統領が行った国連演説 > > 講師★前田哲男さん(ジャーナリスト) > 平和・協同ジャーナリスト基金賞選考委員 > > 1938年生まれ。軍事研究家、ビキニ核 実験の住民被害調査、重慶爆撃の実 > 態調査、自衛隊、日米安保体制下の現状調査などが主領域。 > 主著:『棄民の群島』(時事通 信社)『自衛隊の歴史』(筑摩書房)『新訂 > 版 戦略爆撃の思想 ― ゲルニカ、重慶、広島』(凱風社)『隠されたヒバク > シャ』(監修、凱風社)など。 > > ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ > ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ > ◆日時★7月9日(土)13:30〜16:50(開場13:00) > ◆会場★明治大学リバティータワー 1032教室 > http://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/access.html > JR中央・総武線、東京メトロ丸ノ内線「御茶ノ水駅」 > 半蔵門線・都営地下鉄三田線、新宿線「神保町駅」下車徒歩5分 > ◆参加費★1000円(学生500円) > ◆主催☆平和・協同ジャーナリスト基金 http://www.pcjf.net/ 現代史研究会 > ◆後援☆アジア記者クラブ http://apc.cup.com/ >
back to Top 第20回核廃絶と平和を祈るミサ いまから66年前の1945年7月16日、世界で最初の原子爆弾がアメリカ・ニューメキシコ州の実験場で爆発しました。それから20日後に原子爆弾は広島と長崎に投下され、数十万人もの尊い命が奪われました。人類最初の原子爆弾には「トリニティ(三位一体)」という名前がついていました。日本で最初にできた原子力発電所にも「菩薩」の名前が付けられています。要は、最後は神だのみ、仏だのみの代物だということです。 > > 東日本大震災により、3月12日の午後3時36分、福島第一原発1号機が爆発しました。これまで、国や電力会社は「原発は絶対安全」といってきましたが、核エネルギーを人間がコントロールするのは不可能でした。爆発すると、広島や長崎、そして今回の福島のように広い範囲に被害が及びます。そして、その影響は、子や孫、ひ孫にまで押し付けていくことになるのです。 > 原子爆弾も原子力発電所もいらないー核のない世界に歩み出すことを、ともに祈りたいと思います。 > ご参加をお待ちしています。 > > 日時:7月16日(土)14:00〜 ロザリオの祈りを唱えます。 > 14:30〜核廃絶と平和を祈るミサ(司式/舟山 亨神父) > 会場:カトリック元寺小路教会小聖堂 > 主催:カトリック正義と平和仙台協議会 > 連絡先:080-1827-8772 >
back to Top 第7回難キ連チャリティコンサート ルシア塩満アルパトリオコンサート <第7回難キ連チャリティコンサート〜ルシア塩満アルパトリオコンサート> 日時:2011年7月9日 土曜日 午後2時〜4時 (開場 午後1時30分) 場所: 日本福音ルーテル社団 ジェラミッションセンター 1階 JELAホール 東京都港区恵比寿1−20−26 JR 山手線 恵比寿駅東口 徒歩3分 東京メトロ日比谷線 恵比寿駅 徒歩5分 http://www.jela.or.jp/office.html 入場料:2000円 全席自由 コンサートの収益はすべて日本国内の難民支援活動に用いられます。 お申し込み方法: 難キ連事務局 03−3207−7801 090−6012−8252 nankirensato@jcom.home.ne.jp までご予約ください。当日受付にてお受け取りいただくか、ご希望に添って 郵送いたします。お問い合わせください。 なお、オフィス・アルペジオ 03-3902-5355 arpegio@minos.ocn.ne.jp でもご購入いただけます。 主催: 難民・移住労働者問題キリスト教連絡会 169-0051 東京都新宿区西早稲田2-3-18-24 日本キリスト教協議会気付 Tel 03−3207−7801 Fax 03−3204−9495 後援: 日本福音ルーテル社団 移住労働者と連帯する全国ネットワーク
back to Top 松浦悟郎司教講演会 テーマ 「平和の使徒となろう〜社会における信仰の証し〜」 > > 日時 7月31日(日) 9:30 ミサ > 10:45 講演会(ミサ終了 > 後、準備の後、開演いたします) > > 場所 カトリック山口教会(サビエル記念聖堂) > > (ホームページの地図をのせます) > > 講師 松浦悟郎(カトリック大阪大司教区補佐司教 日本カトリッ > ク難民移住移動者委員会委員長 ピース9の会呼びかけ人)
back to Top
人気の「東電に入ろう(倒電に廃炉)」
http://www.youtube.com/watch?v=z9AlurAWSiM&feature=related
<http://www.youtube.com/watch?v=z9AlurAWSiM&feature=related>
http://www.youtube.com/watch?v=Hk8caoamJiM&feature=related
<http://www.youtube.com/watch?v=Hk8caoamJiM&feature=related>
丸尾めぐみバージョン
http://www.youtube.com/watch?v=_vl73V9eD6A&feature=related
<http://www.youtube.com/watch?v=_vl73V9eD6A&feature=related>
http://www.youtube.com/watch?v=8_Fg3j1jgWw&feature=related
<http://www.youtube.com/watch?v=8_Fg3j1jgWw&feature=related>
おかげで「自衛隊に入ろう」もまたまた注目。
http://www.youtube.com/watch?v=WnBkmxIXOlQ&feature=related
<http://www.youtube.com/watch?v=WnBkmxIXOlQ&feature=related>
http://www.youtube.com/watch?v=E35zawN7TfA&feature=related
<http://www.youtube.com/watch?v=E35zawN7TfA&feature=related>
back to Top 第62回市民憲法講座 「原発のない暮らし」は可能か? お話:西村智巳さん(ジャーナリスト) 東電福島第一原子力発電所の事故はいまだに収まらず、原発災害の影響はさらに拡大し、長期化する様相を示しています。 > 欧州でも脱原発の声は高まり、日本でも各地でデモなどが起きています。多くの人びとが放射能の不安にさらされ、 > 脱原発・エネルギー政策の転換をもとめつつある中、政府と電力会社などはことさらにこの夏の電力不足の可能性を強調し、 > 現在停止中の原発の再稼働などを進めています。 > 本当に「原発のない暮らし」はできないのでしょうか。 > この問題に注目してきた西村さんからお話をお聞きします。 > > 日時:7月16日(土)14:00〜 > 会場:文京区民センター3C会議室 > 参加費:800円 > > ----------------------------------------------------------- > 許すな!憲法改悪・市民連絡会 > 高田 健 <kenpou@annie.ne.jp> > 東京都千代田区三崎町2−21−6−301 > 03-3221-4668 Fax03-3221-2558 > http://www.annie.ne.jp/~kenpou/
back to Top 「関東大震災時の朝鮮人等虐殺」 〜虐殺を目撃した子どもたちの作文から〜 と き:8月27日(土) ところ:カトリック末吉町教会 信徒館 第1部 学習会 (申し込み不要) 10時30分〜 (10時開場) 講 師:後藤周さん(元中学教員、信愛塾理事) 資料代:300円 第2部 フィールドワーク (要申し込み) (昼食後) 13時〜16時 案 内:後藤周さん 参加費:一般2,000円、学生1,000円 定 員:20名 〆 切:8月8日(月) <定員になり次第〆切> 問合せと申込:カトリック横浜教区正義と平和協議会 河野神父(沼津教会)まで 電話:055-931-2864、ファックス:055-934-2734、Eメール:<mailto:yokohama-seiheikyou@car.ocn.ne.jp>yokohama-seiheikyou@car.ocn.ne.jp 主催:カトリック東京教区正義と平和委員会、カトリックさいたま教区正義と平和協議会、 カトリック横浜教区正義と平和協議会
back to Top 1.ライフリンク主催セミナー、イベント (1)7/30(土)に連続対談「メメント・モリ」(第5 回)を開催 毎回、様々な方々をゲストにお迎えし、展開してきた連続対談です。 「喪失体験」の中から、ご自身の人生を紡ぎだしてきたゲストの方々に、 率直に体験や思いを語っていただき、会場も一体となった対話を展開 していきます。第5回となる今回は、土曜日の午後に開催します。 --------------- 「痛みを強いられながらも、生き抜いていくには・・?」 命がけのエッセイで人に勇気を与える難病女子、大野更紗さん。 独自の作風と心理描写で、自殺などの社会問題に鋭く切り込む作家の 星野智幸さん。深い洞察と斬新な視点で現代日本社会を見つめる二人の 発信者とライフリンク代表の清水康之が、人生の不条理に直面したとき どう生きるべきか、共に模索します。 ※詳細は下記ホームページをご覧ください。 <http://mementomori.lifelink.or.jp/>http://mementomori.lifelink.or.jp/ ■日時:7月30日(土)14時開演(13時 30分開場) ■場所:スーパーデラックス(東京・六本木) http://www.super-deluxe.com/map/ ■ゲスト: ○大野更紗さん(作家、大学院生) 上智大学大学院休学中。学部在学中にビルマ難民に出会い、民主化や 難民問題を研究、NGO活動に尽力。大学院に進学した 2008年、自己免疫 疾患系の難病を発症。 2011年6月に刊行した初の著書、『困ってるひと』(ポ プラ社)が話題に。 新連載がWebマガジン「ポプラビーチ」にて、近日スタート予 定。 今日も絶賛生存中。 ▼Blog: http://wsary.blogspot.com/ ▼Twitterアカウント: @wsary ○星野智幸さん(小説家) 早稲田大学卒業後、新聞記者を経て、メキシコ留学。1997年に デビュー して以来、独自の視点と表現で作品を紡ぎ続ける。ツイッターやブロ グで、 政治や震災、自殺等の社会問題についても積極的に発言。 いま日本で最も注目される言論人のひとり。 <代表作>『ロンリー・ハーツ・キラー(2004年)』、『無間 道(2007年)』、 『俺俺(2010年)』、等 ▼Blog: http://hoshinot.asablo.jp/blog/ ▼Twitterアカウント: @hoshinot === (2)7/23(土)ライフリンク「自殺対策勉強会&意見交換会」開催 ※当初予定していた、7/30から日程が変更になっていますの で、 ご注意ください。 ライフリンクでは、自殺対策とは「生きる支援」であり、「生き心地の よい社会」づくりであると捉え、保健福祉分野だけでなく、一見すると 自殺対策とは縁遠いとも感じられる、音楽や演劇家、クリエーター、I Tなど様々な分野の専門家の方々とともに協働事業を展開しています。 「新しいつながりが、新しい解決力を生む」をモットーに、分野の壁を 超えて共に学び、「生きる支援」について何ができるか、率直に意見交 換するための「自殺対策勉強会&意見交換会」です。 前回(5/29)の今年度第一回の会には、様々な分野から30 名近くの方が 参加され、積極的な議論が交わされました。 第二回を下記のとおり開催します(無料ですが、事前申込が必要です)。 ▼日時:7月23日(土)14:00〜16:30 ▼場所:富士見区民館3階和室(千代田区富士見1- 6-7) *飯田橋駅から徒歩5分 ▼対象: 「自殺対策=生きる支援」に関心があり、自分も何かできれば、という 意欲のある方(定員30名) ▼内容(調整中) ・当事者の声、体験から学ぶ(体験談) ・ライフリンクより報告 ・参加者による意見交換 参加を希望される方は、7月19日(火)までにお申込みく ださい。 ------------------------------------------------------------ 【お申込み方法】 ここから切取り、必要事項をご記入の上、返信アドレスに 返信してください。【返信アドレス】info@lifelink.or.jp ------------------------------------------------------------ 【参加申込】 1.お名前(ふりがな): 2.所属(ある方のみ): 3.連絡先(電話番号): 4.配布物 :あり・なし ありの場合種類 ※ありの場合の配布方法については別途ご連絡致します。 ------------------------------------------------------------ (連絡欄) ------------------------------------------------------------ ◇◇◇ 2.「自殺対策を推進する国会議員有志の会」が会合 5月の自殺者数が3,329人と激増に転じたことを受け、「この緊急 事態に 一刻も早く動く必要がある」と、急きょ、超党派の国会議員有志による 会合が開かれました(6/21午後)。当日の出席者は次のとおりで す。 【自殺対策を推進する国会議員有志の会】 会長:柳澤光美議員(民主党) 顧問:尾辻秀久議員(自民党・参院副議長) 谷博之議員、松浦大悟議員(民主党) 石井みどり議員(自民党) 木庭健太郎議員(公明党) 大門みきし議員(共産党) 清水代表も会合に招かれ参加し、現状の分析や今後の課題について、 1)年度末対策、2)自殺対策の推進体制強化、3)各地域の自殺 対策へのテコ入れ、の3点を挙げ、それぞれ具体的な提案を含めて 報告しました。 メンバーによる意見交換では、この事態をこれ以上悪化させないために、 被災地でのリスクが高まることのないように、政府へ対策の充実を働き かけていくべきとの意見が共有されました。 また、国会だけでなく、各党で地方議員とも連携しながら、地域の自殺 対策を強化していく方策についても議論が交わされ、今後も超党派の 「自殺対策を推進する国会議員有志の会」として、政府の動きを監視し、 対策の推進を後押ししていくことを確認しました。 ◇◇◇ 3.上原美優さんの自叙伝文庫化に寄せて 先月突然、自死された上原美優さん。24歳のあまりにも早過ぎる 死。 その死を悼む多くの方々からの声を受けて、以前に出版されていた、 上原さんの自叙伝が文庫化されました。 一部報道では、「WHOの自殺報道のガイドライン」を無視するかの ようなセンセーショナルな報道がなされました。しかし、著書を読む と、ひたむきに生きた姿、痛みをひらいて率直に体験を綴っている上 原さんの思いに胸をつかれます。 担当編集者の方が思いを込めて文庫化に取り組まれ、あとがきの監修に 清水代表が協力しています。 (以下、ポプラ社ホームページより) ---------------------- 上原美優著『10人兄弟貧乏アイドル☆私、イケナイ少女だったんで しょうか?』(ポプラ文庫) http://www.poplar.co.jp/shop/shosai.php?shosekicode=81011690 ひたむきに生きた24年―― 尊い命を、これ以上失わないために。 2011年5月12日、永眠。衝撃的なニュースが飛び込んでき た後、大変 多くの皆様から「彼女の本が読みたい」というリクエストをいただき ました。 単行本は品切れとなっておりましたが、彼女の一生懸命生きた姿を通し、 一人でも多くの若い人たちに命の大切さを考えて欲しい、と願って、文 庫化しました。 ※生前の著者の意志と、ご家族のご希望により、 初版分の印税は被災地に寄付させていただきます。 ---------------------- 上原さんのご冥福を心よりお祈りいたします。 ◇◇◇ 4.清水代表が参画する政府の「社会的包摂政策」が取りまとめ 内閣総理大臣の指示に基づき、今年1月に設置された「一人ひと りを包摂 する社会」特命チーム。清水代表も座長代理として参画し、誰もが排除 されない社会づくりへ向けて、様々な現場で活動する実務家へのヒアリ ングや検討を重ねてきました。 ▼特命チームの取組、検討状況 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/housetusyakai/dai6/siryou1_1.pdf これまでの検討を踏まえて、5月31日に「社会的包摂政 策」の基本的考え方が 取りまとめられました。 その中では、社会的包摂に取り組む必要性や大震災による社会的排除リ スクへの 対応といった基本的認識の上にたって、今後は具体的に実態調査や先駆的 プロジェクトの実施、全国的な推進体制の構築などについて進めていく ことが 記載されています。 ▼社会的包摂戦略を進めるための基本的考え方(骨子、概要、本文)など http://www.kantei.go.jp/jp/singi/housetusyakai/dai6/gijisidai.html 自殺対策にも密接に関連する内容です。ご関心のある方は、ぜひ、ご覧 になってみてください。
back to Top
「第22回全国キリスト教学校人権教育セミナー」案内
≪主題≫子どもの命を生かし、つなぐもの
―尊厳と自由の回復をめざして―
日程◇2011年8月8日(月)〜10日(水)
会場◇横浜共立学園中学高等学校(横浜市中区山手町212)
主催◇第22回全国キリスト教学校人権教育セミナー実行委員会
全国キリスト教学校人権教育研究協議会(全キリ)
8/8(月)
◇現場研修(オプション)
@横浜の被差別部落
A関東大震災朝鮮人虐殺の現場をたどる
B日雇労働者と福祉の町、寿町を訪ねる
◇開会礼拝:郡司啓子さん
◇講演:関田寛雄さん
「なぜキリスト教学校に人権教育が必要か」
8/9(火)
◇黙想と賛美:中村証二さん
◇聖書研究:平良愛香さん
◇全体会(1)「さまざまな命とつながるために」
発題:竹川真理子さん/井上収之さん/原ミナ汰さん
◇分科会
@キリスト教学校と人権―聖坂養護学校から見た人権教育
A生と性の教育―性の多様性の視点から
B部落差別問題―私たちの暮らしと歴史から考える
C外国籍・外国にルーツをもつ子どもたち
D子どもの人権―DV・性虐待にさらされる子どもたちのケア
E歴史教科書から見た平和教育
◇交流会
8/10(水)
◇朝の祈り:山岸素子さん
◇全体会(2)「東日本大震災を考える―人権の視点から」
◇派遣礼拝
●参加費
≪全日程参加≫出張16,000円/自費12,000円/学生10,000円
(セミナー諸費用・食事代・ニュース購読費を含む)
≪部分参加≫1コマ2,000円×コマ数+ニュース購読費3,000円
☆フィールドワークはオプションで、参加費は1,000円。
●申込締切:7月8日(金)
●参加費振込締切:7月22日(金)
◇詳しい案内書と申込書は、ホームページ(<http://zenkiri.junyx.net/>http://zenkiri.junyx.net)でご覧いただくか、
送付先を明記して、Fax(03-3203-0731)でご請求ください。
全国キリスト教学校人権教育研究協議会
ホームページ:<http://zenkiri.junyx.net/>http://zenkiri.junyx.net
≪連絡先≫NCC教育部(Tel&Fax 03-3203-0731)
back to Top フクシマ原発事故から学ぶ 日時 6月25日(土)午後2時〜4時 場所 河原町三条・カトリック会館6階 報告 守田 敏也さん(フリーライター) 元 同志社大学社会的共通資本研究センター客員フェロー 参加費 無料(原発被災者への募金箱を置きます) 神は天地創造にあたり、造られたものをご覧になり、「それは極めてよかった」と言われ、全てを人類にお委ねになりました(創世記1章)。人は地球上の全てのものを、神の意志に従って管理し、人類の幸せ実現のために有効に利用し、何世代も後の子孫にまで、正しく美しい状態で委ねていく責務を負っているのです。 フクシマ ―ゆっくり、長く、大量に続く、放射能漏れ事故― この学習会を予定している6月25日現在、福島原発がいったいどのような状況になっているのかすら、誰も予想することができません。人間の手で制御しきれないようなものを作ってしまい、そしてその犠牲となる者は、いつもその恩恵を享受してきた者ではない、そのような不条理を、黙って見ていてよいのでしょうか。 「原発をなくしては日本の経済が成り行かない?」、「CO2を減らすために原発は必要?」「夏場の電力需要を考えたら・・・?」、「感情論での反原発は現実的でない?」それって、本当に本当でしょうか。 現場や現地の人びとに犠牲を押しつけ、子々孫々にまで、どうにもならない核のゴミを押しつけるエネルギー政策は許されることでしょうか。 関西に住む私たちに今、避難民当事者との温度差がないとは言えませんが、全国で一番固まって13基もの原発が稼働しているのが若狭湾であるという現実をもっと注視すべきではないでしょうか。未だに、「もっと安全な原発を」という発想にとらわれている人が少なくない中で、私たちは脱原発の道筋を提示する知識と力を得ることができるようにと、学習会を企画しました。報告者の守田さんは、同志社大学社会的共通資本研究センター客員フェローなどを経て、現在フリーライターとして取材活動を続けながら、原子力政策に関しても独自の研究と批判活動を続けてこられた方です。 多くの方のご参加をお待ちします。 主催 カトリック正義と平和京都協議会 (TEL: 075-223-2291)
back to Top 「日本に人種差別禁止法は必要です! 人種差別撤廃条約とイギリス等における人種差別禁止法の取り組み─」のご案内 ──────────────────────────────── 講師 :師岡康子さん(外国人人権法連絡会) 日時 :2011年7月13日(水)午後6:30〜8:30 日本が1995年に人種差別撤廃条約を批准してから15年、国内では、未だに人種 差別を禁止する法律はなく、人種差別撤廃に向けた大きな課題となっています。 世界の他の国ではどうなっているのか?このたび師岡康子さんを講師にお迎えし、 法律の検証を通じて諸外国における人種差別問題への取り組みについて報告を していただきます。 師岡さんは2005年に弁護士会プロジェクトチームで「人種差別撤廃条例」案 を作成後、イギリスの大学院に留学して人種差別撤廃条約と人種差別禁止法 をテーマに研究をしてこられました。 日本にも必要な人種差別禁止法について、ともに考える機会にしたいと思います。 奮ってご参加ください。 会場 : 松本治一郎記念会館5階会議室 〒104-0042 東京都中央区入船1-7-1 (日比谷線・JR京葉線『八丁堀』、有楽町線『新富町』下車 地図 → <http://www.imadr.org/japan/contact.php>http://www.imadr.org/japan/contact.php) 参加費: 500円 主催 :人種差別撤廃NGOネットワーク(ERDネット) 反差別国際運動日本委員会 (IMADR-JC ) お問い合わせ・参加申し込みは IMADR-JCまで。 tel:03-6280-3101 fax:03-6280-3102 e-mail: <mailto:imadrjc@imadr.org>imadrjc@imadr.org IMADR 小森
back to Top 第61回市民憲法講座 あらためて日米安保を考える−震災下の「日米同盟」の現在 お話:大内要三さん (編集者・平和運動者) 昨年、管政権は「新防衛大綱」を策定しました。 震災以降、日米両政府は米軍による「トモダチ作戦」が展開される中で 自衛隊と米軍の共同作戦体制作りを推し進め、これを沖縄の米軍基地移設問題に利用しようとしています。 旧安保条約が締結されて60年の今年、「日米同盟」は新たな状況を迎えています。 今回の講座では昨年の「日米安保を読み解く」に続き今年「日米安保は必要か?」を出版された大内要三さんにお話をうかがいます。 ぜひ、ご参加ください。 日 時:2011年6月18日(土)6時半開始 場 所:文京区民センター 3C会議室 参加費:800円 許すな!憲法改悪・市民連絡会 東京都千代田区三崎町2−21−6−301 03-3221-4668 Fax03-3221-2558 <http://www.annie.ne.jp/~kenpou/>http://www.annie.ne.jp/~kenpou/
back to Top 育鵬社・自由社教科書は、 子どもたちに渡せない!大集会 ====================================== 2012年度用中学教科書の検定が終わり、各地で採択 の取り組みが行われています。 6月中旬から各地で教科書展示会が開催されます。 日本教育再生機構=「教科書改善の会」の育鵬社版 歴史・公民教科書、新しい歴史教科書をつくる会の 自由社版の育鵬社版歴史・公民教科書を批判し、採択 を阻止するための、首都圏の運動の「総決起集会」と して開催します ■日時:6月17日(金)午後6時(開場) 6時30分(開演)〜9時 ■会場:豊島公会堂(みらい座いけぶくろ)ホール (豊島区東池袋1-19-1)<池袋駅東口徒歩5分> ■内容: 講演→「2011−歴史教科書の問題点を問う」 ★高橋哲哉さん(東京大学院教授) 「教科書採択をめぐる情勢と私たちの活動」 ☆ 俵 義文さん (子どもと教科書全国ネット21事務局長) 「在日の立場から育鵬社・自由社教科書を批判する」 ☆ 崔 善 愛さん(ピアニスト) 一人芝居 演題 水上 勉作「釈迦内柩唄」(ダイジェストバージョン) ☆ 有馬 理恵さん(女優) 開会後、最初に上演します 報告・アピール ☆ 横浜・杉並 連帯挨拶 韓国・アジアの平和と歴史教育連帯 ★資料代:500円 主催●6・17教科書を考えるつどい実行委員会 ★連絡先:子どもと教科書全国ネット21 掾E3265-7606 Fax・3239-8590 <6・17実行委員会参加団体> ・一般財団法人歴史科学協議会 ・大江・岩波沖縄戦裁判を支援し 沖縄の真実を広める首都圏の会 ・ABC企画委員会 ・沖縄平和ネットワーク首都圏の会 ・「学校に自由の風を!」ネットワーク ・教科書・市民フォーラム ・教科書を考える豊島区民の会 ・憲法を生かす会 ・子どもと教科書全国ネット21 ・子どもの権利・教育・文化全国センター ・「子どもはお国のためにあるんじゃない!」市民連絡会 ・ジェンダー平等社会をめざすネットワーク ・自由社版歴史教科書使用の横浜市8区市民連絡会 ・自由法曹団 ・杉並の教育を考えるみんなの会 ・全国民主主義教育研究会 ・男女平等をすすめる教育全国ネットワーク ・中学歴史教科書に「慰安婦」記述の 復活を求める市民連絡会 ・中国人の戦争被害者の要求を支える会 ・「つくる会」教科書採択を阻止する東京ネットワーク ・東京都教職員組合 ・東京都公立学校教職員組合 ・中野の教育を考える草の根の会 ・南京への道・史実を守る会 ・日朝協会東京都連合会 ・日本出版労働組合連合会 ・ひらかれた歴史教育の会 ・許すな!憲法改悪・市民連絡会 ・ピースボート ・平和・国際教育研究会 ・三鷹・子どもと教科書ネット21 ・横浜教科書採択連絡会 ・歴史教育者協議会 33団体(6月11日現在) 賛同団体を募集しています。 ぜひ、多くの団体に賛同していただきたいと思います。 賛同金は、1口1000円です。 賛同いただける団体は、子どもと教科書全国ネット21にご連絡ください。 <mailto:kyokashonet@a.email.ne.jp>kyokashonet@a.email.ne.jp 賛同金は、当日、会場でいただきます。 子どもと教科書全国ネット21 Children and Textbooks Japan Network21(CTJN21) E-mail kyokashonet@a.email.ne.jp HP http://www.ne.jp/asahi/kyokasho/net21/ 掾F03-3265-7606 Fax:03-3239-8590 俵 義文(TAWARA Yoshihumi) E-mail: tawara@dog.email.ne.jp HP: http://www.ne.jp/asahi/tawara/goma/ 〜〜〜〜〜*〜〜〜〜〜*〜〜〜〜〜*〜〜 私が事務局長を務める 子どもと教科書全国ネット21 掾F03-3265-7606 Fax:03-3239-8590 E-mail: kyokashonet@a.email.ne.jp HP: http://www.ne.jp/asahi/kyokasho/net21/
back to Top 日韓条約締結46周年公開シンポジウムのお知らせ 「 日韓会談文書全面公開のインパクト 〜6万ページから何が分かり何が変るのか〜」 > > 昨年は1910年の韓国併合から100年の節目の年。8月には菅談話が発表され、朝鮮 > 王朝儀軌の引渡しに合意する等一定の前進もありました。しかし、日本政府は「1965年 > の日韓条約で解決済み」との姿勢を崩さず、朝鮮王朝儀軌も返還ではなく、「お渡しする」 > との立場です。植民地支配の深い反省に基く戦後処理の再検討には未だ至っていません。 > 日韓会談文書・全面公開を求める会は、情報公開法に基づく日韓会談文書開示を請求 > し、6万ページに及ぶ文書の開示を実現しました。部分開示、全部不開示が多数存在し、 > その開示を求めて裁判闘争も継続中ですが、日本でこれだけ大量の外交文書が市民の 運動により公開されたことはありません。 > 6万ページの膨大な文書から何が明らかになるのでしょうか。15年に及ぶ日韓会談では > 今日の日本社会、韓国社会、日本とアジアの関係等を基礎付ける様々な課題が議論され > ました。1965年6月22日は日韓条約が調印された日です。それから46周年にあたる6 > 月、私たちは、その主要な課題を取り上げ、開示文書を基に日韓会談の真相の一端を明 > らかにするとともに、日韓会談文書全面公開が今後の日本社会、日本とアジアの関係に与 > えるインパクトは何かを考えていきたいと思います。 > > * 日時:2011年6月26日(日) 午前10時〜午後5時 > *会場:港区立勤労福祉会館第1洋室(港区芝5−18−2 JR田町駅下車徒歩5分) http://www.city.minato.tokyo.jp/sisetu/syoko/kinro/index.html > > *プログラム: > ◎午前の部 全体集会 > 基調講演「日韓条約体制下の民族教育―外国人学校法案を中心に―」(仮題) > 講師:藤永壯(ふじなが たけし)氏(大阪産業大学教員) > 報告:「日韓会談文書公開訴訟の現状と展望」(弁護団) > > ◎ 午後の部 テーマ別報告と討議 > 「日韓会談における財産請求権問題」 吉澤文寿(よしざわ ふみとし)氏(新潟国際情報 > 大学教員) > 「日韓会談と韓国文化財の返還問題」 長澤裕子(ながさわ ゆうこ)氏(学習院大学東洋 > 文化研究所客員研究員) > 「在日朝鮮人の法的地位」 鄭栄桓(チョン ヨンファン)氏(明治学院大学教員) 「外交文書公開の歴史的経緯とその意義」 瀬畑源(せばた はじめ)氏(一橋大学教員) > 参加費:1000円(学生500円) > > ※ 報告者のプロフィール > > 藤永壯(ふじなが たけし)氏 > 大阪産業大学教授。専門は朝鮮近現代史。主著に、『日本の植民地支配』(共編著)、 『岩波講座アジア・太平洋戦争4 帝国の戦争経験』『戦争・暴力と女性3 植民地と戦争責任』 > 『歴史教科書の可能性』(以上、共著) > > 吉澤文寿(よしざわ ふみとし)氏 > 1969年、群馬県生まれ。一橋大学大学院社会科学研究科博士後期課程修了。 現在、新潟 > 国際情報大学教授。主要業績は、『戦後日韓関係 国交正常化交渉をめぐって』クレイン、 > 2005年。「日本の戦争責任論における植民地責任 朝鮮を事例として」(永原陽子編『植民 > 地責任論 脱植民地化の比較史』青木書店、2009年) > > 長澤裕子(ながさわ ゆうこ)氏 > 現在、学習院大学東洋文化研究所客員研究員。高麗大学校大学院政治外交学科終了(政 治学博士)。 Harvard-Yenching Institute、韓国学中央研究院にて客員研究員。論文に、「ポ > ツダム宣言と朝鮮の主権」、「日韓会談と韓国文化財の返還問題再考:請求権問題からの分 > 離と「文化財協定」」 (近刊)など。 > > 鄭栄桓(チョン ヨンファン)氏 > 1980年生まれ。明治学院大学教養教育センター専任講師。専門は在日朝鮮人史、朝鮮近 > 現代史。特に解放後の在日朝鮮人運動史。共著『「戦後革新勢力」の奔流―占領後期政治 > ・社会運動史論1948―1950』(大月書店、2011年)など。論文「敗戦後日本における朝鮮人 > 団体規制と朝連・民青解散問題―勅令第百一号・団体等規正令を中心に―」『朝鮮史研究 > 会論文集』47号?2009年、「日本敗戦直後における「警察権確立」と在日朝鮮人団体」『歴史 > 学研究』860号、2009年など。 > > 瀬畑源(せばた はじめ)氏 > 一橋大学大学院社会学研究科特任講師。日本現代史(象徴天皇制研究)論文業績:「昭和 天皇「戦後巡幸」の再検討―一九四五年十一月「終戦奉告行幸」を中心として―」、『日本史 > 研究』2010年5月、「情報公開法と歴史研究―公文書管理問題を中心として」『歴史学研究』 > 2008年4月など。ブログ「源清流清」http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/にて公文書管理問題 > などについて情報発信中。 > > > 日韓会談文書・全面公開を求める会 > 共同代表:太田修 田中宏 吉澤文寿 > (事務局)〒165-0031 東京都中野区上鷺宮1-8-2 山本方 > TEL:090-9204-7607(山本) FAX:03-5241-9906 > Http://www7b.biglobe.ne.jp/~nikkan/ E-mail:nikkanbunsyo@yahoo.co.jp
back to Top 『歩いて見た沖縄』 ACO(カトリック労働者運動)は信仰生活を豊かに生きるために黙想会、練成会などを行って います。 今年度の練成会では、九条と沖縄を意識した講演会を行うことにしました。 講師は宗教者平和ネットの活動を通じて知合いになった平田大海さん(日本山妙法寺信士)にお願い しました。平田さんは9回沖縄を訪れています。 ご自身が見て、感じた沖縄と沖縄の人々についてお話をしていただき、平和を作る働きを考えたいと 思います。 原発事故の影響が深刻さを帯びていますが、原発と戦争が同根であることを感じています。 ご参加をお待ちしております。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 日 時:6月25日(土) 14時開会 会 場:カトリック志村教会 板橋区坂下1-38-22 03-3960-3566 都営三田線「志村三丁目」下車徒歩10分 参加費:資料代500円 講 演:『歩いて見た沖縄』 講 師:平田大海氏(日本山妙法寺信士) 連絡先:片山功一 080-4362-6899 三上一雄 090-4396-7446
back to Top 女性「九条の会」学習会 > 日本の外交と軍事を考える > 3月12日に予定し、東日本大震災の発生で急きょ中止しました学習会を6月18日に開催することにいたしました。 > ふるってご参加くださるようお願いいたします。 > > 日本の外交と軍事問題 ・・・・・講師 北沢洋子さん(国際問題評論家) > > 次世代に無傷で平和憲法を手渡そう ・・・講師 吉武輝子さん(評論家・作家) > > 日時:2011年6月18日(土)13:30〜16:30 > 会場:婦選会館 多目的ホール JR新宿駅南口より6分 > 都営地下鉄6番出口・大江戸線マインズタワー出口より3分 > 参加費:1000円 (参加ご希望の方は下記にご連絡ください) > > 主催:女性「九条の会」 電話 03−5367−4671 ファックス 03−5367−4672 >
back to Top 第23回新宿女性九条の会へのお誘いです。 テーマ;『福島第一原発で何がおきているのか』 講演;舘野 淳 氏 元日本原子力研究所勤務(核燃料化学)、元中央大学教授 著書;『廃炉時代が始まった』(2000年 朝日新聞社) 『東海村臨界事故』(共著 2000年 新日本出版社) 『どうするプルト二ウム』(共著 2007??リベルタ出版) 福島では地震をきっかけに、30年前に起きたスリーマイル原発事故をはるかに 上回る事故が起き、大量の放射能が環境に放出されました。政府や電力会社は、 重大な事故は決して起きないといってきましたが、今回なぜ起きたのでしょうか。 開催日時;7月17日(日) 14:00〜16:30 開催場所;新宿区若松地域センター2階 第1集会室 新宿区若松町12−6 電話;3209−6030 都営地下鉄大江戸線「若松河田」下車 河田口より徒歩2分 男女を問わず、どなたでも参加できます。 託児あります。事前にご連絡下さい。 主催;新宿女性九条の会 新宿区矢来町25 林 世志江 連絡、問合せ 電話 ;3260−1826 小野塚
back to Top
back to Top
back to Top
back to Top
back to Top
6/14院内集会・シンポジウム「作られた自白,失われた29年−布川事 件再審判決は何を明らかにしたか−」 ■作られた自白,失われた29年−布川事件再審判決は何を明らかにしたか− <http://www.nichibenren.or.jp/ja/event/110614_2.html>http://www.nichibenren.or.jp/ja/event/110614_2.html 本年5月24日、布川事件(1967年に茨城県で発生した強盗殺人事件) の再審判決が予定されています。本事件では、近年明らかとなった足利事件、 厚生労働省元局長事件などと同じく、虚偽自白を強いる取調べや証拠隠しなどの 違法捜査が行われたことによるえん罪であることが明らかになっており、 日本における密室取調べや代用監獄の弊害を露呈しています。 当連合会は、本判決を機に、布川事件とは何であったのか、 改めて総合的な検証を行うために、40年以上にわたってえん罪を訴えてきた 桜井昌司氏と杉山卓男氏ほかをお招きし、密室取調べの終焉を展望するとともに、 取調べの可視化(取調べの全過程の録画)の必要性を訴えるため シンポジウム及び院内集会を開催いたします。ぜひ御参加ください。 【院内集会】※要事前申込み 日時 2011年6月14日(火)正午〜午後1時 場所 衆議院第二議員会館多目的会議室 内容 1 布川事件とはなにか 2 布川事件の問題点 桜井昌司氏,杉山卓男氏(布川事件) 3 再審判決の報告 青木和子弁護士(布川事件弁護人・第二東京) 4 国会議員からのご発言 【シンポジウム】※申込不要 日時 2011年6月14日(火)午後6時〜午後8時30分 場所 弁護士会館2階講堂クレオBC 内容 第1部 布川事件が明らかにしたこと 1 布川事件とはなにか 2 布川事件の問題点 桜井昌司氏,杉山卓男氏(布川事件) 3 再審判決の報告 青木和子弁護士(布川事件弁護人・第二東京) 第2部 パネルディスカッション「密室取調べの終焉へ」(仮) パネリスト 桜井昌司氏,杉山卓男氏,青木和子弁護士,小坂井久弁護士(大 阪) コーディネーター 秋田真志弁護士(大阪) *・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・* 日本弁護士連合会 法制第二課 松岡 優美 (Matsuoka Yumi) Tel:03(3580)9925(直) 03(3580)9841(代) / 内線2776 Fax:03(3580)9920
back to Top
back to Top 在日韓国青年連合/在日コリアン青年連合(KEY) 結成20周年記念シンポジウム 〜在日コリアンの未来を考える〜 _____________________________________________________ 2011年7月17日(日)13:30〜 ●======================================================● ■日 時:2011年7月17日(日)13:30〜15:30(開場13:00) ■場 所:エル・おおさか(大阪府立労働センター)6F・大会議室 大阪市中央区北浜東3-14 TEL(06)6942−0001 ※地下鉄谷町線・京阪電鉄「天満橋」駅から西へ300m アクセス:http://www.l-osaka.or.jp/pages/access.html ■資料代:1,000円(事前申込みは必要ありません) ■出演者:尹健次(ユン・コンチャ)--------------------------------- 神奈川大学外国語学部国際文化交流学科教授、専攻は思想史、 近代日朝関係史。 著書に「思想体験の交錯」(岩波書店2008年)など多数。 金光敏(キム・クァンミン)------------------------------- (特活)コリアNGOセンター事務局長。 共著に「日本にやってきた移住者が幸せに暮らすための30の方法」 (共同出版2009年)、ほか。 金宣吉(キム・ソンギル)--------------------------------- (特活)神戸定住外国人支援センター理事長。 共著に「日本における外国人・民族的マイノリティ人権白書」 (明石書店2007年)、ほか。 韓東賢(ハン・トンヒョン)--------------------------------- 日本映画大学准教授。専攻は社会学・文化研究 著書に「チマ・チョゴリ制服の民族誌」(双風舎2006年)。 ■主 催:在日コリアン青年連合(KEY) シンポジウムに引き続き、下記の通り記念式典及びレセプションを開催します。 お時間が許されましたらご参加ください。 ====================================== 第部:結成20周年記念式典(15:45〜) 第。部:記念レセプション(17:30〜) ※第。部参加費:3,000円 ====================================== ************************************************************ 【お問合せ先】在日コリアン青年連合(KEY)事務局(担当:姜) TEL:06-6762-7261 FAX:06-6762-7262 E-mail:info@key-j.org
back to Top
back to Top
back to Top
back to Top 朝鮮史セミナー・ ◆コリア・映画の世界(全3回)〜検閲・抵抗・韓流への道〜 <http://ksyc.jp/s-ts/201106-7koreaeiga.pdf>http://ksyc.jp/s-ts/201106-7koreaeiga.pdf ------------------------------------------------------------------------------- 講師:ノンフィクション作家 高 賛 侑(コ・チャニュウ)さん 第1回 6月17日(金)午後7時 凍てつくスクリーン:1910〜50年代 ―「アリラン」(羅雲奎監督)ほか― 第2回 7月1日(金)午後7時 表現の自由を求めて:1960〜80年代 ―「風の丘を越えて」(林権澤監督)ほか― 第3回 7月15日(金)午後7時 韓流への飛躍:1990年代〜現在 ―「シュリ」(姜帝圭監督)ほか― <講師紹介> 1947年生、朝鮮関係月刊誌『ミレ(未来)』編集長を経て、現在、ノンフィクション作家。著書に『アメリカ・コリアタウン』、『国際化時代の民族教育』」(以上、東方出版)、『異郷暮らし』(毎日新聞社)、『統一コリアのチャンピオン』(集英社新書)、『ルポルタージュ―在日&在外コリアン』(解放出版社)などがある。毎日新聞大阪版に「地球村に架ける橋」を連載中。近畿大学、甲南大学等で非常勤講師も務める。ブログ「サンボン・ネット」http://blog.livedoor.jp/ko_chanyu/ ●参加費 各600円(当日会場でお支払いください) ●会場/主催 神戸学生青年センター
back to Top 「九条の会」メールマガジン 2011 年 1 月 25 日 第 110 号 X-Anti-Virus: Kaspersky Anti-Virus for Linux Mail Server 5.6.44/RELEASE, bases: 03022011 #4750371, status: clean ■事務局からのお知らせ ◇「九条の会講演会」を6月4日(土)午後に予定しております ◇憲法セミナーブックレット新刊のお知らせ 「憲法九条の輝きを日本に世界に」 ◇「井上ひさしさんの志を受けついで―九条の会講演会 〈日米安保の50年と憲法9条〉」のDVD、好評発売中です ◇岐阜憲法セミナーでの井上ひさしさんの講演録 ◇ブックレット「加藤周一が語る」をご要望に応え重版しました ◇憲法セミナーブックレット 好評発売中! ◇ビデオの特別価格販売のご案内 ◇「九条の会講演会―加藤周一さんの志を受けついで」のDVD、 好評発売中 ◇九条の会第3回全国交流集会 報告集、DVD、ビデオ発売中 ■各地から 全国の草の根にはこんなに多彩な活動がある! ◇「九条の会」おまぎ(埼玉県さいたま市)、◇青葉町9条の会(東京都東村 山市)、◇東京北法律・9条の会(東京都北区)、◇はちのへ九条の会(青森 県八戸市)、◇9条鶴ヶ島の会(埼玉県鶴ヶ島市)、◇落合・中井九条の会 (東京都新宿区) ■活動報告 今年最初の「9の日」宣伝 丘珠みなみ・伏古北「九条の会」(北海道札幌市) ■編集後記〜新年明けましておめでとうございます ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ ┃ ☆ 事務局からのお知らせ ☆ ┃ ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ● 「九条の会講演会」を6月4日(土)午後に予定しております <詳細はこちらをクリックしてください> http://www.9-jo.jp/news/MagShousai/MMS110125.htm#a ● 憲法セミナーブックレット新刊のお知らせ 「憲法九条の輝きを日本に世界に」 <詳細はこちらをクリックしてください> http://www.9-jo.jp/news/MagShousai/MMS110125.htm#b ● 「井上ひさしさんの志を受けついで―九条の会講演会 〈日米安保の50年と憲法9条〉」のDVD、好評発売中です <詳細はこちらをクリックしてください> http://www.9-jo.jp/news/MagShousai/MMS110125.htm#c ● 岐阜憲法セミナーでの井上ひさしさんの講演録 <詳細はこちらをクリックしてください> http://www.9-jo.jp/news/MagShousai/MMS110125.htm#d ● ブックレット「加藤周一が語る」をご要望に応え重版しました <詳細はこちらをクリックしてください> http://www.9-jo.jp/news/MagShousai/MMS110125.htm#e ● 憲法セミナーブックレット 好評発売中! <詳細はこちらをクリックしてください> http://www.9-jo.jp/news/MagShousai/MMS110125.htm#f ● ビデオの特別価格販売のご案内 <詳細はこちらをクリックしてください> http://www.9-jo.jp/news/MagShousai/MMS110125.htm#g ● 「九条の会講演会―加藤周一さんの志を受けついで」のDVD 好評発売中 <詳細はこちらをクリックしてください> http://www.9-jo.jp/news/MagShousai/MMS110125.htm#h ● 九条の会第3回全国交流集会 報告集、DVD、ビデオ発売中 <詳細はこちらをクリックしてください> http://www.9-jo.jp/news/MagShousai/MMS110125.htm#i ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ ┃ ☆ 各地から ☆ 全国の草の根にはこんなに多彩な活動がある! ┃ ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ 掲載原稿を募集しています。本欄に掲載希望の方はmag@9jounokai.jpに投稿 して下さい。掲載は原則として「九条の会」関係の催しに限り、1行事1回 掲載とします。このメルマガは毎月10日、25日発行です。投稿される方 は発行日の5日前までにお願い致します。原稿はできるだけチラシなどの添 付ではなく、掲載形式でデータを作ってお送りください。 (編集部) ● 「九条の会」おまぎ(埼玉県さいたま市) 第4回 憲法と文化のつどい 日時:1月29日(土)午後1時30分開場(終了4時) <詳細はこちらをクリックしてください> http://www.9-jo.jp/news/MagShousai/MMS110125.htm#j ● 青葉町9条の会(東京都東村山市) 講演会「安保条約はいま」 日時:2月6日(日)午後1時半開場 <詳細はこちらをクリックしてください> http://www.9-jo.jp/news/MagShousai/MMS110125.htm#k ● 東京北法律・9条の会(東京都北区) 新春セミナー 「いま、憲法からみて、日本の政治と経済に何が求められているか」 日時:2月10日(木)午後5時半から <詳細はこちらをクリックしてください> http://www.9-jo.jp/news/MagShousai/MMS110125.htm#l ● はちのへ九条の会(青森県八戸市) 結成6周年記念講演会「戦争のほんとうの怖さを知る財界人の直言」 日時:2月12日(土)13:30〜 <詳細はこちらをクリックしてください> http://www.9-jo.jp/news/MagShousai/MMS110125.htm#m ● 9条鶴ヶ島の会(埼玉県鶴ヶ島市) 創立5周年記念講演会:「平和」「憲法」大丈夫? 日時:2月13日(日)午後1時半より <詳細はこちらをクリックしてください> http://www.9-jo.jp/news/MagShousai/MMS110125.htm#n ● 落合・中井九条の会(東京都新宿区) 第68回落合・中井九条のつどい「漂流日本丸はどこへ?」 ー2011年 わたしたちの暮らしー とき:2月20日(日)14時〜16時 <詳細はこちらをクリックしてください> http://www.9-jo.jp/news/MagShousai/MMS110125.htm#o ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ ┃ ☆ 活動報告 ☆ ┃ ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ● 今年最初の「9の日」宣伝 丘珠みなみ・伏古北「九条の会」(北海道札幌市) <詳細はこちらをクリックしてください> http://www.9-jo.jp/news/MagShousai/MMS110125.htm#p ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ ┃ ☆ 編集後記 ☆ ┃ ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ● 編集後記〜参議院憲法審査会規程策定の動き <詳細はこちらをクリックしてください> http://www.9-jo.jp/news/MagShousai/MMS110125.htm#q ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行者:「九条の会」メールマガジン編集部:mag@9jounokai.jp ---------------------------------------------------------------------- 「九条の会」オフィシャルサイト:http://www.9-jo.jp/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ Copyright(C) 九条の会 All rights reserved.
back to Top
back to Top wam第8回特別展 女性国際戦犯法廷から10年 〜女たちの声が世界を変える〜 (2010年7月3日〜2011年6月26日) -------------------------------------------------■□■ みなさま、 wam第7回特別展「証言と沈黙〜加害に向き合う元兵士たち」は好評のう ちに終了いたしました。 さて、7月3日からは、新しい展示が始まります。 題して「女性国際戦犯法廷から10年〜女たちの声が世界を変える」 2000年に開かれた女性国際戦犯法廷から10年が経った今、改めて「法 廷」とその後の10年を振り返り、「法廷」とは何だったのか、そして 「慰安婦」問題解決に向けた国内外の現状を伝える展示を行います。 ----------------------------------------------------------------- 第8回特別展 「女性国際戦犯法廷から10年〜女たちの声が世界を変える」 会期:2010年7月3日(土)〜2011年6月26日(日) 主な展示内容: ●日本軍の責任者を裁き、日本の国家責任を認めた女性国際戦犯法廷 ●世界の10年―被害女性の証言と被害国、世界各国、国際機関の動き ●日本の10年―政治、裁判、教科書、女性運動 ●NHK番組改変裁判があぶり出した 日本のジャーナリズムの現在 ●紛争下での女性への性暴力―国際公聴会のその後 広がる民衆法廷 ●新たな発掘資料や聞き取り調査を盛り込んだ 最新版慰安所マップ 開館時間:水〜日曜日 13:00〜18:00 休館日:月・火・祝日・年末年始 ----------------------------------------------------------------- 秋には展示をより深く理解するための連続セミナーを企画しています。 こちらもぜひご参加ください。 皆様のご来館を心よりお待ちしております。 アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam) 新宿区西早稲田2-3-18 AVACOビル2F 〒169-0051 t 03-3202-4633 f 03-3202-4634 mail: wam@wam-peace.org URL: http://www.wam-peace.org/jp/
back to Top
back to Top Q&A災害時の法律実務ハンドブック(平成18年発行) 平成23年3月25日 新日本法規出版株式会社 弊社では、関東弁護士会連合会編集にて「Q&A 災害時の法律実務ハンドブック」を平成18年に発行いたしましたが、このたびの東日本大震災復興の一助として本書の改訂を決定いたしました。関東弁護士会連合会編集にて本年6月頃の発行を予定しております。 なお、初版については在庫がございませんので、参考として平成18年の内容をテキストデータでご覧いただけるようにいたしました。お役立ていただければ幸いです。 平成23年3月25日 新日本法規出版株式会社 目次 2 は し が き 8 第1章 災害対策関係法 9 1 被災者生活再建支援法 9 Q1 災害時に適用される法律 9 Q2 被災者生活再建支援法 11 Q3 通常法規における法定期間等に関する取扱い 13 2 災害復興基本法 19 Q4 災害復興に関する基本法 19 Q5 災害復興基本法に盛り込むべき内容 20 第2章 建物と境界に関する問題 21 1 土砂崩れと境界 21 Q6 土砂崩れにより隣地との境界が分からなくなった場合 21 Q7 震災により周辺の土地にゆがみが生じた場合 23 2 建物、施設の倒壊 24 Q8 震災によりブロック塀が倒れ、隣家を壊した場合の責任 24 Q9 震災により倒れたブロック塀に手抜き工事の疑いがある場合 26 Q10 震災のため倒れた塀を新たに建て直す場合 28 3 倒壊建物の解体 30 Q11 震災後の解体工事が遅れているとき 30 Q12 震災後の修繕工事に不満がある場合 31 Q13 震災前からの工事が震災の影響を受けた場合 33 4 マンションの修理と建替え 34 Q15 被災マンションの修繕、小規模滅失の復旧 36 Q16 大規模滅失とその復旧 38 Q17 被災マンションの建替え決議の手続 40 Q18 マンションの建替え不参加者に対する買取請求 42 Q19 マンション建替えの実行手続 44 Q20 マンションの建替えと抵当権などの取扱い 46 Q21 団地型マンションの損壊、一部滅失の問題点 48 Q22 団地型マンションの建替え手続 50 Q23 全部滅失の場合のマンションの再建手続 52 Q24 耐震強度偽装事件について 54 Q25 耐震強度の偽装があった場合の紛争解決 56 Q26 耐震強度の偽装があった場合の責任追及 58 5 建物の瑕疵 60 Q27 震災により購入した建物の壁に亀裂が入った場合の責任追及 60 Q28 震災により建て替えた建物が傾いてしまった場合の責任追及 62 Q29 平成12年4月1日以降に契約した建物の瑕疵担保規定の特例(住宅品質確保促進法) 64 Q30 瑕疵担保責任を追及するための「瑕疵」 66 Q31 建築紛争の解決手段 68 第3章 借地借家に関する問題 70 1 建物が滅失した場合の借地権 70 Q32 借地上の建物が地震で全壊した場合の借地権 70 Q33 借地上の建物が地震で全壊した場合の建物の再築 71 Q34 借地上に再築した建物の借地期間 74 Q35 地震で一部損壊した借地上の建物の修理 76 Q36 借地上の建物が地震で全壊した場合の借地権の対抗力 78 Q37 借地上の建物が地震で全壊した場合の建物に設定された抵当権 80 Q37 借地上の建物が地震で全壊した場合の建物に設定された抵当権 81 Q39 借地上の建物が地震で全壊した場合の地代の減額 82 Q40 地震で損壊した借地の復旧工事の負担者 83 2 建物が滅失した場合の借家権 84 Q41 震災で借家が滅失した場合の賃貸借契約 84 Q42 避難勧告が出て借家に住めない場合の家賃の支払 86 Q43 震災で借家が損壊し、家主から退去を求められた場合 87 Q44 震災で借家が損壊した場合の修理要求 89 Q45 震災で借家が損壊し、家主から修理中の一時退去を求められた場合 90 Q46 震災で借家が損壊し、修理中の仮住まい等の費用 91 Q47 震災で借家が損壊したときは修繕する旨の特約がある場合 92 Q48 居住不能となったときは敷金を返還しない旨の特約がある場合 93 3 罹災都市借地借家臨時処理法 94 Q49 罹災都市法の制定経緯 94 Q50 罹災都市法による借地権、借家権の保護 95 Q51 地震で建物が滅失した場合の借地人の保護 96 Q52 震災時借地権の残存期間が短い場合の借地人の保護 97 Q53 建物が滅失した状態での借地権の譲渡と土地所有者の承諾 98 Q54 土地所有者からの催告による既存借地権の消滅 99 Q55 罹災都市法上の借家人の保護 100 Q56 土地所有者に対する借地権設定の申出 101 Q57 借地権取得の申出権者とその相手方 102 Q58 敷金の返還を受けたときの借地権取得 103 Q59 優先借地権の申出 105 Q60 優先借地権の申出の要件 106 Q61 優先借地権を土地所有者が拒絶できる場合 107 Q62 優先借地権の取得時期 108 Q63 優先借地権の権利内容 109 Q64 優先借地権と法定地上権の関係 110 Q65 借地権譲渡申出権の成立要件 111 Q66 罹災都市法3条の借地権の譲渡が認められた場合の借地条件 112 Q67 土地所有者による優先借地権の消滅請求 113 Q68 優先借地権の消滅 114 Q69 複数の借家人がいる場合の優先借地権の範囲 115 Q70 複数の借家人間における優先借地権取得の優先関係 116 Q71 優先借地権が競合する場合の裁判所による割当て 118 Q72 優先借家権取得の要件 119 Q73 優先借家権者に対する建築主からの催告 121 Q74 中高層建物が再築された場合の借家申出 122 Q75 複数の優先借家権申出があった場合における優先借家権と他の借家権との関係 123 Q76 裁判所への申立て方法 125 第4章 財産、保険、生活に関する問題 128 1 財産管理、相続 128 Q77 行方不明者の財産管理 128 Q78 行方不明の場合の相続 129 Q79 死亡者の財産管理 130 Q80 死亡の先後が分かる場合の相続 131 Q81 同時死亡した場合の相続 133 Q82 人身傷害に対する損害賠償 135 Q83 震災で権利証を消失してしまった場合 138 Q84 震災で登記識別情報が分からなくなってしまった場合 140 2 生命保険 142 Q85 生命保険の仕組みと保険証券の紛失 142 Q86 保険金の請求手続 144 Q87 保険金の受取人が死亡した場合 146 Q88 保険料が支払えない場合 148 3 損害保険 150 Q89 地震保険と火災保険の関係 150 Q90 地震保険の対象 151 Q91 地震保険で支払われる保険金 152 Q92 地震保険の保険金額 154 Q93 全損・半損・一部損の判断 155 Q94 同一敷地内の母屋と物置を対象とした地震保険契約 157 Q95 地震保険の保険金を受け取る方法 158 Q96 地震保険の保険金受取り後の保険契約 159 Q97 マンションの所有者が結ぶ地震保険契約 160 Q98 警戒宣言発令後の地震保険加入 161 Q99 罹災証明、被災建築物応急危険度判定 162 4 住宅ローン 163 Q100 既存住宅ローンの金利の減免、支払猶予 163 Q101 震災により倒壊した場合の抵当権、住宅ローンの期限の利益の喪失等 164 Q102住宅の再建、補修のための公助制度、共助制度 165 Q103 住宅の再建のための新規融資等 167 5 建物の修理等に関するトラブル 169 Q104震災後に修理業者と法外な値段の契約を結んでしまった場合(訪問販売とクーリング・オフ) 169 Q105 震災後の屋根瓦補修工事に関するトラブルと注意点 171 Q106震災後に頼んでもいない商品が送られてきた場合(ネガティブ・オプション、送付け商法) 173 Q107 震災後に必要のない浄水器を購入してしまった場合(点検商法) 175 Q108 高齢者を狙った震災後の悪徳商法 177 第5章 営業に関する問題 179 1 金融取引 179 Q109 地震時の手形交換所の特例と最終処理 179 Q110 手形決済ができない場合 181 Q111 通帳、カードの紛失 184 Q112 小切手の発行と銀行の営業停止 186 Q113 銀行の営業停止 187 Q114 震災時の手形の支払呈示 189 Q115 手形・手形帳の行方不明 190 2 商取引 192 Q116 リース物件の滅失 192 Q117 株券の紛失 193 Q118 ITインフラの破壊の影響 194 3 震災に起因する倒産 196 Q119 被災により債務の返済が困難になった場合@ 196 Q120 被災により債務の返済が困難になった場合A 198 第6章 雇用に関する問題 202 Q121 震災を理由とした採用内定の取消し 202 Q122 震災を理由とした労働者の欠勤 203 Q123 震災を原因とした欠勤による労働者に対する不利益処分 204 Q124 震災でケガをした労働者が休職扱いになった場合 205 Q125 震災のため給与の支払が困難な場合 206 Q126 震災と給料支払の前倒し 207 Q127 震災のため時間外労働や休日出勤を命じたい場合 208 Q128 一時帰休(レイオフ)を命じられた場合 209 Q129 震災による会社の資金繰りが悪化した場合の労働者の解雇 210 Q130 震災による会社の倒産した場合の労働者の解雇 211 Q131 業務中に被災しケガをした場合 212 Q132 通勤中に被災した場合 213 Q133 通勤中に被災し、救護活動中にケガをした場合 214 Q134 通勤中ないし業務中に被災し、労災保険の給付を受けられる場合の給付内容 215 第7章 税金に関する問題 216 Q135 被災者に対する租税の減免措置@ 216 Q136 被災者に対する租税の減免措置A 219 Q137 被災者に対する租税の緩和措置 221 第8章 環境に関する問題 224 Q139 工場等から有害物質が流出した場合 224 第9章 支援を必要とする人に関する問題 229 1 高齢者、障害者への支援 229 Q141 地域防災計画 229 Q142 地域防災計画における災害時要援護者への配慮 231 Q143 要援護者の個人情報の第三者提供 233 Q144 倒壊した有料老人ホームからの入居保証金の返還 235 Q145 高齢者円滑入居賃貸住宅に登録した住宅の家賃債務保証制度 238 Q146 避難先での介護保険の利用 240 Q147 年金担保貸付、災害支援制度 242 Q148 災害時要援護者への支援 245 Q149 災害時要援護者に対する避難情報 247 Q150 災害時要援護者の把握 249 Q151 避難所における災害時要援護者支援 251 2 外国人への支援 253 Q152 震災で負傷し、家族による長期看護が必要になった場合 253 Q153 震災によるパスポートの紛失 254 Q154 震災により在留期間の更新期限を徒過した場合 255 Q155 留学生に稼働する必要が生じた場合 256 Q156 震災により帰国する場合の支援 257 Q157 震災後のオーバーステイ 258 Q158 震災により解雇された場合の雇用保険給付 259 Q159 在留資格がないときの外国人の生活保護 260 Q160 震災により負傷し治療を受けた場合 262 Q161 震災により本人または親族が死傷した場合 263 Q162 震災により住居が消失してしまった場合 264 Q163 震災に伴う義捐金の受給 265 Q164 在留資格がない場合の相談先 266 Q165 日本語が分からないときの通訳の依頼 267 Q166 震災時における外国人が受ける不利益 268 Q167 震災時における外国人の安全確保 269 3 子どもに対する支援 270 Q168 被災時の子どもの引渡し 270 Q169 震災後の休学、転入学などの取扱い 271 Q170 震災により両親を失った場合 273 第10章 弁護士等の役割 275 1 日本弁護士連合会および関東弁護士会連合会の施策 275 Q171 日本弁護士連合会および関東弁護士会連合会の施策 275 2 弁護士、まちづくり支援機構の役割 277 Q172 阪神・淡路まちづくり支援機構 277 Q173 発災前のまちづくり支援機構の設立 278 は し が き 本書は、関東大震災から83年、阪神・淡路大震災から11年、新潟県中越地震から2年経過した現在、関東弁護士会連合会管内である東京に万一直下型大地震が起こった場合、弁護士がその後に生ずる法律問題に対応する際にご利用いただくことを想定して作成しました。 東京直下型大地震は、高い確率で発生することが予測されています。東京は、関東大震災時に比べ都市構造が高度化されており、極端な大消費地となり、外国人も多数居住し、高齢者と少子化の問題を抱える大都市となっています。 また、阪神・淡路大震災の阪神・淡路の被災地に比べ、より大型都市であり、新潟県中越地震の被災地に比べて、社会の連帯が薄く人間関係の希薄な地域です。そして、司法の世界に目を移せば大立法時代を終えたばかりです。 こうした状況を踏まえ、本書の企画、執筆は関東弁護士会連合会の平成18年度シンポジウム委員会(委員長 高井和伸)が担当したものです。 本書の先達である近畿弁護士会連合会編『地震に伴う法律問題Q&A』(商事法務研究会、平7)を上記視点から乗り越えようと試みた結果、大地震未体験の者による執筆であることから、設問は大・中・小の様々な視点から設定され、古典的な設問から抽象的な設問まで網羅することになりました。また、これに対する回答は、関東弁護士会連合会に所属する弁護士が現時点における考えを示したものであることをお断りしておきます。 しかし、本書は、近畿弁護士会連合会の先の労作や災害弱者をめぐるシンポジウムを構築するための基礎事実を調査する段階で寄せられたご意見や兵庫県弁護士会をはじめ、シンポジウム委員会での特別講演の各講師等多くの方々のご指導、ご協力によるところが大ですが、耐震強度、環境面への配慮、要援護者への支援など現代的な問題点をも併せ考えて執筆されたものです。 本書が、関係者の皆様に広く利用され、少しでも実務のお役に立つことを願う次第です。 平成18年9月 関東弁護士会連合会 理事長 楠 本 博 志 第1章 災害対策関係法 1 被災者生活再建支援法 Q1 災害時に適用される法律 阪神・淡路大震災や新潟県中越地震に匹敵する規模の大災害が起きた場合に対処するために制定されている法律には、どのようなものがありますか。 A 災害救助法、激甚災害法、災害弔慰金の支給等に関する法律、被災者生活再建支援法、権利保全特別措置法、罹災都市法、災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律などがあります。 解 説 災害応急対策や災害復旧に関しては様々な法律がありますが、主なものを挙げると次のとおりです。なお、いずれの法律についても発災により当然に法律の適用を受けるわけではなく、政令による災害指定・地域指定を受けることが必要であることに注意してください。 1 災害救助法 災害救助法は、災害に際して、国が地方公共団体や日本赤十字社や国民の協力の下に、応急的に必要な救助を行うことを定めた法律です。救助の内容としては、@避難所や応急仮設住宅の供与、A炊出し等による食品の給与や飲料水の供給、B被服、寝具等生活必需品の供与または貸与、C医療および助産、D被災者の救出、E被災住宅の応急修理、F生業に必要な資金等の貸与、G学用品の給与、H埋葬などです(災救23@)。このうちEに関しては、半壊住宅で1か月以内に修理可能な場合に、世帯あたり51万円を限度として応急修理費が支給されます。またFは、災害のため生業の手段を失った世帯に対し、1か月以内に機械や資材の購入費用(3万円が限度)を貸与するものです(平12・3・31厚告144)。 2 激甚災害法(激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律) 激甚災害として政令で指定されると、復興費用に充てられる国庫補助金の割合が1、2割ほど引き上げられ、より手厚い財政措置が講じられます。これにより、公共施設等の復旧事業経費など地方公共団体の財政負担が軽減されます。また、一般の災害復旧事業補助や災害復旧貸付等の支援措置に加えて、中小企業に対する資金の融通や、被災により事業所が休業し就労できない場合に失業とみなして基本手当を受給できるなど、様々な特例措置が適用されます。 3 災害弔慰金の支給等に関する法律 災害弔慰金の支給等に関する法律は、主に生命身体の被害に対する金銭的援助を定めた法律です。災害により死亡した者の遺族に対して支給される災害弔慰金(最高500万円)、災害により精神や身体に著しい障害を受けた者に対して支給される災害障害見舞金(最高250万円)があります(災害弔慰金3・8、災害弔慰金令1の2・2の2)。また、世帯主が負傷し療養に1か月以上要する場合などに、生活の立直しを援助するために、災害により被害を受けた世帯の世帯主に対して貸し付ける災害援護資金もあります(限度額は350万円)(災害弔慰金10、災害弔慰金令7@)。 4 被災者生活再建支援法 被災者生活再建支援法については、次の設問(Q2)を参照してください。 5 権利保全特別措置法(特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律) 権利保全特別措置法は、被災者の権利利益の保全を目的とした法律です。@行政上の権利利益に係る満了日の延長(特定非常災害3)、A履行されなかった義務に係る免責(特定非常災害4)、B法人の破産手続開始の決定の特例(特定非常災害5)、C民事調停法による調停の申立て手数料の特例(特定非常災害6)、D建築基準法および景観法による応急仮設住宅の存続期間の特例(特定非常災害7・8)があります。このうちBについては、被災により債務完済不能となった法人に対しても一定期間破産手続開始決定を行わないとするものです(特定非常災害5)。また、Cについては借地借家関係など被災に起因する民事紛争について調停申立手数料を免除するものです(特定非常災害6)。 6 罹災都市法(罹災都市借地借家臨時処理法) 罹災都市法は、既存の借地権の保護や、滅失した建物の借家人の保護を目的とした法律です。@借地権の対抗力存続(建物が滅失しても5年間は対抗力が与えられる)(罹災都市10・25の2)、A借地権の残存期間延長(借地権の残存期間が10年未満であったとしても10年に延長される)(罹災都市11・25の2)、B借家人の敷地優先賃借権(滅失した建物の借家人は、建物敷地の所有者に対し敷地の賃借の申出をすれば、他人に優先して借地権を取得できる(罹災都市2@)。既に借地人がいる場合には、申出によって他人に優先して借地権を譲り受けることもできる(罹災都市3)。)、C借家人の建物優先賃借権(滅失した建物の借家人は、その土地に新たに築造された建物について賃借の申出をすれば、他人に優先して賃借できる)(罹災都市14)などがその内容となっています。 7 災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律 これは、国税の軽減・免除や徴収の猶予を定めた法律です。 Q2 被災者生活再建支援法 住居の確保は、被災者の生活を維持し地域の崩壊を防ぐために不可欠ですが、個人の住宅再建に関する援助を国から受けることができますか。 A 被災者生活再建支援法により、生活再建費用として最高100万円、住宅安定費用として最高200万円の支援金を受けることができます。 解 説 1 被災者生活再建支援法の目的 被災者生活再建支援法は、自然災害により生活基盤に著しい被害を受けた場合に、自立した生活の再開と生活の立直しのための支援を目的とした法律です。議員立法により平成10年5月に制定されました。平成16年4月1日の改正法においては、支給対象や支給額、支給方法などが拡充されています。 2 被災者生活再建支援法の内容 (1) 支給対象 自然災害による全壊10世帯以上の市町村などに適用されます。また、それら隣接する市町村(人口10万人未満に限ります。)であっても5世帯以上の全壊がある場合には適用となります(被災再建令1)。 対象は、住宅が全壊もしくは倒壊防止のため住宅を解体した世帯が原則です。ただし、大規模半壊世帯(住宅が半壊し、大規模な補修を行わなければ住宅に居住することが困難である場合)にも、「全壊に準ずる程度」の被災として支給対象となります(被災再建令2)。 (2) 支給金額 大きく分けて、@生活再建に関する経費とA居住安定に関する経費に対して支給されます。 @生活再建に関する経費とは、被災に関して生じた物品購入費、医療費、交通費、賃貸住宅を利用する場合の礼金です(被災再建令3@一〜六)。複数(2人以上)世帯の場合に最高で100万円が支給されます(被災再建令4@一、被災再建規7@)。ただし、単数世帯の場合には限度額がその4分の3となりますし、年収500万円を超える世帯も支給条件や支給額が制限されます(被災再建3二、被災再建規7@)。 A居住安定に関する経費とは、民間賃貸住宅を利用する場合の家賃(限度額は、複数世帯で50万円)(被災再建規8@二)、住宅の解体撤去費用、住宅建設・購入・補修のための借入金の利子や保証料等です(被災再建令3@七・八・九・十一)。複数世帯の場合に最高で200万円支給されます(被災再建令4@三、被災再建規8A)。単数世帯や年収500万円以上の世帯については、@と同様の支給制限があります(被災再建3二、被災再建規8A一)。また、他の都道府県に移転する場合には限度額が2分の1となります(被災再建規9C)。ただし、長期避難世帯(3年以上経過後に避難指示が解除された場合)については、避難解除後必要となる移転費等につき、@およびAの支給上限の範囲内で最高で70万円支給されます(被災再建規7A)。 これら@およびAは概算支給(前払い)を受けることも可能です(被災再建令4B)。 なお、大規模半壊世帯も支給対象となることは前述しましたが、その範囲はAで、しかも100万円が限度です(被災再建令3A二・三・五・4@四、被災再建規9B)。 3 被災者再建支援法の問題点 同法施行後多くの自然災害(地震のみならず台風豪雨、噴火など)において被災者に対する支援金の支給が行われています。その意味で、同法は被災者の生活再建に資する重要な役割を果たしています。 しかし、未だ問題点があります。そもそも現行の支給限度額が再建のために決して十分であるとはいえない上、支給対象地域や対象世帯もさらなる充実が求められます。また、自然災害は無差別に住民を襲うものでありながら、収入により支給制限が行われることは疑問です。さらに、A居住安定費に関しては、住宅の解体撤去費や住宅立替・補修費の借入金の利息等の周辺経費だけでなく、住宅本体の建築費・補修費をも対象としなければ再建に困難が生じます。 住宅再建支援は個人資産の回復を認めることとなるとの見解も根強く残っていますが、自然災害による被害で自助努力が困難な被災者に対しては、国や行政が積極的に公的支援を行うのが憲法25条の精神です。日本弁護士連合会、関東弁護士連合会、新潟県弁護士会および兵庫県弁護士会は、平成16年に共同で改正を求める要望書を提出しています。 Q3 通常法規における法定期間等に関する取扱い 受任している事件の期日や、民法等の法定期間などは、発災時どのように取り扱われるのでしょうか。 A 阪神・淡路大震災のような大規模災害の場合には、裁判所において、法定期間等の遵守への配慮や期日変更等への柔軟な対応がなされる可能性もあります。 解 説 阪神・淡路大震災においては、日本弁護士連合会より最高裁判所に対し、被災地裁判所の係属事件について訴訟手続の遂行が不能もしくは著しく困難となっているので、法令の定めにより遵守すべき法定期間等に関し、期間伸長、訴訟行為追完、上訴権回復等法令に従った対応その他の配慮を求める要望を行いました。そして、最高裁判所の検討結果が資料です(最高裁判所事務総局から高等裁判所長官宛てに連絡があり、かつ日本弁護士連合会に対して通知されたものです。原文の内容をそのまま掲載しておりますので、震災当時の条文によったものであることに注意してください。)。法定期間の遵守に関しては適用可能な規定がある場合にはそれを援用し、またそうでない場合にも当事者等の不利益にならないように配慮すべき旨、そして期日変更等の手続についても柔軟に対応すべき旨記載されています。 したがって、今後の災害についても同様の措置がなされる可能性があります。ただし、災害の規模や被害の程度にもよりますし、また同様の措置がなされる場合においても具体的事案に応じて判断されるので、安易な見通しを立てるべきではなく、可能な限りは法定期間や期日を遵守すべきであると思われます。 〔資料〕 平成7年1月24日 高等裁判所長官 殿 最高裁判所事務総局総務局長 涌 井 紀 夫 拝啓 時下ますます御清祥のこととお喜び申し上げます。 さて、本年1月17日に発生した兵庫県南部地震による被害の甚大さにかんがみると、法令の定めにより遵守すべき法定期間等について、当事者等の不利益にならないように、受訴裁判所の判断により、期間の伸長、訴訟行為の追完、上訴権回復等の法令に従った適切な対応(別紙第1参照)をとることが求められているものと考えられるところであり、日本弁護士連合会事務総長からも、別添のとおり同旨の要望書が提出されています。また、期日変更等の手続についても別紙第2のような配慮が必要なものと考えられます。 ついては、裁判官その他の関係職員にこの趣旨を適宜の方法によりお伝えいただくようお願いします。 なお、資料、文献等を調査の上、更に必要な場合には、民事局、刑事局、行政局及び家庭局に御照会ください。 おって、管内の地方裁判所長及び家庭裁判所長に対しても、この趣旨を御連絡ください。 敬 具 (別紙第1) 法定期間の遵守等に関して配慮を要する事項 第1 民事・行政関係 期間の遵守に関係する典型的な規定を掲げた。 なお、これらはあくまで例示であるから、実際の執務に当たっては、具体的事案に応じ、適用可能な規定の有無等を必ず確認するよう注意されたい。 1 民事訴訟手続 (1) 期間一般 期間の伸長等(民事訴訟法第158条) 訴訟行為の追完(同法第159条) (2) 法定期間(不変期間を含む。) 控訴期間(同法第366条) 上告期間(同法第396条) 上告理由書提出期間(同法第398条第1項、民事訴訟規則第50条) 即時抗告期間(同法第415条) 訴えの取下げに対する同意の擬制期間(同法第236条第6項)など (3) 裁定期間 訴状の補正期間(同法第228条第1項)など 2 督促手続 法定期間(不変期間を含む。) 仮執行宣言前の異議申立期間(同法第435条、第438条第1項) 支払命令の失効期間(同法第439条) 仮執行宣言後の異議申立期間(同法第440条)など 3 民事保全手続 (1) 期間一般 民事保全手続に関しては、特別の定めがある場合を除いて、民事訴訟法の規定が準用される(民事保全法第7条)ことから、民事保全手続に関する期間の規定についても、期間の伸長等(民事訴訟法第158条)、訴訟行為の追完(同法第159条)の規定が準用される場合がある。 (2) 法定期間(不変期間を含む。) 保全命令申立てを却下する裁判に対する即時抗告期間(民事保全法第19条第1項) 保全抗告期間(同法第41条第1項)など (3) 裁定期間 保全命令の担保を立てるべき期間(同法第14条第1項) 保全異議の申立てにおいて決定をするための担保を立てるべき期間(同法第32条第2項) 担保権利者に対して権利行使をすべき旨の催告期間(民事訴訟法第115条第3項)など 4 民事調停手続 (1) 期間一般 民事調停手続に関しては、特別の定めがある場合を除いて、非訟事件手続法第一編の規定が準用され(民事調停法第22条)、非訟事件手続法においては、期間について民事訴訟法の規定が準用される(非訟事件手続法第10条)ことから、民事調停手続に関する期間の規定についても、期間の伸長等(民事訴訟法第158条)、訴訟行為の追完(同法第159条)の規定が準用される場合がある。 (2) 法定期間(不変期間を含む。) 調停に代わる決定に対する異議申立期間(民事調停法第18条第1項)など 5 非訟手続 (1) 期間一般 非訟事件の手続の期間に関しては、民事訴訟法の規定が準用される(非訟事件手続法第10条)ことから、期間の伸長等(民事訴訟法第158条)、訴訟行為の追完(同法第159条)の規定が準用される場合がある。 抗告期間経過後の追完の規定もある(非訟事件手続法第22条)。 (2) 法定期間(不変期間を含む。) 即時抗告期間(同法第25条による民事訴訟法第415条第1項の準用、借地借家法第48条第1項)など 6 執行手続 (1) 期間一般 民事執行手続に関しては、特別の定めがある場合を除いて、民事訴訟法の規定が準用される(民事執行法第20条)ことから、民事執行手続に関する期間の規定についても、期間の伸長等(民事訴訟法第158条)、訴訟行為の追完(同法第159条)の規定が準用される場合がある。 (2) 法定期間(不変期間を含む。) 執行抗告期間(民事執行法第10条第2項) 剰余を生ずる見込みの有無の確認期間(同法第63条第2項) 引渡命令申立期間(同法第83条2項) 配当異議の訴え等を提起したことの証明書等の提出期間(同法第90条第6項)など (3) 裁定期間 配当要求終期(同法第49条第1項) 代金納付期限(同法第78条第1項、民事執行規則第56条第1項) 入札期間(同規則第46条) 特別売却期限(同規則第51条第1項)など 7 破産手続 (1) 期間一般 破産手続に関しては、破産法に別段の定めがないときは民事訴訟法が準用される(破産法第108条)ことから、破産手続に関する期間の規定についても、期間の伸長等(民事訴訟法第158条)、訴訟行為の追完(同法第159条)の規定が準用される場合がある。 (2) 法定期間(不変期間を含む。) 即時抗告期間(破産法第112条、民事訴訟法第415条)など (3) 裁定期間 債権届出期間(破産法第142条)など 8 和議手続 (1) 期間一般 和議手続に関しては、和議法に別段の定めがないときは民事訴訟法が準用される(和議法第11条第2項)ことから、和議手続に関する期間の規定についても、期間の伸長等(民事訴訟法第158条)、訴訟行為の追完(同法第159条)の規定が準用される場合がある。 (2) 法定期間(不変期間を含む。) 即時抗告期間(和議法第7条、民事訴訟法第415条)など (3) 裁定期間 債権届出期間(和議法第27条)など 9 会社更生手続 (1) 期間一般 会社更生手続に関しては、会社更生法に特別の規定がないときは民事訴訟法が準用される(会社更生法第8条)ことから、会社更生手続に関する期間の規定についても、期間の伸長等(民事訴訟法第158条)、訴訟行為の追完(同法第159条)の規定が準用される場合がある。 更生債権者又は更生担保権者がその責に帰することのできない事由によって裁判所の定めた届出期間内に届出をすることができなかった場合の届出の追完に関する規定(会社更生法第127条第1項)もある。 (2) 法定期間(不変期間を含む。) 即時抗告期間(同法第11条、民事訴訟法第415条)など 10 行政事件訴訟手続 (1) 期間一般 民事訴訟手続の例による(行政事件訴訟法第7条、民事訴訟法第158条、第159条)。 (2) 不変期間 取消訴訟の出訴期間(行政事件訴訟法第14条)は不変期間である(同条第2項)から、これを伸長すること(民事訴訟法第158条第1項)はできないが、一定の要件を備える場合には、附加期間(同条第2項)を定め、訴訟行為の追完(民事訴訟法第159条)を認めることができる。 行政事件訴訟法第34条、第40条、第43条第1項参照(公職選挙法第203条、第204条、独占禁止法第77条、特許法第178条第3項、地方自治法第242条の2第2項などに行政事件訴訟法第14条の特例を定める例がある。) 11 民事実体法 (1) 民事法 時効の停止(民法第161条)など (2) 商事法 手形呈示期間の伸長(手形法第54条、小切手法第47条等)など 第2 刑事関係 1 上訴権回復 刑事訴訟法第362条は、上訴権者等が、その責に帰することができない事由によって、上訴提起期間内に上訴することができなかったときは、原裁判所に上訴権回復請求することができる旨規定している(なお、略式命令に対する正式裁判の請求についても、同法第467条で準用されている。)。 2 控訴趣意書、上告趣意書の提出期間 控訴趣意書等をその期間内に提出できなくても、その遅延がやむを得ない事情に基づく場合には、期間内に差し出されたものとすることが可能である(刑事訴訟規則第238条、第266条)。もっとも、受訴裁判所が職権で控訴趣意書提出期間等を延長することも考えられる。 3 法定期間の延長 刑事訴訟法第56条、刑事訴訟規則第66条、第66条の2によると、交通通信の便宜等を考慮し、法定期間(公判廷において宣告された裁判の上訴提起期間については適用されない。)を延長することが可能である。 第3 家事関係 1 家事審判の抗告期間との関係 抗告期間2週間(家事審判法第14条)については、天災等の不可抗力により遵守できなかった場合には、その事由が止んだ後1週間に限りその追完をなすことができる(同法第7条、非訟事件手続法第22条)。天災の具体的な判例として、非訟事件手続法第22条と同趣旨の民事訴訟法第159条につき、関東大震災のため通信途絶の場合に追完を認めた例がある(大審院判決大正13.6.13・法律新聞2335号)。 2 家事事件手続上の期間との関係 (1) 典型的な例としては、相続放棄の申述(自己のために相続の放棄を知った時から3か月−民法第915条第1項)や家庭裁判所に対する財産分与の申立て(離婚の時から2年―同法第768条第2項)が考えられる。 (2) これらの期間については、その性質に反しない限り民事訴訟法が準用され(家事審判法第7条、非訟事件手続法第10条)、期間の計算(民事訴訟法第156条)、期間の始期(同法第157条)、期間の伸縮・付加期間(同法第158条)、不変期間の追完(同法第159条)などが準用される。 その結果、天災等の不可抗力により、当該期間が遵守できなかった場合には、その事由が止んだ後1週間に限りその追完をなすことができる(同法第159条)。 (3) なお、相続放棄については、事前の申立てを要するが、期間の伸長の制度がある(民法第915条第1項但書、家事審判法第9条第1項甲類第24号)。 3 実体法上の時効や除斥期間との関係 (1) 家事事件においても、一般調停事件において、実体法上の時効や除斥期間が問題となる場合があり得る。典型的な例としては、離婚慰謝料請求と3年の消滅時効(20年の除斥期間)(民法第724条)、遺留分減殺請求と1年の消滅時効(10年の除斥期間)(同法第1042条)などが考えられる。 (2) 時効期間については、天災その他の事変による時効の停止により(同法第161条)、時効の期間満了時に天災その他不可避の事変により時効を中断することができないときは、その事情が止んだ時から2週間は時効が完成しない。 除斥期間については、一般的に中断を観念し得ないから停止はないと言われているが、時効の停止を類推適用するとの有力な学説もある(我妻「民法講義」437頁)。 第4 少年関係 1 少年保護事件、準少年保護事件における抗告期間(少年法第32条) 抗告申立権者の責に帰することができない事由によって申立期間内に抗告できなかった場合に、刑事訴訟法第362条を類推適用し、抗告権の回復請求ができると解されよう。 2 少年補償事件における変更の申出の期間(少年の保護事件に係る補償に関する法律第5条第3項)及び特別関係者からの申出の期間(同法第6条) この点について明確に解釈を示したものはないが、法定期間の延長に関する刑事訴訟法第56条、刑事訴訟規則第66条を類推適用すると解釈されよう。 (別紙第2) 期日変更の手続等において配慮を要する事項 1 口頭弁論期日の変更(民事訴訟法第152条) 公判期日の変更(刑事訴訟法第276条)、家事審判期日の変更(家事審判法第7条、非訟事件手続法第10条、民事訴訟法第152条)及び少年審判期日の変更等に当たっては、地震により郵便事情が悪化していることや、相当数の弁護士事務所及び当事者の家屋が被害を受けていること等にかんがみ、一律に期日変更申請書の提出を求めるなどの対応を取ることなく、事情に応じて職権による期日変更を行うなど柔軟な対応が必要とされる。 2 当事者、代理人等が期日に出頭して来ない場合も、その不出頭の事由等を十分考慮し、これらの当事者等の不利益にならないよう配慮することが必要である。 2 災害復興基本法 Q4 災害復興に関する基本法 災害からの復興について基本となる法律はありますか。 A 現状では存在しません。災害復興を円滑に進める上で、災害復興基本法の制定が求められます。 解 説 1 災害対策基本法の内容と復興に関する法律 災害対策基本法は、災害復興について国および公共団体の努力目標を定めています(災害基8B)が、具体的な復興の方策については、個別の法律、例えば、激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律、被災市街地復興特別措置法、被災者生活再建支援法等、多数の法律に委ねられています(第1章のQ1参照)。 2 災害復興基本法不存在の問題点 実際に災害が発生した場合に、別々の法律に規定されていたのでは、現場の公共団体としても、どの法律のどの制度を使って支援を受けたらよいのかが分かりにくいというデメリットがあります。 また、現状の法制度では復興の概念が明確でなく、ともすれば被災者の生活再建より都市の復興に主眼がおかれていたように思います。 さらに、法律上、復興を担当する明確な組織が存在しないことから、縦割り行政において、統一的で継続性のある復興の実施が困難な面もあります。しかも、現行法制度上、国と地方との役割分担も明確ではないという問題もあり、復興について最も的確に判断可能と思われる被災地公共団体に財源を伴う十分な権限が保障されていません。 災害復興を円滑に進める上で、復興についてトータルに規定した基本的な法律の制定が求められます。 Q5 災害復興基本法に盛り込むべき内容 災害復興基本法はどのような内容とすべきですか。 A 「復興」の概念を明確化し、住民の生活再建が主眼とされなければなりません。 解 説 まず、法律の目的である「復興」の概念を明確にする必要がありますが、その際には、住民の生活の再建の為にどのようなまちづくりがよいかという観点、すなわち、住民の生活再建を主眼とした新たなまちづくりを考える必要があります。「復興」は「復旧」とは異なる概念であり、まちの原状回復が図られればよいというわけではありません。住民が生活を再建できなければ、真の意味での復興が図れたことにはなりません。 また、災害を受けた後の復興ですので、災害に強いまちづくりも求められます。 それらを含めた「復興」の概念を明確にした上で、住民の生活再建が真に図れるよう、統一的で継続性のある復興を可能とする組織作りや、国から地方への権限委譲を含めた役割分担を明確に規定する必要があると思います。 第2章 建物と境界に関する問題 1 土砂崩れと境界 Q6 土砂崩れにより隣地との境界が分からなくなった場合 地震により土砂崩れが発生し、隣地との境界が不明になってしまいました。境界をはっきりさせるためには、どのような手続がありますか。また、隣人から、測量費用として40万円を請求されたのですが、本当にそんなにかかるのでしょうか。 A 当事者間の話合いで解決できればそれが一番ですが、それでも解決がつかない場合の裁判手続としては、調停、訴訟があります。いずれの場合も、測量をすることになった場合は、測量費用の負担が問題となります。なお、簡易迅速な手続として、平成17年度にできた筆界特定制度が注目されています。 解 説 1 はじめに 「境界」には、@公法上の境界(登記された一筆の土地の範囲を示すもの)とA私法上の境界(所有権の範囲を示すもの)があります。@Aはおおむね一致しているものですが、概念上は全く別物です。@Aをよく区別していただく必要があります。 相談にいらっしゃる方は、Aの意味での境界についてお悩みだと思いますので、まずはAの意味での境界問題から説明します。 2 私法上の境界について Aの意味での境界について争いが生じた場合、私人の所有権の範囲については、私人間の合意で決定することが可能です。したがって、当事者間の話合いによって解決できればそれに越したことはありません。 しかし、残念ながら合意が成立しない場合は、簡易裁判所に対して「所有権の範囲を確認する」民事調停の申立てをすることになります。 調停を申し立てた場合、双方が、互いに自らの主張する境界線を根拠づける資料(いわゆる17条地図・公図等の地図や境界標の位置など)を提出し、調停委員を介して話し合うことになります。 なお、通常の場合、土地の現況を正確に把握するため、双方立ち会いの下で測量を行い、その測量図を提出することが必要となります。測量の費用は、対象となる土地の面積にもよりますが、数十万円になることも珍しくありません。測量費用の負担については、民法224条ただし書に「土地の広狭に応じて分担する」と規定されておりますが、一般的には折半もしくは測量を申し入れた方が全額負担する場合が多いようです。境界について争うか否か決断する際には、測量費用およびその負担が大きな問題となりますので、あらかじめよく検討しておくことが重要です。 残念ながら、調停段階で和解成立に至らず、さらに争いを続ける場合は、地方裁判所に訴訟提起することになります。この場合の訴訟は、所有権確認の訴えと、後述する境界確定の訴えを併せた形で提起することもあります。境界には2つの意味があるため後日の紛争の蒸し返しを防ぐ必要があること、境界確定訴訟には後述のような特長があることがその理由です。 3 公法上の境界について 次に、@の意味での境界について争いが生じた場合について、参考までに述べます。 @の意味での境界は、公の意味の境界ですから、私人間で勝手に取り決めることはできません。したがって、当事者間の話合いで解決できる問題ではありませんし、当事者間の話合いをベースにする調停を申し立てることもできません。@の意味での境界を決めるためには、境界確定訴訟を提起する必要があります。 境界確定訴訟は、通常の訴訟と異なり、裁判所は当事者の主張に拘束されずに境界線を定めることができ、また裁判所は原告の請求を棄却することができず必ず境界線を定めなければならない、といった特質があります。したがって、仮に、自らの主張する境界線を根拠づける資料を提出できなかった場合でも、(自らの主張が通るかどうかは別として)最終的には境界線が決まるというメリットがあります。そこで、Aの意味での境界について訴訟提起する場合、境界確定訴訟を併せて提起することがあるのです。 4 筆界特定制度について 最後に、@の意味の境界について、平成17年に不動産登記法の一部が改正されて「筆界特定制度」が誕生し、境界確定訴訟に比べて簡易迅速な解決が可能となりました。この制度は、土地家屋調査士等の専門家から選任される調査委員の調査や意見により、簡易迅速に境界を特定する手続です。ただ、この手続は、筆界(境界)を新設・形成するものではなく、また、結果に不服がある者は、従前どおり境界確定訴訟を提起することもできます。この制度は@の意味の境界に関するものではありますが、Aの意味での境界を決める参考資料になりますので、この制度の利用を検討するのも1つの方法だと思われます。 Q7 震災により周辺の土地にゆがみが生じた場合 地震の後、私の土地の周辺の地域全体にゆがみが生じてしまいました。正式な測量はまだですが、隣の土地との境界標がもともと私の土地だった位置に食い込んでおり、私の土地の面積が減っているような気がします。しかし、隣の土地の人は、そのまた隣の土地との境界標が自分の土地に食い込んできているから、お互い様だと言っています。本格的な話合いはこれからですが、話合いがうまくいかなかった場合、どのようになるのでしょうか。 A 通常の手続では、多額の測量費用を負担せざるを得ない場合があります。問題となっている土地の買取り等、様々な解決方法を検討する必要があるでしょう。 解 説 1 通常の手続による場合 震災の後に周辺の土地一帯の境界がずれることはしばしばみられる現象です。まずは隣の土地の所有者と話し合い、必要に応じて双方立会いのもとで測量し、双方納得の上で新しい境界線を決められればそれに超したことはありません。しかし、話合いがつかなければ、やむを得ず調停手続において話合いをすることになります。 ここで注意しなければならないのは、仮に、相談者が、地震による影響を受けていない境界標を基準とすることを希望する場合、その境界標がある場所までの土地の所有者全てを調停の相手方にしなければならず、場合によっては周辺の土地全てを測量しなければならなくなることです。周辺の土地の所有者全員が調停手続に協力的とは限りません。その場合、測量費用は、やむを得ず申立人負担となるでしょうから、相当の出費を覚悟せざるを得ないことになるでしょう。実際上は、ゆがんでいる土地上にあろうとも、今ある境界標を基準とせざるを得ない場合が多いと思われます。 2 買い取りによる解決方法 なお、地方においては、土地の値段が安いこともあり、境界標の現状の位置を尊重し、それまでの土地の面積を基準として、差の部分を買い取るという方法がしばしば取られます(もともとの境界線:@A。地震後の境界標の位置:BC。@AとBCの間の土地について、Aさんに買い取ってもらう。)。その地域の地価および対象となる土地の面積にもよりますが、買取価格が測量費用を下回ることもままありますので、検討する価値はあるでしょう。 2 建物、施設の倒壊 Q8 震災によりブロック塀が倒れ、隣家を壊した場合の責任 地震により、自己所有地内に建っていたブロック塀が倒れ、隣の家の壁が傷ついてしまいました。隣人に修理費を支払わなければならないのでしょうか A 一般的に、その地震が震度5以下であれば修理費を支払わなければならず、震度6以上であれば不可抗力によるものとして支払を免れられると考えられます。しかし、震度6以上の地震は増えており、今後の判例の動向が注目されます。 解 説 1 問題の所在 隣人の所有地内のブロック塀は土地の工作物にあたりますので、工作物責任(民717@)の問題となります。他に、震災時に特に問題となる土地の工作物として、建物の一部(屋根など)、崖の擁壁、石垣、造成地などが考えられます。新潟県中越地震では、隣の土地の庭に設置されていた灯油タンクが破損し、自己所有地に大量の灯油が流れ込み、農作物が駄目になってしまったという相談が寄せられましたが、これも工作物責任の問題と考えられます。 2 原則と例外 土地の工作物の設置または保存に「瑕疵」(その物がその種類において本来備えているべき(特に安全性に関する)性状・設備を欠いていること)があった場合、その瑕疵による損害の賠償責任は、一次的には占有者に、占有者に注意義務違反がない場合は所有者の責任となります(民717@)。所有者の責任は無過失責任とされており、「瑕疵」につき何の落ち度がなくとも責任を負わなければならないのが原則です。 それでは、予測不可能な大きな地震が原因の場合でも、所有者は常に損害賠償責任を負わなければならないのでしょうか。前述のとおり、土地工作物責任における瑕疵とは、安全性に関する性状・設備を欠いていることですから、たとえ地震により倒壊したとしても、工作物が通常要求される安全性を備えていた場合は、「不可抗力」に基づくものとして、損害賠償責任を免れる可能性があります。 3 裁判例 それでは、どのような場合に、損害賠償責任を免れるのでしょうか。 この問題についてよく引用されるのは、昭和53年6月に発生した宮城県沖地震に関する判例です(仙台地判昭56・5・8判時1007・30)。この判決は、地震によりブロック塀が倒壊して通行人が死亡した事故に関し、「地震そのものの規模に加えて当該建築物の建てられている地盤、地質の状況及び当該建築物の構造、施行方法、管理状況など」を総合し、「本件ブロック塀の安全性を考えるについても、仙台市近郊において過去に発生した地震のうちの最大級のものに耐えられるか否かを基準とすれば足りる」とし、「ブロック塀が、築造された当時、通常発生することが予測可能な震度5の地震動に耐えうる安全性を有していたか」を基準とした上で、「本件では、未だ右瑕疵があったとは認められない」として、ブロック塀の所有者の損害賠償責任を否定しました。 また、宮城県地震での宅地造成工事に関する事件において仙台地裁平成4年4月8日判決(判時1446号98頁)は、「従来発生した地震の回数頻度、規模、程度のほか時代ごとに法令上要求される地上、地下構造物の所在場所、地質、地形、強度などの諸要素を考慮し、一般常識的見地から少なくとも震度5程度の地震に対して安全性の有無を基準として判断するのが相当である」としています。 そして、ブロック塀の施行方法および構造に関する法的規制は、1970年12月2日に建築基準法施行令62条の8に新条項が設けられ、1971年1月1日から施行されたので、当該ブロック塀が1971年に築造されたものであれば、この規定の適用を受けます。そのため、本件ブロック塀が基礎、鉄筋の使用などにおいて基準に合致しているか調査する必要があります。 現在の目安としては、建築基準法施行令62条の8は、震度5までは壊れないブロック塀の基準を定めていますので、その他の法令などを遵守した工事をしていれば、震度6から7程度の地震により、崩壊・倒壊した場合には、隣家の住人に対する責任は免れると考えられます。 4 結 論 これらの判例や建築基準法施行令から、工作物責任の問題については、一般的に、震度5以下であれば損害賠償責任を免れず、震度6以上であれば不可抗力に基づくものとして責任を免れると考えられているようです(近畿弁護士会連合会編『地震に伴う法律問題Q&A』156頁(商事法務研究会、平7)、塩崎勤・澤野順彦編『裁判実務大系28震災関係訴訟法』488頁(青林書院、平10))。 しかし、阪神・淡路大震災以降平成18年2月末日現在まで、震度6弱以上の地震は、(新潟県中越地震を1回としても)少なくとも15回は発生しており(気象庁のHP http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/index.html)、日本において、もはや震度6以上の地震が予測不可能とはいえない状況ではないかと思われます。しかし、一方で、工作物の所有者に、震度6以上の地震に耐え得る安全性を備えた性状・設備を要求するのも酷であるという考えもあります。 設問に対しては、「震度5以下であれば修理費を支払わなければならないが、震度6以上であれば不可抗力として支払い義務を免れる」というのが一般的な回答ですが、今後の判例の動向が注目されます。 5 その他の「瑕疵」の判断要素について なお、震度5以下の場合の「瑕疵」があったことの判断要素ですが、「設置の瑕疵」につき、土地の擁壁、石垣などについては、宅地造成等規制法により指定された宅地造成工事規制区域(宅造規制3@)、砂防法による指定土地(砂防2)において法の定める強度を満たしていたかがポイントとなります。擁壁、石垣以外の工作物でも、建築基準法の基準を満たしていたかチェックする必要があるでしょう。 Q9 震災により倒れたブロック塀に手抜き工事の疑いがある場合 私の住んでいる地域の震度は6強でした。隣人のブロック塀が倒れて損害を被ったとしても、賠償請求は難しいということですが、隣人のブロック塀以外の塀などは倒れていないのに、納得いきません。仮に、隣人のブロック塀に手抜き工事がされていたとしても、結論は変わらないのでしょうか。 A 手抜き工事がなければブロック塀が倒れなかったという立証ができれば、賠償請求は可能と考えられます。ただし、その立証は大変困難だと思われます。 解 説 1 問題の所在 一般的に、工作物に「瑕疵」があり、地震が震度5以下であれば、損害賠償請求ができることになります(Q8参照)。 それでは、震度6〜7の場合は、全く損害賠償請求できないのでしょうか。 これについては、@仮に手抜き工事等の事情がなかったとしても、震度6〜7の地震で崩壊・倒壊したと考えられる場合と、A仮に手抜き工事等の事情がなければ、震度6〜7の地震でも崩壊・倒壊しなかったと考えられる場合に、分けて考えることができます。 2 手抜き工事がなくても震災で塀が倒壊した場合 この場合は、手抜き工事がなくても倒壊したというのですから、損害との因果関係が認められず、原則として損害賠償は不可能ということになるでしょう。 3 手抜き工事がなければ震災で塀が倒壊しなかった場合 この場合は、損害との因果関係が認められ、損害賠償請求が可能ということができます。しかし、その立証は相当困難ではないかと思われます。一般的には、工作物の構造等における瑕疵や、周辺の工作物の被害状況との差などを主張・立証することになるでしょう。工作物の判断基準としては、仙台地裁平成8年6月11日判決(判時1625号85頁)の以下の基準が参考となります(@その地域でそれまでに発生した地震の回数、頻度、震度などから見て、将来その地域で通常発生する可能性が経験的に予測される規模の地震に対する耐震性を具備していたか。A予測される規模を超える規模の地震に耐震性を具備する住宅の造成を目的とする地盤条件の調査および調査の結果に基づく工法についての基準または一般経験則がある場合にはそれに適合していたか。B当時の通常の技術水準に適合すれば、予測される規模を超える規模の地震に対する耐震性を具備する住宅を造成することが可能な場合には、その技術水準に適合していたか。)。また、どのような主張・立証をすべきかについては、以下の判例が参考になると思います。 (1) 損害賠償請求が認められた裁判例I まず、阪神・淡路大震災によりホテルが崩落し、崩落部分の下敷きとなって宿泊客が死亡した事案についての判例があります(神戸地判平10・6・16判タ1009・207)。 この判例は、「本件建物付近の兵庫県南部地震による震度は6であり、本件建物の近隣の古い木造の家屋も多数が倒壊を免れている」と事実認定し、「被災増床は、その増築手法の結果、地震の際にその接合部が破壊され易いという構造的な危険性を有することになっていたものであり、本件建物は、被災増床において、地震に耐えて崩落・倒壊を免れ、もって建物内を安全な移住空間として保つという通常要求される強度を保持していないことが明らかであり、その設置に瑕疵があるといわざるをえない」として、ホテルの所有者の損害賠償責任を認めました。 増築した際の接合部に構造的な危険性があったと認められたことと、近隣の古い木造の建物が倒壊を免れていることがポイントだと思われます。 (2) 損害賠償請求が認められた裁判例II また、賃貸マンションの一階部分が倒壊し、一階部分の賃借人が死亡した事故につき、所有者の工作物責任を認めた判例もあります(神戸地判平11・9・20判時1716・105)。 この判決は、「本件地震は行政の設計震度をも上回る揺れの地震であったのであるから、本件建物が仮に建築当時の設計震度による最低限の耐震性を有していたとしても、本件建物は本件地震により倒壊していたと推認することができるし、逆に、本件地震が建築当時想定されていた水平震度程度の揺れの地震であったとしても、本件建物は倒壊していたと推認することができる」とした上で、「しかし、本件建物は、結局は本件地震により倒壊する運命にあったとしても、仮に建築当時の基準により通常有すべき安全性を備えていたとすれば、その倒壊の状況は、壁の倒れる順序・方向、建物倒壊までの時間等の点で本件の実際の倒壊状況と同様であったとまで推測することはできず、実際の施工の不備の点を考慮すると、むしろ大いに異なるものとなっていたと考えるのが自然であって、本件賃借人らの死傷の原因となった、一階部分が完全に押しつぶされる形での倒壊には至らなかった可能性もあり、現に本件建物倒壊によっても本件地震の際に本件建物一階に居た者全員が死亡したわけではないことを併せ考えると、本件賃借人らの死傷は、本件建物という不可抗力によるものとはいえず、本件建物自体の設置の瑕疵と想定外の揺れの本件地震とが、競合してその原因となっているものと認めるのが相当である」と判示し、所有者の工作物責任を認めました。 その上で、損害賠償額の算定にあたり、「ただ、本件のように建物の設置の瑕疵と想定外の自然力とが競合して損害発生の原因となっている場合には、損害の公平な分担という損害賠償制度の趣旨からすれば、損害賠償額の算定に当たって、右自然力の損害発生への寄与度を割合的に斟酌するのが相当である」とし、地震による損害発生への寄与度を5割と認定し、所有者に5割の損害賠償義務を認めました。 4 結 論 ご質問については、手抜き工事等がなければ震度6の地震でも倒れなかったということにつき立証に成功すれば、損害賠償請求が可能といえるでしょう。ただ、ブロック塀の構造についての知識や、周辺の被害状況の調査が必要になりますので、その立証は相当困難だということに注意すべきでしょう。 Q10 震災のため倒れた塀を新たに建て直す場合 地震のために、隣の土地との境界の塀が倒壊してしまいました。私としては、塀を建て直したいと思っているのですが、費用の点で隣人ともめてしまい、困っています。塀の設置費用は、どちらがどのように負担しなければならないのでしょうか。 また、隣の土地と高低差があり、塀を建てなければ自己所有地に土砂が流れ込んでくる可能性がある場合はどうでしょうか。 A 塀の建直しについては、原則として双方共に負担することになり、負担割合は2分の1ずつとなります。塀を建てなければ自己所有地に土砂が流れ込んでくる可能性がある場合は、原則として隣地の所有者に請求できますが、一定の割合で負担を求められる可能性があります。 解 説 1 隣の土地との境界の塀が倒壊したとき (1) 土地所有者同士(境界標)の場合 塀を自己所有地内に建てる場合であれば、隣人に気兼ねすることなく塀の建直しができますが、その場合の費用は自己負担となります。問題は隣地にかかっている場合です。 境界上にある塀がいわゆる境界標である場合、その設置費用については、民法上規定があります。 土地の境界の境界標の設置につき、まず、民法223条は「共同の費用で、境界標を設けることができる」と定め、境界標の費用につき、同法224条は「相隣者が等しい割合で負担する」と定めています。 この規定からすれば、費用は折半ということになるでしょう。まずは隣人とどのような塀を建てるか話し合った上で、費用についても折半をベースに交渉してください。なお、話合いで解決ができないときは、民事調停を申し立てるという方法がありますが、調停の席でも負担割合は平等ということになると考えられます。 (2) 建物所有者同士の場合 設問とは異なりますが、建物所有者同士の関係でも、建物と建物の間に空き地がある場合の囲障の設置につき、民法225条1項は「(建物の)各所有者は、他の所有者と共同の費用で、その境界に囲障を設けることができる」と規定し、負担割合について民法226条は「相隣者が等しい割合で負担する」と定めていますので、同様の結論となります。参考までに、囲障の品質については、民法225条2項において、当事者間に協議が調わない場合につき、「板塀又は竹垣その他これらに類する材料のものであって、かつ高さ二メートルのものでなければならない」との定めがありますが、これより品質のよい囲障を希望する場合、希望する者が増加額を負担すれば設置できることも定められています(民227)。 2 隣の土地と高低差があり、境界の塀を設置する必要があるとき (1) 原 則 いわゆる妨害予防請求権の問題です(1との違いは、塀を建てなければ土砂が流れ込んでくる可能性がある点です)。これについては、これまで、請求された側が費用を負担すべきと考えられてきました。 (2) 裁判例 しかし、高低差のある土地の場合で、請求者である低地所有者にも一定の負担を求めた判例があります(横浜地判昭61・2・21判時1202・97)。これは、4メートルの高低差のある低地所有者から高地所有者に対して、妨害予防請求としてなされた擁壁の改修請求につき、これまでの判例に照らせば全額高地所有者の負担になると思われるところ、「被告所有土地の崩落を予防することは原告所有土地にとっても等しく利益になり、その予防工事に莫大な費用を要することも明らかであるから、右予防工事については土地相隣関係調整の見地から……民法223条、226条、229条、232条等の規定を類推適用して……共同の費用をもってこれを設置すべきものと解するのが相当である」とし、さらに、高地所有者の方が改修の利益が大きいことから、被告と原告の負担割合を2:1とした上で、原告の改修請求を認めたものです。妨害予防請求権の問題のみならず、高低差のある土地間の境界標の費用負担割合の問題においても、参考にすべき判例といえるでしょう。 3 倒壊建物の解体 Q11 震災後の解体工事が遅れているとき 今回の地震で自宅が大規模半壊となってしまいました。解体業者に解体を依頼したところ、総額100万円、前金80万円と言われ、先に前金を払ってしまいました。しかし、その後、いくら催促しても、解体してくれません。これからどうしたらよいでしょうか。 A 契約を解除して前金を取り戻すか、本人に代わり第三者が早く解体するよう交渉する、という解決方法があります。 解 説 1 解決方法の選択 この場合の解決方法としては、@契約を解除して払った前金を取り返す、A早く解体するよう業者に督促する、という2つの方法があります。どちらの方向で行くかは、本人とよく話し合って決めてください。 なお、修繕や新築工事の場合は、「このような業者に任せられないので契約を解除したい」と希望する方が圧倒的です。しかし、解体工事の場合は、@行政機関からの援助金が見込まれること、A解体の場合は業者の腕はあまり関係ないと思われがちなこと、B今から他の業者に頼んでも忙しいと断られてしまうことなどから、費用が相場より高額でない場合は、早期の解体を希望される方も相当数いらっしゃいます。 2 契約解除をする場合 契約解除については、まずは契約書等において工期についての定めがあったかがポイントとなります。工期についての定めがあり、かつ既に予定工事期間を過ぎている場合は、債務不履行解除をし(民541)、前金の返還を請求することになります(民545)。 なお、特に震災直後の混乱時期においては、業者からの書面は見積書のみということも珍しくありません。それでも、口頭である程度の工期の約束があり、それを過ぎていれば、債務不履行解除は可能でしょう。 ここで注意していただきたいのは、震災直後は、特に県外から来た悪徳業者が多く見られることです。悪徳業者は、株式会社の形式をとっていても実態は個人業者ということも珍しくなく、儲けるだけ儲けた後、県外に引き揚げる可能性すらあります。なるべく早めに、業者の実態および差押え可能な資産の有無を把握すべきです。 3 契約解除せず、履行するよう督促する場合 本人が解除ではなく早期の解体を希望する場合は、業者に督促することになります。また、相談者が契約解除の方法を希望していても、業者にめぼしい資産が既にない場合、早期解体の方法をとらざるを得なくなる場合もあります。 この場合も、形の上では、契約を解除して前金の返還請求するという構えで交渉するのが効果的です。 本人が交渉に疲れてたり、本人での交渉では限界があると思われる場合は、弁護士に依頼するのもよいでしょう。また、近くの消費生活センターに相談すると、同じような被害に遭っている人が見つかる場合もあります。地域にもよりますが、消費生活センターの相談員が、交渉をしてくれる場合もあります。 Q12 震災後の修繕工事に不満がある場合 地震により建物の一部が損傷したため、業者に修繕を依頼しましたが、イメージしていたのとだいぶ仕上がりが違うようです。また、他の業者に比べ高額な料金を請求されました。全額支払わなければならないのでしょうか。 A 交渉次第ですが、契約が成立している以上、工事のやり直しや費用の減額は原則として困難です。契約する前の打合せや確認が重要です。ただし、営業所外で契約した場合は、クーリング・オフの権利を行使できる場合があります。 解 説 1 原 則 (1) 震災後の状況 震災直後から少なくとも数か月の間は、解体・修繕工事の需要が異常に高まり、完全な売り手(業者)市場となります。このような状況では、業者側が多忙を極めるため、十分な打合せもないまま工事が行われることが珍しくありません。契約書はおろか、簡単な見積書すら発行されない場合も見受けられます。そのため、注文者側から、「イメージと違う」「高い」などといった苦情が出てくることがよくあります。 このような場合、残念ながら、自らの意思で業者と契約を結んで工事にゴーサインを出した以上、仕上がり等の細かな点や費用について、後から主張することは非常に困難です。 (2) 仕上がりについて もし、細かな工事予定表等の書面が発行されていた場合であれば、その書面を根拠に、当初の予定通りの工事をするよう主張することはもちろん可能です。しかし、簡単な見積書しかない状況だとすれば(震災後はこのような状況が多いと思われます。)、法的観点からすればやはり困難と言わざるを得ません。 (3) 金額について 金額については、その金額で契約した以上、相場より多少高額であったとしても、支払わなければならないのが原則です(契約自由の原則)。ただ、交渉により多少安くなることはありますので、あきらめずに交渉してみてください。 また、相場よりあまりにも高額な場合は、債務不存在確認(○○円以上支払う義務はないと主張するものです。)の調停を申し立て、それでも解決できない場合は、債務不存在確認の訴訟を提起するという方法があります。周辺の業者と比較して、多少高額な程度か、それとも明らかに高額であるのか、確認した方がよいでしょう。 なお、特定商取引法による取消し(特定商取引9の2・6@六・七。ただし、訪問販売に限ります。)、消費者契約法による取消し(消費契約4@一)、詐欺による取消し(民96)、錯誤無効(民95)、公序良俗違反による無効(民90)を検討する余地も考えられますが、これについてはQ107、Q108を参照してください。 (4) まとめ いずれにせよ、契約を結ぶ前に、工事内容や金額について十分確認することが肝心です。もし急いで工事をする必要がないのであれば、震災後、ある程度期間をおき、周囲の人々に「いくらで工事できたか」よく確認してから、契約することをお勧めします。 2 営業所外で契約を結んだ場合 なお、修繕工事は特定商取引法上の指定役務にあたりますので(特定商取引に関する法律施行令別表第3第14号「家屋、門若しくは塀又は次に掲げる物品の修繕又は改良」にあたると考えられます。)、修繕工事につき業者の「営業所外で」契約を結んだ場合は、法定書面受領日から8日間以内であれば、クーリング・オフの権利を行使することができる可能性があります。また、書面に不備があった場合は、法定書面受領日後8日間を過ぎた場合でも、クーリング・オフの権利を行使できる場合があります(特定商取引9@)。相談者が消費者である場合は、クーリング・オフできないか、検討する必要があるでしょう。 Q13 震災前からの工事が震災の影響を受けた場合 地震が発生した時期、ちょうど自宅の周りの塀の工事中で、地震により塀の一部が壊れてしまいました。最終的には、業者に全て建て直してもらいましたが、建て直した分の費用も、私が負担しなければならないのでしょうか。 地震により、塀が全て倒壊して建直しが不可能となった場合はどうなるのでしょうか。 A 工事中の塀が地震で倒壊した場合は、業者が負担するのが原則です。地震で塀が倒壊し、建直し不可能なときは、業者に建直しを請求できない反面、費用の負担も免れるのが原則です。ただし、いずれの場合も、契約書の規定が優先しますので、契約書を確認することが重要です。 解 説 1 工事中の塀が地震により倒壊したときの建直しの費用 (1) 民法上の原則 塀の建築工事の契約は請負契約にあたりますので、請負人たる業者は、あくまで塀を完成して引き渡す義務を負います(民632)。したがって、地震という不可抗力のために余分に建築費用がかかった場合でも、その費用は業者側の負担となり、注文者が負担する必要はないことになります。 (2) 契約書の規定が優先する しかし、いかなる場合でも常に業者側の負担となると、業者側の負担が過大になります。 そのためか、一般的な工事請負契約約款においては、不可抗力による損害につき、例えば「注文者及び請負人が協議して重大なものと認め、かつ、請負人が善良な管理者の注意をしたと認められるものは、注文者がこれを負担する」などといった規定が定められている場合があります。 業者と契約書を取り交わしている場合は、契約書の規定が優先しますので、契約書の内容をよく確認してみてください。 なお、この場合でも、業者と交渉する余地は十分あると考えられますので、粘り強く交渉してみることが重要です。 (3) 既に費用負担を承諾した場合 相談に来られた段階で、既に業者の側から建直し分の追加費用の負担を求められ、これを承諾してしまっている場合があります。この場合は、工事費用の変更につき双方合意したことになりますので、負担を逃れるのは困難だと考えられます。 2 地震により塀が倒壊し、建直しが不可能なとき 地震により塀の建直しが不可能となった場合は、請負人は仕事を完成させる義務を免れます。一方、報酬請求権については、危険負担の債務者主義の原則が適用されますので(民536@)、出来高部分も含めて請求できなくなるのが原則です。 ただし、この場合も、契約書の規定が優先されますので、契約書の内容をよく確認してみることが重要です。 4 マンションの修理と建替え Q14 マンションが被災した場合の対処 地震でマンションが壊れました。修理あるいは建替えの必要がありますが、このような場合、法律上どうしたらよいのでしょうか。 A マンションの区分所有者の決議が必要になりますが、被災の程度や建替えをするかどうかによって、決議の要件などが違ってきます。 解 説 1 被災の程度の区分 マンションは、専有部分と共用部分で構成されていますが、専有部分の修理については、当該専有部分を所有する区分所有者の費用と責任で行うのが原則です。 しかし、多くの場合、マンションの建物が損傷すれば、共用部分が損傷することになります。そこで、以下では、特に断らない限り、マンションの被災、損傷とは、共用部分の損傷のことをいいます。 さて、地震でマンションが壊れたといっても、その被災の程度はケースごとに違います。建物の区分所有等に関する法律(以下、「区分所有法」といいます。)上、マンションの被災の程度に応じて、修復の手続、その費用の負担者、修復に反対した者の取扱いなどに、違いがあります。 まず、被災の程度ですが、これは、@損壊、A小規模滅失、B大規模滅失、C全部滅失に区分されます。 2 被災の程度と修復等の要件 @の「損壊」とは、「滅失」に至らない程度の損傷のことをいいます。 「損壊」の修繕は、共用部分の管理の問題であり、区分所有者の総会で普通決議により行うことができるのが原則です。 これに対して、A、B、Cの「滅失」とは、「建物の全部または一部が確定的に効用を喪失している状態」をいいます。建物の空間が挫滅しているのが典型的な状態ですが、必ずしも物理的な消滅のみを意味するのではなく、社会通念上、建物の使用上の効用が喪失している場合をいう、とされています。 Aの「小規模滅失」とは、建物の価格の2分の1以下の滅失の場合です。この場合は、基本的には建物の区分所有者の多数決によって、復旧することができます(「復旧」とは滅失部分をもとの状態に戻すことですが、建物全体をいったん取り壊す場合は「建替え」であり、「復旧」ではありません。)。費用は、区分所有者全員が共用部分の所有割合に応じて負担します(区分所有61@〜B)。 Bの「大規模滅失」とは、建物の価格の2分の1を超える滅失の場合です。この場合は、4分の3以上の賛成がないと復旧工事ができません。決議に賛成しなかった区分所有者には、所有する区分所有権を賛成者に買い取らせて区分所有関係から離脱することが認められています(区分所有61D以下)。 なお、上記@、A、Bの場合を問わず、被災したマンションを取り壊して、マンションを建て替えることも可能です。ただし、決議要件やその手続などが法律上、厳格に要求されています(大規模滅失と建替えについては、平成14年に区分所有法の重要な法改正やマンションの建替えの円滑化等に関する法律が公布されています。)。 Cの「全部滅失」とは、1棟のマンション全体が建物といえない状態になったことをいいます。この場合は、民法の共有の原則に従い、敷地共有者全員の同意がないと建物の再建ができません(民251)。しかし、阪神・淡路大震災直後に被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法が制定され、政令が指定する大規模な災害の場合には(マンション建替2@)、敷地共有者等の議決権の5分の4以上の賛成で、建物の再建ができることになりました(マンション建替3@)。 Q15 被災マンションの修繕、小規模滅失の復旧 滅失に至らない場合の修繕と小規模滅失の場合の復旧について説明してください。 A いずれも総会の普通決議で行うことができます。ただし、小規模滅失の場合には、区分所有者が単独で復旧を行うこともできます。 解 説 1 損壊の場合 滅失に至らない損傷(これを「損壊」といいます。)が共用部分に生じた場合、この修繕は共用部分の管理の問題になります。これは管理組合による一般管理事項として、総会の普通決議によって行うことになります(区分所有18)。そして、修繕の費用は、共用部分の割合に従って、全ての区分所有者が負担することになります(区分所有19)。共用部分の割合は、専有部分の床面積の割合で決まります(区分所有14@)。 なお、普通決議は、区分所有者の頭数と議決権の各過半数で決します(区分所有39)。「頭数」は、1人の区分所有者が複数の専有部分を所有していたとしても、1人として数えます(1つの専有部分が共有の場合には、共有者が選んだ1人が決議に参加します)。また、「議決権」は、建物の専有部分の床面積の割合で決まります(区分所有38・14)。「過半数」とは、出席者の過半数ではなく、出席していない者も含めて全ての区分所有者の頭数と議決権の過半数を意味します。 「損壊」は、法律上、大規模、小規模の区別はありません。損壊が建物の広範囲に及び、修繕費用が多額になる場合でも、総会の普通決議で修繕を決定することになります。 2 小規模滅失の場合 「小規模滅失」とは、建物の価格の2分の1以下が滅失した場合です(区分所有61@。「滅失」の定義はQ14参照)。「建物の価格の2分の1」かどうかは、被災前の建物の価格と被災して滅失した建物の価格の比較で決まります。すなわち、被災後の建物の価格が、被災前の建物価格の2分の1以上であれば「小規模滅失」、2分の1未満なら「大規模滅失」ということになります。なお、建物の価格は、建物全体の価格であり、専有部分を含む価格です。 ただし、具体的なケースでは「小規模滅失」と「大規模滅失」の区別が困難なことが多く、阪神・淡路大震災でも問題になりました。その後、日本不動産鑑定士協会が簡易の判定マニュアルを作成しました。これは本鑑定によらないで、大規模滅失か小規模滅失かを判定しようというものです。 いずれにしても、小規模滅失ならば、集会の普通決議によって復旧工事を行うことができます(区分所有61B)。 したがって、1つの敷地に1棟のマンションが建てられている場合(これを「単棟型」といいます)は、「損傷」も「小規模滅失」も集会の普通決議で修繕もしくは復旧ができることになり、違いはありません。 しかし、1つの団地に複数棟のマンションが建っている団地型のマンションの場合には、「損傷」か「小規模滅失」かで違いが起こります(団地型の問題は、Q21でまとめて述べます。)。 小規模滅失の場合も、復旧工事の費用は、各区分所有者が共用部分の割合に応じて負担することになります。 このため、例えば、東西に長い1棟のマンションの東端が滅失したのに西側は無傷で何の支障もない場合でも、全ての区分所有者が上記の基準で費用を負担することになります。 なお、小規模滅失の場合には、集会で復旧もしくは建替えの決議がされるまでは、各区分所有者が単独で復旧工事をすることができます(区分所有61@)。そして、工事をした区分所有者は、その工事代金を他の区分所有者に、その共用部分の割合に従って請求することができます(区分所有61A)。 3 修復・復旧と規約 修復も、小規模滅失の復旧も、議決要件や費用負担について、規約で法律と異なる定めをすることができます。その場合には、規約の定めに従うことになります。 Q16 大規模滅失とその復旧 大規模滅失の場合の復旧について説明してください。 A 大規模滅失の復旧には特別多数決議を要します。決議に賛成しなかった人には買取請求権が認められています。 解 説 1 大規模滅失とは 大規模滅失とは、建物の価格の2分の1を超えて滅失した場合をいいます(区分所有61D)。 このような場合、マンションの復旧に多大な費用がかかるため、費用の負担ができない区分所有者が出る可能性があります。また、復旧ではなく、被災したマンションを取り壊して新たに建て直すことを望む区分所有者がいる可能性もあります。これら復旧に賛成しない区分所有者の意思も尊重されるべきだと考えられます。 このため、区分所有法は、大規模滅失の場合には、マンションの復旧をするかどうかを特別多数決で決めることにしました(区分所有61D)。また、復旧に反対している区分所有者に対して、自己の区分所有権を他の区分所有者に買い取るように求める「買取請求権」を認めました(区分所有61F)。 なお、大規模滅失の場合には、規約で法律と異なる定めをすることはできません。 2 復旧の決議 大規模滅失の復旧は、集会で、区分所有者および議決権の、それぞれ4分の3以上の多数で復旧の決議をしなければなりません(区分所有61D)。 「区分所有者の4分の3」とは、1棟のマンションの専有部分を所有する区分所有者の頭数の4分の3のことをいいます。 そして、「議決権」とは、建物に対する専有部分の床面積の割合で決まります(区分所有38・14)。 区分所有者の「頭数の4分の3以上」の賛成と「議決権の4分の3以上」の賛成、の2つの要件を満たしたときに、決議は成立します。集会の出席者の4分の3以上ではなく、全ての区分所有者の頭数と議決権の4分の3以上の賛成が必要です。 3 買取請求権 大規模滅失の復旧は、多額の費用がかかるため、決議に賛成しなかった区分所有者に復旧の費用の分担を強制するのは妥当でないと考えられます。 そのため、決議に賛成しなかった区分所有者(集会に参加して賛成しなかった者の他、集会に欠席した者も含みます。)は、復旧の決議のあった日から2週間を経過した後で、決議に賛成した区分所有者に対して、自分の所有している専有部分と敷地利用権を、時価で買い取るように請求できます(区分所有61F)。 請求の相手方は、請求者が任意に決めることができ、賛成者の全部でも一部でも1人でも構いません。 これに対して、決議賛成者は、決議の日から2週間以内に、全員で合意して、買取請求を受ける「買取指定者」を決めることができます。この「買取指定者」には区分所有者以外の者(例えばデベロッパーなど)を指定することもできます。そして、「買取指定者」が、決議から2週間以内に指定があったことを通知すると、決議に賛成しなかった者は、「買取指定者」以外に買取請求をすることができなくなります(区分所有61G)。 買取請求は、形成権とされています。したがって、買取請求をすると、請求をした者とその相手方との間に売買契約が成立したことになります。 代金額は「時価」とされ、客観的に算定されるべきものです。しかし、客観的に定めると言っても、外形的な標準のようなものはなく、裁判で決着をつけるにしても、鑑定などによらざるを得ません。 ただし、買取請求をする際には、代金額を特定する必要はなく、「時価で売買を請求する」という形の意思表示をすれば足ります。 Q17 被災マンションの建替え決議の手続 単棟型のマンションが被災したため、建替えをしなければならないと考えています。どのような手続が必要ですか。 A 被災の程度にかかわらず特別多数による賛成があれば建替えは可能ですが、決議事項、決議に至るまでの手続について細かい法律の定めがあります。 解 説 1 建替えに関する法律の改正 建替えとは、いったんマンションを取り壊し、敷地上に新たにマンションを建てることをいいます。 平成14年の区分所有法の改正前までは、建替え決議の要件として、被災や老朽化の程度が要件になっていました。しかし、要件に該当するかどうか明確でなく、この点が問題になって、紛争が長期化することが指摘されました。 このため、平成14年の区分所有法の改正では、この要件が削除されました。したがって、現在では、被災の程度に関係なく、区分所有者および議決権の各5分の4以上の多数決があれば、建替えができることになりました(区分所有62@)。 2 建替え決議の要件 建替えの場合には、特別多数の決議の他、決議事項や決議に至る手続についても、法律で厳格に定められています。 まず、決議事項、つまり、決議の内容として、 @ 新たに建築する建物(再建建物)の設計の概要 A 建物の取壊しの費用と新たに建物を建築するための費用の概算額 B 取壊しおよび再建の費用の分担を決める方法 C 再建建物の専有部分を誰にどのように帰属させるかを決める方法 について賛成を得る必要があります(区分所有62A)。 また、決議に至るまでの手続ですが、まず、決議の2か月以上前に、議案の要綱、建替えを必要とする理由、建替えをしないで復旧等をする場合の費用の見込額などを記載した招集通知を各区分所有者に送付しなければなりません(記載事項については区分所有62D)。 そして、集会の1か月前までに説明会を開催しなければなりません(区分所有62E)。 このような手続を経た上で、先に述べたような5分の4以上の特別多数決議があった場合に、建替えの決議が成立します。 3 再建計画の策定 上記のとおり、議案の作成段階で工事の概要や費用など、建替え工事の計画が具体的になっている必要があります。 これらの再建計画の策定の手順ですが、通常は、まず、集会で区分所有者の中から専門委員を選任します。そして、同人らと理事会が協力し、デベロッパーやコンサルタントに依頼して、具体的な建替え計画を作ることになります。この段階で相当な費用がかかりますが規約の定めがあれば、修繕積立金でこれらの事項を行うことができます(マンション管理標準規約ではこうした定めがあります)。 このように、集会の決議前に十分な計画が練られ、区分所有者に対してその説明が行われ、事前に事実上、多数の同意を得た上で、その最終確認と法律の要件を満たすために集会決議が行われるのが実情です。 4 決議ができない場合の措置 マンションの被災が著しい場合、建替えをするか、復旧にとどめるのか、深刻な対立が起こることがあります。ときには双方譲らず、いずれも特別多数の賛同が得られず、復旧も建替えもできないという事態になることもあり得ます。こうした事態を考慮して、大規模滅失の日から6か月以内に、復旧決議も建替え決議もされないときは、各区分所有者は、他の区分所有者に対し、区分所有権・敷地利用権を時価で買い取るよう請求できる(区分所有61○12)という規定が設けられています。なお、この6か月の期間ですが、政令で指定する大災害によって大規模滅失が起こった場合には、政令指定の日から1年に延長されます(被災マンション5)。 Q18 マンションの建替え不参加者に対する買取請求 マンションの建替えの決議が成立した場合、決議に賛成しなかった人は法律上どのように扱われますか。 A マンションの建替えに賛成した区分所有者等によって区分所有権等の売渡請求が行われます。 解 説 1 売渡請求の意義 マンションの建替え決議自体は、先に述べたように特別多数決議で行うことになりますが、その後の手続、つまり、被災マンションの取壊しや新たなマンションの建設をするにあたり、区分所有者の中に反対者がいたのでは手続を進めることができません。 そこで、区分所有法は、建替えに賛成した区分所有者などが賛成しなかった区分所有者から区分所有権を買い取り、最終的には、全ての権利を建替えに賛成する者だけに集中させることにしました。 2 建替え参加者の確定 まず、マンションの建替え決議が成立すると、集会を招集した人は、建替え決議に賛成しなかった区分所有者(集会に出席しなかったり、集会で反対した区分所有者)に対して、建替えに参加するかどうか書面で催告します(区分所有63@)。そして、この催告を受けた者は、2か月以内に回答をしなければならず、回答しない場合は建替えに参加しないものとみなされます(区分所有63AB)。 集会で反対した者も、催告に対し建替えに参加する旨の回答をして、建替えに参加することができます。 これに対して、集会で建替えに賛成した者や、いったん参加の回答をした者は、後でこれを撤回することはできません。 しかし、このことが後で問題になることがあります。例えば、建替えに賛成していた一部の区分所有者が、建替えの実行の段階(例えば、建替えのために被災したマンションをデベロッパーなどに引渡しをする段階)で建替えに協力しないため、建替えが進められなくなったという事例が阪神・淡路大震災後の復興で報告されています。この点、マンションの建替えの円滑化等に関する法律(以下、「マンション建替法」といいます。)では、建替え決議後に翻意する区分所有者が出てきた場合でも対処できるようになっています。 3 売渡請求の行使 こうして、建替え参加者(決議で賛成した者と後から参加の回答をした者)と不参加者が確定すると、参加者から不参加者に対して、区分所有権と敷地利用権の売渡しを請求することができます(区分所有63C)。 その際、参加者全員の合意により、「買受指定者」を定めることができます(区分所有63C)。この買受指定者は、区分所有者以外の第三者(例えばデベロッパーなど)でもよく、これらの者が、不参加者に対して、区分所有権・敷地利用権を売り渡すように請求することになります。特に建替えの実行にはデベロッパーなどの関与が必要な場合が多いのですが、この規定はデベロッパーを参加者に組み込む手段として利用することができます。 売渡請求は、催告回答期間経過の翌日から2か月以内に行使しなければなりません(区分所有63C)。売渡請求が行使されると、請求した者とその相手方との間に売買契約が成立したことになり、当該区分所有権等もその時に移転したことになります。 なお、売買の代金額は「時価」であり、相手方と協議が整わなければ最終的には、裁判所が鑑定などに基づいて判断することになります。 しかし、売渡請求をする時点では、代金額を特定する必要はなく、「時価で売買を請求する」という形で足ります。 Q19 マンション建替えの実行手続 マンションの建替えの決議をしましたが、建替えの手続はどのように行うのでしょうか。 A 従来、自主再建方式や全部譲渡方式という手法でマンションの建替えが行われていましたが、平成14年にマンション建替法ができ、この法律の手続を使うこともできるようになりました。 解 説 1 自主再建方式と全部譲渡方式 区分所有法には、建替え決議の手続や要件に関する規定はありますが、決議後の建替え実行手続に関する規定はありません。 平成14年にマンションの建替え手続に関して、マンションの建替えの円滑化等に関する法律(以下、「マンション建替法」といいます。)が公布・施行されましたが、それ以前には、決議後の建替えの実行方法としては、@自主再建方式とA全部譲渡方式と呼ばれる方式がありました。 自主再建方式とは、建替え参加者(決議に賛成した区分所有者など)が主体となって、建設会社等と契約し、被災マンションを取り壊し、新しいマンションを建てるという方法です。 この場合、コンサルタント会社と契約して指導を受けながら、事業を遂行していくことになります。なお、建替え参加者は団体として建設会社などと契約を結ぶことになりますが、法人格がないので、参加者が個別に契約を結ぶ必要があります。 これに対して、全部譲渡方式とは、デベロッパー(開発・分譲業者)が、建替え参加者の持っている区分所有権、敷地所有権をいったん全て譲り受け、建物の取壊しと新たにマンションを建設し、改めて建替え参加者に新築マンションを分譲するというものです。建替え参加者とデベロッパーとの間には、新築マンションの分譲を受けることを前提にマンションの区分所有権、敷地持分権の売買契約を結んだり、あるいは等価交換契約を結ぶことになります。 阪神・淡路大震災後の復興においては、全部譲渡方式によるマンションの建替え・再建が多く行われました。その際の問題点などを踏まえ、平成14年に、マンション建替法が公布、施行されました。この法律については、権利変換などのメリットがあるものの、手続が複雑との指摘もあります。この法律を使わないで、従来の手法で建替え手続を行うことも可能です。 2 マンション建替法による建替え手続 マンション建替法による建替え手続の概要を説明します。 まず、建替え決議後に、法人としての「マンション建替組合」を設立します。そのためには、建替え合意者のうち5人以上が発起人となり、定款、事業計画を定め、建替え合意者の議決権の4分の3以上の同意を得た上で、都道府県知事に、組合設立の認可を申請します。そして、知事が組合設立の認可をすると、組合に法人格が付与されます(マンション建替9・6・13)。 なお、組合設立手続にあたり、デベロッパーなどと参加組合員契約を締結して、デベロッパーを参加組合員として、建替え手続に参加させることができます(マンション建替17)。 マンション建替法によるマンションの建替えでは、都市再開発のように、権利変換が行われます。「権利変換計画」案は建替組合が作成し、組合員の議決権および持分割合の5分の4以上の賛成を得た上で、都道府県知事の認可を申請します(マンション建替30B・27七・57)。この権利変換計画に賛成しなかった組合員に対して、組合は、区分所有権・敷地利用権を時価で売り渡すように請求することができます(マンション建替64@)。 知事によって権利変換計画が認可されると、組合はその旨、公告し、また関係権利者に通知をします(マンション建替68@)。そして、権利変換期日に権利変換が行われます。権利変換を希望しない権利者に対しては補償金の支払をします(マンション建替75)。 これらの手続を経た後で、組合は、法人としての組合の名で、建設会社にマンション建設を発注し、マンションが完成したら、その引渡しを受けて、権利変換計画に基づいて清算を行います。 なお、マンション建替法では、上記の組合による再建の他、区分所有者の全員の同意があれば、特定の区分所有者または第三者が、建替え事業の主体となり、知事の認可を得た上で、権利変換を伴うマンション建替え事業を行うことも可能です(マンション建替45)。法律はこれを「個人施行者」と呼んでいます。 Q20 マンションの建替えと抵当権などの取扱い マンションの建替えの決議をしましたが、建替えの実行にあたり、専有部分の抵当権者や賃借人はどうなりますか。 A 抵当権者や賃借人の同意がないと建物の取壊しなどはできません。ただし、マンション建替法による建替えの場合には権利変換により抵当権・借家権を新たに建てたマンションに移行することができます。 解 説 1 抵当権者等の地位 建替えの決議は、建物の区分所有者による集会の決議で成立します。この決議に基づいて、被災したマンションを取り壊して、更地にし、その敷地に新しいマンションを建てることになります。 しかし、マンションの専有部分には、抵当権が設定されていたり、第三者が賃借人として居住していることがまれではありません。 これらの抵当権者や賃借人は、建替え決議に参加することはできません。しかし、これらの抵当権者や賃借人は、建替え決議によって権利が消滅することもありません(当該専有部分が完全に滅失した場合は、権利は消滅しますが、ここでは権利が残っている場合を前提とします。)。 したがって、建替え決議に基づいて、被災マンションを建て替えようとしても、これら抵当権者や賃借人の同意が得られなければ、被災マンションの取壊しすらできません。 本来は、建替え決議後にそれぞれの区分占有者の責任で、抵当権設定登記を抹消したり、賃借人を退去させることになります。しかし、特に抵当権者の場合、原則として、被担保債権が一括弁済されないと登記の抹消には応じません。 2 阪神・淡路大震災の際の処置 阪神・淡路大震災の際には、建替えをするにあたり、当該区分所有者が被担保債権の一括弁済ができず、抵当権者が登記の抹消に応じないことが非常に問題になりました。このため、デベロッパーが敷地共有権の買取代金を抵当権者に支払って抵当権設定登記を抹消するということも行われました。 しかし、この方法は、デベロッパーの立場からすると工事着工前に多額の支払をしなければならず、大きな負担になります。このため、こうした措置をとってくれるデベロッパーは限定されることになります。また、自主再建方式では、このような手法はできません。 3 マンション建替法と抵当権者等 こうした経験を踏まえて、マンション建替法では都市再開発の手法を取り入れ、権利変換によって抵当権を処理することにしました。 すなわち、権利変換の手続によって、被災マンションに設定されていた抵当権は、新マンションの区分所有権に移行することになりました。 無論、権利変換が行われるのは、あくまでもマンション建替法の適用を受けた場合ですから、既に述べたような知事の認可等その他の複雑な手続が必要です。 それでも、債務弁済をしなくても、建物の取壊し、再築が可能になったことは、マンション建替法の大きなメリットだといわれています。 また、借家人ですが、借家権も権利変換の対象になります。したがって、被災マンションに居住したい借家人は、権利変換により再建マンションに借家権を取得することができます。 ただし、借家人は、権利変換による借家権の取得を希望しないという申入れをすることができます。そして、希望しない借家人には補償金が支払われます。 Q21 団地型マンションの損壊、一部滅失の問題点 一団地内に数棟のマンションが建てられているマンションが被災して修復、復旧をする場合、単棟型とは違う点はありますか。 A 単棟型では、管理組合の構成員と被災マンションの区分所有者とが一致していますが、一団地内に数棟のマンションがある団地型の場合、全体が1つの管理組合によって管理されている場合が多く、数棟のマンションのうち一部の棟のみが被災した場合には、管理組合と被災した建物の区分所有者が一致しません。このため、損壊の場合の修復と滅失の場合の復旧とでは、決議の参加者(費用の負担者でもあります)に違いが生じます。 これに対し、数棟が渡り廊下などで連結され1つの建物として登記されているような場合には、単棟型と見るべきなのか団地型と見るべきなのか問題が生じます。 解 説 1 団地型マンション 一団となった敷地内に数棟のマンションが建てられている場合を団地型マンションといいます。 このような場合は、団地全体が一つの管理組合で管理されている場合が多いようです。 単棟型のマンションでは、1つの建物があり管理組合も1つというように、建物と管理組合が対応しているため、滅失に至らない損壊を修繕する場合でも、小規模滅失の復旧をする場合でも、管理組合の集会の普通決議によることになり、損壊と小規模滅失を区別する実益はありません。 ところが、団地型マンションの場合、例えば団地内の複数の建物のうち1つだけが被災した場合(このようなケースは阪神・淡路大震災では多くみられました。)、滅失に至らない損壊の場合には、団地全体を管理する管理組合が修繕の決議を行い、修繕の費用は団地内の全ての区分所有者の負担になります(Q15参照)。これに対して、小規模滅失や大規模滅失の場合には、被災した当該1棟の建物の区分所有者の多数決決議(小規模滅失の場合)または特別多数決議(大規模滅失の場合)によって復旧の決議を行い(区分所有61)、復旧の費用は当該建物の区分所有者だけが共用部分の割合(専有部分の床面積の割合)に応じて負担することになります(区分所有14)。 したがって、団地型マンションの場合には、滅失かどうかが大きな問題になります。しかし、現実には、滅失に至らない損壊か、小規模滅失かの区別が難しい場合が多いことが阪神・淡路大震災などで報告されています。 2 連担棟マンション 過去の震災で問題になったものとして、連担棟のマンションの問題があります。 連担棟というのは、構造的には複数(2ないし3)の建物が建てられていて、この複数の建物が渡り廊下などで連結されて、登記簿上は1つの建物として登記されている形態のものです。このような形態のものは、通常は1つの管理組合によって管理されています。 このような連担棟のマンションで、1つの棟の一部が滅失し、他の棟が無事だった場合(このようなケースも阪神・淡路大震災ではありました。)、全体を登記簿に従って1つの建物とみるか、それとも実質に従って複数の建物とみるのか問題になります。 例えば、小規模滅失と大規模滅失の区分は「建物の価格の2分の1」を超えるかどうかですが、その「建物の価格」を、滅失した1棟で判断するのか、他の棟を含めた全体で判断するのかにより、小規模滅失か大規模滅失か違いが起こります。また、復旧の決議や費用の負担についても、被災した棟の区分所有者だけで決議して同人らだけが復旧費用の負担をするのか、連担棟全体の区分所有者が決議して全員で費用の負担をするのかという違いが生じます(区分所有61)。 この問題は、阪神・淡路大震災のときから問題になっていましたが、いまだに両説対立があり、また、その後の立法的解決も見送られました。 Q22 団地型マンションの建替え手続 団地型のマンションが被災した場合、建替えはどのような手続が必要ですか。 A 通常の建替え決議手続に加えて土地の共有者による承認決議が要求されます。また、団地内の全ての建物を一括して建て替える場合には一括建替え決議を行います。 解 説 1 団地内の1棟を建て替える場合 団地型マンションが被災して建替えが必要な場合と言うのは、@団地内の複数の建物のうち1棟だけを建て替える場合と、A団地内の全部の建物を建て替える場合があり得ます。 @は、団地内の1棟だけが大きく被災したような場合に考えられます。現実に阪神・淡路大震災などでも、団地内の1棟が倒壊したり滅失したというケースがありました。 団地型マンションでは、団地内の全ての建物の区分所有者が、当該被災マンションを含めた一団の土地の共有権を持っているのが通常の形態です。 したがって、被災したマンションの建替えについては、当該マンションの建物の区分所有者の決議の他に、土地の共有者(建替えをしない他の建物の区分所有者も土地の共有権を持っているのが通常ですから、これらの者も含みます。)の同意が必要になります。 そこで、区分所有法では、当該建物の区分所有者による建替え決議(要件・手続は単棟型と同じ)に加えて、土地の共有者による集会(通常は、団地管理組合の総会)で、議決権の4分の3以上の多数による建替えの承認決議があることが、建替えの要件になっています(区分所有69@)。 なお、建替え承認決議の議決権は、土地の共有持分の割合によって決まります(区分所有69A)。 2 団地内の全部の棟を建て替える場合 次に、Aの場合、つまり、団地内の全部の建物を建て替える場合ですが、この場合も、1棟ごとの建物について、前記のように各建物の建替え決議と土地共有者による建替え承認決議をすることによって、全部の建物の建替えをすることが可能です。 しかし、この場合、1棟について5分の4以上の建替え決議が得られなければ、その棟は建替えができないことになります(区分所有69F)。このため、例えば、全棟について統一的な設計を行い、全棟の建直しを計画していた場合の障害になる場合もあり得ます。 そこで、平成14年の区分所有法改正で「一括建替え」という手法が認められました。 これは、団地管理組合の集会で、全ての区分所有者(頭数)と議決権(土地の持分割合)のそれぞれ5分の4以上の賛成と、各棟の区分所有者(頭数)と議決権(専有面積の割合)のそれぞれ3分の2以上の賛成(団地内の全ての棟について、この要件を満たす必要があります。)により、「一括建替え決議」をすることができるというものです(区分所有70@)。 ただし、一括建替え決議ができるのは、団地内の建物が全て区分所有建物であり、敷地がそれら区分所有者の共有になっていることと、これら敷地共有者で構成される団地管理組合が、全棟を一括して管理していることが要件になっています(区分所有70@・65)。 また、決議の内容は、団地内の全ての建物を取り壊し、その後に敷地を一体的に利用して再建築建物を建てることが要件となっています(区分所有70B)。したがって、団地内の各建物を順次、取り壊し、再築していくような計画の場合には、一括決議を用いることはできません。 なお、既に述べたように、建替えの理由や必要性は、建替え決議の要件ではないので、老朽化した団地型マンションの一部が被災したため、その機会に全部のマンションを建て替えることも可能です。 Q23 全部滅失の場合のマンションの再建手続 マンションが完全に滅失しました。再建したいと思いますが、どのような手続が必要ですか。 A 政令で指定された災害により滅失した場合には、土地の共有者の特別多数決議により再建の決議ができます。 解 説 1 マンションの全部滅失とは マンションが全部滅失した場合は、建物自体が存在しなくなったということになります。建物が倒壊して完全に瓦礫となった場合だけでなく、建物としての効用を完全に失った場合も全部滅失です。現実には、大規模滅失との判断が困難な場合もあり得ます。 マンションが全部滅失して建物でなくなれば、建物に設定されていた抵当権や賃借権も、目的物の消滅によって終了します。 また、区分所有建物の管理を目的としていた管理組合も、管理の対象がなくなり組合契約の終了により消滅します。管理組合法人も、建物の全部滅失は解散事由とされています(区分所有55@一)。 要するに、マンションが全部滅失した場合には、敷地の共有関係が残るだけになります。 2 全部滅失したマンションの再建 阪神・淡路大震災以前は、このような場合は民法の原則に従って、土地の共有者(建物の区分所有者が専有部分の床面積に応じて敷地を共有していることが多いといえますが、そうでない場合もあります。)の全員の同意がなければ、建物の再建ができないことになっていました(民251)。 このため、震災直後に、被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法(以下、「被災マンション再建法」といいます。)が公布・施行され、再建の議決要件を緩和することにしました。 なお、この法律が対象とするのは、マンションが全部滅失した場合に限られ、全部滅失に至らない場合の建替えは対象になりません。 また、この法律が適用されるのは、政令で指定する大規模災害による場合に限られます(被災マンション2@)。したがって、政令で指定されない地震によって老朽化していたマンションが全部滅失した場合には、民法の原則により敷地共有者の全員の同意がなければ再建できません。 3 被災マンション再建法による再建手続 被災マンション再建法によれば、マンションが全部滅失した場合、敷地共有者の議決権の5分の4以上の多数決で、マンション再建の決議をすることができます(被災マンション3)。 建物の全部滅失の場合には、建物の管理組合は消滅しているので、敷地共有者が再建集会を開催して、決議をすることになります(被災マンション2)。 なお、再建の決議は、政令の施行日から3年以内にしなければなりません(被災マンション3D)。 この再建決議も、再建建物の設計の概要や費用の概算額、費用の分担、再建建物の区分所有権の帰属など、建物の建替えと同じ事項が決議事項になります(被災マンション3A)。 また、区分所有法の建替え決議と同様に、再建に賛成しなかった敷地共有者に対して売渡請求などができることなっています(被災マンション3E、区分所有63C)。 なお、建物の区分所有関係が消滅したので、個々の敷地共有者は、共有物(土地)の分割請求ができるのが原則です。しかし、分割をすれば建物の再建ができなくなります。このため、政令の施行日から起算して1か月後から3年間は、分割請求ができないことになっています(被災マンション4)。ただし、議決権の5分の1を超える共有者が分割の請求をする場合など、再建決議の5分の4以上の賛成が得られないことが明らかな場合には、分割請求ができることになっています(被災マンション4ただし書)。 被災マンション再建法には、団地に関する特別な規定はありません。団地内で1棟が全部滅失した場合には、当該建物の区分所有者ではなく、団地全体の敷地共有者の決議で再建を決することになります。 Q24 耐震強度偽装事件について 平成17年11月に発覚した耐震強度偽装事件とは、どのような事件であり、またどのような点にその要因があるのでしょうか。 A 耐震強度偽装事件とは、構造専門の一級建築士がマンション・ホテル等の建物の構造計算を偽装したために、建築基準法上の耐震基準に満たない建築物が複数建築されたという事件です。 その要因は、当該建築士の遵法精神の欠如のほか、建設会社・建築主からの圧力といった建設業界全体の構造や、建築確認申請制度のあり方にも問題があると指摘されています。 解 説 1 耐震強度偽装事件とは 平成17年11月、一級建築士がマンションの構造計算書を偽装して建築基準法の耐震基準に満たない構造設計を行い、震度5程度の地震で倒壊する危険のあるマンションが複数建築されたという事件が発覚しました。指定確認検査機関は建築確認審査において構造計算が偽装であることを見過ごし、建設会社は建築確認を受けた図面に基づいて施工し、建築主(売主)は耐震性の欠如するマンションを分譲したというものです。また、同建築士が関わったホテルについても強度不足のものが多数見つかり、これについてはコンサルタント会社が設計段階から主導的に構造問題について指示していたという報道もありました。そして、その後の調査により、耐震強度が基準の26〜33%しかないマンションも数棟あり、地方公共団体から使用禁止命令が出されるといった大問題に発展し、政府はマンション退去の移転費や仮住居費の支援、自治体による買取・解体・再分譲などの公的支援策を打ち出しました。 2 耐震強度偽装事件の発生要因 一定の建築物の工事は一定の建築士の設計によらなければならず(建基5の4)、また、建築士が設計等を業としようとするときは、建築士事務所を定めて登録を受けなければならないとされています(建士23)。したがって、建築主が建築物を建築しようとする場合は、まず設計資格を有する建築士が所属する建築士事務所に設計依頼をすることになります。設計には意匠設計・構造設計・設備設計がありますが、建築主が設計契約するのは意匠設計の建築士事務所であり、構造設計・設備設計はそれらを専門とする建築士事務所に下請発注されるのが一般的です。また、建築主は建設会社と工事請負契約を締結しますが、設計者に監理業務を委託して建物が設計どおり施工されているかどうかをチェックしてもらいます(図1参照)。 また、建築基準法は、これらの設計、施工が法令の定める最低基準に適合しているか否かをチェックするためにいくつかの制度を設けています。まず、建築物を建築する場合、建築主は地方公共団体の建築主事または民間の指定確認検査機関(以下、「確認検査機関等」といいます。)に建築確認申請をして、建築計画についての承認を受けなければならないものとしています(建基6)。建築確認事務は、以前は建築主事のみが行っていましたが、阪神・淡路大震災により建物が多数倒壊したことを受けて平成10年に建築基準法が改正され、民間の指定確認検査機関も建築確認事務を行えるようになりました。また、建築確認どおりに工事が施工されているかどうかをチェックするために、建築途中において主として構造面を検査する中間検査や、建物完成後において完了検査を行うものとし(建基7以下)、さらに違反建築に対する是正措置や罰則規定を設けています(建基9・98以下。図1参照)。 このように、設計者による設計・監理および法令による事前事後の審査等を通じて適法建築物が施工されるような制度が構築されているのですが、耐震強度偽装事件においては、最初の設計段階で構造計算が偽装されるという前代未聞のことが起きました。構造設計者の証言によれば、建設会社から指示を受ける等の圧力を受けたために違法と知りながら構造計算を偽装したとのことでした。つまり、設計者による設計・監理機能が最初から働いていないため、事前事後の審査等でカバーされるしかないことになりますが、建築確認審査において偽装を発見できなかったために中間検査、完了検査は全く無意味なものになってしまいました。 このように考えると、耐震強度偽装事件の要因は、第一義的にはモラルの欠如した建築士により偽装設計されたことにありますが、建設業界の構造や確認検査機関等が建築確認申請の段階でそれを見抜けなかったというところにも重要な要因があると考えられます。そのため国土交通省その他関係各所は、建築確認申請のあり方自体を見直そうとしており、今後の制度改革が期待されるところです。 図1 Q25 耐震強度の偽装があった場合の紛争解決 地震により購入した建物が倒壊してしまいましたが、その原因は耐震強度の構造計算が偽装されたことにあるとの疑いがもたれています。この場合、紛争解決を図るにはどのように手続を進めればよいでしょうか。 A 紛争解決手続としては、示談交渉のほか弁護士会等の斡旋・仲裁、裁判所の調停、訴訟等の法的手続が考えられますが、その前提として建築物の構造問題に精通している建築士に建物の調査および構造計算のチェック等をしてもらい、耐震強度の偽装が建物倒壊の原因であるか否かを検証してから、どのような手続で解決を図るかを検討する必要があります。 解 説 1 紛争解決手続の種類 紛争解決手続としては、示談交渉のほか、弁護士会の斡旋・調停・仲裁、裁判所における保全、調停、訴訟等の法的手続が考えられます。なお、国土交通省ないし都道府県に設置されている建設紛争審査会による斡旋・調停・仲裁も紛争解決処理制度の1つですが、紛争処理の対象は「建設工事の請負契約に関する紛争」に限られており、建物の売買契約に関する紛争は対象とならないことに注意してください。 耐震強度偽装事件のような事案では、上記手続の中で保全手続の検討が重要であると思われます。平成17年の事件においても、問題発覚後、売主の資産が急激に減少したとの報道がありましたが、このことからしてもまず最初に保全手続を検討する必要があるのではないでしょうか。 保全手続としては、売主(不動産業者)に対しては、銀行口座等の仮差押えのほか営業保証金、弁済業務保証金の仮差押えが考えられます。また、建設業者に対しては、他の工事の請負代金債権の仮差押えが効果的に作用する場合があります。 2 建築士の協力 上記1のうちのいずれの手続をとるにしろ、建築紛争は建築士の協力なしに解決を図ることは極めて困難です。特に耐震強度偽装事件のような構造問題については、構造関係に精通している建築士に調査依頼し、その調査結果によっていかなる方針で紛争解決するかを決定する必要があります。ご質問のケースのように偽装の疑いがあるというだけで見切り発車しないよう注意すべきでしょう。 建築士の探し方については、建築士の団体(建築士会、建築士事務所協会、建築家協会等)に依頼しても正式には建築士を紹介していただけませんので、インターネットで欠陥建築物の調査を取り扱っている建築士を探したり、建築紛争を手がけている弁護士に建築士を紹介してもらうのが簡便な方法だと思います。 建築士の費用については、その業務内容によって異なります。建築士に調査依頼すると、最初に目視による概要調査を行い、それによって具体的な調査方法を決めるというのが一般的です。概要調査費用は1時間あたり8,000円〜10,000円程度であり(交通時間も含みます。)、その後の具体的な調査費用や調査報告書作成費用等はその内容にもよりますが、30〜50万円は見ておいた方がよいと思います(建物の規模や調査内容によって100万円以上かかる場合もありますので、建築士に見積りを出してもらってから調査を進めるべきです。)。 3 資料収集 建築士に調査依頼するためにも、また法的手続をとる上でも、契約書、見積書、設計図書等の資料が必須となります。ここで設計図書等というのは、確認申請図面、実施図面だけでなく確認済証、中間検査合格証、完了検査合格証その他工程表、工事議事録等といった建物を建築するために作成された全ての図面・書類を意味します。 確認済証は、工事完了までは建設業者が保管し、建物引渡し時に建築主に引き渡されるというのが一般的です。したがって、確認済証が手元にない場合には、まずは保管していると思われる者に交付請求をすればよいでしょう。それで入手できない場合は、確認検査機関等には5年の保存義務がありますので、当該機関に閲覧・謄写請求するという方法が考えられます。ただし、確認検査機関等によって取扱いが異なり、建築概要書しか閲覧謄写させてもらえないこともありますので、そのような場合には、情報開示請求権の行使を検討する必要が出てきます。 なお、実際の裁判等の手続においては、上記資料の他にも建物の写真、建築士の調査報告書、瑕疵修補の見積書等も必要となります。 4 現場主義 建築紛争については、図面や写真だけ見て相談者から説明を受けても具体的なイメージはつかめません。実際に現地に行ってみると相談者の説明とは相当食い違うという印象を受けることがよくあります。したがって、相談を受けた弁護士・建築士等は図面や写真だけに頼らずに、必ず現場に行って、相談者からの説明内容等を確認するよう心がけるべきです。 5 問題点や今後の見通しについての説明 法律相談を受けた場合、法律上・事実上の問題点について十分に説明した上で、相談者にどのような紛争解決手続をとるか意思決定していただくことが重要だと考えます。このことは建築紛争に限られたことではありませんが、特に耐震強度偽装事件のような場合、売主や建設業者に損害を補填するだけの十分な資力がないことが多いと思われますので、現実問題として損害金を回収することは困難である旨を説明する必要があります。また、地方公共団体に対する国家賠償請求訴訟については、指定確認検査機関等の過失や違法性が大きな争点になってくるでしょうから安易に勝訴の可能性を口にすることは控えるべきでしょう。 Q26 耐震強度の偽装があった場合の責任追及 建築士に調査依頼した結果、建物倒壊は耐震強度偽装に原因があると判明しました。この場合、誰にどのような責任を追及することができるでしょうか。 A 建物の売主には瑕疵担保責任・不法行為責任を、構造設計者・建設会社には不法行為責任を、建築確認事務を行った機関が帰属する地方公共団体には国家賠償責任を、建築確認事務を行った機関には不法行為責任を追及することが考えられます。 解 説 1 売主の責任 マンションの売主は売買契約に基づき瑕疵担保責任を負います(民570・566、品確95)。瑕疵担保責任は無過失責任ですので、売主が瑕疵の事実を知らなかったとしても免責されません。 売買契約の瑕疵担保責任の内容としては、民法上は契約解除または損害賠償請求のみですが(民570・566)、平成12年4月に施行された住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下、「住宅品質確保促進法」といいます。)95条によれば、新築住宅の構造耐力上主要な部分の隠れたる瑕疵について民法634条の担保責任も負う旨規定されておりますので、同法の適用がある場合には瑕疵修補請求を行うことも可能です。 瑕疵担保責任の除斥期間については、民法上は事実を知ったときから1年とされておりますが(民570・566)、判例は瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求権にも消滅時効の規定の適用があり、売買の目的物の引渡しを受けたときから10年経過すると消滅時効にかかるとしています(最判平13・11・27判時1769・53)。これに対し、住宅品質確保促進法では、新築住宅の構造耐力上主要な部分の隠れたる瑕疵については引き渡した時から10年間、瑕疵担保責任を負うものと規定しています(品確95)。 2 設計者 建物の買主と設計者との間には契約関係がないことから、設計者については不法行為責任(民709)が問題となります。そして、一定の建築物の工事は、建築士法3条から3条の3に規定する建築士の設計によらなければならないものとされており(建基5の4)、建築士法18条1項は、「建築士は、その業務を誠実に行い、建築物の質の向上に努めなければならない。」と規定していますので、設計者(建築士)が構造計算を偽装した場合は、かかる注意義務違反を根拠に不法行為責任を追及していくことになります。なお、設計者の不法行為責任を認めたものとして大阪高裁平成元年2月17日判決(判時1323号68頁)、大阪地裁昭和53年11月2日判決(判時934号81頁)等があります。 3 建設会社 建設会社についても不法行為責任が問題となりますが、判例では、建築基準法に違反して他人の財産を侵害し、損害を被らせたときは不法行為責任を負うとするものと(大阪高判平13・11・7判タ1104・216)、故意・過失によるものであっても、その瑕疵が居住者の健康に重大な影響を及ぼすようなものである等、当該瑕疵を生じさせたことの反社会性ないし反倫理性が強い場合でなければ不法行為責任を負わないと限定的に解するものとがあります(福岡高判平16・12・16判タ1180・209)。 4 地方公共団体 確認検査機関等が、建築確認申請における審査において、建築計画の設計上構造計算が誤っているのにそれを見過ごしたという場合は、地方公共団体に対する国家賠償請求(国賠1)が問題となります。 建築主事については、建築確認申請の審査にあたり誤った構造計算の瑕疵を見過ごした場合、「国家賠償法1条にいう公権力の行使に当たる公務員が、その職務を行うにつきなした違法な行為」であり、「構造計算書が法令の規定に適合するかどうか審査する職務上の義務を負っているのに、これを怠った過失がある」として地方公共団体に国家賠償法に基づく損害賠償請求を認めています(山口地岩国支判昭36・2・20下民12・2・320)。 民間の指定確認検査機関についても建築主事の場合と同様であるか否かが問題となりますが、横浜地裁平成17年11月30日判決(公刊物未登載)は、「指定確認検査機関による確認に関する事務は、建築主事による確認の事務の場合と同様に地方公共団体の事務であり、その事務の帰属する行政主体は、当該確認に係る建築物について確認をする権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体であると解するのが相当である(最決平17・6・24判時1904・69参照)。そうすると、指定確認検査機関による建築確認処分は、当該確認に係る建築物について確認する権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体の公権力の行使であるといえるから、当該地方公共団体は、指定確認検査機関による建築確認処分に係る事務の違法それ自体を理由として、国家賠償法1条1項の「公共団体」として賠償責任を負うと解するのが相当である。」と判示しています。 したがって、指定確認検査機関等に故意、過失および違法性が認められれば、地方公共団体に対し損害賠償請求ができることになります。 5 指定住宅検査機関等 指定住宅検査機関等に対しては、不法行為責任が問題となります。前記4のとおり地方公共団体に国家賠償請求が可能だとすると、指定住宅検査機関等は国家賠償法1条1項の公務員に準ずる地位にあると考えられます。ただ、判例は、同条項について加害者たる公務員個人は被害者に対して賠償責任を負わないとしていますので(最判昭30・4・19判時51・4、最判昭47・3・21判時666・50、最判昭53・10・20判時906・3等)、指定住宅検査機関等に対する損害賠償請求が可能であるのか疑問が生じるところです。しかしながら、通説は公務員に故意・重過失があるときまたは職務執行の意思がない場合には公務員個人の責任を認めるべきだとしています。また、公務員の個人責任を否定する根拠として賠償請求を恐れて積極果断な行政執行がなされないおそれがあることが挙げられていますが、指定住宅検査機関等にこの理由があてはまるのか疑問があるところです。したがって、法的手続をとろうとする場合には、指定住宅検査機関等に対しても不法行為責任を追及すべきではないかと考えられます。 5 建物の瑕疵 Q27 震災により購入した建物の壁に亀裂が入った場合の責任追及 平成12年3月以前に一戸建てを購入しましたが、今回の地震で私の家だけ壁に大きな亀裂が入ってしまいました。このような場合、誰にどのような責任を追及できるのでしょうか。 A (1)売主、建設業者、建築設計者、売買仲介業者等に対する損害賠償請求、(2)建設業者に対する瑕疵修補請求が考えられます。 解 説 1 売主に対する責任追及 (1) 瑕疵担保責任 瑕疵担保責任(民570)により、契約の目的を達することができないほど重大な瑕疵があれば契約解除(東京地判平4・9・16判時1458・87)と損害賠償の請求が可能です。しかし、契約書で特約がない限り、瑕疵修補請求は認められません。 (2) 瑕疵担保責任を追及できる期間 売主に瑕疵担保責任を追及できるのは、買主が事実を知ってから1年以内(民570・566B)です。ただし、除斥期間内に裁判外で権利を行使すれば、一般の消滅時効期間まで責任追及できます(最判平4・10・20判タ802・105)。また、除斥期間経過後でも、売主の過失を立証して不法行為責任を追及することが考えられます(大阪地判平10・7・29金判1052・40)。なお、平成13年4月1日に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」では、瑕疵担保責任期間が10年とされました。 (3) 損害賠償の範囲 売主の瑕疵担保責任における損害賠償の範囲について、判例では信頼利益に限られています(最判昭57・1・21判タ462・68)。ただし、不法行為責任の損害賠償が認められれば、履行利益も請求できます。 (4) 買主に不利になる特約 売主が宅地建物取引業者の場合、瑕疵担保責任の存続期間を引渡しから2年以上とする特約を除き、民法の瑕疵担保規定より買主に不利になる特約はできませんので、それに違反する特約は無効です(宅地建物40)。 (5) 売主に対する不法行為責任の追及 建物の基本的・構造的部分に重大な瑕疵があり建築基準法所定の構造耐力を欠く事例(神戸地姫路支判平7・1・30判時1531・92)について、不法行為責任を認めたものがあります。 (6) 消費者契約法の適用 本契約が平成13年4月1日以後に締結され、かつ売主が業者で、買主が「消費者」である場合には、同日に施行された消費者契約法の適用が考えられます。売買契約では、不実告知による誤認(消費契約4@一)、断定的判断の提供による誤認(消費契約4@二)、不利益事実の故意の不告知(消費契約4A)、事業者の免責条項の無効(消費契約8)、消費者の利益を一方的に害する条項の無効(消費契約10)等に該当しないか検討が必要です。 2 建設業者への責任追及 (1) 不法行為責任の追及 買主と施工業者との間には、通常、直接の契約関係がないので、建築基準法等の法令に違反した瑕疵ある建築をした場合は、不法行為責任の追及が考えられます。 (2) 瑕疵修補請求権の代位行使 売主が無資力の場合は、売主(注文者)が施工業者(請負人)に対して有する瑕疵修補請求権を代位行使することも考えられます(民423)。 3 建築設計者への責任追及 建築設計士には、法令または条例の定める建築物に関する基準に適合するよう設計すべき義務があるので(建士18A)、違法な建築設計をした場合、買主と直接契約関係がなくても不法行為に基づく損害賠償責任を追及できます(名古屋地判昭48・10・23判タ302・179)。 4 売買仲介業者に対する責任追及 宅建業者は、善管注意義務(民644)のほか、宅建業法上、誠実義務(宅地建物31)、取引態様明示義務(宅地建物34)、重要事項説明義務(宅地建物35)、書面交付義務(宅地建物37)重要事項告知義務(宅地建物37)等の義務を負っているので、目的建物の建築確認や完了検査等の調査義務を怠ったり、法令違反の違法建築建物であることを知りながら、虚偽の説明をした場合、債務不履行に基づき損害賠償責任を追及できます(民644・415)。 軟弱地盤の基礎工事不良による不等沈下事例について、説明告知義務は宅地建物取引業法35条の事項に限られず、本件土地が軟弱地盤であることを認識しながらその説明をせず、またはこれを否定する説明をしたのは不法行為にあたるとした判例(東京地判平13・6・27判時1779・44)があります。 5 品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)による責任追及 品確法は平成12年4月1日に施行されていますので、本問には適用されません。 Q28 震災により建て替えた建物が傾いてしまった場合の責任追及 平成12年3月以前に建築会社に頼んで自宅を建て替えましたが、震災により建物が傾いてしまいました。設計図を見たところ、基礎工事が設計図どおりに施工されていませんでした。このような場合、誰にどのような責任を追及できるのでしょうか。 A (1)請負業者に対する瑕疵修補請求、損害賠償請求、(2)建築士に対する損害賠償請求が考えられます。 解 説 設問のような状況が生じた原因として、@地盤の調査を行っていないため、地耐力が想定できていなかった。A建物の基礎部の的確な工法検討および擁壁の安全確認ができていなかった。B敷地の段差・形状によるリスクおよび雨水処理の検討がされていなかった等が考えられます。 1 請負業者に対する責任追及 (1) 瑕疵担保責任 請負人は、当該建物に瑕疵がある場合、瑕疵担保責任を負う(民634)ので、請負人に過失がなくても瑕疵修補請求(民634@)、また、その修補に代え、あるいは修補とともに損害賠償を請求することができます(民634A)。ただし、建物の請負工事契約の場合、売主に対する責任追及と異なり、注文者に解除権はありません(民635ただし書)。 ア 契約で特に約定された重要な内容を請負人が注文者に無断で変更した場合は、施工された内容が構造計算上、安全性に問題がなくても瑕疵担保責任を認めた判例(最判平15・10・10判時1840・18)。 イ 民法636条に関し、注文者が違法建築を理解した上でなお違反を指示したことを請負人が立証すべきであるとした裁判例(神戸地尼崎支判平11・7・7欠陥住宅被害全国連絡協議会編『消費者のための欠陥住宅判例(第1集)』396頁(民事法研究会、平12))。 (2) 除斥期間 除斥期間は、普通工作物が引渡しから5年、石造・コンクリート造・金属造等の工作物が引渡しから10年です(民638@)。 ただし、特約により短縮、伸張でき、民間連合協定工事請負契約約款では、木造工事は引渡しから1年、コンクリート建物等は引渡しから2年、請負人に重過失ある瑕疵の場合は、1年を5年、2年を10年とする旨規定してあります。 (3) 請負人の瑕疵担保責任 建物完成後の請負人の瑕疵担保責任は、不完全履行の特則であるため、瑕疵担保期間経過後に不完全履行に基づく損害賠償請求をすることができないことに注意してください。 ただし、仕事の目的物である建物等が社会的経済的な見地から判断して契約の目的に従った建物等として未完成である場合にまで、注文者が債務不履行の一般原則によって契約を解除することを禁じたものではないとした判例(東京高判平3・10・21判時1412・109)があります。 (4) 損害賠償の範囲 損害賠償の範囲は、信頼利益のみならず、履行利益も含まれます。 建物全体にわたって極めて多数の欠陥箇所があり、主要な構造部分について建物の安全性および耐久性に重大な欠陥が存在する事案において、請負業者に建物の建替えに要する費用相当額の損害賠償を認めた判例(最判平14・9・24判時1801・77)があります。 (5) 不法行為責任の追及 請負人が不法行為責任を負うのは、「注文者やその後の建物取得者の権利や利益を積極的に侵害する意思で瑕疵ある建物を建築したなどの特段の事情がある場合に限られる」(神戸地判平9・9・8判時1652・114)との裁判例があります。 2 建築士に対する責任追及 (1) 債務不履行責任の追及 建築主が建築士と設計、監理業契約を締結している場合、設計上の瑕疵があれば、設計契約を請負契約と解すると瑕疵担保責任、準委任契約と解すると債務不履行責任(善管注意義務違反)を設計者に対して追及でき、また、工事監理上の瑕疵があれば、工事監理者たる建築士に準委任契約に基づく債務不履行責任(善管注意義務違反)を追及できます。 ア 設計者の債務について、素人の施主の意匠、外観についての要求を具体化しつつ、同時に建築物として十分な構造強度、耐力を保持し、施主の要望が建築設計の常識をわきまえないことに基づく無謀なものであるときは、その旨を説明し理解を得て翻意させるのが専門家である建築設計士の責務であることに言及した裁判例(長崎地判平元・3・1判例地方自治65・78)。 イ 設計どおり工事が施工されているかどうかを確認すべき注意義務を尽くしていれば、瑕疵は発見でき、建設会社に注意を与えることにより是正できたとして監理義務の不履行責任を認めた裁判例(横浜地川崎支判平13・12・20欠陥住宅被害全国連絡協議会編『消費者のための欠陥住宅判例(第2集)』428頁(民事法研究会、平14))。 ウ 監理契約の債務不履行に基づく損害賠償請求権の時効期間を請負人の瑕疵担保責任の除斥期間まで短縮した裁判例(東京地判平4・12・21判時1485・41)。 (2) 不法行為責任の追及 建築主が建築士と設計、監理業契約を締結していない場合でも建築士は建築士法18条に定める義務を負っています。 したがって、設計・監理業務のいずれについても、建築士に注意義務違反があれば、不法行為責任を追及できます。 ア 建物の基礎構造を設計する際に、土地の地盤調査を怠り誤った地耐力を設定し建築基準法の構造耐力に違反した場合に建築士個人に不法行為責任を認めた裁判例(大阪高判平元・2・17判時1323・68)。 イ 建築士法18条3項を引用し、基礎工事中一度も現場に行かなかったため基礎工事の欠陥(手抜き工事)を発見できなかった監理者に不法行為責任を認めた裁判例(大阪地判昭53・11・2判時934・81)。 Q29 平成12年4月1日以降に契約した建物の瑕疵担保規定の特例(住宅品質確保促進法) 平成12年4月1日以降に、新築建物の売買契約、請負契約を締結しました。それより前に契約した場合と比べ、瑕疵担保責任に関して何か違いがあるのでしょうか。 A 消費者保護の観点から、欠陥住宅問題に対処するため、平成12年4月1日以降の新築住宅の売買契約、請負契約については、民法の瑕疵担保規定の特例として品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)の適用を受けます。 解 説 1 品確法の瑕疵担保責任 品確法については、以下の点がポイントです。 @ 瑕疵担保期間が引渡し後10年に延長されました(品確94@・95@)。 A 取得者に不利な特約を無効とされました(品確94A・95A)。 瑕疵担保期間は、民法上短縮可能なため、これまで新築住宅の請負契約、売買契約では、2年程度に設定されている場合も多くありました。しかし、2年目以降に瑕疵が顕在化するケースも多く、住宅取得者にとっては不利な仕組みでしたので、瑕疵担保期間は完成引渡し後10年間とし(品確94@・95@)、これよりも取得者に不利となる特約は無効としたのです(品確94A・95A)。 B 売買契約について、民法で認められていない瑕疵修補請求が認められました(品確95@)。 ただし、 @ 瑕疵の立証責任は被害者が負います。 A 売買については「隠れた瑕疵」に限られます。 B 建築請負契約については、解除は認められません。 C 中古物件については、品確法の適用がなく民法が適用されます。 2 品確法が適用される「新築の住宅」(品確2A・94@) @ 建築工事完了後1年以内の建物 A 新築(いまだ人の居住に供されていないこと) B 住宅(店舗兼住宅は含まれます。) 3 品確法で担保される部分 「構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分として政令で定めるもの」の瑕疵に限られます(品確94@)。 @ 「構造耐力上主要な部分」として政令で定めるものとは、住宅の基礎、基礎ぐい、壁、柱、小屋組、土台、筋交、床板、屋根版、梁などをいいます(品確令5@)。いわゆる一戸建て住宅では骨組を言い、マンションでは躯体部分といわれるところです。 A 「雨水の浸入を防止する部分」として政令で定めるものとは、住宅の屋根もしくは外壁またはこれらの開口部に設ける戸、わくその他の建具、雨水を排除するために住宅に設ける排水管のうち、当該住宅の屋根もしくは外壁の内部または屋内にある部分をいいます(品確令5A)。 4 権利行使期間 建物の引渡し時から10年以内で、かつ、請負人に対しては滅失・毀損時から1年以内(品確94B)、売主に対しては瑕疵を知った時から1年以内(品確95B)に行使しなければなりません。 ただし、10年間の瑕疵担保責任の利益を受けることができるのは、新築住宅の注文者あるいは買主に限定されているので、中古住宅として取得した者は、たとえ完成建築後から10年未満であっても当初の住宅供給者に対して修補請求などをすることはできません(品確2A・95@)。 5 宅建業法との重畳適用 宅建業者が建物(中古建物を含みます。)の売主の場合、瑕疵担保責任の権利行使期を引渡しから2年まで短縮できます(宅地建物40)。そして、宅地建物取引業法(以下、「宅建業法」といいます。)と品確法が併存して適用されるので、宅建業法の特約がある場合、引渡しから2年間は住宅全体について瑕疵担保責任の対象となり、それ以降から10年目までは品確法に基づき構造耐力上の主要な部分等が瑕疵担保の対象となります。 アドバイス 品確法は、業者の手抜き工事をなくすこと、良質の住宅を提供することが法律の狙いですので、品確法が適用されるケースにも限界があります。阪神・淡路大震災の時に、全壊した家のローンを払い続けながら、新たに建替えのローンを組まなければならない悲惨な例が話題となりましたが、地震被害による建直しや修理費用の十分な保証を受けるには、「地震保険」に加入しておくことが必要です。 Q30 瑕疵担保責任を追及するための「瑕疵」 震災後の家屋調査の結果、建物に色々な不具合があったことが判明しました。そこで、建物の売主や建築業者に瑕疵担保責任を追及するための「瑕疵」とは、どのように判断されるのでしょうか。「瑕疵」の有無を判断する資料については、どのような調査方法があるのでしょうか。 A 「瑕疵」とは、目的物に欠陥がある状態を意味しますが、最高裁判所判例も主観説をとるなど瑕疵担保責任の適用の範囲は拡大されつつあります。瑕疵の有無は、契約書の内容、その他の客観的外部的基準(各種法令等)によって、合理的意思解釈をして判断されます。 解 説 1 瑕疵の定義 請負契約における「瑕疵」とは、完成された仕事が契約に定められたとおりに施工されておらず、使用価値や交換価値が減少したり、当事者が特に求めた点を欠くなど不完全な部分を持っていることをいいます。そして、売買契約における「瑕疵」とは、売買の目的物がその種類のものとして通常有すべき品質・性能、あるいは契約上予定した性質を欠いていることをいいます。 2 瑕疵の判断基準 そして、この「瑕疵」については、従来、当該目的物が通常備える品質・性能を欠く客観的な瑕疵を中心に捉えられてきましたが(客観説)、阪神・淡路大震災で倒壊した建物の跡地にマンションを建築しようとした施主が、耐震性を高めるため、当初の設計内容よりも太い鉄骨を使用する契約をしたのに、約定よりも細い鉄骨を使用した事案について、最高裁判所(最判平15・10・10判時1840・18)は、「本件事実関係によれば、太い鉄骨を使用する約定をしたことは契約の重要な内容になっていたものというべきであり、この約定に違反して施工された工事には瑕疵があるというべきである」として、たとえ建築基準法の基準を満たしていても目的物が契約に定められた性質を具備しない場合にも(主観説)、請負業者の責任を認めていることから、瑕疵担保責任の適用の範囲は拡大されているようです。 3 瑕疵の判断基準と資料 (1) 契約内容が契約書等で明確であれば、それに従って瑕疵の有無が判断されます。 @ 契約書、設計図書 建築図書とは、建築物その他の工作物ないし敷地の工事実施のために必要な図面および仕様書をいいます(建基2○12、建士2D)。 A 品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)による住宅性能評価書 契約時に反対の意思表示がない限り、住宅性能評価書に記載された内容が契約内容となります。(国土交通省ホームページhttp://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/torikumi/hinkaku/hinkaku.htm) (2) 契約書等で当該不具合の原因に関する品質・性能が不明確な場合は、何らかの客観的外部的基準により契約内容を合理的に意思解釈して補完する必要性があります。 @ 建築基準法等の法令 建築基準法、同施行令、国土交通省告示、東京都告示、特別区告示、都市計画法、消防法、宅地造成等規制法等の14種類の法令(建基6@、建基令9) 建物の構造上の安全性能の有無は、建築基準法および同施行令、施行規則の基準によって、当該建物が通常備えるべき安全性能が備わっているか否かにより判断するのが相当とする判例(大阪地判平3・6・28判時1323・68) A 住宅金融公庫の住宅工事共通仕様書(公庫仕様書) 公庫融資住宅ではない場合においてもこれを法令に準ずる標準的技術基準とみなすことができるかについては判例が分かれています。(公庫仕様書の活用について、http://www.jyukou.go.jp/yusi/koukojutaku/katuyou.html) B 日本建築学会の各種構造設計基準 構造設計基準、標準仕様書、技術指針、施工マニュアル等 (日本建築学会;http://www.aij.or.jp/aijhomej.htm) Q31 建築紛争の解決手段 建築紛争を解決する手段として、どのような救済方法があるのでしょうか。 A @裁判所に対して建築訴訟の提起、建築調停の申立て、A建築工事紛争審査会のあっせん、調停、仲裁制度、B指定住宅紛争処理機関のあっせん、調停、仲裁制度、Cその他の紛争処理機関による解決策があります。 解 説 1 建築訴訟、建築調停 (1) 建築訴訟の特徴 訴訟件数自体は少ないが、事件が複雑性、専門性、証拠収集の困難性があるため、解決するまでの期間が長期化するという特徴があります。建築訴訟には、争点を明確化し、問題の発生原因について専門的知識を補うため専門家による鑑定(民訴212)が必要となるケースが多いです。 (2) 訴訟運営の例 東京地方裁判所では、事件処理を円滑に進めるため、平成18年6月現在、建築紛争を集中的に民事第22部、民事第49部で取り扱っています。 上記2部では、争点整理が簡明な事件を除き、原則として付調停になり建築士等の専門家による知識、経験を利用して争点整理を行った上で、これを本案訴訟においても利用できるようにして迅速な訴訟運営を図っています。 (3) 準備活動の主な留意点 @建築士の協力が不可欠。A現地を検分し、事案を正確に把握し主張を組み立てる。B専門家の意見を証拠化する。C瑕疵については実測値などの客観的数値を確定する。D補修費用の見積もりを取る。E証拠書類(契約書、設計図、注文書、見積書、工事代金内訳書、現況写真、構造計算書、建築確認書、工程表等)をできる限り早期に収集する等のことに留意する必要があります。 2 建築工事紛争審査会によるあっせん、調停、仲裁制度 (1) 建築工事紛争審査会の特色 「建築工事の請負契約に関する紛争」に限定して、紛争を適正、迅速、公平に解決するため、裁判外紛争解決機関(ADR)としての建築工事紛争審査会が建築に関する知識や経験を有する専門家(弁護士、建築士、建築行政専門家)を関与させ、公正中立的な立場に立って、あっせん、調停、仲裁を行うものです。 (2) あっせん、調停、仲裁 ア あっせん手続は、あっせん委員が1名で紛争処理し、当事者の主張を整理し、あっせん案を提示する等して話合いによる解決を図る制度です(建設25の12)。あっせん期日回数はおよそ3回以内を目安にしており、費用が安価で訴訟手続に比較して簡便な手続です。 イ 調停手続は、調停委員3名が当事者の意見を聞くなどして調停案を作成し、その受諾を勧告する等して解決を図るものです(建設25の13)。調停期日回数は、およそ5回から10回以内を目安にしており、事実関係が複雑で技術的な争点が存在するような紛争の処理に適しています。 ウ 仲裁手続は、当事者の合意に基づき、3人の委員で構成される審査会が、仲裁法や建設業法の規定により当事者を審尋し、必要な証拠調べや立入検査等をして仲裁判断を行い、これに当事者が服することにより紛争解決を図る制度です(建設25の16)。仲裁期日回数は、通常の事件であれば十数回程度の審理です。仲裁判断が確定すれば、確定判決と同一の効力がみとめられますが、そのままでは執行力がなく、執行決定を得て初めて強制執行をすることができます(仲裁46)。 (参考) 中央建設工事紛争審査会のHP; http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/const/funcho/funcho.htm 3 指定住宅紛争処理機関(住宅紛争審査会)によるあっせん、調停、仲裁制度 指定住宅紛争処理機関には、国土交通大臣が主に弁護士会を住宅専門の紛争機関として指定しており、住宅の瑕疵だけではなく、代金支払に関する紛争など契約に関する紛争を取り扱っています(品確66以下)。申請手数料は1万円(品確73@、品確規114A)で、手続は非公開とされています(品確72)。 指定住宅性能評価機関から「建設住宅性能評価書」を交付された住宅の建築工事の請負契約または売買契約に関する紛争について、費用が安価で円滑・迅速に紛争を解決すべく指定住宅紛争処理機関があっせん、調停、仲裁を行うものです(品確67@)。 (参考) 住宅紛争処理支援センターのHP; http://www.chord.or.jp/shienc/kikan/kikan.htm 4 その他 (1) (財)不動産適正取引推進機構による調整・仲裁 http://www.retio.or.jp/ (2) 住宅部品PLセンターによるあっせん・調停 http://www.chord.or.jp/pl/pl.html 第3章 借地借家に関する問題 1 建物が滅失した場合の借地権 Q32 借地上の建物が地震で全壊した場合の借地権 借地上の建物が地震で全壊してしまいました。 借地権は消滅してしまうのでしょうか。敷地利用権が賃借権の場合と使用借権の場合で異なるのでしょうか。 A 借地権は原則として消滅しません。また、建物が全壊した場合には借地権は消滅する旨の特約も無効です。使用借権も原則として消滅しませんが、期間の定めがない場合には目的達成等により消滅する場合はあります。 解 説 1 建物全壊と借地権の消長 建物と異なり地震で土地が消滅するわけではありませんので、借地権は消滅しません。このことは、借地借家法施行前(平成4年8月1日前)のもとで設定された旧借地法下の普通借地権、同法施行後の借地権(普通借地権、一般定期借地権(借地借家22)、建物譲渡特約付借地権(借地借家23)事業用借地権(借地借家24))、同法施行前後の一時使用目的の借地権(借地9、借地借家25)のいずれであっても同様です。また、旧借地法のもとで設定された期限の定めがない借地権は「朽廃」により消滅しますが(借地2@但し書・5@)、地震による全壊はこの「朽廃」にはあたらず、借地権は消滅しません(借地借家法には「朽廃」規定がありません。)。 仮に地震によって建物が滅失した場合には借地権は消滅する旨の特約をしても、そのような特約は無効です(借地借家9、借地11。最判昭33・1・23判時140・14)。ただし、一時使用目的の借地権については、同特約は有効ですので、この場合は消滅することになります(升田純著『大規模災害と被災建物をめぐる諸問題』80頁以下(法曹会、平8)、法務省民事局参事官室編『大規模災害と借地借家Q&A』2頁以下(商事法務研究会、平7)、近畿弁護士会連合会『地震に伴う法律問題Q&A』3頁(商事法務研究会、平7)、鈴木禄弥ほか編『借地の法律相談』第3版第4刷422頁以下(有斐閣、平16))。 2 建物全壊と使用借権の消長 使用借権についても消滅しないのが原則ですが、期間の定めがない場合には、賃主は使用収益の終了あるいは契約の目的達成を理由に解約の告知をすることが認められていますから、その場合には使用借権が消滅することもあり得ます(民597)。しかし、その認定は慎重に判断されるべきです。また、使用貸借は、震災によって借主が死亡した場合には終了するのが原則ですが(民599)、建物所有目的等を重視して必ずしも終了しないとする判例もありますので判断には注意を要します(大阪高判昭55・1・30判タ414・95、東京地判昭56・3・12判時1016・76、東京地判平5・9・14判タ870・208)。 地震によって建物が滅失した場合または借主が死亡した場合には使用借権は消滅する旨の特約は原則として有効です(升田純著『大規模災害と被災建物をめぐる諸問題』81頁以下(法曹会、平8))。 Q33 借地上の建物が地震で全壊した場合の建物の再築 地震で借地上の木造建物が全壊してしまったため、建物を再築しようと思います。 @ 賃貸人の承諾なく再築することは可能でしょうか。また、賃貸人が承諾料を要求してきた場合、支払わなければいけないでしょうか。 A 再築禁止特約がある場合には、再築は許されないのでしょうか。 B 鉄筋コンクリートの建物を建築することは許されるでしょうか。 C 再築するための資金繰りに窮しているのですが、いつまでも再築できなかった場合、借地権はどうなるのでしょうか。 A@ 賃貸人の承諾なく再築することが可能です。また、承諾料を支払う義務を負うわけではありませんが、賃貸人との権利関係の安定と借地期間の延長の確保の観点からは賃貸人の承諾を得ることに努力すべきです。 A 一般的な再築禁止特約は無効ですが、再築禁止特約を一応有効と解した上で、信頼関係の法理により特約による解除を制限する判例もあります。原則として再築は可能です。 B 堅固な建物を建築することを可能とする契約上の定めがない限り、原則として鉄筋コンクリートの建物を建築することは許されません。再築を強行すれば借地契約を解除されるおそれがあります。 C 建物が存在することが法定更新の要件となっていますので、借地期間満了までに建物を再築する必要があります。 解 説 @ 賃貸人の承諾と再築の可否、承諾料の要否 1 再築の可否 (1) 借地権がある場合の再築 借地人は、賃貸人の承諾なく、借地の残存期間を超える建物を再築することができます。また、賃貸人が異議を述べても(借地7、借地借家7)、借地人の再築を阻止する効果はありません(近畿弁護士会連合会『地震に伴う法律問題Q&A』4頁以下(商事法務研究会、平7))。ただし、借地借家法施行前に設定された借地権であるか、施行後に設定された借地権であるか、また、賃貸人の承諾があるか否かにより、借地権の存続期間に相違があります。この点は、Q34を参照して下さい。 (2) 一時使用目的の借地権または使用借権がある場合の再築 なお、一時使用目的の借地権または使用借権についても、建物の全壊により直ちに敷地利用権が消滅するわけではなく、建物の再築は可能です。しかし、このような利用権は、通常、残存期間が短期で、法定更新もなく、また建築できる建物の種類、構造、用途も極めて限定的ですので、期間満了によって敷地利用権が消滅したり、再築した建物によっては約定違反を理由に解除される事態も想定されますので、短期間の使用を目的とする応急的な建物を建築する場合はともかく、それ以外の建物を再築する場合は、事実上、再築は慎重に判断しなければなりません。貸主との協議に基づいて再築するのが無難です(升田純著『大規模災害と被災建物をめぐる諸問題』85頁以下(法曹会、平8))。 2 承諾料 借地人は、前記のとおり賃貸人の承諾がなくても建物を再築できるのですから、承諾料を拒否することもできます。 しかし、賃貸人の異議による法律関係の不安定さを回避し、かつ借地期間の延長を確保するという観点に立てば(後記Q34参照)、賃貸人と協議し、ある程度の承諾料を支払ってでも賃貸人の承諾を得るように努めるのが無難ということになります(升田純著『大規模災害と被災建物をめぐる諸問題』85頁(法曹会、平8))。 A 再築禁止特約、増改築制限特約、建物の条件制限特約と再築の可否 1 再築禁止特約 残存期間を超えて存続する建物の再築を一切禁止する特約は無効です(借地11、借地借家9。最判昭33・1・23判時140・14)。なお、再築禁止特約を一応有効とした上で、信頼関係の法理(賃貸人に対する信頼関係を破壊するおそれがあると認めるに足りない特段の事情があるときは賃貸借契約を解除することはできません。)で解除の効力を制限していこうとする判例もあります(最判昭44・1・31判時548・67。升田純著『大規模災害と被災建物をめぐる諸問題』92頁以下(法曹会、平8)、鈴木禄弥ほか編『借地の法律相談』第3版第4刷423頁以下(有斐閣、平16))。 2 増改築制限特約 増改築を制限する特約は一般的には有効とされています。したがって、賃貸人に無断で増改築をすれば、借地契約を解除されることがあり得ますが、特約違反を理由とする借地契約の解除については、最高裁判例も「賃借人の土地の通常の利用上相当であり、賃貸人に著しい影響を及ぼさないため、賃貸人に対する信頼関係を破壊するおそれがあると認めるに足りないときは、賃貸人は右特約に基づき賃貸借契約を解除することができない。」として、解除権の行使を制限しています(最判昭41・4・21判時447・57)。 現実問題としては、再築禁止特約や再築の障害となるような増改築制限特約がある場合には、法律関係の安定の見地から、賃貸人の承諾または承諾に代わる裁判所の許可を得て再築、増改築をするのが無難でしょう(借地借家法17条2項。なお、借地借家法附則10条、4条により、借地法のもとで設定された借地権についても、借地借家法17条2項が適用されます。なお借地法8条の2第2項参照。近畿弁護士会連合会『地震に伴う法律問題Q&A』4〜8頁(商事法務研究会、平7)、升田純著『大規模災害と被災建物をめぐる諸問題』92頁以下(法曹会、平8))。 B 再築建物の種類、構造等の制限 1 建物の条件(堅固・非堅固)が明記されている場合 借地契約上、建築する建物の種類、構造、用途等を制限する特約は有効です。したがって、木造建物に限定する特約に違反して鉄筋コンクリート造の建物を再築した場合には、特約違反として借地契約を解除されるおそれがあります。 なお、条件違反が認められても、賃貸人に対する信頼関係を破壊するおそれがあると認めるに足りないときは解除できないと解すべきでしょう(近畿弁護士会連合会『地震に伴う法律問題Q&A』6〜8頁(商事法務研究会、平7))。 2 建物の条件(堅固・非堅固)が明記されていない場合 法上、非堅固建物の所有を目的とすると推定されていますので(借地3)、従来の建物が木造であれば、賃貸人の異議を無視して鉄筋コンクリート造の建物を再築することは許されません。 しかし、賃貸人が遅滞なく異議を述べない場合には、再築した堅固な建物を目的とした借地権になります(借地法7条。なお、借地借家法のもとで設定された借地権については同法7条参照)。 3 現実問題としては、条件変更につき、賃貸人と協議を行いその承諾を得ることが無難です。 条件変更について賃貸人の承諾を得られない場合、法は、裁判所に対し条件変更の許可を求める手続を用意していますが(借地借家法17条1項。借地借家法附則10条、4条により、旧借地法のもとで設定された借地権についても、借地借家法17条1項が適用されます。なお借地法8条の2第2項参照)、木造建物を鉄筋コンクリート造の建物に変更する許可が認められるかは疑問です(升田純著『大規模災害と被災建物をめぐる諸問題』92頁以下(法曹会、平8))。 C 再築の期限 借地期間満了時に法定更新が認められるためには建物が存在することが要件となっています。賃貸人から異議があると法定更新もありません(借地4@・6A、借地借家5)。したがって、期間満了までに再築する必要があります。 Q34 借地上に再築した建物の借地期間 借地上の建物が地震で全壊したので再築しましたが、旧借地法と借地借家法のどちらの法律が適用されるのでしょうか。 また、全壊した建物を再築した後の借地期間はどうなりますか。建物は全壊しなかったが、借地人が自ら解体した場合には、全壊の場合と異なるでしょうか。 A 借地関係については、何が問題となるかにより適用される法律が異なりますが、再築された建物の再築と借地期間については、借地権が借地借家法施行前(平成4年8月1日前)に「設定」された借地契約には旧借地法が、借地借家法施行後に設定された借地契約には借地借家法が適用されます。 また、建物滅失後の再築建物の借地期間の延長問題は、建物滅失の原因が地震による全壊の場合と借地人自ら解体した場合で異なるわけではありません。異なるのは賃貸人の承諾ないし異議の有無いかんです。ですから、賃貸人の承諾ないし異議の有無によって場合分けして考える必要があります。 解 説 1 新借地の適用法令 借地借家法施行前(平成4年8月1日前)に「設定」された借地契約には、旧借地法が適用されます(借地借家附則7)。このことは、借地権が借地借家法施行前に設定され、施行後に譲渡または相続された場合でも同様で、旧借地法が適用されます(近畿弁護士会連合会『地震に伴う法律問題Q&A』2頁(商事法務研究会、平7))。 2 再築後の借地期間 借地上の建物が滅失しても借地権が消滅するわけではありませんが、借地期間の延長が問題となります。この延長問題における滅失の原因については、最高裁判例は「借地法7条にいう建物の滅失した場合とは、建物滅失の原因が自然的であると人工的であると、借地権者の任意の取りこわしであると否とを問わず、建物が滅失した一切の場合を指すものと解するのが相当である。」と判示しています(最判昭38・5・21判時345・31)。 再築後の借地期間については、以下のように、再築建物の存続期間、借地権の設定時期、賃貸人の承諾ないし異議の有無により、場合分けして考える必要があります。 (1) 存続期間を超えない建物を再築した場合(応急的な建物を建築する場合) 借地期間が延長されることはありません。このことは、借地権の設定が借地借家法施行の前後で異なることはありません(借地借家7@、借地7)。 (2) 存続期間を超えて存続する建物を再築した場合 ア 借地借家法施行前に設定された借地権 (ア) 賃貸人の承諾を得られた場合(借地2@・7) a 堅固な建物 建物滅失の日から30年間に延長 b 非堅固な建物 〃20年間に延長 c 残存期間が上記より長期の場合は同期間による。 (イ) 賃貸人の承諾を得られない場合(借地2@・7) A 賃貸人が遅滞なく異議を述べない場合 a 堅固な建物 建物滅失の日から30年間に延長 b 非堅固な建物 〃20年間に延長 c 残存期間が上記より長期の場合は同期間によります。 B 賃貸人が遅滞なく異議を述べた場合 借地期間が延長されることはありません。従前の借地契約が継続します。異議のあったことは、更新の際の「正当理由」の判断に当たり、賃貸人に有利(借地人に不利)な事情として斟酌されることになります。 ※ 現実問題として、賃貸人の承諾を得られない場合でも建物を再築することができますが、賃貸人の異議による法律関係の不安定さを回避し、かつ借地期間の延長を確保するという意味では、賃貸人と協議し、ある程度の承諾料を支払ってでも賃貸人の承諾を得るように努めることが再築に際しての判断のポイントになります。 イ 借地借家法施行後に設定された借地権 借地契約の更新前に建物の滅失があった場合には以下のように場合分けして考える必要があります(なお、借地契約の更新後に建物の滅失があった場合には、借地人が賃貸人の承諾を得ないで残存期間を超えて存続する建物を再築したときは、賃貸人は借地契約の解約の申入れをすることができます(借地借家8A))。 (ア) 普通の借地権 A 賃貸人の承諾を得られた場合(借地借家7@) 承諾のあった日または建物が再築された日のいずれかの早い日から20年間に延長されます。ただし、残存期間がこれより長いとき、または当事者がこれより長い期間を定めたときは、その期間となります。 B 賃貸人の承諾を得られない場合(借地借家7A) a 借地人が賃貸人に通知し、同通知があった日から2か月以内に異議を述べなかったときは承諾したものとみなされます。 承諾のあった日または建物が再築された日のいずれかの早い日から20年間に延長されます。 b 借地人が賃貸人に通知し、同通知があった日から2か月以内に異議を述べたとき 借地期間が延長されることはありません。異議のあったことは、更新の際の「正当理由」の判断にあたり、賃貸人に有利(借地人に不利)な事情として斟酌されることになります。 (イ) 一般定期借地権、事業用借地権 再築によって借地期間は延長されません(借地借家22・24)。 建物を再築しても、当初の借地期間の満了により終了します。 Q35 地震で一部損壊した借地上の建物の修理 借地上の建物が地震で一部損壊しました。 @ 建物を修理したいのですが、賃貸人の承諾を得なければならないでしょうか。 また、修理制限特約がある場合、その特約に従わなければいけないのでしょうか。 A 地震で一部損壊した借地上の建物を取り壊して再築することはできるでしょうか。 A@ 原則として賃貸人の承諾なく建物を修理することができます。 修理制限特約(一定の修理・修繕について賃貸人の承諾を必要とする特約)がある場合は、同特約に合理性が認められるものは有効ですが、同特約を理由とする解除については、信頼関係の法理で解除の効力が制限されます。また、通常の修理・修繕まで禁止、制限する特約は無効です。 A 建物の再築は、建物の全部滅失、一部滅失により法的な取扱いが異なるわけではありません。借地人は一部損壊した建物を取り壊して再築することもできます。 解 説 @ 修理と賃貸人の承諾 1 建物の修理の可否 建物は借地人の所有である以上、一部損壊した建物を賃貸人の承諾なく修理することができるのは当然です。 2 修理制限特約 実際の借地契約では、借地人の修理・修繕を制限する旨の特約(例えば、一定の修理・修繕について賃貸人の承諾を必要とする特約)が交わされていることがよくあります。 賃貸人にとっては、借地上の建物が自由に修理・修繕されますと、建物の存続期間が延びる結果、更新の際の「正当事由」の判断に影響を与えますし、建物の残存価値が増加すれば、買取請求権を行使された場合の買取価格も高額になることが予想され、修理・修繕を制限する特約にも一応の合意性が認められます。 ア まず、建物が地震により一部滅失した場合には、借地人は修理・修繕をしなければ契約の目的を達成することができませんから、通常の修理修繕まで禁止、制限する特約は無効です(借地11、借地借家9・16・21参照。なお、同特約を無効とした判例として東京地判昭47・5・31判時681・55。有効とした判例として名古屋高判昭54・6・27判時943・68)。 イ 次に、大規模な修理・修繕を制限する特約は限定的に有効とされることもあり得るでしょう。その結果、特約を無視して修理・修繕を行った場合、賃貸人から特約違反を理由に契約を解除されるおそれがあります。この場合の解除の有効性は、信頼関係の法理(「賃貸人に対する信頼関係を破壊するに足りない特段の事情があると認められるときには、賃貸借契約を解除することができない」)によって判断されることになります(最判昭41・4・21判時447・57)。 ウ しかし、特約違反、借地契約の解除という事態は、借地人にとっても大きな負担となります。したがって、特約で工事内容等を通知することや賃貸人の承諾を要するとされている場合には、賃貸人と協議をして承諾を得るように努めるのが無難です。そして、協議が整わないときは、直ちに工事に着手するのではなく、裁判所に対し賃貸人の承諾に代わる許可を求めるべきです(借地借家17A、借地8の2)。 A 一部損壊と再築の可否 借地上の建物は、同建物が借地人の所有である限り、これを取り壊すことは借地人の自由ですし、これによって借地権が消滅するわけでもありません(借地7、借地借家7)。この理は、建物の全部滅失、一部滅失により法的な取扱いが異なるわけではありません。したがって、借地人は一部損壊した建物を取り壊して再築することができます。再築の場合の問題点についてはQ33を参照してください。 なお、罹災都市法上認められている借地権の対抗力の補充(罹災都市10)、存続期間の延長(罹災都市11)、催告による借地権・転借地権の消滅(罹災都市12・13)の特則は、借地上の建物が災害によって全部滅失したことが要件となっていますので、一部滅失の場合には適用がないことに注意を要します。 Q36 借地上の建物が地震で全壊した場合の借地権の対抗力 地震により借地上の建物が全壊してしまったものですから、避難所に避難していたところ、賃貸人が土地を第三者に売却し移転登記も完了してしまいました。借地権を第三者に主張できなくなってしまうのでしょうか。また、借地権の存在を公示する登記に代わる方法があるのでしょうか。 A 建物が全壊して消滅した場合、建物の登記による対抗力も喪失してしまいます。放置しておくと借地権を第三者に対抗できなくなってしまいます。 そこで、建物が全壊した場合には、建物を特定するために必要な事項、その滅失があった日および建物を新たに築造する旨を土地の見やすい場所に掲示しておけば、建物の滅失があった日から2年間は対抗力が認められます。ただし、2年以内に建物を建築しかつ建物の登記をすることが必要です。 解 説 1 借地権の対抗要件 借地権の対抗要件としては、借地権自体を登記する方法がありますが(地上権につき民177、賃借権につき民605)、この登記をするためには借地権設定者(土地所有者)の承諾を必要とするため、実際にはほとんど利用されていません。 一般に利用されてきたのは、借地上の建物の登記をする方法です(旧建物保護1、借地借家10@)。この登記は、保存登記だけでなく、表示の登記でも足りるとされています(最判昭50・2・13判時772・19)。 2 建物が消滅した場合の対抗力 しかし、建物の登記によって対抗要件が認められるには、建物が存在することが要件です。ですから、建物が全壊して消滅してしまいますと、登記は無効な登記となり、対抗力も喪失してしまいます。建物が地震で全壊してしまっている状態が継続している間に、借地が第三者に売却された場合(いわゆる地震売買)には、借地人は借地権を第三者に対抗できないのが原則です。 そこで、借地人を保護する観点から、借地借家法は、建物が滅失しても、借地人がその建物を特定するために必要な事項、その滅失があった日および建物を新たに築造する旨を土地上の見やすい場所に掲示するときは、建物の滅失があった日から2年間対抗力を認めるとしています。この対抗力が認められるためには、建物の滅失があった日から2年以内に、建物を新たに築造し、かつ、その建物について登記することが必要です(借地借家10A)。この方法は、借地借家法施行(平成4年8月1日)前に設定された借地権も利用できます(借地借家附則8参照)。 〔参考掲示例〕 本件土地については、下記のとおり、当借地人が借地権を有し、建物を建築して所有しておりましたが、平成○年○月○日の地震により同建物が滅失しました。当借地人は同滅失の日から2年以内に建物を再築する予定ですので、ここに借地借家法10条に基づく掲示をします。 記 @ 土地の表示(所在・地番・地積) A 借地期間 B 借地人の表示(住所・氏名) C 滅失した建物の表示(所在・家屋番号・種類・構造・床面積) D 建物が滅失した日 E 本掲示設置日 F 本掲示設置者(住所・氏名) G 連絡先(電話番号等) しかし、この方法は、この掲示が継続的に行われていることが必要で、掲示が滅失した場合には原則としてその対抗力は失われてしまいます。このような場合に借地人を救済するためには、背信的悪意者、権利濫用の法理を駆使して、借地人の対抗要件の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者に該当しないことを主張していくことになりますが、救済は例外的ですので、掲示が滅失した場合には直ちに再掲示するなどの注意が必要です。 なお、罹災都市借地借家臨時処理法が適用される地域では、政令施行の日から5年間、借地権の対抗力が認められています(罹災都市10・25の2)。 Q37 借地上の建物が地震で全壊した場合の建物に設定された抵当権 借地上の建物に抵当権が設定されていたのですが、地震で建物が損壊してしまいました。 損壊した建物を取り壊して建物を再築しようと思いますが、抵当権者との関係でどのような問題が生ずるでしょうか。 A1 建物が地震で滅失した場合は、建物に設定された抵当権も消滅します。 2 滅失に至らない建物を取り壊した場合には、抵当権は消滅しますが、抵当権者から損害賠償を請求されるおそれがあります。 3 再築した建物には抵当権の効力は及びませんが、抵当権者が再築建物に対して仮差押えまたは債務名義をとって差し押えてくることも予想されますので、再築にはこの点の配慮が必要です。 解 説 1 建物が滅失した場合の抵当権 建物が滅失した場合は、建物に設定されていた抵当権は消滅します(抵当権設定登記も無効な登記となります。)。また、借地上の建物に設定された抵当権の効力は、従たる権利である借地権にも及びますから(最判昭40・5・4判時415・19)、建物の滅失とともに、借地権に及んでいた抵当権の効力も消滅します。 借地人が損壊した建物を取り壊して再築しようとする場合には、その損壊の程度が滅失といえるか否かが重要となります。滅失といえるか否かを確認しないまま建物を取り壊した場合には、借地人は抵当権者から担保保存(保管)義務違反、抵当権侵害を理由に損害賠償を請求されるおそれがあります。このような事態を避けるためには、借地人は建物を取り壊す前に抵当権者に通知をして建物の滅失状態を確認してもらうのがよいでしょう。 2 再築した建物に対する旧建物の抵当権の効力 建物が滅失した場合(取り壊した場合も含みます。)、抵当権は消滅しますから、再築した建物に旧建物の抵当権の効力が及ぶわけではありません。抵当権者としては、再築建物について改めて抵当権設定契約を締結する必要があります。 したがって、抵当権者の承諾がなくても建物を再築することは可能ですが、抵当権者を無視して建物を再築したとしても、被担保債権が存在する以上、抵当権者が再築建物に対して仮差押えまたは債務名義をとって強制執行をしてくることも予想されますので、この点は注意を要します。 Q37 借地上の建物が地震で全壊した場合の建物に設定された抵当権 借地上の建物に抵当権が設定されていたのですが、地震で建物が損壊してしまいました。 損壊した建物を取り壊して建物を再築しようと思いますが、抵当権者との関係でどのような問題が生ずるでしょうか。 A1 建物が地震で滅失した場合は、建物に設定された抵当権も消滅します。 2 滅失に至らない建物を取り壊した場合には、抵当権は消滅しますが、抵当権者から損害賠償を請求されるおそれがあります。 3 再築した建物には抵当権の効力は及びませんが、抵当権者が再築建物に対して仮差押えまたは債務名義をとって差し押えてくることも予想されますので、再築にはこの点の配慮が必要です。 解 説 1 建物が滅失した場合の抵当権 建物が滅失した場合は、建物に設定されていた抵当権は消滅します(抵当権設定登記も無効な登記となります。)。また、借地上の建物に設定された抵当権の効力は、従たる権利である借地権にも及びますから(最判昭40・5・4判時415・19)、建物の滅失とともに、借地権に及んでいた抵当権の効力も消滅します。 借地人が損壊した建物を取り壊して再築しようとする場合には、その損壊の程度が滅失といえるか否かが重要となります。滅失といえるか否かを確認しないまま建物を取り壊した場合には、借地人は抵当権者から担保保存(保管)義務違反、抵当権侵害を理由に損害賠償を請求されるおそれがあります。このような事態を避けるためには、借地人は建物を取り壊す前に抵当権者に通知をして建物の滅失状態を確認してもらうのがよいでしょう。 2 再築した建物に対する旧建物の抵当権の効力 建物が滅失した場合(取り壊した場合も含みます。)、抵当権は消滅しますから、再築した建物に旧建物の抵当権の効力が及ぶわけではありません。抵当権者としては、再築建物について改めて抵当権設定契約を締結する必要があります。 したがって、抵当権者の承諾がなくても建物を再築することは可能ですが、抵当権者を無視して建物を再築したとしても、被担保債権が存在する以上、抵当権者が再築建物に対して仮差押えまたは債務名義をとって強制執行をしてくることも予想されますので、この点は注意を要します。 Q39 借地上の建物が地震で全壊した場合の地代の減額 借地上の建物が全壊したので地代の減額を請求したいのですが、どうしたらよいでしょうか。 A 借地上の建物が全壊してもそれだけでは地代の減額を請求することはできませんが、地震により、地代が、経済事情の変動等によりまたは近傍類似の土地の地代等と比較して不相当となったときは、借地人は地代の減額を請求することができます。 解 説 1 建物が全壊した場合の地代の減額請求の可否 借地上の建物が全壊しても、原則として地代の減額を請求することはできません。 しかし、地震災害により、地代が、租税その他の公課の減額により、土地の価格の低下その他の経済事情の変動により、または近傍類似の土地の地代等と比較して不相当となったときは、借地人は地代の減額を請求することができます(借地借家11@)。 2 地代の減額の協議が不調の場合 なお、契約当事者間において減額の協議が整わないときは、借地人は裁判所に減額の申立てをすることができますが、これに対し、賃貸人は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代の支払を請求することができます(借地借家11B)。 また、罹災都市借地借家臨時処理法の適用がある場合は、借地人は、地代等の借地条件が著しく不当となったときは、裁判所に同条件の変更の申立てをすることができます(罹災都市17)。 Q40 地震で損壊した借地の復旧工事の負担者 地震で借地に地割れができ、一部崩落箇所もあるため使用に障害が出ています。復旧工事は借地人の負担でしなければならないのでしょうか。 A 復旧工事は賃貸人の負担であり、借地人は負担する必要はありません。 また、復旧が不可能で契約の目的を達成できないときは、借地契約は履行不能により終了します。 解 説 賃貸人は、借地人に対し、土地の使用および収益に必要な修繕をする義務を負いますので(民606)、地割れ崩落箇所の復旧工事は賃貸人の負担となります。ただし、契約当事者間でこれと異なる特約を締結している場合には、その定めによることになりますが、その特約内容が借地人に余りに過大な負担を強いるものである場合には、その特約は無効となる場合もあるでしょう(借地借家9、借地11)。 その修繕・復旧が物理的、技術的に不可能な場合、あるいは経済的に著しく高額となる場合には、賃貸人は修繕義務を負いません。そして、使用不能によって契約の目的が達成できない場合には、賃貸借契約は履行不能により終了することになります。また、使用不能が部分的であればそれに応じて地代の減額を請求することができます。 2 建物が滅失した場合の借家権 Q41 震災で借家が滅失した場合の賃貸借契約 地震やそれに伴う火災で借家が滅失した場合、賃貸借契約はどうなりますか。また、どの程度まで損傷した場合を滅失というのですか。 A 賃貸借契約は履行不能により終了するのが原則ですが、罹災都市借地借家臨時処理法の適用がある場合には、様々な優先賃借権が認められる可能性があります。また、滅失か否かの基準については、判断が微妙なところですが、@建物の損壊の程度(賃貸借の目的となっている主要な部分が消失して賃貸借の趣旨が達成されない程度に達したか否か)とA経済的観点(修復が通常の費用では不可能か否か)の両方の面から判断する必要があります。 解 説 1 家屋滅失の場合の賃貸借関係 賃借家屋が地震やそれに伴う火災等により滅失するに至ったときは、賃貸借は履行不能により終了するのが原則です(焼失の場合につき最判昭42・6・22判時489・51)。 この場合、賃貸人は使用収益させる義務を、賃借人は賃料支払義務をそれぞれ免れ、敷金や保証金関係も清算されることになります。 しかし、これでは大地震の場合、多数の借家人が一挙に生活の本拠を失うことになってしまいかねないことから、このような事態に対処するため、昭和21年に罹災都市借地借家臨時処理法(以下、「罹災都市法」といいます。)が制定されています。 罹災都市法は、大地震などの一般災害が発生した後、政令で指定することによって適用されることになっていますが(罹災都市25の2)、この罹災都市法では、 @ 罹災まで地主と家主が同一人であった場合など、建物滅失当時に当該敷地に借地権が存在しなかった場合、建物の借主であった者は、2年以内に土地の貸借を申し出ることによって、他の者に優先して、相当な借地条件でその土地を賃借することができる(罹災都市2)。 A 家主が地主から土地を借りて建物を建て、これを貸していた場合など、罹災時に借地権が存在した場合、建物の借主であった者は、2年以内に当該借地権を譲り受ける旨申し出ることによって、他の者に優先して、相当な対価で、その借地権を譲り受けることができる(罹災都市3)。 と定められており、震災で建物を失った場合でも、一定の条件を満たせば、土地の賃借権を取得して自身で建物を建てることができることになっています(ただし、土地所有者が、自身で土地を使用する必要がある場合など、正当な事由がある場合には、土地の賃借を拒むことができます。罹災都市2B)。 また、同法では、それ以外でも、 B 建物の借主であった者は、地主や借地人が罹災後最初に建てた建物につき、建物完成前に申出をすることにより、他の者に優先して、相当な借家条件で、その建物を賃借することができる(罹災都市14)。 と定められており、罹災前に建物の借主となっていた者は、家主が再築した建物につき、優先的に借り受ける権利もあるのです。 2 家屋「滅失」の基準 それでは、家屋が「滅失」したとは、どのような場合をいうのでしょうか。 木造建築かつ火災による滅失の例ですが、裁判例には、2階部分は屋根および北側土壁がほとんど全部焼け落ち、柱・天井の梁軒桁等は半焼ないし燻焼し、階下部分は北側土壁の大半が破傷したほかは概ね被害を免れているものの、罹災のままの状態では風雨をしのぐべくもなく倒壊の危険さえあり、完全修復には多額の費用を要し、建物全部を取り壊し新築する方が経済的であるときは、当該建物は滅失したものである(最判昭42・6・22判時489・51)としたものがある一方、2階部分のほとんどおよび1階の天井部分が焼失したが、その後、賃借人において天井を手入れし、その上に鉄板を張るなどして雨水を防ぎ、営業を継続していること、1階については屋根をかけるだけで居住使用に支障がないこと等の状況があるときは、修復に新築と同様の費用を要するとしても建物はいまだ滅失したとはいえない(大阪地判昭45・9・25判時626・72)としたものもあり、裁判所の判断の分岐点はかなり微妙といえます。 しかし、両判例とも、@建物の損傷の程度(賃貸借の目的となっている主要な部分が消失して賃貸借の趣旨が達成されない程度に達したか否か)とA経済的観点(修復が通常の費用では不可能か否か)との両方を問題としており、参考になるところです。 Q42 避難勧告が出て借家に住めない場合の家賃の支払 修理中であったり、避難勧告が出たりして、借家に住めない場合にも、家賃の支払をしなければなりませんか。 A 賃借物の使用が客観的に不可能である場合には、家賃の支払義務は生じないと考えられます。 解 説 賃貸借契約が成立すると、賃貸人は、賃借人に目的物を使用収益させる義務を負いますから(民601)、避難勧告が出ている場合など、目的物の使用が客観的に不可能である場合には、家賃の支払義務は生じないと解されます。 ただし、目的物が使用収益できる状態にあるのに賃借人が自己の主観的な事情で使用収益しないときは、賃料の支払を拒むことはできない(大判明37・9・29民録10・1196)とされていますので、借家が修理中の場合には注意が必要です。 すなわち、修理が大規模なもので、家主から一時退去を求められたような場合には、目的物の使用が客観的に不可能といえますから、賃料の支払義務は生じないと解されるのですが、修理が小さなものにとどまり、本来なら十分居住可能にもかかわらず、賃借人が「工事中の家になんか住めない」といって勝手に仮住まいに移ってしまった場合には、賃借人の主観的な事情で使用収益しない場合として、使用収益できる部分の賃料支払義務については、生じてしまうおそれがあるのです。 Q43 震災で借家が損壊し、家主から退去を求められた場合 地震で借家が一部損壊しました。修理をすればまだ居住可能と思われ、私も居住を継続したいのですが、家主は修理に多額の費用がかかることから、いっそのこと建物を取り壊したいとして私に退去を求めてきました。私は出て行かなければならないでしょうか。 A 出て行かなければならないかは、建物の損壊の程度、修繕にかかる費用と修繕によって延びる耐用年数、立退きによって受ける賃借人の不利益、家賃の額、立退料支払の有無とその金額、など、様々な要素の総合判断で決まるため、一概にはいえません。ただ、慌てて出ることはせず、家主との間で、本当に取壊しが妥当なのかどうか、再築はあるのか、再築後の建物に入居できるのか、立退料等の補償は得られるのか、など、細かく話を詰める必要があるでしょう。 解 説 1 解約申入れの正当事由 建物が火災等によって一部が滅失した場合に、これを取り壊して新築したり、大改造・大修繕を加えるために、解約申入れのなされることがあり、この場合、解約申入れをするのに必要な「正当事由」といえるかどうかということが争われています。本問もこれと同様に考えることができると思われます。 2 裁判例の傾向 裁判例の中には、正当事由ありとしたものと正当事由なしとしたものの両方が存在しますが、破損が著しく朽廃の迫っている建物については、賃貸人の修繕義務を否定した上で、大修繕または取壊改築のための明渡し請求を正当事由に該当するとして認めたものが多いようです(最判昭29・7・9判タ42・25、最判昭35・4・26判時223・19、東京地判昭35・1・30判時215・30、東京地判昭33・12・3判時180・47、東京高判昭40・6・22判タ180・28など)。 正当事由を認めた理由については、@最高裁昭和35年4月26日判決(判時223号19頁)は、このような場合には建物の効用が全く尽き果てるに先立ち、家主は大修繕により効用期間の延長を図るため、家屋の自然朽廃による賃貸借の終了以前に賃貸借を終了させる必要があり、その必要が賃借人の有する利益に勝る場合にまで、常に無制限に賃貸借の存続を前提とする賃貸人の修繕義務を肯定するのは不合理である、としており、A東京地裁昭和33年12月3日判決(判時180号47頁)は、建物の朽廃により賃借人は早晩賃借権を喪失する運命にあるのであるから、明渡しを受忍すべきである、としています。 また、B東京地裁昭和35年1月30日判決(判時215号30頁)では、修理が莫大な費用を要する割に建物の耐用年数が延びないのに、修理によって使用が可能な限り賃貸人としていつまでも修理を施し賃貸借を継続する義務があると解するのは、その収取する賃料額との関係からいっても賃貸人に酷であり、むしろ改築を相当とする、とされており、その他近年では、C立退き料の提供を伴う建替え(高度再利用のための明渡請求)について、かなり広く正当事由が認容される傾向にあるようです(立退料の支払が正当事由の補強条件となることについては、最判昭38・3・1民集17・2・290)。 一方、正当事由なしとした裁判例には、@朽廃に近い状態にあるが、賃貸人が相応の規模の修繕を施せばまだ相当期間使用できる(東京地判昭34・10・20判時207・24)としたものや、A朽廃の程度が著しくないので賃貸人が必要な改修・修繕を行えば足り、賃貸借を終了させるにはあたらない(東京地判昭33・8・9判時163・20)としたものなどがありますが、数としては相対的に僅かです 3 まとめ 以上の裁判例からすれば、正当事由があるかどうかの判断は、建物の損壊の程度、修繕にかかる費用と修繕によって延びる耐用年数、立退きによって受ける賃借人の不利益、家賃の額、立退料支払の有無とその金額、など、様々な要素の総合判断でなされるということがいえ、その判断は非常に微妙であることがわかります。 しかし、賃借人としては、生活の本拠を失うことになるのですから、本当に取壊しが妥当なのかどうか、損壊の程度と修繕にかかる費用、取壊し後建物を再築するのであれば優先的に入居ができるのか、立退料等の補償を受けられるのか等、様々な点を賃貸人と納得いくまで話し合うことをお勧めします。 Q44 震災で借家が損壊した場合の修理要求 地震で借家が一部損壊した場合、修理を家主に要求することはできますか。また、家主が修理をしてくれない場合、家賃をまけてもらうことはできますか。 A 損壊の程度、内容にもよりますが、@必要な修繕であり、A修繕が可能な場合には、家主に対して修理を請求することができます。また、家主が修理をしてくれない場合、あなたは、使用収益できない割合に応じて賃料の一部支払を拒むことができます。 解 説 1 賃貸人の修繕義務発生の要件 賃貸人は、賃貸物の使用および収益に必要な修繕をなす義務を負う(民606@)とされていますが、修繕義務は、どんな場合にでも生じるわけではなく(特約で修繕義務の範囲を制限している場合もあります。)、@必要な修繕であること、A修繕が可能であること、という2つの要件を満たす場合に生じるとされています(幾代通・広中俊雄編『新版注釈民法(15)』210頁(有斐閣、平元))。 このうち、@修繕の必要性とは、修繕しなければ賃借人が契約によって定まった目的に従って使用収益することができない状態になったことをいいます。 賃貸人の立場からいえば、賃貸人の義務は、単に賃借人をして賃貸物をその用法に従って使用収益させるのに必要な限度にとどまると解するのが相当である(大判昭5・9・30法律新聞3195・14)とされており、賃貸物に生じた破損や障害の程度が「賃借人の使用収益を妨げるものか否か」が、賃貸人の修繕義務発生か否かの分岐点となるのです。 具体的には、損傷の程度、それによって賃借人が被る不利益、賃料の額、賃貸物の資産的価値などを総合的に衡量して決まるとされていますが(東京高判昭56・2・12判時1003・98)、柱や屋根、壁などの主要な構造部分の損壊については修繕義務が認められる場合が多いでしょう。 また、A修繕が可能な否かについて、通説は、物理的・技術的不能だけでなく、経済的ないし取引上の観点から見て不能な場合にも修繕義務はないとしており(我妻榮『債権各論中巻1(民法講義V2)』444頁(岩波書店、昭32)、星野英一『借地借家法(法律学全集26)』619頁(有斐閣、昭44))、裁判例にも、抽象論として同旨の結論を説くものがあります(大阪地判昭29・12・21判時44・13、東京地判昭41・4・8判時460・59)。 すなわち、修繕が物理的・技術的に不可能である場合には、賃貸人は修繕義務を負わないほか、修繕が新築とほとんど同一の費用を要する場合や、賃料が極端に安い上に修繕に過大な費用がかかる場合にも、経済的に修繕が不能であるとして、修繕義務を負わないとなる場合があるということになります。 そのほか、損壊が賃借人の責めに帰すべき事由によって生じた場合にも、賃貸人に修繕義務は発生しないとされています。 2 修繕義務不履行の場合の家賃支払等 賃貸人が修繕義務を履行しない場合、賃借人は、それによって被った損害の賠償を請求し(民415)、賃貸借契約を解除することができます(民541)。 また、この損害賠償請求権をもって賃料請求権と相殺することも可能です(民505)。 さらに、賃借人は、使用収益できない割合に応じて賃料の全部または一部の支払を拒むこともできます(最判昭38・11・28判時363・23)。 Q45 震災で借家が損壊し、家主から修理中の一時退去を求められた場合 借家が地震で一部損壊したことから、家主に修理をしてもらうことになったのですが、家主に、修理の期間中一時建物を明け渡せと言われています。応じなければならないでしょうか。 A この場合、修理に必要な範囲で、一時退去に応じる必要があります。 解 説 民法606条2項は、「賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない」、と定めていますので、家主が賃貸物の修理のために一時明渡しを求めてきた場合、賃借人はこれに応じなければなりません。 賃借人がこれに従わない場合、契約解除の理由とされてしまうこともあるので(横浜地判昭33・11・27下民9・11・2332)、注意が必要です。 ただし、修理をなす賃貸人は、賃借人の利益を害しないことについて周到な注意を払わなければならないとされていますので、修繕に必要な範囲を超えた一時明渡請求でないかについては十分検討し、一時明渡しの範囲について、家主と話し合うのがよいでしょう。 Q46 震災で借家が損壊し、修理中の仮住まい等の費用 借家が地震で一部損壊し、家主に修理してもらうことになりました。修理のために一時仮住まいに引っ越したのですが、引越費用や仮住まいの家賃など、かかった費用を家主に請求できますか。 A 原則として、家主に費用を請求することはできません。 解 説 賃貸人の修繕が賃貸物の保存に必要な行為である場合には、その修繕は、賃貸人の義務であると同時に、賃貸人の権利でもあります(民606)。 これは、賃借人が修理を望むか否かによって、建物に必要な修繕ができたりできなかったりするのでは、賃貸物の価値にも影響し、賃貸人の利益に反することがあるからです。 そして、必要な修繕が賃貸人の権利でもあることから、賃借人は修繕工事のために一時使用収益に支障を生じてもこれを拒むことができず、受任する義務があるとされ、それによって賃借人に損害が生じても、賃貸人には損害賠償の義務もないとされています。 したがって、修理の為に一時仮住まいに引っ越したとしても、引越費用や仮住まいの家賃などは、家主に請求することはできないことになります。 なお、修理のために明け渡している間は、明け渡した建物について家賃の支払義務はありませんので、家賃の二重払のおそれはありません。 Q47 震災で借家が損壊したときは修繕する旨の特約がある場合 地震で家が一部損壊してしまいました。契約書の中に、借家人が全て修繕するという特約があるのですが、大地震が原因でも借家人が修繕する必要があるのでしょうか。 A 特約自体は有効と思われますが、その負担する修繕義務の範囲については、天災による修繕まで含むものと解すべきでないという考え方も有力です。 解 説 1 特約の有効性 賃貸借契約書の中に、修繕義務の全部または一部を賃借人の負担とする特約が入っていることがよくみられます。例えば、畳の交換、電球の交換、障子の張替えなどについて賃借人負担とする特約が入っていることは珍しいことではないでしょう。 これらの特約については、一般的には有効であると考えられており、その効果について、@単に賃貸人の修繕義務を免除する意味に過ぎないと解すべきか、Aそれを超えて積極的に賃借人に修繕義務を課するという意味を含むと解すべきかが、問題となります。 Aの賃借人に積極的な修繕義務があるという解釈をとれば、賃借人が修繕しない場合、賃貸人から賃貸借契約を解除されたり、損害賠償請求を受けたりする危険が出てくるのですが、修繕しないことが賃借人の不便だけでなく賃貸人にとって著しい不利益となるような特別な場合を除いては、@単に賃貸人の修繕義務を免除する意味に過ぎないと解すべきことが多いでしょう。 2 賃借人が修繕義務を負う範囲 特約自体が、例えば、「畳の交換は賃借人の負担とする」のように特約の範囲を明示しており、それが合理的範囲内であれば、問題ありません(当然賃借人の負担となります。)。 しかし、設問のように、「借家人が全て修繕する」というように、範囲が明示されていない場合の修繕義務の範囲は問題となります。 この点については、通常賃借人が負担する修繕の範囲は、小修繕ないし通常生ずべき破損の修繕の範囲に限られるべきと限定的に考える立場が有力であり、設問のような予想外の大震災による被害は、特約があっても賃借人は修繕義務を負わないと解するべきでしょう。 判例にも、旅人宿を営む借家人が、賃借物利用に要する全ての費用を負担する旨の特約は、水害などによって生じた甚大な被害に対する修繕義務を借家人に負担させる趣旨ではない(大判大10・9・26民録27・1627)とするものや、修繕は全て賃借人の負担とする旨の特約も、契約当事者の予想し得べき程度の破損に関する特約であって、何人も予想しなかったような天災による大破損の大修理まで含むものと解することはできない(大判昭15・3・6法律新聞4551・12)とするものなど、予想外の天災による修繕義務を賃借人に及ばないとするものがあります。 Q48 居住不能となったときは敷金を返還しない旨の特約がある場合 地震で借家が全壊し、家主と話し合って引っ越すことにしました。しかし、敷金の返還を求めたところ、家主は、契約書に、「地震等の不可抗力により居住不能となったときは敷金は返還しない」という特約があることを理由として応じてくれません。敷金は戻ってこないのでしょうか。 A 不可抗力による居住不能にも敷金を返還しないという特約は、無効と思われますので、敷金の返還を求めることができると思われます。 解 説 賃貸借契約の中に、一定の事由がある場合には敷金を返還しないという旨の特約が入っている場合があります。 このような特約については、@一般的に有効であるとする考え方や、A賃借人に故意過失がある場合に没収する旨の特約のみを有効とする考え方、B賃貸人の責めに帰すべき事由による場合にも没収するという部分のみ無効とする考え方など、諸説ありますが、どの考え方に立っても、不可抗力による場合にも没収するという部分は無効と考える点は共通しているようです。 本来、契約自由の原則からすればどんな特約でも当事者が納得している限り有効といえるのでしょうが、借家契約の場合、事実上借主が契約条項を飲まされることが多いのですから、このように考えるのが合理的といえるでしょう。 裁判例においても、他からの延焼により建物が滅失した事案において、不可抗力によって家屋が滅失した場合、家屋賃借人は賃貸人に対し保証金(敷金)の返還請求権を有しないという特約の効力を否定したものがあります(大阪地判昭52・11・29判時884・88)。 3 罹災都市借地借家臨時処理法 Q49 罹災都市法の制定経緯 被災者がそれまで住んでいた場所にできるだけ住み続けられるよう被災者を保護する罹災都市法という法律があると聞きました。この罹災都市法は、いつどのような経緯で制定されたのですか。 A 罹災都市借地借家臨時処理法(罹災都市法)は、昭和21年(1946年)に、罹災都市における借地借家人の生活の安定を図る応急的な復興対策を目的とするものとして制定されました。 解 説 1 制定の経緯 罹災都市借地借家臨時処理法(以下、「罹災都市法」といいます。)は、昭和21年に制定されました(昭和21年法律第13号)。この法律は、戦災で多数の建物が失われて多くの人々の生活の本拠が失われることになったために、借地借家をめぐる諸問題について臨時の処理を定めて関係者の権利の調整をはかり、混乱の発生を未然に防止しようとした法律です。したがって、罹災都市における借地借家人の生活の安定を図る応急的な復興対策を目的とするものです。その主眼は、被災者がそれまで住んでいた場所にできるだけ住み続けられるよう被災者を保護することにあります。 この法律は、最高裁判所の判例によれば、「終戦後広地域にわたる多数の罹災都市の罹災者の保護、災害の速やかな復興を図るため、これら罹災地の借地借家関係を調整する措置を講ずべき緊切な要請に基づき、かつて関東大震災直後に惹起された借地借家関係の紛争、復興阻害等の諸事情に対処するため制定された借地借家臨時処理法(大正13年法律第16号)の趣旨を承継すると共に、「戦時罹災土地物件令」(昭和20年勅令第411号)の廃止に伴う善後措置を兼ね」る法律であるとされています(最判昭35・6・15判タ107・49)。 2 借地借家の特別法 昭和21年の制定当時は、罹災建物(太平洋戦争による災害のために滅失した建物)と疎開建物(太平洋戦争に際し防空上の必要により除却された建物)を対象とし、適用地区も勅令で指定するという時限立法的なものでした。 しかし、昭和31年法律第110号の改正によって、火災、風水害等の大規模な災害について、政令で指定して適用されることになりました(罹災都市25の2)。 したがって、政令で災害(罹災都市25の2)および適用地区(罹災都市27A)が定められれば、どの災害地についても適用され得る借地借家の特別法となっています。 3 阪神・淡路大震災、新潟県中越地震 平成7年1月のいわゆる阪神・淡路大震災については、平成7年2月6日に公布・施行された政令第16号によって、同大震災に罹災都市法を適用することおよび適用地区(大阪府と兵庫県の33市町村)が定められました。 また平成16年10月のいわゆる新潟県中越地震についても、平成17年4月15日に公布・施行された政令第160号によって、新潟県中越地震に罹災都市法を適用することおよび適用地区(長岡市等の7市3町村)が定められました。 Q50 罹災都市法による借地権、借家権の保護 罹災都市法には借地権や借家権の保護として4つの要点があると聞きました。それは何ですか。 A 既存の借地権の保護として、@対抗要件の特則、A存続期間の延長があり、借家権の保護として、B罹災借家人の敷地の優先賃借権および借地権の優先譲受権、C罹災借家人の建物優先賃借権があります。 解 説 1 罹災都市法による借地権の保護 罹災都市法では、借地権の保護として次のように規定されています。 (1) 対抗要件の特則 借地権は建物が滅失すると対抗力(借地借家10)がなくなりますが(ただし、借地借家10Aの掲示)、政令施行の日から5年間は対抗力を与えられます(罹災都市10・25の2)。 (2) 存続期間の延長 政令施行の日に借地権の残存期間がわずかだったとしても、借地権の存続期間は10年に延長されます(罹災都市11・25の2)。 2 罹災都市法による借家権の保護 罹災都市法では、借家権の保護として次のように規定されています。 (1) 罹災借家人の敷地の優先賃借権および借地権の優先譲受権 滅失した建物の借家人が建物敷地への借地権の設定を申し出て優先的に借地権を取得できる途を認めました(罹災都市2・3)。 (2) 罹災借家人の建物優先賃借権 滅失した建物の借家人が、その土地に再築された建物に借家権の設定を申し出て、借家権を取得できる途を認めました(罹災都市14)。 詳細については、後の設問(Q55以下)で説明することとします。 3 滅失した建物 上記の記述からも分かるように、罹災都市法の規定は、借地・借家を問わず、建物が「滅失」した場合にしか適用されません。なぜなら、罹災都市法は、建物が「滅失」したことにより、借地については対抗要件を失い、借家については借家関係が終了してしまう場合に備えた法律だからです(ただし、借地借家法17条(借地借家条件の裁判所による変更)は滅失の有無は問いません。)。なお、「滅失」とは、賃貸借の目的となっている主要な部分が消失して全体としてその効用を失い、賃貸借の趣旨が達成されない程度に達していることをいいます。その判断については、消失した部分の修復が通常の費用では不可能と認められるかどうかをも考慮する必要があります(最判昭42・6・22判時489・51)。 Q51 地震で建物が滅失した場合の借地人の保護 借地上の建物が地震で滅失してしまいました。地主が土地を第三者に売却しようとしていると聞いたのですが、借地が売却されても、新所有者に対して私の借地権を主張できるのでしょうか。 A 政令施行の日から5年間は、登記なしで対抗力が認められるため(罹災都市10・25の2)、その間はあなたが新所有者に借地権を主張できます。 解 説 1 罹災都市法10条の趣旨 借地人の保護の1つ目として、政令施行の日から5年間は、登記なしで対抗力が認められました(罹災都市10・25の2)。 借地権者が借地権の対抗要件(新しい所有者等に対して自己の借地権を主張できる要件)を備える方法には、@土地について借地権の登記をする方法(民605)と、A借地上の建物の所有権の登記をする方法(借地借家10)とがあります。このうち、@の方法は地主の協力が必要なので(不登60)、通常はAの方法がとられています。 このAの場合、借地上の建物の登記によって認められていた対抗要件は、建物の滅失により消滅してしまいます(ただし、借地借家10Aの掲示)。 そうすると、土地が処分されてしまった場合には、新しい土地所有者に対して自己の借地権を主張できなくなってしまいます。これでは、罹災により建物を失った借地人の地位が著しく不安定になってしまいます。 そこで、罹災都市法は、そのような場合でも、政令施行の日から5年間は、登記なしで対抗力を認め、新しい土地所有者に対しても自己の借地権を主張できるようにしました。 なお、借地権または建物の登記なくして対抗力が認められるのは5年間だけですから、その間に借地権の登記をするか建物を建てて登記をしておかなければ、それ以降の第三者には対抗できません。 2 滅失時の建物登記の要否 罹災都市法10条の適用を受けるためには、必ずしも建物滅失当時、その借地権または建物について登記を有していたものに限らないとされています(最判昭32・1・31判時103・13)。なぜなら、本条の立法趣旨が戦時の非常事態の下における借地権者を特別に保護してその戦争による不利益をできるだけ少なからしめようとするものである以上、滅失当時建物について登記をしていた者と未だ登記をしていなかった者との間に借地権の第三者に対する対抗力についての法律上の保護に差を設けることは不合理であるからです。 Q52 震災時借地権の残存期間が短い場合の借地人の保護 震災時借地権の残存期間が1年しかなく、建物を再築しても直ぐに約束した賃貸借期間が満了してしまいます。このような場合において、借地権の存続期間の点で、建物を再築する借地人を保護する規定はないのでしょうか。 A 借地権の残存期間は、政令の施行された日から起算して10年間に延長されます(罹災都市11・25の2)。 解 説 1 存続期間の延長 借地人保護の2つ目として、借地権の残存期間が10年間に延長されます(罹災都市11・25の2)。 震災時借地権の残存期間が短ければ、再築しても直ぐに期間満了となってしまい、更新が認められるかどうか問題が出てきます(借地借家5・6、借地4・6)。また、残存期間がわずかなときには、再築できないまま期間満了となり、建物がないことから借地借家法5条、借地法4条による更新を受けられなくなってしまいます。 そこで、罹災都市法は、このような不都合を避けるため、政令施行の日に借地権の残存期間が10年未満のときは、一律に10年間と延長しました。 2 延長の起算日 この期間の起算日は、政令が施行された日と解されており(東京高判昭34・4・30判タ90・31)、実際に借地が使用できるようになった日ではないとするのが判例です(最判昭37・8・14民集16・8・1765)。 もちろん、既存の借地契約による残存期間が10年より長ければ、その期間となります。 3 延長後の更新 罹災都市法11条で存続期間が延長された借地権についても、同条の趣旨が、一面において罹災によって建物を失った残存期間の短い借地権の存続を確保して、他面において借地権者の地位を安定し建物築造を促して建物復興に協力させることを目的としたものなので、その更新には借地借家法5条、6条の適用があります。したがって、地主は正当事由がなければ更新を拒絶できません(最判昭36・2・14民集15・2・231)。 Q53 建物が滅失した状態での借地権の譲渡と土地所有者の承諾 地震で滅失した建物の所有者で借地権者が借地権を譲渡したいとき、土地所有者が承諾しない場合にはどうすればよいでしょうか。 A 簡易なコストのかからない建物を建てた上で、土地所有者の承諾に代わる裁判所の許可を求めるしかありません。 解 説 罹災地の既存借地権でも、罹災都市法により成立した借地権でも、土地賃借権の譲渡には土地所有者の承諾が必要であるという原則に変わりはありません(民612)。 一方、土地所有者の承諾に代わる裁判所の許可があれば、借地権が譲渡できる場合がありますが、この場合には「賃借権の目的である土地の上」に「建物」があることが要件となっています(借地借家19)。そのため、地震で建物が滅失してしまい、自ら借地上に建物を建築する資力がなく再築することができない場合、土地所有者の承諾に代わる裁判所の許可の申立てはできません。 この点については、借地権者にいささか酷であることから、立法的に改善を求める声もありますが、立法的な解決には至っていません。 そのため、地震で滅失した建物の所有者で借地権者が借地を譲渡したいときには、簡易なコストのかからない建物を建てた上で、土地所有者の承諾に代わる裁判所の許可を求めるしかありません。 Q54 土地所有者からの催告による既存借地権の消滅 罹災都市法によって罹災地の既存借地権が消滅させられることはあるのでしょうか。 A 罹災都市法12条によって、土地所有者からの催告によって既存借地権が消滅させられる場合があります。 解 説 通常、借地上の建物が滅失しても借地権自体は消滅せず、借地権の残存期間が10年未満のときは10年間、それ以上のときはその期間、賃借権が存続します(罹災都市11)。 しかし、借地権者が土地利用の意思も持たずに放置しているような場合には、宅地の有効利用にはなりません。 そこで、罹災都市法は、土地所有者が、罹災当時からの借地権者に対して、政令施行の日から2年以内に、1か月以上の期間を定めて借地権を存続させる意思があるかどうかを催告し、この期間満了までに借地権者が借地権を存続させる意思があることを申し出ない場合には、この期間満了時に借地権は消滅する制度を設けました(罹災都市12)。 なお、ここで期間満了までに借地権者がしなければならないのは、借地権を存続させる意思がある旨の申出だけで足り、別段建築に着手するなどの何らかの行動が必要なわけではありません。 Q55 罹災都市法上の借家人の保護 罹災都市法における借家人の保護の要点は何ですか。 A 罹災都市法上の借家人の保護として、@罹災借家人の敷地優先賃借権、A罹災借家人の借地権の優先譲受権、B罹災借家人の建物優先賃借権があります。 解 説 1 罹災都市法における借家人の保護 罹災都市法上の借家人の保護として、次の3つが挙げられます。 (1) 罹災借家人の敷地優先賃借権 滅失した建物の借家人は、政令施行の日から2年以内に、借家の敷地の所有者に申し出ることにより、他の者に優先して、相当な借地条件でその土地を賃借できます(罹災都市2・25の2)。 (2) 罹災借家人の借地権の優先譲受権 滅失した建物の借家人は、政令施行の日から2年以内に、借家の敷地の借地権者に申し出ることにより、他の者に優先して、相当な対価でその借地権の譲渡を受けることができます(罹災都市3)。 (3) 罹災借家人の建物優先賃借権 滅失した建物の借家人は、その敷地に新たに建築された建物について、その完成前に申し出ることにより、他の者に優先して、相当の借家条件でその建物を賃借することができます(罹災都市14)。 2 借家が修復できる場合 災害によって借家が被害を受けても、滅失に至らず修復可能であれば、借家人は借家契約が継続していますので、家主に対し原則的には借家の壊れた部分の修繕を求めることができます(民606@)。 3 借家が滅失した場合 一方、借家が滅失すると、賃貸借の趣旨が達成できなくなることから、借家契約は当然に終了するものと解されています(最判昭32・12・3判タ78・50)。したがって、借家のあった土地に新しい建物が建っても、既に借家契約が終了している以上前の借家人が借りることができるとは限りません。ましてや、自分でその土地に建物を建てることもできません。 そこで、罹災都市法は、借家人の入居するべき建物の復興を図る見地から、上記のような規定をおいているのです。 Q56 土地所有者に対する借地権設定の申出 土地所有者に借地権設定の申出をして、借家人が借地権を取得したいのですが、そのためにはどのような要件が必要なのでしょうか。 A 借地権を取得するには、罹災都市法2条に掲げられた要件をすべて満たす必要があります。 解 説 借家人が、土地所有者に借地権設定の申出をして借地権を取得するための要件は罹災都市法2条に掲げられています。すなわち、借地権を取得するには、次の要件をすべて満たす必要があります。 (1) 申出をする者(罹災都市2@本文) 罹災建物が滅失した当時におけるその建物の借主 (2) 申出の相手方(罹災都市2@本文) 罹災建物の敷地またはその換地の所有者 (3) 申出の期限(罹災都市2@本文・25の2) 政令施行の日から2年以内 (4) 申出の内容(罹災都市2@本文) 建物所有の目的で賃借すること (5) 申出の条件(罹災都市2@但し書) @ 土地を権原により現に建物所有目的で使用する者がいないこと A 土地上の建物の建築に許可を要する場合には、その許可を得ていること (6) 土地所有者から3週間以内に拒絶の返事がないか(罹災都市2A)、拒絶の返事があっても拒絶に「正当な事由」が認められないこと(罹災都市2B) なお、申出自体は、(1)〜(5)の要件を満たしていれば、有効な申出として認められます。 Q57 借地権取得の申出権者とその相手方 どのような人が借地権の取得(ないし譲渡)の申出をできるのですか。また、申出をする相手の土地所有者とは具体的にはどのような人ですか。 A 罹災都市法2条、3条で借地権の取得ないし譲渡の申出ができるのは、罹災建物の滅失当時の借主です。また、借地権取得の申出の相手方は、申出の時点の土地所有者になります。 解 説 1 申出権者 罹災都市法2条、3条で借地権の取得ないし譲渡の申出ができるのは、罹災建物の滅失当時の借主です。 この建物の借主は、「罹災によって建物が滅失した当時に有効かつ適法な使用関係に基づいてこれを利用していた者」等と定義され(広瀬武文『借地借家法』278頁(日本評論新社、昭25))、賃貸借契約上の借主のみならず使用貸借上の借主(最判昭32・11・1判タ77・29)、一時使用目的の借家人、転借人、建物の一部の借主(ただし、他の部分から独立かつ専属的に使用する場合)、共同で借り受けた者などは適法な占有であればすべて含まれ、居住者でなくともよい(東京地判昭25・9・11判タ7・63)とされていますので、居住していない転貸人、店舗・事務所・倉庫に使用していた者も含まれます。また、罹災建物の滅失当時の借主の相続人も申出権があると考えられています(中川淳編『判例コンメンタール借地借家法』530頁(三省堂、昭53))。 もっとも契約解除により権限を失った不法占拠者や無断転借人は、適法な使用権者ではない以上含まれません。 2 申出の相手方 借地権取得の申出の相手方は申出時点の土地所有者です(罹災都市2)。したがって、罹災後に所有者が代わっていれば、新所有者に対し上記申出をすることになります。なお、申出をした後で所有者が代わった時には、改めて申出をする必要はありません。 また、所有者が共有者の場合には、共有者全員に申出をすることが必要です。 Q58 敷金の返還を受けたときの借地権取得 敷金の返還を受けると借地権取得の申出はできなくなりますか。また、「合意解約」した場合はどうですか。 A 敷金の返還を受けていても、罹災都市法2条の要件を充たせば、借地権取得の申出ができます。また、借家人が上記申出権を有することを認識した上で、それを放棄する趣旨で「合意解約」をしたことが明らかでなければ(「今後、借地借家の申出をしない」など)、安易に借家人が上記申出権を放棄したものとして借地権取得の申出を認めないとすべきではないと考えます。 解 説 1 敷金の返還と借地権の取得 借家が滅失した場合は、当然に借家契約は終了し、その明渡義務も消滅しますから、借家人は、借家の滅失による借家契約終了と同時に、当然敷金の返還を請求することができます。 この敷金の返還は、借家契約終了に伴い当然に行なわれるべき清算処理に過ぎませんから、優先借地権設定の申出権の有無に影響を及ぼすことはありません。したがって、既に敷金の返還を受けていても、罹災都市法2条の要件を満たせば、上記申出をすることができます。 最高裁昭和54年3月15日判決(判時924号52頁)においても、「借主は罹災焼失した建物についての敷金の返還を受け新たに別の建物を賃借しながら、従前の建物の敷地面積の2倍を越える本件土地上に一方的に建物を建築して事実上本件土地を占有したうえ、これについていわば事後承諾を求める形で不可分一体のものとして借地申出に至ったような事情の下では、土地所有者は、建物所有の目的で自ら本件土地を使用する必要がない場合でも借地申出を拒絶しうる正当の事由が認められる」と判示しており、敷金の返還を受けた借家人の優先借地権設定の申出権自体は否定せず、その存在を前提とする土地所有者の拒絶の正当事由の判断をしています。 2 借家人による放棄 優先借地権設定の申出権を行使するか否かは借家人の自由ですから、それをあらかじめ放棄することは可能です。そこで、借家人が建物所有者との間で上記申出権を放棄する旨の合意がなされていれば、借家人は上記申出をすることができません。 もっとも、借家人が上記申出権を有することを認識した上で、それを放棄する趣旨であることが明らかな意思を表示した場合(「今後、借地借家の申出をしない」など)でなければ、安易に放棄の効果を認めるべきではないと考えます。よって、敷金返還に際して作成した書面に「何らの債権債務がないことを相互に確認する」などの文言が記載されていたとしても、これは単に建物滅失による契約関係の終了とそれに伴う敷金返還などの清算処理が終了したことを確認したものと解すべきであり、申出権まで放棄したと解するのは相当ではないと考えます。 3 「合意解約」がなされた場合 この点、借家が滅失したことで既に借家契約は終了している以上、借家契約を「合意解約」する余地はありません。ここで問題となるのは、この「合意解約」の法的な意味が、@単に建物滅失による契約関係の終了を確認したものと解されるのか、A罹災都市法の申出権を放棄する旨の合意と解されるのかというところにあります。 そもそも、罹災都市法による申出権を認識していない両当事者間でAの合意がなされることは考えられません。この場合は、@の確認として考えられます。したがって、上記申出をすることができます。 次に、当事者の一方にだけその認識があり、一方は@の確認として、他方はAの合意として「合意解約」がなされた場合は、その意思表示が無思慮・急迫に乗じたものとして無効となることが多いものと思われます。 そして、両当事者にその認識があった場合には、「合意解約」が@の確認か、Aの合意かは、その合意の解釈によります。この点については、借家人が上記申出権を有することを認識した上で、それを放棄する趣旨であることが明らかな意思を表示した場合でなければ、安易に放棄の効果を認めるべきではないと考えます。 Q59 優先借地権の申出 私は、優先借地権の申出をしたいと考えていますが、既に土地を使用している者がいると、申出ができなくなりますか。 A その土地を正当に使用する権原を有する者が、建物所有の目的で現に使用している場合は、優先借地権の申出をすることはできません。 解 説 1 罹災都市法2条1項但し書 罹災都市法2条1項但し書前段によれば、罹災建物が滅失した当時の建物の借主は「その土地を、権原により現に建物所有の目的で使用する者があるとき」は、優先借地権の申出をすることはできないものとされています。 その趣旨は、正当な権原に基づいて現に建築を開始した者を排除してまで罹災建物の借家人を保護するのは行き過ぎであり、そのような場合には、借家人側の事情を問わず優先借地権の申出を許さないとするものです。 2 正当な「権原」とは 条文上の正当な「権原」を有する者にあたる場合とは、具体的には、土地の所有者(最判昭28・4・16判時2・11)、賃借人、転借人、使用借人等の場合であり、対抗要件を備えた場合である必要はありません(最判昭29・4・2判タ40・22)。 3 「使用」しているかの判定時期 次に、現に使用している者がいるか否かの判定は、申出をした時点で行います。申出の後で使用し始めた者がいても、申出は有効です。 もっとも、土地所有者は申出を受けた日から3週間以内は拒絶の意思表示ができますし(罹災都市2A)、土地所有者が、近く建築を行うことが確実であれば、原則として申出拒否に正当事由があると解されますので(罹災都市2B)、申出が有効でも、申出後3週間経過までの間に土地所有者が建築を始めたような場合には、借地権の取得が認められない場合もあります。 4 「土地を使用している」とは 最後に、建物所有の目的で土地を使用している場合とは、建物所有の目的での使用であることが外形上識別できる程度に客観的な行為が行われることが必要です。具体的には、地ならしをして、基礎工事を始めるとか、土台石の設置、建築資材の搬入などの行為があれば使用しているといえます。建築請負契約を締結した程度や、建築用地の立札を立てた程度では、現に使用とはいえないでしょう(鈴木禄弥『借地法(上)(現代法律学全集14)』310頁(青林書院新社、昭46)の引用判例を参照)。 アドバイス 本質問の場合借地申出はできませんが、要件を満たせば、建物完成前に申出すれば、建築される建物に対する借家の申出は可能です(罹災都市14)。 Q60 優先借地権の申出の要件 借地権取得の申出の要件とされる「土地に建物を築造するについて許可を必要とする場合」(罹災都市法2条1項但し書後段)というのは、どのような場合をいうのですか。 A 建築基準法84条の建築制限、都市計画法53条による建築制限、土地区画整理法76条などの制限のある場合に許可が必要となります。 解 説 1 罹災都市法2条1項但し書後段 罹災都市法2条1項但し書後段の「許可を必要とする場合」とは、判例によると「警察目的のために建物を建築するについて新たに許可を要するというような場合をさすのではなく、一定の土地の境域内において建物の建築が一般的に禁止・制限されており、許可があるときにのみとくに、その建築が許される場合をいう」(最判昭29・7・6判時32・26)とされています。 したがって、建築基準法に基づき建築確認を必要とするような場合は、一定区域での建築の禁止ではありませんので、但し書後段には該当しません。 2 「許可を必要とする場合」の具体例 許可を要する具体的例としては、建築基準法84条の建築制限、都市計画法53条による建築制限、土地区画整理法76条の建築制限のある場合などがあります。 @土地区画整理事業の都市計画決定の告示(都計20)前であれば、建築基準法84条の建築許可が必要となり、A同事業の都市計画決定の告示後は都市計画法53条の建築許可を必要とし、B同事業の都市計画決定または変更の公告後換地処分の公告までの間であれば、土地区画整理法76条の許可を必要とします。 3 「許可を必要とする場合」の実例 もっとも、阪神・淡路大震災の際、神戸市などでとられた建築基準法84条の建築制限は、木造、鉄骨、コンクリートブロック造りで2階建までで地階のない建物は制限外とされ許可は必要とされませんでしたし、都市計画法54条にも同法53条による許可申請の場合には上記とほぼ同様な条件があれば許可しなければならない旨の規定がありますので、事業計画の決定前であれば原則として許可が取得できることになります。 4 「許可」の取得時 最後に、許可はいつまでに取得することが必要かについては、罹災都市法2条1項但し書後段は「その許可がないときは、その申出をすることができない。」とされていますので申出前に許可が必要となります。 許可前であっても許可を条件として申出することは可能とする判例もありますが(宇都宮地判昭26・2・15下民2・2・198)、その場合でも借地申出期間内に許可を得ることができなかったときは申出は効力を失うとされています(甲府地判昭25・日付不明、下民1・2・300)。 Q61 優先借地権を土地所有者が拒絶できる場合 優先借地権の申出をしたのですが、土地所有者が拒絶できる「正当な事由」とは、どのような場合でしょうか。 A 土地所有と借家人それぞれの土地を使用する必要性の程度、利用価値の大小、他に居住可能な住居を有しているかなどを総合して判断することになります。 解 説 1 罹災都市法2条2項 土地所有者が優先借地権取得の申出を受けた日から3週間以内に拒絶の意思表示をしないときは、その期間満了の時に申出を承諾したものとみなされますが(罹災都市2A)、3週間以内に拒絶の意思表示をしても正当な事由がなければ優先借地権の取得が認められることになります(罹災都市2B)。 2 罹災都市法2条3項の正当な事由 罹災都市法2条3項でいう「正当な事由」とは、土地所有者(借地人を含みます。)と借家人それぞれの当該土地を使用する必要性の程度、利用価値の大きさ、優先借地権が認められることによる両者の利益・不利益その他双方の諸般の事情を考慮して判断されることになります(最判昭29・4・30判時27・7)。 正当事由の存否の判断によって、土地所有者(借地人)、借家人の利害の調整を図る趣旨です。 借家人側の有利な事情としては、借家人が当該土地以外に居住に使用できる場所がないこととか、営業上その土地での営業が不可避であること、相当な権利金を提供していることなどが考えられ、不利な事情としては、土地所有者も震災に遭い当該土地で居住する必要がある場合や、困窮のため当該土地を売却せざるを得ない場合、土地所有者から代替土地の提供がされている場合などが考えられます。 3 土地所有者の申出拒否に正当事由ある場合 また、土地所有者が建築に着手すれば、借家人側の事情は考慮されずに、借地権の申出はできないとされていますし(Q59)、罹災都市法2条3項が「正当な事由」として「建物所有の目的で自ら使用することを必要とする場合」を例示していることから、土地所有者が、自己使用、賃貸用を問わず、建物建築の意思を有し、相当の準備をしており、近く建築を行うことが確実であれば、原則として、申出拒否に正当事由ありと考えられます。 その場合、借家人は罹災都市法14条による優先借家権により保護される余地がありますが、建築予定の建物の規模・構造・用途によっては、優先借家権が認められない場合もあり、そのような場合は土地所有者の資金事情、土地の有効利用の観点を含め双方の事情を総合的に考慮して「正当な事由」の存否が判断されることになります。 Q62 優先借地権の取得時期 借家人が借地権取得の申出をしたときに、借地権を取得できるのはいつでしょうか。 A 土地所有者が承諾したときか承諾ありとみなされるときに借地権を取得できます。 解 説 1 借地権譲渡の申出権の法的性質 借家人の罹災都市法2条の優先借地権取得の申出権、同法3条の借地権譲渡の申出権はいずれも法律的には形成権ではなく請求権であると解されています。 したがって、借地権取得の申出によって直ちに賃貸借契約が成立するのではなく、土地所有者がその申出を承諾するか、または同法2条2項によって、これを承諾したとみなされるときに初めて借家人と土地所有者との間に賃貸借契約が成立すると解されています(最判昭24・2・8民集3・2・31)。 2 借地権の取得時期 そこで、借地権の取得時期を場合分けすると次のようになります。 @ 罹災都市法2条の借地権取得の申出があった場合に、相手方が承諾すれば、その時点で借地権を取得します。 A 土地所有者が申出の到達後3週間以内に拒絶の意思表示をしなければ、3週間を経過した時点で借地権を取得します(罹災都市2A)。 B 土地所有者が3週間以内に拒絶の意思表示をした場合でも正当事由がない場合は、拒絶の意思表示は効力がありませんから、やはり、3週間を経過した時点で借地権を取得します(罹災都市2B)。 Q63 優先借地権の権利内容 借地権取得の申出により、借家人が取得した借地権の内容はどのようなものですか。 A 期間は10年とされ、更新が可能です。その他の借地条件は当事者間の話合いで定めますが、協議が整わない場合は調停、裁判となります。 解 説 1 存続期間 まず、存続期間については罹災都市法2条に基づく借地権の場合10年と定められています。当事者間でこれより長い期間を定めることもできますが、10年より短い期間を定めても10年とされます(罹災都市5A但し書)。この期間が満了した場合は、通常の借地権と同様更新の問題となり(最判昭36・3・24民集15・3・572)、借地借家法5条、同法6条の適用により、更新の可否が決まります。 2 地代その他の借地条件 地代の額、支払方法、権利金などその他の借地条件や建物の構造、規模、用途などは当事者の話合いで決めることになります。罹災都市法2条1項は「相当な借地条件で、その土地を賃借することができる。」と定めていますが「相当な借地条件」の内容は当事者の協議で定めるしかありません。当事者間で協議が整わないときは、裁判や調停手続により決めることになります。その際は従前の賃貸借の条件、土地または建物の状況その他一切の事情を斟酌して裁判所が決定します(罹災都市15)。 裁判所の管轄は、借家または借地の所在地の地方裁判所であり、手続は非訟事件手続法によります(罹災都市18)。 Q64 優先借地権と法定地上権の関係 土地に地主の借入金のために抵当権が設定されていた場合、罹災都市法2条により借地権を取得して建物を建てた後に土地が競売されると、建物は収去させられるのでしょうか。 A 法定地上権の成立に関する最近の有力な考え方によれば、建物を収去する必要性が高いものと考えられます。ただし、競落人の新築した建物に罹災都市法14条により優先借家権の主張ができることになります。 解 説 1 優先借地権と抵当権の優先関係 罹災都市法2条で取得した借地権には対抗力がありますが、土地に設定された抵当権の登記よりも後に対抗力を備えたことになりますので土地の抵当権者には対抗することはできません。 したがって、抵当権が実行されて第三者が競落すると、原則として、借地人は建てた建物を収去して土地を明け渡さなければならなくなります。 2 法定地上権の成否 しかし、罹災都市法2条の場合、滅失した建物は地主の所有であったのですから、その建物が土地の抵当権の設定当時に存していたのであれば民法388条により法定地上権が成立し、再築建物はその効力によって維持できる、つまり、抵当権の実行により登場した土地の新所有者に法定地上権の主張ができると考えることもできます。 従来は、同一所有者に属する土地・建物について共同抵当権が設定された後建物が取り壊されて再築された場合、再築したのが土地所有者であっても第三者であっても旧建物の範囲で法定地上権の成立が認められると解されていました(我妻榮『新訂担保物権法(民法講義III)』354頁(岩波書店、昭43)。大判昭13・5・25民集17・1100)。 したがって、法定地上権が認められる期間は建物の収去、土地の明渡しを拒否できると解することができました。 しかし、最近は原則として法定地上権の成立を認めないとする考えが有力となり、裁判例も多く出ています。東京地裁執行部も同様の見解です(東京地平4・6・8執行処分判タ785・198)。 したがって、この立場からは法定地上権が認められないことになりますので、借地人は競落人に対抗できず建物を収去せざるを得ないことになります。 3 優先借家権の成立 その場合、競落人が土地上に建物を新築した場合には、罹災都市法2条により借地権を取得した借地人は、今度は罹災都市法14条により優先借家権の主張ができることになります。同条は罹災建物の借主以外の者によって最初に建築された建物について優先借家権の取得を認めていますが、罹災都市法2条により借地権を取得し建物を建てた借地人は罹災建物の借主であったわけですから、同人以外の者である競落人が建てた建物が罹災借家人にとって最初に建築された建物に該当するからです。 Q65 借地権譲渡申出権の成立要件 借地権者に借地権譲渡の申出をして、借家人が借地権を取得できるためにはどのような要件が必要ですか。 A 原則として、罹災建物の滅失当時の借主が、政令施行日から2年以内に、借地人または転借人に対しそれを譲り受ける旨の意思表示をすることが必要です。 解 説 1 罹災都市法3条の要件 罹災都市法3条の借地権譲渡の申出をして借地権を取得するためには、以下の要件が必要です。 (1) 申出ができる者 申出ができる者は、罹災建物の滅失当時の借主である必要があります。建物の借主であれば賃借人だけでなく使用借人や一時使用の借主も含まれます。申出権者の範囲は、2条の場合と同様です(Q57)。 (2) 申出の期間 申出の期間は、被災地について政令が施行された日から2年以内に借地権譲渡の申出を相手方に意思表示することが必要です(罹災都市2@・25の2)。 (3) 申出の方法 申出の方法に特に制限はなく、書面でも口頭でもよいとされています(東京高判昭30・11・26東高時報6・11・272)。ただし、2年以内に相手方に意思表示が到達することが必要ですので、期間内に確実に到達したことを証拠に残すために、申出は配達証明付内容証明郵便でした方が確実です。 (4) 申出の相手方 申出の相手方は原則として借地人となります。しかし、申出前に借地権が譲渡されていた場合は、その譲受人が申出の相手方となります。また、適法な転借人がいる場合には、その転借人が相手方になります。この場合、申出の対象となるのは転借人の有する転借権ということになります(罹災都市3括弧書)。 2 その他の要件 その他、現に土地を権原に基づいて建物所有の目的で使用する者がいないこと、土地上の建物の建築に許可を要する場合には、その許可を必要とすること、相手方から3週間以内に拒絶の返事がないか、拒絶の返事があっても、拒絶に「正当事由」が認められないこと等、罹災都市法2条の場合と同様な要件が必要です。 Q66 罹災都市法3条の借地権の譲渡が認められた場合の借地条件 罹災都市法3条により借地権の譲渡が成立した場合、譲渡価格や賃料その他の借地条件はどうなるのですか。 A 借地条件は存続期間以外、従前の契約条件を引き継ぎますが、譲渡価格は当事者間の協議により決め、協議が整わないときは裁判所が決定することになります。 解 説 1 従前の借地条件の継承 罹災都市法3条の借地権の譲渡の場合は、既に成立している借地権が譲渡されるものですから、原則として、地代の額や、その支払方法、建物の構造などは、従前の借地契約で定められた借地条件をそのまま引き継ぎます。 ただし、残存期間が10年未満であるときは、罹災都市法11条により政令施行日から10年に延長されます(罹災都市25の2)。 2 借地権譲渡価格 譲渡価格は、「相当な対価」とされますが(罹災都市3)、その価格はまず当事者間の話合いで決めることになります。当事者間の協議が整わない場合は、裁判、調停によって決めることになります(罹災都市15)。裁判所は、鑑定委員会の意見を聴きながら、土地の状況その他一切の事情を考慮して「相当な対価」を決定することになります。 なお、借地権の譲渡人が有する借地権譲渡の対価の支払請求権を担保するため、借地権者が建築した建物の上に先取特権が成立します(罹災都市8)ので注意が必要です。 Q67 土地所有者による優先借地権の消滅請求 土地所有者は、借家人が借地権設定の申出をするかどうかを催告し申出権を消滅させることはできませんか。 A 催告により借地権の申出権を喪失させることはできません。 解 説 罹災都市法には、土地所有者が罹災建物借家人に対し、一定期間内に借地権設定の申出をするか否かの催告をして、申出の有無を確定させるという規定はありません(なお、借地権者に対する催告につき借地借家12)。したがって、仮にそのような催告をした場合に借家人から何ら回答がなかったとしても、借地権の申出権を喪失させるという効果はありません。結局、土地所有者としては政令施行の日から2年間待つか、2年間の経過前に申出できないことを確定させるには、自ら建物建築のための使用を開始するほかないことになります(罹災都市2@)。 もっとも、土地所有者からの催告に対し借家人が何ら回答せず、後になって申出がなされたような場合、土地所有者がこれを拒絶した場合の正当事由の判断としては、その申出が催告で設けた期間の経過後になされたことは一つの事情として考慮される余地があります。 なお、以上は罹災都市法3条による借地譲渡権の申出についても同様に考えられます。 Q68 優先借地権の消滅 罹災都市法2条、3条により借地権が成立した後、借家人が土地の使用を開始しなかった場合にはその借地権が消滅することがありますか。 A 正当な理由なく1年間建物所有の目的で土地の利用が開始されない場合、土地所有者は賃貸借契約を、借地権の譲渡人は賃借権譲渡契約を解除することができます。 解 説 1 罹災都市法7条1項 罹災都市法2条で優先借地権の設定を受けた借家人が、設定後1年を経過しても正当な理由なく建物所有でその土地の利用を始めなかったときは、土地所有者は賃貸借設定契約を解除することができます(罹災都市7@)。同法3条による借地権譲渡の場合には、譲渡人が借地権譲渡契約を解除できることになります。 借家人の保護の見地から認められた優先借地権、借地権の優先譲受権であっても、正当な理由なしに借家人がその土地を長期間放置することは土地所有者に著しく不利益であるからです。 なお、借地権の取得について裁判や調停で争われている場合は、1年は裁判の確定、調停の成立から起算されます。 2 建物所有で土地の利用を始めた場合とは 建物所有で土地の利用を始めたとは、資材置場としての使用などでは足りず、建物の基礎工事の開始や土台石の設置など外形上建物所有で使用していることが客観的に識別できる程度の行為が行われることが必要です(罹災都市2@但し書参照)。39坪の土地にバラック式1坪内外の小屋を無届で建築したのみでは、土地の使用を始めたとはいえないという判例(東京地判昭25・2・14下民1・2・195)や、「単に土地建物上の構築物としての一応の外観形式を有するだけのものでは足りず、それぞれの場合に応じ、住居用、営業用、貯蔵用等建物が一般に利用せられるそれぞれの目的にかなう程度の構造及び設備を有し、かつ、かかる目的のために現実に利用せられるか又はかかる目的のために築造せられたるものでなければならない」という判例(東京地判昭35・12・21判タ114・56)があります。 3 土地の使用を開始しない場合と正当事由 1年経過しても建物所有で土地の使用を始めなかったことに「正当な事由」がある場合とは、第三者が不法占拠していて借地人が土地の使用を開始できない場合や建築に必要な許可を獲得するのに日時を要する場合、借地権の取得自体が係争中である場合など社会通念に従った判断として、借家人が1年を経過して使用を始めないことが正当と判断されるような場合です。単に、建築資金を用意できないというような場合には正当事由を否定されることになると思われます。 4 土地の使用を止めた場合 借家人がいったん建物所有で土地の使用を始めても、建物完成前にその使用を止めた場合には、やはり土地所有者は契約を解除することができます(罹災都市7A)。借家人がその土地を使用する意思を放棄したものとみなされるからです。借地権の譲渡の場合は譲渡人が譲渡契約を解除することができます。 使用を止めたといえるためには、一時期中断しているが再開予定であるような場合ではなく、建築を断念する場合のように使用を廃止する場合を意味します。 Q69 複数の借家人がいる場合の優先借地権の範囲 借家に複数の借家人がいた場合、そのうちの1人から借家の敷地全体の借地権設定の申出をすることはできるのでしょうか。 A 他の借家人が既に建築を開始していない場合は、敷地全体の優先借地権の取得を申し出ることができます。 解 説 1 優先借地権の範囲 罹災建物の借家人が複数存在する場合(例えば罹災建物が集合住宅で多数の借家人がいる場合)、借家人のいずれもが罹災都市法2条の「借主」に該当し、その間の優劣関係はありません。したがって、その内の1名が敷地全体について優先借地権の取得を申し出ることも可能であると解さざるを得ません。 もっとも、他の借家人が優先借地権に基づき敷地の一部に建物の建築を開始した場合は、罹災都市法2条1項但し書の「権原により現に建物所有の目的で使用する者」にあたりますので、その範囲で他の借家人は優先借地権の申出はできなくなります。 2 優先借地権の範囲と土地所有者の拒絶の正当事由 また、土地所有者が申出を拒絶した場合には、1名の借家人が全部の土地を使用することの相当性が、土地の広さや借家人の数などの諸事情とともに正当事由の有無の判断において考慮されるはずですから、敷地全体について優先借地権の取得の申出ができるといっても、実際に敷地全部の賃借権が認められることになるとは限りません。 Q70 複数の借家人間における優先借地権取得の優先関係 借家に複数の借家人がいた場合、複数の借家人から優先借地権取得の申出があると、どうなりますか。 A 複数の申出があった場合、早く申し出た者が優先するか、あるいは競合を認め、当事者間の協議、あるいは裁判所の割当てによる決定となる申出者の範囲をどこまでとするかについては、争いがあります。 解 説 1 優先借地権の競合を認める説 どの範囲まで複数の借地権申出の競合を認めるかについては、様々な考え方が成り立ちます。 まず、形式的な平等を重んじ、すべての罹災借家人に機会を与えようとして、先後を問わず、借家人は誰もが罹災都市法2条の申出をできるとする考えです。 この考えでは、罹災都市法の施行から2年以内の申出をすべて有効であるとし、申し出た者全員と土地所有者が協議し、協議が成立しないと罹災都市法16条によって裁判所が割当てをすることになります。 裁判所が割当てを決定しても、2年の申出期間内に新たな罹災都市法2条の申出があった場合、既に割当てを受けた者と新たな申出人との間で更に割当ての裁判をすることになります。 この考え方の難点は、協議により、あるいは裁判所が決めるといっても、期限内は新規の借地申出があると、それも加えて割当ての再検討が必要になることです。その結果、割当ての決定は、2年の期限を経過するまで実際上難しいことになり、被災地の早期の復興目的に反するばかりか、罹災借家人は何度も裁判手続を強制されることにもなりかねません。 2 申出により借地権を最初に取得した者を優先する説 次に、最初に申出をした借家人が優先すると考える立場もあります。もちろん、その申出が要件を欠いた場合は優先しませんので、正確にいえば、申出により借地権を最初に取得した借家人が、他の申出人全員に優先するというものです。 土地所有者の承諾がない場合には、3週間経過のみなし承諾により借地権を取得することになりますので(罹災都市2A)、一番先に申出をした借家人が借地権を取得することになりますが、承諾による借地権の取得であれば、後から申し出た借家人でも最初に承諾をもらった者が優先することになります。 したがって、この説の難点は、早く申出をした者が優先することから、不用意な申出でも早いもの勝ちになるおそれがあることや、土地所有者が好まない借家人を妨害するため、意を通じた1人の借家人に申出をさせ、同人を承諾することにより借地権を成立させて、他の借家人からの申出を一切遮断するという手段が可能となることです。最初の申出を受けてから借地権が成立するまで3週間必要ですから、その間はこの方法がとれることになります。 さらに、土地所有者と意を通じた借家人はいつまでも建物を建築せず、土地所有者は罹災都市法7条の解除権を行使しない方法により、長期間土地が放置されることにもなりかねません。 3 一部の競合を認める説 次に、優先借地の申出に対して土地所有者の承諾がありまたは3週間が経過して承諾とみなされた時点で借地権が成立するのでその後の競合は認めないとする考えもあります。 この考え方によれば、土地所有者の承諾による借地権成立以外の場合は、最初の申出から3週間内に申出をしておけば、最初の申出人に優先されることはなく競合が認められることになり、協議するか罹災都市法16条による裁判所の割当てにより決定されることになります。 土地所有者が意を通じた借家人と共謀してその後の申出を遮断することができるという難点は2の考え方と同様ですが、1説のように2年間は競合が生じてしまうことを避け、また、最初の申出から3週間内の競合を認めることにより先に借地権を取得した者だけが優先するとして競合の余地をほとんど認めないとする2説の結果を避けようとする考え方です。 Q71 優先借地権が競合する場合の裁判所による割当て 優先借地権取得申出者、借地権の優先譲受権申出者が複数競合した場合の裁判所による割当てとは、どのようなものですか。 A 競合した申出者間で協議が整わない場合、裁判所が土地の状況、各借家人の経済状態、土地の有効利用など一切の事情を考慮して誰にどの範囲の借地権を設定するかを決定することです。 解 説 1 割当ての意義 複数の借家人から優先借地権取得の申出がなされた場合、あるいは借地権の優先譲受権の申出がなされた場合、全員が敷地全体に借地権を取得することは不可能ですから、借家人間で誰がどの範囲で借地権を取得するかを協議することになります。当事者間で協議が整わない場合は、申立てにより裁判所が割当ての方法を決定することになります。 2 割当てと鑑定委員会 裁判所は、鑑定委員会に諮問することなく、土地の状況、各借家人の経済状態、土地の有効利用など一切の事情を考慮して割当ての方法を決定することになります(罹災都市16@)。 鑑定委員会の諮問を不要とした趣旨は「割当の問題は、裁判所の常識によって決定さるべきで、専門的知識を要しないから、割当については鑑定委員会の意見を徴すべきではない」からとされています(近畿弁護士会連合会編『地震に伴う法律問題Q&A』86頁(商事法務研究会、平7))。 3 裁判所による割当てと金銭の給付 裁判所は、借地の細分化を避けるため、複数の申出人の1人を選択して土地の全部について借地権の取得を認めることができますが、当事者間の公平の見地から、割当てを受けられなかった者や著しい不利益を受けた者のために割当てにより利益を受けた者に対し相当額の金銭の給付を命じることができます(罹災都市16A)。 4 中高層マンションの借家人と割当て 現実の割当ての際は、困難な問題が生じることが予想されます。例えば、100坪の土地上に建物が2棟あり、それぞれ借家であったような場合は、土地を2つに分けてそれぞれを割り当てることが可能ですが、集合住宅・商業ビルなどの中高層建物で100人を超える借家人がいることも珍しくないという場合には、割当てをすること自体容易ではありません。 多数の借家人から借地権設定の申出があった場合に、1人ひとりに土地を分割して割り当てることは不可能ですし、仮に可能だったとしても狭小な土地の一戸建てを増やすことが望ましいとは限らないからです。 結局、借地権の割当てとは、誰がどういう建物を建てるかということを決めることでもありますから、裁判所としては、土地の有効利用の見地から、その土地上にどういう建物を建てるのが最も適切かを考え、申出人の中で誰がふさわしい計画を持ち、準備を整えているかなどを検討し、また、複数の申出者が共同できるのならその複数に割り当てることや将来の建物の共同利用関係も視野に入れながら、総合的な判断が求められることになります。 Q72 優先借家権取得の要件 罹災都市法に基づいて借家人が借家権を取得できるためには、どのような要件が必要ですか。 A 優先借家権は、罹災都市法14条に規定されています。詳しくは、以下に説明します。 解 説 1 優先借家権取得の要件 罹災都市法における優先借家権を取得するためには、同法14条に規定されている、次の要件が必要となります。 @ 罹災建物が滅失した当時における当該建物の借主が申出をすること A 上記借主以外の者によって、その建物の敷地または換地に最初に築造された建物についての申出であること B 建物完成前に申出をすること C 相当な借家条件で賃借すること D 申出から3週間以内に、正当事由に基づく拒絶を受けないこと 2 要件に関する注意点 罹災都市法における優先借家権は、同法14条に規定されています。 優先借家権取得の要件は上記1の@〜Dのとおりですが、以下の点に注意する必要があります。 (1) 換地処分があった場合 罹災建物の敷地が換地処分を受けた場合、旧借家人はその換地上に築造された建物についても優先借家権の申出をすることができます(罹災都市14@)。ただし、罹災建物の敷地に建物が築造された後で換地処分がなされた場合は、当該建物の最後の借家人でない限り、優先借家権の申出ができないことに注意を要します(罹災都市14@但し書)。 (2) 申出の時期 法文上、建物の「完成前」に行うことが要求されています(罹災都市14@)。 「完成」の意味については、建物の床・天井・壁・柱等、建物としての主要な築造が完了したことをいう、とする裁判例が存在します(東京地判昭26・6・11下民2・6・748)。ただし、現在の建築工法では上記主要部分の完成までにさほど時間を要さないので、旧借家人の権利行使の機会を確保すべく、「完成」の時期をもう少し遅い時期に認定すべきとする見解もあります(震災救済法研究会編『詳しい震災と借地借家の法律相談』154頁(日本評論社、平7))。 (3) 相当な借家条件 「相当な借家条件」(罹災都市14@)の内容を具体的に規定した条文は存在しません。当事者は協議によりその内容を定めることができますが、協議が調わない場合には裁判所に申立てを行うことが可能です。申立てを受けた裁判所は、鑑定委員会の意見を聞き、従前の賃貸借の条件、土地または建物の状況その他一切の事情を斟酌して「相当な借家条件」を定めることになります(罹災都市15)。 従前の賃貸借の条件(借り得利益)は、借家条件検討の一要素となりますが、新規に建物を建築するには相応のコストがかかるので、従前の賃料がそのまま新規賃料に反映されると考えることはできません。新規賃料は、従前の賃貸借の条件のほか土地や建物の状況、期待利回り、近隣相場等を総合的に考慮して判断されることとなります。 阪神・淡路大震災により滅失した建物に関する裁判例には、借り得利益を一定程度考慮に入れて、正常賃料から5%を減額したもの(神戸地決平9・3・18罹災都市決定集123頁)、従前の賃料が新規賃料としても適正であったことや従前の賃料が低廉であったことに合理的な理由がないことを理由として、正常賃料からの減額を認めなかったものが見受けられます(神戸地決平9・2・28罹災都市決定集119頁、神戸地尼崎支決平9・8・29同128頁)。 (4) 申出拒絶の正当事由 正当な事由に基づく申出拒絶を受けた場合には、優先賃借権は成立しません(罹災都市14A・2B)。 正当事由の存否は、家主側が建物を使用する必要性、借家人側が建物を使用する必要性、財産的給付などを総合的に考慮して判断されることとなります。 正当事由について判断した阪神・淡路大震災関係の裁判例としては、神戸地裁平成9年8月4日決定(罹災都市借地借家臨時処理法非訟事件決定例集135頁)が挙げられます。この決定は、再築建物に旧借家人が再開を予定している営業に適した設備がないこと、家主が再築建物において予定している営業には再築建物の全部を要すること、家主は再築建物を建設する土地のほかに土地を所有していないことなどを考慮して、申出拒絶の正当事由を認めています。 アドバイス 優先借家権の申出の相手方は再築建物の所有者であると解されますが、罹災建物の旧所有者が再築建物の所有者になるとは限りません。優先借家権の申出は、前記のとおり建物完成前になされる必要があるので、建物完成後に登記簿等で所有者を確認して申出をしても手遅れになってしまいます。 そこで建築中の再築建物の所有者を知る手段が問題となりますが、旧家主に確認するほか、再築建物の建築確認概要書(市役所等で閲覧可能)により確認するという手段も有効といわれています(震災救済法研究会編『詳しい震災と借地借家の法律相談』153・155頁(日本評論社、平7))。 Q73 優先借家権者に対する建築主からの催告 罹災都市法14条により借家人が優先借家権の申出をするかどうかを、建築主から催告することはできませんか。建物完成まで待っているほかないのでしょうか。 A 催告は可能ですが、催告後一定期間経過後に優先借家権が消滅するという制度は存在しません。ただし、催告が、優先借家権の申出を拒絶する正当事由を判断する一資料として機能する可能性はあります。 解 説 1 催告権の有無 建築主が旧借家人に対して、優先借家権を行使するか否かを事実上催告することはもちろん可能です。 しかし、罹災都市法には、建築主が旧借家人に対して優先借家権を行使するか否かを申し出るよう催告し、催告後一定期間を経過しても返答がない場合には優先借家権が消滅するという制度(催告権)は設けられていません(なお、借地権者に対する催告につき借地借家12)。よって、催告を行ったとしても、それが優先借家権を消滅させる直接の手段として機能することはありません。 建築主(土地所有者)側には早期に建物を完成させるという手段があるのに対して、罹災借家人側には、新たに設定される優先借家権の内容(賃料・敷金、借家権の目的となる建物の具体的な形状等)が不分明であり、短期間のうちに権利行使するか否かを判断することが困難だという事情があるので、このような結論になるのもやむを得ないところです。安易に建築主の催告権を認めてしまうと、罹災借家人等の保護という罹災都市法の主な趣旨が無にされる危険性があります。 2 事実上の催告の意味 ただし、このような催告に全く意味がないわけではありません。建築主の催告がきっかけで旧借家人との意思疎通が円滑化する可能性がありますし、建築主が合理的な期間を定めて優先借家権を行使するか否かを催告したにもかかわらず、旧借家人が何の応答もしない場合には、優先借家権の申出を拒絶する正当事由(罹災都市14A・2B)を判断する一資料として機能する可能性があるという見解も存在します(震災復興・都市づくり研究会編『罹災法の実務Q&A』193・194頁(法律文化社、平8))。 アドバイス 優先借家権者に対する催告権は認められませんが、建築主としては、旧借家人のリアクションを促して意思疎通を円滑化するため、また、後日紛争が生じた場合に優先借家権の申出拒絶の正当事由を可能な限り補完するため、旧借家人に対して書面により事実上の催告を行うのが得策でしょう。 Q74 中高層建物が再築された場合の借家申出 中高層建物が再築された場合、罹災都市法14条の借家申出はどのようになりますか。 A 中高層建物が再築された場合も、罹災都市法14条の優先借家権申出を行うことが可能です。ただし、同一建物内で複数区画の割当てを行うことから、通常建物の場合とは異なる問題が生じます。 解 説 1 中高層建物が再築された場合の借家申出の可否 罹災都市法は中高層建物が再築された場合を予定した規定を設けていませんが、同法14条1項は再築された「建物」の種類を限定していないので、この場合も旧借家人は優先借家権の申出をすることができます。 旧借家人は、任意に区画を指定して申出を行うことができ、また、特定の区画を指定せずに、「再築建物のうちの1区画」という形で申出を行うことも可能と解されています(震災救済法研究会編『詳しい震災と借地借家の法律相談』167頁(日本評論社、平7))。 2 中高層建物が再築された場合に特有の問題点 ただし、中高層建物については、同一建物内で複数区画の割当てを行うこととなるため、通常建物の場合とは異なる問題点が生じます。 (1) 建築主が旧借家人の申出とは別の区画を指定すること この場合、旧借家人が希望する区画を賃借したいという申出は拒絶されているので、旧借家人はまず建築主と協議をした上で、建築主との協議が整わない場合には、裁判所に紛争解決を求める申立てを行うことができます(罹災都市15)。もちろん、建築主の指定と抵触しない範囲で、再度優先借家権の申出を行うことも可能です。 (2) 申出の競合が生じる場合 これは、複数の申出者間で希望区画が重なった場合や、再築建物の建替え個数が減少したため申出をした旧借家人の一部が入居できなくなる場合がこれに該当します。 この場合も、まず当事者間で協議を行うことになりますが、協議が整わない場合には、裁判所に割当ての申立てを行うことができます(罹災都市16@)。 優先借家権の場合、適法な申出を行った者の間に申出の先後による優劣の関係はなく、早く申出を行ったからといって優先されるわけではないことに注意を要します(Q75参照)。 3 滅失時に建物が存在していたが中高層建物が再築された場合 滅失当時通常建物が存在していたにもかかわらず中高層建物が再築された場合にも、旧借家人は優先借家権の申出を行うことができます。 ただし、旧借家人が建築主に対して、自分が希望する種類の建物を建築するよう求める法律上の権利は存在せず、旧借家権が消滅してしまっている以上それに基づく立退料の請求もできないため、中高層建物では借家の目的を達することができない場合には、優先借家権の申出が無意味になりかねません。 このような場合には、優先借家権ではなく、罹災都市法2条の優先借地権の申出を行うことが考えられます。優先借地権の申出も正当事由があれば拒絶されますが、正当事由の存否を争う過程で、正当事由を補完すべく建築主から旧借家人に対する一定の金銭給付が必要と裁判所により判断される可能性があります(震災救済法研究会編『詳しい震災と借地借家の法律相談』163・164頁(日本評論社、平7))。 Q75 複数の優先借家権申出があった場合における優先借家権と他の借家権との関係 罹災都市法14条の申出により借家権が既に成立した場所について、さらに他の者から申出があった場合にはどうなるのでしょうか。また、建物所有者が既に他の者に賃貸して引渡ししている場合にも、借家権の主張ができるのでしょうか。 A 優先借家権が既に成立した場所についても他の者は優先借家権の申出をすることができ、両者は申出が競合する場合として、罹災都市法16条1項により処理されます。 優先借家権の申出後に他の者に対して家屋が賃貸され引き渡された場合も、優先借家権者は借家権の主張をすることができます。 解 説 1 優先借家権成立前に申出が競合した場合 優先借家権成立前に複数の優先借家権の申出が競合した場合、罹災都市法16条1項の問題として処理されることに問題はありません。Q74で解説したとおり、当事者はまず協議を行い、協議が整わない場合には、裁判所に割当ての申出を行うことになります。 2 優先借家権成立後に申出が競合した場合 優先借家権が既に成立した場所につき他の優先借家権者の申出があった場合については、他の者はもはや優先借家権の申出をすることができないとする制限説と、成立前に複数の申出がなされた場合と同じく申出の競合として罹災都市法16条1項により処理されるとする無制限説との争いがありますが、後者の無制限説が有力です。罹災都市法2条が規定する優先借地権については、権利成立とともに他の者は優先借地権申出をなし得なくなるとする制限説が有力であるのと対照的です。 自ら建物を建築する優先借地権の場合と異なり、優先借家権の場合は他の者が建築する建物に入居するか否かを判断しなければならず、再築建物に関する建築主の意向をある程度確認しなければ権利の申出を行うかどうかを決めるのが困難であること、また、優先借地権について成立後の申出競合を認めると政令施行後2年という長期間にわたって権利が確定しない(罹災都市2@・25の2)という不安定な状況に陥るのに対して、優先借家権の場合は建物が完成すればもはや申出が不可能になるため、早期の権利関係安定という政策的要請が比較的乏しいことが無制限説支持の理由として挙げられています(震災救済法研究会編『詳しい震災と借地借家の法律相談』169・170頁(日本評論社、平7))。 3 建物明渡請求の可否 優先借家権の申出後に建築主が優先借家権者以外の第三者に再築建物を賃貸して引き渡した場合、優先借家人は建築主(賃貸人)に対して、自らの賃借権に基づき建物引渡を請求することができます(最判昭25・1・17判タ2・45)。 上記判例は、建物引渡しを受けた第三者に対する建物明渡請求(賃借権に基づく妨害排除請求)の可否についてまでは言及していませんが、優先借地権の場合には申出後に地主から権利を設定された第三者に対する対抗力が認められると解されており(震災復興・都市づくり研究会編『罹災法の実務Q&A』37〜39頁(法律文化社、平8)、優先借地権成立後の事例につき最判昭30・10・18判時63・2)、対第三者の場面で優先借地権と優先借家権とを別異に取り扱う合理的な理由はないので、この場合も優先借家権の対抗力を認めるべきでしょう。 よって、優先借家権の申出後に建築主から建物を賃借し引渡しを受けた第三者も罹災都市法14条により優先借家権者に優先される「他の者」に含まれ、優先借家人は第三者に対する建物明渡請求をなし得ると考えます。 アドバイス 無制限説を前提とした場合、複数の優先借家権申出について申出の先後による優劣はなく、いわゆる「早い者勝ち」とはならないことに注意を要します。 Q76 裁判所への申立て方法 罹災都市法の適用に関して、裁判所への申立てはどのようにするのですか。 A 罹災都市法に基づき、借地等の所在地を管轄する地方裁判所等に対して非訟事件の申立てを行うか、民事調停法に基づき、借地等の所在地を管轄する簡易裁判所等に民事調停の申立てを行うことになります。事案の性質によっては、一般の民事事件と同じく、地方裁判所に訴訟を提起し得る可能性もあります。 解 説 1 罹災都市法に規定されている紛争 罹災都市法15条、16条、および17条等に規定されている紛争については、裁判所への申立てを行うことができます。 申立ての類型としては、以下のものが挙げられます。 2 非訟事件の申立て 罹災都市法18条に「…第15条乃至前条の規定による裁判は、借地又は借家の所在地を管轄する地方裁判所が、非訟事件手続法により、これをする」と規定されているとおり、借地等の所在地を管轄する地方裁判所に対して非訟事件の申立てを行うのが原則的な形態です。非訟事件においては、訴訟事件とは異なり、審理は非公開で行われ、弁論主義の適用はなく(職権主義、職権探知)、また紛争を適切に解決すべく裁判所に広範な裁量権が認められています。 非訟事件の申立てがあった場合、裁判所は鑑定委員会の意見を聞き(罹災都市15・17の紛争の場合)、土地または建物の状況等一切の事情を考慮し(罹災都市15・16の紛争の場合)、事案の性質に即して、敷金や地代の金額等、具体的な解決内容を定めます。 管轄裁判所は、法文上、借地または借家の所在地を管轄する地方裁判所と定められていますが(罹災都市18)、借地借家法41条ただし書きを準用ないし類推適用して、当事者の合意により簡易裁判所を管轄裁判所とすることもできるとする見解があります(震災復興・都市づくり研究会編『罹災法の実務Q&A』224・225頁(法律文化社、平8))。 非訟手続による裁判は裁判上の和解と同じ効力を有します(罹災都市25)。すなわち、確定判決と同様の既判力や執行力が認められます。 非訟手続による裁判に不服がある場合、紛争当事者は即時抗告をすることができます。抗告期間は2週間です(罹災都市24)。 裁判所が事案の性質上当事者間の話合いによる解決が相当であると判断した場合には、職権により、次項で説明する民事調停手続に付すことができます(罹災都市23)。 3 民事調停の申立て ある程度話合いの余地があると思われる事案については、民事調停の申立てを行うこともできます。管轄裁判所は原則として紛争の目的である借地または借家の所在地を管轄する簡易裁判所ですが、当事者の合意により地方裁判所とすることも可能です(民調24)。 民事調停は、裁判所の調停委員会が当事者双方の言い分を聞き、適切な解決方法を検討した上で助言や斡旋を行うことにより、当事者を合意に至らせる手続です。 合意の内容を記載した調停調書は、やはり確定判決と同一の効力を持ちます(民調16)。 4 民事訴訟の可否 罹災法の適用対象となる紛争について民事訴訟を提起できるか否かについては争いがあります。 賃料等賃貸の条件に関する紛争は、国による後見的作用が要求されるものゆえ、非訟事件によるべきであり、民事訴訟によることはできないと解されます。 しかし、優先賃借権の存否に関わる紛争は、権利の存否そのものに関する紛争であり、本来民事訴訟の領域に含まれるものです。また、例えば優先借地権の存否につき争いがあるうえ、目的土地が第三者に引き渡されているような事案の場合、土地明渡しを求める民事訴訟において賃借権確認も求めることを可能とする方が、適正迅速な紛争解決に資するといえます(否定説に立つと、民事訴訟の前に必ず優先借地権確認を求める非訟事件手続を経なければならないという結論になってしまいます)。 そこで、優先賃借権の存否に関わる紛争については、民事訴訟の提起も許されるとする説が主張されています(震災復興・都市づくり研究会編『罹災法の実務Q&A』228・229頁(法律文化社、平8))。この点に関する最高裁判例はなく、下級審の裁判例には肯定・否定両者が存在しますが(肯定した例として東京高判昭27・3・29下民3・3・433、東京地判昭26・9・27下民2・9・1129等、否定した例として東京地判昭25・9・11判タ7・63)、肯定説を採る例のほうが多く、実務は肯定説を支持していると解されています(小柳春一郎『震災と借地借家』247頁(成文堂、平15))。 借家権確認および借家条件決定申立書(非訟事件)の簡単な記載例をご参考までに紹介します。 参考書式 借家権確認及び借家条件確定申立書 平成○年○月○日 ○○地方裁判所 御中 当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり 申立の趣旨 申立人が、別紙物件目録記載の建物につき借家権を有することを確認するとともに、上記借家権につき相当な条件を定める との裁判を求める。 申立の理由 1 罹災による賃借建物の滅失 2 建物の建築・建物完成前の賃借申出 3 相手方による申出拒絶 4 申出拒絶につき正当事由が存在しないこと ・申立人が本件建物を自己使用する必要性 ・相手方が本件建物を自己使用する必要性がないこと 5 よって申立人は、本件建物につき借家権を有することの確認、及びその賃借条件の確定を求めて、本申立てを行う。 証拠方法 甲1 建物賃貸借契約書 甲2 罹災証明書 甲3の1 賃借権設定申出書 甲3の2 同配達証明書 添付書類 1 甲号証の写し 各1通 (当事者目録及び物件目録 省略) 第4章 財産、保険、生活に関する問題 1 財産管理、相続 Q77 行方不明者の財産管理 災害により、従兄弟が行方不明になっていました。従兄弟には財産があり、当面の間、従兄弟の財産をどのように管理すればよいのか分かりません。従兄弟の財産管理は誰がどのようにしたらよいのでしょうか。 A 従兄弟(行方不明者)に、法定代理人がいる場合、あるいは、自ら財産管理人を定めていた場合には(非常にまれなことです。)、その者が、財産管理をします。 それ以外の場合には、申立てにより家庭裁判所が選任した財産管理人が、財産管理をします。 解 説 1 従兄弟(行方不明者)が未成年者であった場合 親権者(父と母)が生存していれば、法定代理人として、親権者が財産管理を行います(民824)。また、災害等で親権者が亡くなっていた場合には、後見が開始し(民838一)、後見人が法定代理人として財産管理を行います(民859@)。親権者は、遺言で後見人を指定できますが(民839@)、事前に遺言で指定していることは少ないと思われます。その場合には、未成年者・親族・利害関係人の請求によって、家庭裁判所が後見人を選任します(民840)。 2 従兄弟(行方不明者)が成年者であった場合 成年者の場合には、財産を自己管理することが原則であることから、事前に財産管理人が選任されていたかどうかによって、異なります。 (1) 財産管理人が事前に選任されている場合 任意後見人(任意後見契約に関する法律)・成年後見人(民8等)が選任されていれば、その者が、財産管理をします。また、行方不明者自ら財産管理人を置いていた場合には、その者が財産管理をしますが、このように財産管理人が存在することは、非常にまれであると思われます。 (2) 財産管理人が選任されていない場合 おそらくほとんどのケースでは、財産管理人が存在しないと思われます。この場合には、家庭裁判所に財産管理人の選任の申立てを行い、財産管理人を選任してもらう必要があります。 申立ては、推定相続人・債権者あるいは担保権者等の利害関係人や検察官が行います。単なる友人・知人は含まれません。 そして、家庭裁判所が、調査の上、財産管理の必要性が認められれば、財産管理人を選任します(民25@)。 財産管理人は、原則として、保存行為や目的物および権利の性質を変更しない範囲内の利用または改良を目的とする行為をする権限しかありませんが(民28・103)、それ以外の行為をする場合には、家庭裁判所の許可があれば行うことができます。 なお、財産管理人が選任されるまでの間に、行方不明者の財産管理を始めてしまった場合には、財産管理人が選任されるまで、事務管理行為が明らかに本人に不利な場合等を除いて、管理行為を継続しなければなりません(民697・700)。災害時には、緊急事務管理(民698)が成立する場合が多いと思われますので、仮に管理行為によって行方不明者の財産に損害が発生しても、事務管理者に悪意または重過失がなければ、免責されることとなると思われます。 Q78 行方不明の場合の相続 災害により父親が行方不明のまま、安否も全く分かりません。父の財産について、相続は開始するのでしょうか。 A 認定死亡や失踪宣告が下されていれば、相続は開始しますが、そうでなければ、相続は開始しません。 解 説 1 認定死亡制度 認定死亡制度とは、震災・海難・山津波・洪水などの事変に遭遇した者は、死亡したことは確実であるが、死体が発見されないなどにより死亡が確認できない場合には、取調べをした官公署(警察署長・領事など)が、死亡地の市町村長へ死亡報告をし、これによって本人の戸籍簿に死亡の記載を行う制度です(戸89)。認定死亡は、死亡の蓋然性が極めて高い場合に行われ、戸籍記載の日に死亡したものとして相続が開始することになります。 大規模な大震災ともなれば、認定死亡がなされることが多いと思われます。 2 失踪宣告 失踪宣告は、普通失踪と危難失踪の2種類ありますが、震災等を原因とする場合には、危難失踪に該当すると考えられます(民30A)。震災・津波等の死亡の原因となる危難に遭遇して生死不明の状態が1年以上継続した場合には、家庭裁判所に失踪宣告の申立てを行うことができます。申立ては、身分上・財産上の利害関係がある者(利害関係人)が行方不明者の住所地の家庭裁判所に行います。家庭裁判所は、失踪宣告の申立てがあると、調査の上、公示催告を行い、催告期間経過後に、失踪宣告を行うことになります。このような失踪宣告が行われると、危難の去った時に死亡したとみなされます(民31)。「みなす」とは、死亡の効果を確定的に生じさせることを意味します。 なお、失踪宣告が行われても、行方不明者の権利能力を剥奪するものではありません。あくまで、行方不明者が死亡したものとして相続を開始させるなどの死亡したのと同様の効果を生じさせるものです。ですから、死んでいたと思われる行方不明者が実は生存していて、どこかで物品の購入契約等の法律行為を行うことに問題はありません。 3 行方不明者が生存していることが判明した場合の処理 (1) 認定死亡の場合 行方不明者が生存していることが判明すれば、認定死亡の効力は失われ、戸籍の訂正が行われます。認定死亡後、生存していることが判明している間、相続人等が行った財産行為や身分行為については、無効となりますが、それでは、相手方の保護にかけることから民法32条1項後段を準用すべきだという説や準用を否定する説などがありますが、前者が有力と考えられます。 (2) 失踪宣告の場合 行方不明者が、生存するか、異なった時期に死亡したことの証明がある場合には、本人・利害関係人の請求により家庭裁判所が取消しの審判を行います(民32@本文)。 失踪宣告が取り消されると、相続は開始していなかったことになります。ただし、失踪宣告後、宣告取消し前に善意で行っていた行為は、例外的に有効となります(民32@後段)。例えば、失踪宣告によって相続した不動産を、宣告取消前に、売却していた場合などです。ちなみに、契約の場合には、「善意」とは、契約当事者双方が善意であることを意味します(大判昭13・2・7民集17・59)。 Q79 死亡者の財産管理 災害により、1人暮らしの隣人が死亡してしまいました。隣人の財産管理や相続はどのようになるのでしょうか。 A 隣人に相続人がいるのであれば、相続人が財産管理をします。相続人がいることが不明の場合には、申立てにより家庭裁判所が選任した相続財産管理人が、相続財産の管理と精算を行います。 解 説 1 相続財産管理人制度 人が死亡すると、相続が開始します(民882)。相続人がいる場合には、相続人が、財産管理を行います(民918@)。しかし、相続人は、被相続人と一定の身分関係にある者に限定されているため、相続人が存在しないという場合があります。この場合に相続財産を無管理のまま放置することは、相続財産の逸脱を招いたり、相続債権者や受遺者の利益を害することになりかねません。そこで、民法は、「相続人のあることが明らかでないとき」は相続財産を法人として法律上の帰属主体を創設した上で(民951)、家庭裁判所の選任する相続財産管理人に管理と清算を行わせることにしています(民952)。 (1) 「死亡」 医学的に死亡が確認された場合だけでなく、認定死亡(戸89)や失踪宣告(民30)も該当します。 (2) 「相続人のあることが明らかでないとき」 「相続人のあることが明らかでないとき」とは、相続人としての身分関係を有する者がそもそもいない場合、相続欠格事由がある場合(民891)、相続廃除がされていて相続権がない場合(民892・893)、相続放棄の場合(民938)が含まれます。 また、文言上からは明らかではありませんが、「相続人がいないことが明らかな場合」にも、精算手続や特別縁故者への財産分与を行う必要性から、含まれると考えられています。 しかし、相続人の所在不明の場合は含まれません。相続人が所在不明である場合には、不在者の財産管理の問題(民25)となります。 2 申立手続 利害関係人や検察官が相続開始地の家庭裁判所に申し立て、家庭裁判所が調査の上、選任の要件があれば、相続財産管理人を選任します。ここで問題となるのが、利害関係人の意味ですが、相続財産の帰属について法律上の利害関係を有する者と解されています。例えば、受遺者・相続債権者・相続債務者・事務管理者(相続財産について事実上管理していた者)などです。また、特別縁故者として、相続財産の分与の申立てをしようとする者も利害関係人に含まれます(昭41・8・4家二第111号家庭局長事務取扱回答判時1168・4、山田忠治「東京家裁財産管理部の実情」)。 3 相続財産管理人選任後の手続 相続財産管理人は、相続人の捜索をし(民957)、相続財産を管理し(民953・27等)、債権者のために相続財産の精算等を行います(民957)。そして、残余財産があれば、特別縁故者に分与したり(民958の3)、国庫へ引き渡します(民959)。 なお、相続人が存在し、その者が相続を承認した場合には、相続人に、相続財産を引き渡します(民957)。 Q80 死亡の先後が分かる場合の相続 災害前は、夫の両親、私たち夫婦、子供2人、6人家族で、災害時私は、妊娠8か月目でした。義父には、兄が2人、夫には、既に結婚して家を出た妹がいます。ところが、災害により、まず夫(死亡時の財産3,000万円)が死亡し、その後義父(死亡時の財産6,000万円)が死亡しました。誰が相続人となるのでしょうか。なお、災害後、無事子供は生まれています。 ┃ ┏━━╋━━┓ ┃ ┃ ┃ ○ ○ ○━━━━━━┳━━━━━━○ 義父 ┃ 義母 (A死亡) ┏━━┻━━┓ ┃ ┃ ○ 夫○━━━┳━━━○私 (@死亡) ┃ ┏━━╋──┐ ┃ ┃ │ ○ ○ ○ 子 子 胎児(8ヶ月) A あくまで法定相続分に従って取得することを前提に説明すると、義母(3,000万円)、義妹(1,500万円)、相談者(1,500万円)、子供2人(1,000万円ずつ)、胎児(1,000万円)が相続します。 解 説 1 相続人 死亡により、相続が開始すると、相続人が、相続開始のときから、被相続人の権利義務一切を承継します(民896)。ここで、問題となるのが、誰が相続人となるのかという点です。 (1) 子供(胎児) 被相続人の子は、第1順位の相続人です。実子なのか養子なのか、男女の別、両親が離婚しているか、嫡出子なのか、非嫡出子なのかによって、相続人の地位には影響しません(ただし、非嫡出子は、嫡出子の相続分の2分の1となります(民900四ただし書))。 なお、推定相続人である子供が、相続開始以前に死亡し、または、欠格・廃除によって推定相続人としての地位を失った時に、そのさらに子がいれば、その者が代襲相続人として推定相続人たる地位を受け継ぎます(民887A)。さらに再代襲制度も規定されています(民887B)。 胎児は、相続に関しては、「既に生まれたものとみな」されます(民886)。この意味について学説上争いがありますが、判例においては、相続開始後に、生きて生まれたときには、相続開始時に遡求して権利能力が認められるという「生きて生まれることを停止条件」とする解釈をしています(大判大6・5・18民録23・831)。 (2) 両親・兄弟姉妹 被相続人の直系尊属は第2順位の相続人であり、第1順位である子およびその代襲相続人がいない場合に相続人となります。複数いる場合には、親等の近い者が優先します。 非相続人の兄弟姉妹は、第3順位の相続人であり、第1順位および第2順位である相続人が存在しない場合に相続人となります。兄弟姉妹についても、代襲相続が認められていますが、再代襲相続は認められていません(民889A)。 (3) 配偶者 被相続人の配偶者は、常に相続人となります(民890)。 2 相続分 相続人が確定すると、次に、誰がどの割合で相続するかという相続分が問題となります。 配偶者と直系卑属が相続人となる場合には、1:1の割合で、配偶者と直系尊属が相続人となる場合には、2:1の割合で、配偶者と兄弟姉妹が相続人となる場合には、3:1の割合で相続します。 直系卑属・直系尊属・兄弟姉妹が複数いる場合には、各自の相続分は均等です。ただし、非嫡出子は、例外であり、嫡出子の相続分の2分の1となります(民900)。 3 ご質問の場合 まず、夫が死亡したのですから、夫の相続人は、配偶者である相談者および直系卑属である子供2人および胎児です。配偶者と直系卑属の割合は1:1ですから、配偶者である相談者が1,500万円相続し、直系卑属である子供2人と胎児が1,500万円相続します。直系卑属が複数いる場合の相続分は均等ですから、子供と胎児は、各500万円ずつ相続します。 次に、義父が死亡したのですから、義父の相続人は、妻である義母、直系卑属である義妹、直系卑属である夫を代襲した子供2人と胎児となります。配偶者と直系卑属の割合は1:1ですから、配偶者である義母が3,000万円相続し、直系卑属である義妹、子供2人および胎児が3,000万円相続します。直系卑属が複数いる場合の相続分は均等ですが、もともと子供2人および胎児は、夫の地位を受け継ぐだけですから、相続分の割合を考えるにあたっては、まず、義妹と夫の相続分の割合を考えます。すると、相続分の割合は均等ですから義妹は1,500万円相続し、夫が取得するはずだった1,500万円を子供2人と胎児が均等に500万円ずつ相続します。 したがって、最終的には、義母が3,000万円、義妹が1,500万円、相談者が1,500万円、子供2人がそれぞれ1,000万円、胎児が1,000万円をそれぞれ相続することになります。 Q81 同時死亡した場合の相続 災害前は、夫の両親、私たち夫婦、子供2人の6人家族で、災害時、私は妊娠8か月目でした。義父には、兄が2人、夫には、既に結婚して家を出た妹がいます。ところが、災害により、夫(死亡時の財産3,000万円)と義父(死亡時の財産6,000万円)が死亡しましが、どちらが先に死亡したのか分かりません。 ┃ ┏━━╋━━┓ ┃ ┃ ┃ ○ ○ ○━━━━━━┳━━━━━━○ 義父 ┃ 義母 (死亡) ┏━━┻━━┓ ┃ ┃ ○ 夫○━━━┳━━━○私 (死亡) ┃ ┏━━╋──┐ ┃ ┃ │ ○ ○ ○ 子 子 胎児(8ヶ月) @ 誰が相続人となるのでしょうか。なお、災害後、無事子供は生まれています。 A 義父の夫に対する遺言がある場合はどうなりますか。 A@ あくまで法定相続分に従って取得することを前提に説明すると、義母(3,000万円)、義妹(1,500万円)、相談者(1,500万円)、子供2人(1,000万円ずつ)、胎児(1,000万円)が相続します。 A 義父の夫に対する遺言は無効です。 解 説 1 同時死亡の推定(@について) (1) 死亡の先後が明らかではない場合 災害が発生した場合、同一家族において、同時期に複数の者が死亡することが予想されます。そして、死亡者間で、その死亡の先後が明らかではない場合が多いのではないでしょうか。このように、死亡の先後が明らかではない場合には、同時に死亡したものと推定されます(民32の2)。 (2) 同時死亡が推定される場合 では、同時死亡が推定される場合に、相続関係は、どのようになるのでしょうか。 同時死亡者相互間には、相続関係は生じません。よって、子がない夫婦が共に死亡した場合には、それぞれの財産は、それぞれの両親や兄弟などに相続されます。 また、親子が同時に死亡した場合に、孫がいる場合には、親の財産については、孫が代襲相続します。昭和37年の民法改正前においては、「相続の開始前に、死亡」した場合と規定されており、解釈上の争いがありましたが、同年の民法改正によって、「相続の開始以前に死亡したとき」と改められたので、孫が代襲相続することが明らかとなりました。 (3) ご質問@の場合 義父と夫が死亡し、どちらが先に死亡したのか分からないのですから、同時に死亡したものと推定されます。 まず、義父の財産についてですが、夫は子として第1順位の相続人ですが、義父と夫との間では、相続関係は生じません。しかし、孫がいることから、孫(2人および胎児)が代襲相続します。すると、義父の相続人は、妻である義母、直系卑属である義妹、直系卑属である夫を代襲した子供2人と胎児となります。よって、配偶者である義母が3,000万円、直系卑属である義妹は1,500万円、子供2人と胎児が500万円ずつ相続します。 次に、夫の財産についてですが、夫の相続人は、配偶者である相談者および直系卑属である子供2人および胎児です。よって、配偶者である相談者が1,500万円、直系卑属である子供2人と胎児が1,500万円相続します。 したがって、最終的には、義母が3,000万円、義妹が1,500万円、相談者が1,500万円、子供2人がそれぞれ1,000万円、胎児が1,000万円をそれぞれ相続することになります。 2 同時死亡の推定と遺言(Aについて) ご質問のように、義父が夫に遺言していた場合、すなわち同時死亡の推定が働く者同士においては、遺言の効力は生じません(民994)。そこで、子供達が、夫の受遺者としての地位を相続するということもありません。 Q82 人身傷害に対する損害賠償 地震に関連して隣の家や塀が倒れ、ケガ(または死亡)をしてしまいました。この場合に、治療費等の損害賠償請求はできますか。 また、何らかの給付や援助を受けられる場合がありますか。 A 損害賠償請求については、一定の要件を満たせば、請求することができます。 また、生命保険に加入していれば、保険金や各種給付金が受けられますし、貸付けを受けることもできます。さらに一定規模の災害であれば、「災害弔慰金の支給等に関する法律」に基づく給付や援助を受けることもできます。 解 説 1 土地の工作物の所有者等の責任 (1) 土地の工作物責任とは 他人の不注意等で損害を被った場合には、不法行為に基づく損害賠償責任を請求できます(民709)。ただし、故意・過失があること、損害の発生との因果関係等を立証しなければならず、地震等の災害に起因してケガをした場合に、民法709条を根拠にして請求することは難しいと思われます。 しかし、「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵」があり、この瑕疵によって損害が生じた場合には、第1次的に土地の占有者に対し、第2次的に土地の所有者に対し損害賠償請求ができるという規定があります(民717)。この規定は、危険責任の原理に基づくものとされ、占有者は「損害の発生を防止するのに必要な注意をしたとき」には免責されますが(中間責任)、所有者には免責は認められず、無過失責任となります。そこで、民法717条に基づいて請求することが考えられます。 (2) 要 件 まず、「土地の工作物」に該当しなければなりません。「土地の工作物」とは、土地に接着して人工的作業を加えることによって成立した物をいいます(大判昭3・6・7民集7・443)。建物や塀は、土地の工作物に該当することは問題ないと思われます。問題となるのは、建物内の工作物ですが、エレベーターのように建物の内部施設は、建物の一部として土地の工作物に該当します(東京地判昭30・5・6判時57・11)。 次に、工作物の「設置又は保存に瑕疵」がなければなりません。「瑕疵」とは、その物が本来備えているべき性質または設備を欠くことをいいます。「瑕疵」の存在は被害者側で立証しなければなりませんが、工作物より損害が発生した場合には、瑕疵の存在を推定し得ることが多いと考えられ、その場合には、占有者・所有者が瑕疵の不存在を立証することになります。具体的には、どの程度の損害防止の措置をしていたかという点が、争点となるでしょう。 さらに、損害が工作物の瑕疵に「よって」生じたこと、すなわち因果関係が要件となります。この因果関係は、自然力の作用が近因であっても、被害者の行為が近因であっても認められます(大判大7・5・29民録24・935参照)。被害者の行為が近因である場合には、過失相殺の問題が生ずるに過ぎません。 ただし、「瑕疵」の有無に関わりなく損害が発生した場合(不可抗力の場合)には、土地の工作物責任は認められません。では、どの程度で不可抗力と認定されるのかが問題となりますが、相当程度の自然力によって損害が発生しても、なお、土地の工作物責任が認められることが多いようです。具体的には、昭和33年の狩野川台風に伴う豪雨による崖の擁壁の崩壊は不可抗力ではないとされました(横浜地判昭36・4・25下民12・4・872、東京地判昭37・1・23判タ129・62)。一方、昭和34年の伊勢湾台風による堤防の決壊については、不可抗力と認定されました(名古屋地判昭37・10・12判時313・4)。 (3) 結 論 土地の工作物責任が認められるかどうかは、「瑕疵」を立証できるか、災害の規模、損害の発生原因等から不可抗力に該当するか等の問題があり、一概にはいえませんが、上記の要件に該当すれば、治療費等の損害賠償請求をすることができます。 なお、死亡の場合には、相続人が、損害賠償請求することができます。 2 生命保険から給付金 (1) 保険金、各種給付金 生命保険に加入していれば、保険金、各種給付金が受けられる可能性があります。 詳しくは、別項目を参照してください。 (2) 契約者貸付制度 また、生命保険には、契約者貸付制度があります。 これは、解約返戻金の一定割合につき、契約者が保険会社から貸付けを受けることができる制度です。保険契約者から貸付請求があると、保険会社は貸付けの義務を負いますので、保険契約者は一時的に資金を用立てることができます。 なお、保険契約貸付けの法的性質については、相殺予約付消費貸借という見解が有力です。また、会社の承諾を求めることなく、単に貸付請求をするだけで、貸付けを受けられることから、一種の形成権と考えられています。 3 「災害弔慰金の支給等に関する法律」による給付金等 自然災害により被害を受けた場合には、一定の場合に弔慰金等が支給されます。 (1) 災害弔慰金 災害弔慰金は、自然災害のうち住居が5世帯以上滅失した災害や都道府県内において災害救助法が適用された市町村が1以上ある場合の災害等の場合に、死亡した方の遺族に対して支給されます(災害弔慰金3@、災害弔慰金令1@、平12・3・31厚告192)。 対象遺族は、配偶者・子・父母・孫・祖父母です(災害弔慰金3A)。 支給額は、生計維持者が死亡した場合には、500万円、その他の者が死亡した場合には、250万円です(災害弔慰金令1の2)。 (2) 災害障害見舞金 災害障害見舞金は、上記@と同様の災害の場合に、両眼失明、要常時介護、両上肢ひじ関節以上切断等の重度の障害を受けた者に対し支給されます(災害弔慰金8・別表)。 支給額は、生計維持者につき250万円、その他の者につき125万円です(災害弔慰金令2の2)。 (3) 災害援護資金の貸付け 都道府県内で災害救助法が適用された市町村が1以上ある災害の場合、災害により負傷または住居、家財に被害を受けた者は、350万円を貸付限度額として貸付けが受けられます(災害弔慰金10、災害弔慰金令3・7@)。ただし、前年度の世帯総所得金額による所得制限があります。 以上の給付または貸付けを行うのは、各市町村ですので、詳しくは、各市町村に問い合わせてください。 Q83 震災で権利証を消失してしまった場合 地震で自宅が倒壊し、自宅に保管していた権利証を消失してしまったのですが、自宅の土地を売却することはできますか。 A 権利証を消失した場合には、売却時の所有権移転登記申請に当たり、新しい事前通知制度あるいは本人確認情報制度を利用することにより対応できますので、手間はかかりますが、問題ありません。 解 説 1 権利証 権利証は、不動産登記申請に係る登記を完了した際に、法務局より受付日と登記済みの押印をして交付される登記済証のことです。権利証は、その所持人が権利者本人であろうことを推認させるという意味で、本人証明ないし登記申請意思推認の一手段として、不動産取引(登記手続)において利用されています。もっとも、この権利証を紛失してしまった場合にも、当該不動産に対する所有権が消滅するわけではないことはいうまでもありません。 2 従前の保証書制度 ところで、従前は登記申請にあたって権利証を消失して添付できない場合には、保証書で代用する形をとっていました。これは、登記申請にあたって、権利証に代えて、当事者以外の2名以上の成年者に、登記義務者の人違いでないことを保証した保証書2通を管轄法務局に提出させます(旧不登44)。提出を受けた管轄法務局は、登記義務者に対して、登記手続を申請したか照会する通知を発送し、登記義務者より、発送日より3週間以内に、当該申請が違いない旨の申出があった場合に、登記申請があったものとして本受付するという制度です(旧不登44ノ2)。 3 不動産登記法の改正 これに対し、平成17年3月7日より、電子政府時代に適応した電子申請を基本とする改正不動産登記法が施行されました。これにより、保証書制度が廃止され、新たに事前通知制度、本人確認情報制度が導入されました。 すなわち、まず、登記の種別を問わず登記申請について、権利証を添付せずとも、申請時に本受付となり、受付番号が確保されることとなります。 (1) 事前通知制度 そして、権利証を消失し、登記申請に権利証を添付できなかった場合には、管轄法務局より、申請後、登記義務者に対して、登記手続を申請したことを本人限定受取郵便(本人確認がされます。)にて照会がなされ、登記義務者より、発送日より原則2週間以内に、当該申請が違いない旨の申出がなされなかった場合、申請が却下されることとなります(不登23@・25、不登規70)。これが、新しい事前通知制度です。 (2) 本人確認情報制度 もう一つの制度が、資格者代理人による本人確認情報制度です。 資格者代理人とは、登記申請の代理を業務とすることのできる司法書士、弁護士、公証人をいいます。本人確認情報制度は、登記申請に先立ち、資格者代理人が、その責任のもとに、申請人が、申請の権限を有する登記名義人であることおよびその根拠を記載した書面(本人確認情報)を作成し、これを登記申請の際に添付することにより、権利証を添付せずとも、事前通知を不要とする制度です(不登23C一、不登規72)。資格者代理人は、必ず、申請人と面談のうえ本人確認情報を作成する必要があります。 アドバイス 不動産登記法の改正後も、既に交付されている権利証はそのまま有効ですので、震災時にもできるだけ消失しないような保管方法を考えてください。ただし、上記のとおり、消失した場合にも所定の手続をとることにより所有権移転登記申請は可能です。 Q84 震災で登記識別情報が分からなくなってしまった場合 平成18年に購入したばかりの自宅が震災で倒壊し、自宅に保管していた登記識別情報通知書を消失してしまい、登記識別情報が分からなくなってしまいました。 @ 自宅の土地を売却することはできますか。 A 自宅建物倒壊に伴って滅失登記をする必要はありますか。 B 建物新築後の保存登記のとき権利証をもらえるのですか。 A@ 登記識別情報が分からなくなった場合でも、登記識別情報を失効させた後、売却時の所有権移転登記申請にあたり、事前通知制度あるいは本人確認情報制度を利用することにより対応できますので、問題ありません。 A 滅失登記をする必要があります。 B オンライン指定庁では、権利証を発行してもらえませんが、これに代えて登記識別情報の提供を受けることができます。 解 説 1 登記識別情報 前問では、震災により権利証を消失した場合について検討しましたが、本問は、登記識別情報が分からなくなった場合について検討します。 今般の改正不動産登記法施行により、窓口や郵送による書面申請に加え、オンラインによる登記申請が可能となりました。オンライン申請は、全ての申請情報を電子化して送信するため、書面である権利証を添付して申請することはできません。このため、オンライン申請も受付可能な法務局(以下、「オンライン指定庁」といいます。)では、所有権移転登記等の登記完了後、権利証に代えて、12桁の英数字で構成される登記識別情報を登記名義人に通知することとなりました(不登21本文)。登記識別情報は、この指定庁より交付される登記識別情報通知書に目隠しシール(一度はがしたときには、貼付けできません)で見えないように保護されています。 2 登記識別情報が分からなくなった場合 この登記識別情報が分からなくなってしまった場合、登記名義人は、この登記識別情報の失効を管轄法務局に申し出ることができます(不登規65)。その上で、前問同様、不動産売却時に、事前通知制度または資格者代理人による本人確認制度を利用することにより、所有権移転登記申請が可能となります。 3 建物滅失登記 建物が倒壊、滅失した場合、建物の滅失した日から1か月以内に滅失登記の申請をすることが法律上要請されています(不登57)。また、建物を新築するために金融機関の住宅ローンを利用する場合、金融機関が、登記名義人に建物の滅失登記をさせた上、新築された建物に抵当権を設定することが一般的といわれているようですので、この点にもご留意ください。 4 建物所有権保存登記 建物新築後、建物の表示登記をした後、建物所有権保存登記をする必要があります(不登74等)。そして、建物所有権保存登記完了後、前述したとおり、オンライン指定庁では、権利証が発行されず、これに代えて登記識別情報が通知されます。もっとも、登記識別情報の管理に不安があるという場合に、登記名義人は、そもそも登記識別情報の不通知を希望することもできます(不登21ただし書)。この場合、次の登記申請の際には、事前通知制度や本人確認制度を利用することになります。 なお、参考までに、オンライン未指定庁では、従前どおり、権利証を発行してもらえます。 アドバイス 管轄法務局がオンライン指定庁かオンライン未指定庁かで、手続が大きく異なる場合がありますので、前問解説も参照いただき、ご対応ください。 2 生命保険 Q85 生命保険の仕組みと保険証券の紛失 災害で父が死亡しました。生命保険を契約していたのですが、基本的な仕組みが分からないので、説明してください。また、証券を紛失し、内容が分からないのですが、どうすればよいですか。 A 生命保険は、一般的に、終身保険・定期保険・養老保険などの主契約と災害割増特約などの特約とで構成されています。 保険証券を紛失してしまった場合には、再発行することができます。 解 説 1 生命保険のしくみ 生命保険は、各人と生保会社との個別の契約内容によって異なります。そこで、まず、一般的な契約内容について、説明します。 (1) 主契約と特約 大抵は、主契約と呼ばれる保険商品の核となる部分とこれに付随する特約とで構成されています。 まず、主契約について主なものを紹介すると、@被保険者の一生涯にわたって保険期間が継続し、死亡した時間に死亡保険金が支払われる終身保険、A被保険者が一定の保険期間内に死亡した時に死亡保険金が支払われる定期保険、B死亡保険と生存保険を組み合わせ、保険期間と保険金額を同一とした養老保険などがあります。 そして、特約について主なものを紹介すると、@不慮の事故などにより、死亡・高度障害状態となった場合に保険金が支払われる災害割増特約、A不慮の事故などにより、@の場合だけではなく所定の身体障害状態となった場合についても、その程度に応じて給付金が支払われる傷害特約、B不慮の事故を直接の原因とする入院を支払対象とする災害入院給付金特約等があります。 (2) 被保険者が保険期間中に死亡した場合 被保険者が保険期間中に死亡した場合には、普通死亡保険金が支払われます。保険金額については、保険証券に明記してあります。ここにいう死亡には、失踪宣告によって死亡とみなされる場合や認定死亡の場合も含まれます。ただし、審判等により死亡時期が確定するまでの期間においては、保険契約が有効であることが保険金支払要件であることから、それまでは保険料を払い続ける必要があります。 また、死亡の原因が、災害であったとしても、保険金は支払われます。 (3) 災害割増特約、傷害特約を付加している場合 災害割増し特約や傷害特約を付加している場合、地震のような災害で死亡した場合には、不慮の事故(急激かつ偶発的な外来の事故)により死亡したものとして、災害死亡保険金が支払われます。災害死亡保険金の額についても、保険証券に明記してあります。 傷害特約を付加している場合には、約款所定の障害状態になった場合には、傷害給付金が支払われます。 (4) 災害入院給付金特約を付加している場合 災害入院給付金特約を付加している場合、契約の内容にもよりますが、多くは、地震のような不慮の事故を直接の原因として、5日以上継続して入院したときに、1入院につき120日を限度として、一定の給付金が支払われます(契約内容は各保険会社により異なりますので、約款をご確認ください。)。 2 保険証券を紛失した場合 (1) 保険証券 保険証券とは、保険契約の成立および契約内容を証明するために保険会社が作成・署名して契約者に交付する文書です。保険証券には、契約の種類、契約者、被保険者、保険受取人、保険期間、保険金額等の契約の内容が記載されています。なお、保険証券は、保険会社が一方的に作成し、署名も保険会社のみがするものであり、契約の成立と内容について一応の証拠力を有する証拠証券にすぎません。 (2) 保険証券の再発行 上記のとおり、保険証券は証拠証券であることから、保険証券を紛失した場合には、再発行することができます。今後の手続で必要となりますから、紛失したのであれば、再発行手続をしてください。 また、早急に保険の内容を知りたい場合には、各保険会社に問い合わせてください。 Q86 保険金の請求手続 保険金を請求したいのですが、必要書類が分からないので教えてください。また、災害の場合には、簡易な手続で保険金を支払ってもらえる場合があるのですか。 また、災害の場合には、保険金が支払われない場合があると聞いたのですが本当ですか。 A 一般的には、請求書、被保険者の除籍謄本等、受取人の戸籍抄本・印鑑証明書、医師の死亡診断書ないし診断書、保険証券、不慮の事故を証明する書類等が必要です。 なお、災害が起こった場合には、必要書類を省略するなどによる簡易な手続が設けられる可能性があります。 また、各種の給付金について、地震等の場合には、保険会社は保険金を削減して支払うか、または支払わないことができるとの定めがありますので、具体的な災害時にどうなるのかは不明です。 なお、阪神・淡路大震災のときには、各生命保険会社はこの地震削減条項を適用しませんでした。 解 説 1 保険金を請求するための書類 (1) 死亡保険金等 請求書、被保険者の除籍謄本・戸籍抄本、受取人の戸籍抄本、受取人の印鑑証明書、医師の死亡診断書、保険証券等が一般的に必要とされます。また、災害死亡保険金を請求する場合には、上記の他に、不慮の事故を証明する書類が必要となります。 ただし、各保険会社によって必要書類が異なります。請求の際、各保険会社に確認してください。 (2) 災害入院給付金等 給付金支払請求書、入院証明書(診断書)、受取人の戸籍謄本、印鑑証明、不慮の事故を証明する書類等が、一般的に必要とされます。 ただし、各保険会社によって必要書類が異なります。請求の際、各保険会社に確認してください。 2 保険証券を焼失している場合 保険証券がなく、保険契約の内容が分からない場合は、保険会社に問い合わせるか、保険証券を再発行をしてもらうことで、契約内容を確認することができます。また、早急に保険の内容を知りたい場合には、各保険会社に問い合わせてください。 3 簡易な手続 阪神・淡路大震災のときには、多くの方が保険証券や印鑑等焼失しており、本来手続に必要な書類を用意できないことから、各生命保険会社では、救済措置として、通常よりも簡易な手続で支払を受けられる制度が設けられていました。具体的には、各社共通のものとして被保険者の住民票や不慮の事故を証する書類を求めないという取扱いがされていました。その他、どのような書類を省略することが可能か、どのような書類で代替できるかについては、各社ごとにまちまちだったようです。 阪神・淡路大震災のような災害が起こった場合には、阪神・淡路大震災のときと同様に、必要書類を省略するなどによる簡易な手続が設けられる可能性があります。具体的にどのような手続となるかは、会社ごとに異なると思われますので、加入会社に問い合わせることが必要です。 4 災害の場合の特則 約款では、災害割増特約等の災害関係特約に基づく災害死亡保険金や傷害特約等に基づく各種の給付金について、地震、噴火または津波によるときなどに、被保険者数の増加が特約の計算基礎に影響を及ぼすときには、保険会社は保険金を削減して支払うか、または支払わないと定めています。 ただし、阪神・淡路大震災のときには、各生命保険会社はこの地震削減条項を適用しませんでした。 災害の規模や各生命保険会社によっても異なると思われますので、各加入会社に問い合わせることが必要です。 Q87 保険金の受取人が死亡した場合 災害前は、夫の両親、私たち夫婦、子供2人の6人家族です。義父には、兄が2人、夫には、既に結婚して家を出た妹がいます。義父は生命保険に加入しており、保険金受取人は夫となっています。また、夫も生命保険に加入しており、保険金受取人は私になっていますが、まだ証券は送られてきていません。その後災害により、義父も夫も同時に死亡しています。このような場合には、保険金は受け取れますか。 │ ┌──┼──┐ │ │ │ ○ ○ ○──────┬──────○ 義父 │ 義母 (死亡) ┌──┴──┐ │ │ ○ 夫○───┬───○私 (死亡) │ ┌─┴─┐ │ │ ○ ○ 子 子 A 義父の生命保険については、民間会社の生命保険の場合には、あなたとお子さん2人が受取人となると思われます。なお、簡易保険の場合には、義母が受取人になります。夫の生命保険については、あなたが受け取れる可能性はあります。 また、義父が、保険料を1年前から支払っていない場合には、義父の死亡保険金を受け取ることはできません。 解 説 1 同時死亡の場合の取扱い 死亡保険金の受取人(ご質問では夫)と被保険者(ご質問では義父)が同時に死亡した場合の死亡保険金の帰属については、商法上特別な規定はありません。この点については、死亡保険金受取人が死亡し、保険契約者が再指定するまでの間に保険事故が生じた場合について定めた商法676条2項の類推適用により死亡保険金受取人の法定相続人が、自己固有の権利として保険金請求権を取得するものと思われます。法定相続人が複数存在する場合には、均等割合とする場合と法定相続割合とする会社があり、約款に規定されておりますので、約款をご確認ください。 ご質問においては、保険金受取人の法定相続人であるあなたとお子さん2人が保険金受取人となります。 ただし、生命保険会社によっては、約款に規定されている場合もありますので、必ず約款を確認してください。 なお、簡易保険の場合には、「遺族」が受取人となります(簡保55@二)。そして、「遺族」については、被保険者の配偶者(届出がなくても事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含みます。)、子、父母、孫、祖父母および兄弟姉妹ならびに被保険者の死亡当時被保険者の扶助によって生計を維持していた者および被保険者の生計を維持していた者という順に従って決定されます(簡保55AD)。 2 承諾前死亡 生命保険契約は、一般の契約と同様、申込みと承諾によって成立します。通常、申込みと同時に保険料が支払われますが、申込み後、承諾前に死亡したときには、保険金を支払ってもらえるのでしょうか。 この点、判例・通説は、保険料の支払・告知等をしている契約者は、この時点から保険保護を受けられるという事実上の期待を保護する観点から、申込み、第1回保険料相当額の支払、告知という契約成立のためになすべきことを全て終了した後に、被保険者が死亡した場合には、当該の死亡事故がなかったとしたら当然承諾したであろう申込みであること、すなわち「保険適格性」を有していたことを要件として、保険者は信義則上承諾する義務を負うと考えています(札幌地判昭56・3・31判タ443・146)。 ご質問についての具体的な状況は分かりませんが、上記の要件を満たせば、保険金を受け取れる可能性があります。 Q88 保険料が支払えない場合 災害により、保険料が払えません。 @ 保険料が免除されることはありますか。 A 一定期間の猶予をもらえる場合はありますか。 B 保険会社が、立て替えてくれる場合はありますか。 C 保険料が払えないと保険契約はどうなってしまいますか。 A@ 契約内容によって、保険料が免除される場合があります。 A 一定の期間保険料の支払を猶予する特別措置がとられる可能性があります。 B 反対の申出をしていない限り、解約返戻金の範囲内で、自動的に立て替えてくれます。 C 契約は失効しますが、復活という制度があります。 解 説 1 保険料払込免除 被保険者が不慮の事故により所定の身体障害状態に該当したことを保険事故として、保険料の払込免除という形の1つの給付として主契約に組み込まれている場合があります。そのような場合には、保険料の払込みが免除されます。 詳細は、各保険会社に確認してください。 2 猶予期間 保険料払込方法の別によって、次の期間を払込猶予期間としています。 *月払の場合……払込期月の翌月初日から月末まで *半年払・年払の場合……払込期月の翌月初日から翌々月の月ごとの応答日まで しかし、阪神・淡路大震災のときには、大体6か月くらいの期間支払が猶予されました。 災害時には、このような猶予期間が設けられることとなると思いますので、各保険会社に確認してください。 3 保険料の立替払について 保険料の自動振替貸付制度があります。生命保険契約は、長期間に継続する契約であることを特色とするために、保険料の払込みが困難となり契約の継続が不可能となる場合が考えられます。しかし、こうした場合に、直ちに契約を解約させるかまたは失効させてしまうのでは、生命保険に加入した意義が失われてしまいます。そこで、一時的に保険料の払込みが困難となったが、契約を解約して、解約返戻金を使用するほどは窮迫していない契約者に対し、解約返戻金の範囲内で保険契約者に保険料を自動的に貸し付けて契約の継続を図ろうとする制度が、保険料の自動振替貸付制度です。 この制度を利用するためには、特別な請求は必要ではなく、自動的に行われます。ただし、あらかじめ申し出ておけば、最初からこの制度が適用されないようにすることができます。 4 失効と復活 猶予期間内に保険料が払い込まれず、自動振替貸付が行われない場合には、猶予期間満了日の翌日から契約が失効します。 契約が失効すると、保険契約の効力が停止し、保険事故が発生しても保険金・給付金は支払われません。 ただ、失効後3年以内に復活の申出をし、保険会社が承諾した場合には、契約の効力を蘇らせることができます。 なお、責任開始日は、延滞保険料を支払った日または告知がなされた日のいずれか遅い方になります。失効期間中の保険事故については、保険会社は責任を負いませんので、ご注意ください。 3 損害保険 Q89 地震保険と火災保険の関係 地震保険の契約をしていますが、どのような場合に保険金が支払われるのでしょうか。 また、火災保険では、地震による火災は補償されるのでしょうか。地震による火災が延焼した場合はどうですか。 火災保険の契約をせずに地震保険だけを契約することはできますか。 A 地震保険は、地震もしくは噴火またはこれらによる津波を直接または間接の原因とする火災、損壊、埋没または流失による損害を補償するもので、居住用建物または生活用動産が、全損、半損または一部損となった場合に保険金が支払われます。 地震による火災の場合も、地震による火災が延焼した場合も、火災保険だけでは補償されません。 地震保険は火災保険とセットで契約する必要があります。 解 説 1 地震保険 地震保険は、地震もしくは噴火またはこれらによる津波(以下、「地震等」といいます。)を直接または間接の原因とする火災、損壊、埋没または流失による損害を補償するものであり(地保2A二)、居住用建物または生活用動産(いわゆる家財)が、全損、半損または一部損となった場合に保険金が支払われます(地震保険標準保険約款1@)。 具体例としては、地震によって建物が損壊した場合、地震により発生した火災により建物や家財が焼損した場合(後に述べるとおり、火災保険だけでは、地震による火災は補償されません。)、地震や噴火により発生した土砂災害によって建物が損壊・埋没した場合、地震により発生した津波によって建物が損壊・流失した場合、地震により河川の堤防やダムが決壊して洪水となったために流出・埋没した場合、噴火に伴う溶岩流、噴石、火山灰や爆風によって生じた倒壊・埋没、噴火に伴う火砕流によって生じた焼損などが挙げられます。 なお、地震等の際の紛失・盗難によって生じた損害等は地震保険の対象とはなりません(地震保険標準保険約款2@三)。 2 地震保険と火災 地震による火災の場合、火災保険だけでは補償されません。地震による火災が延焼した場合も火災保険だけでは補償されません。地震による火災に備えるには、火災保険とあわせて地震保険を契約する必要があります。 地震保険は単独では契約することはできず、火災保険とセットで契約する必要があります(地保2A三)。 なお、火災保険の契約時に地震保険の契約をしなかった場合でも、火災保険の契約期間の中途に地震保険の契約をすることができます。 賃貸住宅の場合に、生活用動産のみ火災保険に加入した場合でも、生活用動産について地震保険を締結できます。 Q90 地震保険の対象 地震保険の対象はどのようなものでしょうか。 A 地震保険の対象は居住用建物と生活用動産に限定されています。 解 説 1 地震保険の対象 地震保険の対象は、「居住の用に供する建物」と「生活用動産」に限定されています(地保2A一)。 2 居住の用に供する建物 「居住の用に供する建物」は、専用住宅と併用住宅を含みます(地保規1@「その全部又は一部を居住の用に供するもの」)。 工場や事務所専用の建物などは、居住の用に供する建物ではないことから、地震保険の対象となりません。 併用住宅の場合において、地震保険とセットで契約されている火災保険で居住用部分とそれ以外の部分で別個の保険金額を定めた場合には、地震保険では居住用部分のみが対象となります。 建築中の建物でもよいのですが、居住する者がその建物について売買契約または請負契約を締結した時点以降のものに限られます。 居住の用に供する状態にある別荘や空家も含まれますが、営業用別荘や建売業者等が売却のために所有する空家は含まれません。 建物には門、塀もしくは垣または物置、車庫その他の付属建物を含みます(地震保険標準保険約款3A)。 3 生活用動産 「生活用動産」(いわゆる家財)は、生活の用に供する家具、什器、衣服その他の生活に通常必要な動産で、1個または1組の価額が30万円を超える貴石、半貴石、貴金属、真珠およびこれらの製品、べっこう製品、さんご製品、こはく製品、ぞうげ製品、七宝製品ならびに書画、骨董および美術工芸品以外のものとされています(地保規1@)。 さらに、約款においては、建物の所有者でない者が所有する畳、建具その他の従物、電気・ガス・暖房・冷房設備その他の付属設備は生活用動産に含まれますが(地震保険標準保険約款3B)、次のものは生活用動産に含まれないとされています(地震保険標準保険約款3C)。 @ 通貨、有価証券、預金証書または貯金証書、印紙、切手その他これらに類する物 A 自動車(自動三輪車および自動二輪車を含み、総排気量が125CC以下の原動機付自転車を除きます。) B 貴金属、宝玉および宝石ならびに書画、骨とう、彫刻物その他の美術品で、1個または1組の価額が30万円を超えるもの C 稿本、設計書、図案、証書、帳簿その他これらに類する物 D 商品、営業用什器・備品その他これらに類する物 Q91 地震保険で支払われる保険金 地震保険で支払われる保険金はどのようにして決まるのですか。 A 地震保険契約で定めた保険金額と、損害の程度(「全損」、「半損」、「一部損」)によって決まります。 解 説 1 地震保険で支払われる保険金 地震保険で支払われる保険金は、地震保険契約で定めた保険金額(地震保険金額)と、損害の程度(「全損」、「半損」、「一部損」)によって決まります。「全損」・「半損」・「一部損」の各区分の場合に支払われる保険金は以下のとおりです(地震保険標準保険約款4@)。一部損に至らない損害の場合には保険金は支払われません。 このように損害を「全損」・「半損」・「一部損」の3段階で認定し定型化して保険金を支払うこととされている理由は、損害認定を簡便化することにより、迅速な保険金の支払をするためです(詳細については、Q93を参照してください。)。 (1) 建 物 全損……建物の地震保険金額の全額(ただし、保険価額(時価)を限度とします。) 半損……建物の地震保険金額の100分の50(ただし、保険価額(時価)の50%を限度とします。) 一部損…建物の地震保険金額の100分の5(ただし、保険価額(時価)の5%を限度とします。) (2) 生活用動産(家財) 全損……家財の地震保険金額の全額(ただし、保険価額(時価)を限度とします。) 半損……家財の地震保険金額の100分の50(ただし、保険価額(時価)の50%を限度とします。) 一部損…家財の地震保険金額の100分の5(ただし、保険価額(時価)の5%を限度とします。) 地震保険の目的である建物について、同一構内に所在し、かつ、同一被保険者の所有に属する建物について保険金額が5,000万円を超えるときは、この保険契約の保険金額が5,000万円であるとみなして上記の基準が適用され(地震保険標準保険約款4A)、また、生活用動産(家財)については、同一構内に所在し、かつ、同一被保険者の世帯に属する生活用動産について保険金額が1,000万円を超えるときは、1,000万円をこの保険契約の保険金額とみなして上記の支払保険金の基準が適用されます(同)。この場合には保険料が一部返還されます(地震保険標準保険約款4D一)。 2 保険金額の合計が限度額または保険価額のいずれか低い額を超過している場合 もし、複数の地震保険の保険金額の合計が限度額(居住用建物5,000万円、生活用動産1,000万円)または保険価額(時価額)のいずれか低い額を超過している場合には、次の算式によって算出した額をもって、当該地震保険の保険金額とみなして上記の支払保険金の基準が適用されます(地震保険標準保険約款4B)。限度額を超えていた場合には保険料が一部返還されます(地震保険標準保険約款4D二)。 (1) 建 物 (5,000万円または保険価額のいずれか低い額)×(当該地震保険契約の建物についての保険金額)÷(それぞれの地震保険契約の建物についての保険金額の合計額) (2) 生活用動産 (1,000万円または保険価額のいずれか低い額)×(当該地震保険契約の生活用動産についての保険金額)÷(それぞれの地震保険契約の生活用動産についての保険金額の合計額) Q92 地震保険の保険金額 地震保険の保険金額とは何ですか。また、どのようにして決められるのですか。 A 地震保険の保険金額は、保険契約において保険会社と合意する金額で、全損の場合に支払われるべき金額です(ただし、支払われる金額は時価を限度とします。)。地震保険の保険金額は、主契約である建物または家財の火災保険の保険金額の30%〜50%の範囲内とされています。ただし、建物については5,000万円、生活用動産(家財)については1,000万円が限度です。 地震保険で支払われる保険金は、この保険金額と、損害の程度(「全損」、「半損」、「一部損」)によって決まります。 解 説 1 支払われる保険金 Q91でも述べましたように、地震保険で支払われる保険金は、地震保険契約で定めた保険金額(地震保険金額)と、損害の程度(「全損」、「半損」、「一部損」)によって決まります。 すなわち、建物の場合には、全損のときは建物の地震保険金額の全額(ただし、保険価額(時価)を限度とします。)、半損のときは建物の地震保険金額の100分の50(ただし、保険価額(時価)の50%を限度とします。)、一部損のときは建物の地震保険金額の100分の5(ただし、保険価額(時価)の5%を限度とします。)とされています。また、生活用動産(家財)の場合には、全損のときは家財の地震保険金額の全額(ただし、保険価額(時価)を限度とします。)、半損のときは家財の地震保険金額の100分の50(ただし、保険価額(時価)の50%を限度とします。)、一部損のときは家財の地震保険金額の100分の5(ただし、保険価額(時価)の5%を限度とします。)とされています。 2 地震保険の保険金額 このように、地震保険の場合に支払われる保険金は、当該地震保険の保険金額(地震保険金額)と、損害の程度(「全損」、「半損」、「一部損」)によって決まってくるわけですから、地震保険の保険金額は非常に重要なものです。 地震保険の保険金額は、地震保険契約において決められます。地震保険契約の申込みの際に保険会社に提出する契約申込書に地震保険の保険金額の記載欄があります。実際には所定の契約申込書の空欄部分に代理店が所定事項に印字したものをもらって内容を確認し、これに署名押印して提出することが多いでしょう。 地震保険の保険金額は、主契約である建物または家財の火災保険の保険金額の30%〜50%の範囲内とされています(地保2A四)。ただし、建物については5,000万円、生活用動産(家財)については1,000万円が限度です(地保令2)。 当該居住用建物または生活用動産について既に締結されている地震保険契約がある場合には、これらの金額からそれぞれ当該既に締結されている地震保険契約の保険金額に相当する金額を控除した金額が限度となります(地保令2)。 地震保険の契約期間の中途で保険金額を増額することもできますが、その場合も、上記の限度額の範囲に限られます。 地震保険の保険金額に限度額が設けられているのは、保険会社や再保険を引き受けている政府の財政力に限界があるためです。 Q93 全損・半損・一部損の判断 全損、半損、一部損はどのように判断されますか。 A これらの区分については地震保険に関する法律施行令と地震保険標準保険約款に基準が定められています。 解 説 1 全損、半損、一部損 地震保険では、損害の程度を「全損」、「半損」、「一部損」に区分して支払うべき保険金を決めています。 全損、半損、一部損の意義は次のとおりです(地保令1、地震保険標準保険約款1A)。 (1) 居住用建物 ア 全 損 居住用建物の主要構造部の損害額が当該居住用建物の時価の100分の50以上である損害または居住用建物の焼失もしくは流失した部分の床面積の当該居住用建物の延床面積に対する割合が100分の70以上である損害をいいます(地保令1@一)。 地震等を直接または間接の原因とする地すべりその他の災害による急迫した危険が生じたため居住用建物が居住不能のものとなったときは、当該居住用建物は、第1項第1号に規定する全損に該当する損害を受けたものとみなします。 イ 半 損 居住用建物の主要構造部の損害額が当該居住用建物の時価の100分の20以上100分の50未満である損害または居住用建物の焼失もしくは洗出した部分の床面積の当該居住用建物の延床面積に対する割合が100分の20以上100分の70未満である損害をいいます(地保令1@二)。 ウ 一部損 居住用建物の主要構造部の損害額が当該居住用建物の時価の100分の3以上100分の20未満である損害をいいます(地保令1@三)。 上記の全損、半損または一部損に該当する場合を除き、地震等を直接または間接の原因とする洪水等による水災が発生したため居住用建物が床上浸水またはこれに準ずる損害で財務省令で定めるものを受けた場合(居住用建物の居住の用に供する部分の床(畳敷または板張等のものをいいます。)を超える浸水または居住用建物の直下の地面から45センチメートルを超える浸水による当該居住用建物の損害。地震保険に関する法律施行規則1条の2)には、当該居住用建物は、一部損に該当する損害を受けたものとみなします(地保令1D)。 (2) 生活用動産 ア 全 損 生活用動産の損害額が当該生活用動産の時価の100分の80以上である損害をいいます(地保令1@四)。 イ 半 損 生活用動産の損害額が当該生活用動産の時価の100分の30以上100分の80未満である損害をいいます(地保令1@五)。 ウ 一部損 生活用動産の損害額が当該生活用動産の時価の100分の10以上100分の30未満である損害をいいます(地保令1@六)。 2 時 価 損害の認定は、居住用建物の場合には建物ごとに、生活用動産の場合にはこれを収容する建物ごとに行われます(地震保険標準保険約款1E)。ここで「時価」とは、損害の発生する直前の保険の目的のその所在地における価額をいい(地保令1A)、同等の物を新たに建築あるいは購入するのに必要な金額から使用による消耗分を控除して算出した金額をいいます。なお、居住用建物の主要構造部の損害額には、地震等による損害が生じた居住用建物の原状回復のため地盤等の復旧に直接必要とされる最小限の費用を含みます(地保令1B、地震保険標準保険約款1B)。 Q94 同一敷地内の母屋と物置を対象とした地震保険契約 同一敷地内の母屋と物置を対象として地震保険契約をした場合に、母屋が半損、物置が全損と認定された場合、保険金の支払はどうなりますか。 A 2以上の保険の目的を1保険金額で契約した場合には、それぞれの保険価額の割合によって保険金額を按分し、その按分額をそれぞれの保険の目的に対する保険金額とみなして、各々別に保険金の支払基準が適用されます。 解 説 同一構内に存在しかつ、同一被保険者の所有に属する建物は、敷地内の母屋と物置を対象として地震保険契約をした場合には、5,000万円を保険金額の限度として契約できます(地震保険標準保険約款4A一)。 2以上の保険の目的を1保険金額で契約した場合には、それぞれの保険価額の割合によって保険金額を按分し、その按分額をそれぞれの保険の目的に対する保険金額とみなして、各々別に保険金の支払基準が適用されます(地震保険標準保険約款5)。したがって、ご質問では、母屋については半損であることから母屋について計算された保険金額の100分の50(ただし、母屋の保険価額(時価)の50%が限度)が支払われ、物置については全損であることから物置について計算された保険金額の全額(ただし、物置の保険価額(時価)を限度)が支払われます。 Q95 地震保険の保険金を受け取る方法 地震保険の保険金を受け取りたいのですが、どのようにすればよいのでしょうか。 A 保険金を受け取るには、契約先の保険会社や代理店に連絡してください。 解 説 1 連絡先 地震保険による保険金の支払を受けようとする場合には、地震保険を締結した損害保険会社の最寄りの支店や営業所に連絡して損害認定を受ける必要があります(なお、地震保険標準保険約款17参照)。 損壊した建物や家財については、損害保険会社の損害調査が終了するまで原状保存し、それができない場合には、写真やビデオに記録し、損傷した部材や家財を保存するなどして、損害調査の資料とします。 請求手続の際には、保険証券、建物の所有を証明する書類、印鑑、本人確認のための書類(運転免許証、健康保険証、預金通帳、クレジットカード、町内会長の証明書等)が必要ですが、実務上は、柔軟に対応されています。保険証券が紛失・焼失したような場合であっても、保険契約については損害保険会社に記録があるので、本人確認の上で再発行や保険金の支払がなされます。建物の所有についても、状況により、念書や保険金請求書に本人所有の旨を記載することによりこれに代えることがあります。印鑑の紛失・焼失の場合にも拇印で代えることができます。 また、いずれの損害保険会社と契約したか不明の場合には、社団法人日本損害保険協会または協会支部に連絡して照会をしてもらうことができます。 2 損害認定 損害認定は、損害保険会社の社員または損害保険会社の委託を受けた専門家(損害保険登録鑑定人など)が行います。損害認定は、損害保険業界が設けた損害認定基準により行われます。実務上は、被保険者が現場に立ち会った上で損害の認定が行われ、その場で説明の上、被保険者の署名押印を得ます。 ただし、各損害保険会社の社員が動員された共同調査団が航空写真や現地踏査による調査を行って損害程度を同じくする地域(一括認定地域)を認定し、損害の程度を認定する場合もあり、この場合には、個別の物件についての調査を省略することができます。例えば、全焼物件が集中している地域については、この方法により全損認定を行うことにより迅速に対応できることになります。 3 地震保険金の支払 地震保険金は、契約者または被保険者が保険金請求手続をした日から30日以内に支払われます(地震保険標準保険約款21@)。ただし、調査が終わらない場合には調査終了後遅滞なく支払われます(同)。 4 相談窓口 損害認定についての相談窓口としては、各損害保険会社の保険相談窓口、社団法人日本損害保険協会本部の損害保険相談室または地震保険現地対策本部の保険相談窓口があります。 地震等による災害時には、必要に応じて学識経験者や学者等により構成される第三者機関である「地震保険紛争解決センター」が設置されることがあり、地震保険における損害認定などの保険金支払をめぐる苦情で、損害保険会社との間で円満な解決に至らない場合、意見調整や和解の斡旋を実施します。 Q96 地震保険の保険金受取り後の保険契約 地震保険の保険金の支払について、次の場合はどうなりますか。 @ 地震保険の支払を受けた後も保険契約は継続するのでしょうか。 A 余震が発生した場合にはどうなるのでしょうか。 B 地震から2週間後に損害が発生した場合にはどうなるのでしょうか。 C 地震保険金の支払を受けた場合、残存建物の所有権は損害保険会社に移転するのでしょうか。 A @ 全損で地震保険金が支払われたときは、保険金支払の原因となった損害が生じた時に地震保険契約は終了します。これに対して半損または一部損により保険会社が保険金を支払ったときは、その後も保険契約は継続します。 A 72時間以内に生じた2以上の地震等は一括して1回の地震とみなされます。 B 地震等が発生した日から10日を経過した後に生じた損害に対して保険金は支払われません。 C 地震保険金の支払を受けた場合でも、残存建物の所有権は損害保険会社に移転しません。 解 説 1 地震保険金の支払後も地震保険契約は存続するか 損害の認定が全損となり、保険会社が地震保険金を支払ったときは、保険金支払の原因となった損害が生じた時に地震保険契約は終了します(地震保険標準保険約款22@)。 全損以外の認定(半損・一部損)により保険会社が保険金を支払ったときは、その後も保険契約は継続し、保険金額が減額されることもありません(地震保険標準保険約款22A)。 2 余震が発生した場合 地震保険契約においては、72時間以内に生じた2以上の地震等は、これらを一括して1回の地震とみなす(被災地域が全く重複しない場合を除く)とされています(地震保険標準保険約款7)。 3 地震等が発生した日から10日を経過した後に生じた損害 地震等が発生した日から10日を経過した後に生じた損害に対して保険金は支払われません(地震保険標準保険約款2A)。ただし、地震を直接または間接の原因とする延焼損害については、その延焼損害が地震等が発生した日から10日を経過した後に生じた場合であっても、その延焼の原因である火災が地震等が発生した日から10日以内に生じている場合には、保険金の支払対象となります。 4 地震保険金の支払を受けた場合の残存建物の所有権 地震保険金の支払を受けた場合でも、残存建物の所有権は損害保険会社に移転しません(地震保険標準保険約款4E)。 Q97 マンションの所有者が結ぶ地震保険契約 区分所有建物(マンション)の区分所有者が地震保険保険契約を締結することはできますか。また、区分所有建物の場合、損害の認定はどのようになりますか。 A 区分所有者も地震保険契約を締結できます。ただし、その場合の方法は、管理組合が共用部分について一括して火災保険契約を締結しているかどうかによって違いがあります。 損害認定については、建物全体の損害認定に従いますが、例外があります。 解 説 1 区分所有建物と地震保険 区分所有建物(マンション)については、その管理組合が火災保険の契約者となって共用部分につき一括して火災保険を契約している場合には、各区分所有者は、その有する専有部分について、地震保険を設定することになります。 管理組合がこのような火災保険を締結していない場合には、各区分所有者は、その有する専有部分、および共用部分についての持分に、地震保険を設定することになります。 いずれの場合も、各区分所有者の地震保険金額は、主契約たる火災保険の保険金額の30〜50%の範囲内で、かつ、専有部分の保険金額と共用部分の持分についての保険金額の合計5,000万円が限度となります(地保2A四、地保令2)。 2 区分所有建物の損害認定 区分所有建物の損害認定については、次のように行われます。 一棟の建物全体が全損と認定された場合には、専用部分および共用部分はいずれも全損とみなされます。 同様に、一棟の建物全体が半損と認定された場合には専用部分および共用部分はいずれも半損とみなされ、一棟の建物全体が一部損と認定された場合には専用部分および共用部分はいずれも一部損とみなされます。ただし、専用部分の損害が一棟全体の被害の程度よりも大きい場合には、専有部分につき、個別に全損・半損・一部損の認定が行われます。 Q98 警戒宣言発令後の地震保険加入 警戒宣言の発令後に地震保険に加入することはできますか。 A 警戒宣言発令後に新たに地震保険に加入することは原則としてできません。 解 説 1 地震災害に関する警戒宣言(警戒宣言)発令と地震保険契約 大規模地震対策特別措置法9条1項の規定に基づく地震災害に関する警戒宣言(以下、「警戒宣言」といいます。)が発せられたときは、同法3条1項の規定により地震防災対策強化地域として指定された地域のうち当該警戒宣言に係る地域内に所在する保険の目的については、保険会社等は、当該警戒宣言が発せられた時から同法9条3項の規定に基づく地震災害に関する警戒解除宣言が発せられた日(当該警戒宣言に係る大規模な地震が発生するに至った場合にあっては、財務大臣が地震保険審査会の議を経て告示により指定をする日)までの間、地震保険契約を新たに締結することができず(地保4の2)、締結されたとしても無効となります(地震保険標準保険約款10A第1文)。この場合には、保険金額を増額することもできません。なお、上記の財務大臣の告示は官報をもって行われます(地保令5B)。 2 地震保険契約の満了に伴う更新 ただし、警戒宣言が発せられた時までに締結されていた地震保険契約の期間満了に伴い引き続いて締結される地震保険契約であって、被保険者および保険の目的が直前に締結されていた地震保険契約と同一であり、かつ、保険金額が直前に締結されていた地震保険契約の保険金額を超えない場合には、この限りではありません(地保令5@)。この場合において、当該保険契約の保険金額が直前に締結されていた保険契約の保険金額を超過したときは、その超過した部分については保険契約は無効とされます(地震保険標準保険約款10A第2文・第3文)。 Q99 罹災証明、被災建築物応急危険度判定 罹災証明、被災建築物応急危険度判定とはそれぞれどのようなものですか。 A 罹災証明とは、家屋の被害程度を市町村長等が証明するものです。 被災建築物応急危険度判定は、二次災害を防止し住民の安全の確保を図るために余震等による二次災害の危険の程度の判定・表示等を行うものでステッカーを貼付して表示されます。 解 説 1 罹災証明 罹災証明は、家屋の被害程度を市町村長等が証明するもので被災者への各種の支援施策や義援金、税の減免、学費の減免、企業内の見舞金などに利用されます。損害調査の際には参考としてその提示を求められます。 2 被災建築物応急危険度判定 被災建築物応急危険度判定とは、余震等による被災建築物の倒壊、部材の落下等から生ずる二次災害を防止し、住民の安全の確保を図るために、建築物の被害の状況を調査し、余震等による二次災害の危険の程度の判定・表示等を行うもので、判定は、危険度に応じて「危険」(立入禁止)、「要注意」(立入りには十分注意)、「調査済」(使用可能)の3段階で示されます。「危険」は赤色、「要注意」は黄色、「調査済」は緑色のA3 版のステッカーを建物の出入口等、外部の見やすい位置に貼って表示し、その建築物の使用者や歩行者等へ周知されます。 4 住宅ローン Q100 既存住宅ローンの金利の減免、支払猶予 地震で家屋が倒壊、損傷したのですが、住宅ローンが残っています。地震で収入は減り、復旧費等支出がかさむのですが、既にある住宅ローンについて、金利の減免や支払の猶予をしてもらうことはできるのですか。 A 法的に、当然に、金利の減免や支払猶予を受けられるわけではありません。しかし、住宅金融公庫他金融機関において、内部基準を設けて、これらの措置を講じている場合もあります。 解 説 1 既存住宅ローンの金利の減免 家屋が倒壊、損傷したとしても、法的に、当然に、住宅ローンの金利が減免されるわけではありません。ただ、金融機関によって、内部基準を設け、個別に被災者の相談に応じている場合もありますので、窓口で確認してみてください。 2 既存住宅ローンの支払猶予 家屋が倒壊、損傷したとしても、法的に、当然に、住宅ローンの支払が猶予されるわけではありません。ただ、金融機関によって、個別に被災者の相談に応じている場合があることについては、上記で述べたと同様です。 3 住宅金融公庫の場合 ここでは、参考までに、新潟県中越地震の際の住宅金融公庫における既存債務の返済方法の変更について簡単に述べてみます。 対象者は、(1)商品、農作物その他の事業財産等または勤務先が損害を受けたため、著しく収入が減少した人、(2)融資住宅が損害を受け、その復旧に相当の費用が必要な人、または(3)債務者または家族が死亡・負傷したため、著しく収入が減少した人のいずれかに該当し、被災後の収入が公庫で定める基準以下となる見込みの人です。 罹災割合(被災の程度)(災害発生前1年間の収入額に対する、@災害発生後1年間の減収予定額とA融資住宅等の復旧に要する自己資金とB負傷等の治療費の合計額の割合)によって、返済方法の変更を行っています。 (1) 罹災割合が30%未満の場合 払込みの据置または返済期間の延長 1年 据置期間中の利率の引下げ幅 0.5% (2) 罹災割合が30%以上60%未満の場合 払込みの据置または返済期間の延長 2年 据置期間中の利率の引下げ幅 1.0% (3) 罹災割合が60%以上の場合 払込みの据置または返済期間の延長 3年 据置期間中の利率の引下げ幅 1.5% アドバイス 金融機関の窓口、被災地の自治体の窓口にて、既存住宅ローンの返済方法の変更に関する情報を確認してみてください。 Q101 震災により倒壊した場合の抵当権、住宅ローンの期限の利益の喪失等 地震で抵当権の設定されている家屋が倒壊してしまいました。 @ 倒壊した家屋に設定されていた抵当権はどうなりますか。 A これにより、住宅ローンの期限の利益を喪失してしまうのですか。 B これにより、金融機関から増担保を請求されるのですか。 A@ 地震の倒壊により、設定された抵当権は消滅します。 A 金融機関において、一般に期限の利益を喪失させるという運用はとられていないことが多いようです。 B 金融機関において、一般に増担保を請求するという運用はとられていないことが多いようです。 解 説 1 抵当権の消長 抵当権の設定された家屋が崩壊して木材となった場合のように、目的物が動産に変形された場合には、動産となったことを理由に、抵当権は消滅し、また、変形物たる動産は、抵当権の物上代位の対象にもなりません。もっとも、この建物に地震保険が付保されていた場合には、この保険金に対して、抵当権の物上代位が認められています。地震保険については、前掲Q89〜Q99を参照ください。 2 期限の利益の喪失 抵当権の設定された家屋が地震により崩壊し、抵当権が消滅した場合であっても、これが不可抗力によるものであることから、特約なき限り、期限の利益を喪失しないのが原則です。 しかし、住宅金融公庫を含め、特約上、不可抗力であっても、抵当権の滅失、損傷等が期限の利益の喪失事由となっている場合が多く、かかる特約により、期限の利益を喪失するということにもなりそうです。 しかしながら、実際には、例えば、阪神・淡路大震災や新潟県中越地震において、住宅金融公庫をはじめ、一般に、金融機関において、期限の利益を喪失させるという運用をとっていないことが多かったようです。 3 増担保(追加担保)の請求 住宅金融公庫を含め、特約上、不可抗力であっても、抵当権の滅失、損傷等が増担保請求事由となっている場合が多く、かかる特約よりすれば、増担保を請求されることにもなりそうです。 しかしながら、実際には、例えば、阪神・淡路大震災や新潟県中越地震において、住宅金融公庫をはじめ、一般に、金融機関において、増担保を請求するという運用をとっていないことが多かったようです。 アドバイス 金融機関も、個別の事案ごとに、震災の実態に即した、現実的な対応をとっているケースが多いようです。金融機関の窓口に相談してみてください。 Q102住宅の再建、補修のための公助制度、共助制度 地震で家屋が倒壊、損傷したため、新築、補修等したいのですが、どのような制度があるのですか。公助(公的支援)、共助の制度について教えてください。 A 公助制度としては、自治体による融資制度、被災者生活再建支援法に基づく支援制度、災害救助法に基づく応急修理制度などがあり、共助制度として、兵庫県で、兵庫県住宅再建共済制度が発足しています。 解 説 1 自治体による融資制度 被災者が、震災により自宅に被害を受け、新築、新規購入、あるいは補修をするために、資金が必要となり、このような住宅再建の資金面における支援のための融資、あるいは利子補給事業等を、被災のあった都道府県単位で、あるいは市町村単位で行う場合があります。この制度については、Q103で改めて述べます。 2 被災者生活再建支援法に基づく支援制度 平成10年に議員立法で成立した「被災者生活再建支援法」は、全壊世帯に最高100万円(家財道具の調達等に要する費用)を支援する内容でした。もっとも、その後、安定した居住の確保が、被災者の生活再建を支援する上で極めて重要な意味を持っているとの声が強くなってきました。そのため、居住関係経費を対象とする居住安定支援制度が創設され(世帯収入に応じて、新築等の場合、上限200万円、補修の場合、上限100万円、賃貸入居の場合50万円)、支援金支給額の上限が300万円に引き上げられ、大規模半壊の場合も支給の対象とされる形で、法律が改正されました(平成16年4月1日施行)(被災再建規7・8)。新潟県中越地震の際には、新潟県が、この制度を補う形で、県独自に支援内容を拡充しました。 3 災害救助法に基づく応急修理制度 この制度は、住宅が半壊し自ら修理する資力のない世帯について、居室、台所、トイレ等日常生活に必要な最小限度の部分を応急的に修理する必要性がある場合、自治体がその費用を負担する現物給付制度で、根拠法は、災害救助法です(災救23@六、平12・3・31厚告144)。被災者は業者との間で要件を満たした金額の範囲内で修理を依頼することになります。 この制度は、応急仮設住宅の需要抑制を図り、また被災者が住み慣れた地域での暮らしを可能にする制度といえます。執行主体は、市町村で、知事より委任を受けます。資格要件、修理の内容等は、知事が決定します。阪神・淡路大震災の際は、周知不十分なところがあったようですが、新潟県中越地震の際は、利用されていたようです。 4 兵庫県住宅再建共済制度 この制度は、全国に先駆けて、兵庫県が平成17年3月成立させた条例に基づく制度で、地震、豪雨等のあらゆる自然災害で全半壊した住宅の再建を、住宅所有者の掛金によって支援する共済制度です。掛金住宅一戸あたり年5,000円で、半壊以上の被害を受けた加入者について、新築、購入する場合に600万円、補修の場合は、最高200万円、新築、購入、補修もしない場合には10万円が支給されます(地震保険等との併用可)。地震保険が損害に対する補填で、「自助」の制度であるのに対し、共済制度は住宅所有者の助け合いに基づく「共助」の制度であって、「自助」と「公助」(公的支援)との限界を受けて作られた制度として説明されています。 アドバイス これらの制度にはいろいろな要件がありますので、個別の適用については、被災地の自治体に照会して確認してください。なお、上記以外にも、例えば自治体の出資した震災復興基金による各種助成制度などがあります。 Q103 住宅の再建のための新規融資等 地震で家屋が倒壊、損傷したため、家屋の建替資金、補修資金を捻出するために、新規融資を受けられないでしょうか。 A 阪神・淡路大震災、新潟県中越地震の際には、住宅金融公庫等の政府系金融機関のほか、民間金融機関でも、通常よりも低利で、据置期間の延長、一定期間の支払猶予措置等の軽減措置を講じた新規融資をすることがありました。また、被災地の自治体の中にも、特別融資等をしたところがありました。 解 説 1 住宅金融公庫による融資 住宅金融公庫は、住宅金融公庫法で、地震等の自然災害により家屋が滅失、損傷した場合で、被災者が新たに家屋を建設、購入、補修などする際に、法律で定めた条件の範囲内で、必要な資金を貸し付けることができることになっています(災害復興住宅融資)(住金17E)。 ここでは、参考までに、新潟県中越地震の際の住宅金融公庫における新規融資について簡単に述べてみます。 対象者は、建設および新築・中古建物(リ・ユース)購入の場合、住宅に5割以上の被害を受けた旨の「災害復興住宅に関する認定書」の発行を受けた人です。補修の場合、住宅に10万円以上の被害を受け、「罹災証明書」の発行を受けた人です。 家屋については、家屋の構造、資金の種別に応じて融資額が変わり、建設資金として1,460万円、新築購入資金の場合、上限2,230万円(建設資金、新築購入資金いずれも、住宅の取得に併せて土地の取得費がある場合は土地取得費として上限970万円プラス)、補修資金の場合、上限640万円とされ、返済期間も、家屋の構造、資金の種別に応じて決定され、建設資金、新築購入資金の場合、最長35年、補修資金の場合、最長20年と設定されていました。また、融資利率は、平成16年10月25日現在、年利1.90%と通常の融資より低利に設定されていました。 2 その他の金融機関 住宅金融公庫以外の政府系金融機関や民間の金融機関でも、低利、据置期間の延長、一定期間の支払猶予措置等の軽減措置を講じた融資をするところが多くありました。 3 自治体による融資制度および融資支援制度 被災地の自治体の中には、震災復興のため、低利で長期の返済条件を付した各種特別融資をするところがありました。また、住宅の再建のために新規の借入れをする被災者に対して、一定の利子補給をし、被災者の住宅ローンの利息の負担軽減を図る自治体もありました。 例えば、新潟県では、新潟県中越地震の際に、一定の条件の下に、新潟県中越大震災復興基金が、金融機関からの一定額までの融資に対する利子補給事業を行うとともに、これを超える融資が必要な被災者に対しては、新潟県が、住宅金融公庫の金利よりも低利で、追加融資しました。また、長岡市では、現行の住宅建設等のための融資制度の貸付限度額を拡大し、より低利で、償還期間を延長する形の融資が行われました。 さらに、自治体の中には、住宅融資を受けられない高齢者向けの融資をするところもありました。神戸市の場合、高齢者の不動産資産を担保に、その評価額の70%まで融資をし、当初10年間で借入額の30%の償還を受け(この間利子補給制度を併用すると金利負担なし)、11年目以降の支払は金利のみとし、死亡時に不動産を処分して、元金を償還するという契約条件で融資(不動産処分型特別融資)をしました。 アドバイス 金融機関や自治体において、個別に柔軟な対応をしていることも多いので、具体的な条件については直接窓口でご確認ください。 5 建物の修理等に関するトラブル Q104震災後に修理業者と法外な値段の契約を結んでしまった場合(訪問販売とクーリング・オフ) 自宅に屋根の修理業者が来て、震災者支援のため格安の値段で屋根の修理をするといわれ、屋根用パネルと壁面用パネルの張替工事契約をしましたが、後で調べると相場の3倍の値段だったことが分かりました。契約を解除することができますか。 A 屋根、壁面パネルの修繕は、特定商取引に関する法律(以下、「特定商取引法」といいます。)の指定役務(特定商取引2C、特定商取引令3B・別表第3)に該当しますので、修繕契約の内容に不満があれば、同法で要求される書面を受け取った日から8日以内であれば、その理由如何にかかわらず、「クーリング・オフ」の権利を行使し、契約を解除することができます(特定商取引9@)。 クーリング・オフを行使できない場合でも、詐欺取消し、消費者契約法違反に基づく取消し等が考えられます。 解 説 ご質問については、手続的に一番簡易な「クーリング・オフ」について解説します。 1 クーリング・オフ行使の要件 (1) 原則として営業所等以外の場所において、売買契約または役務提供契約の申込みを受けた場合(特定商取引9@) (2) 指定商品もしくは指定権利の販売または指定役務の提供であること(特定商取引9@) (3) クーリング・オフについて告知した書面を受領してから8日間を経過していないこと(特定商取引9@一) (4) 政令で定めた消耗品については、それを使用しまたは消費した場合でないこと(特定商取引9@二、特定商取引令5) (5) 現金取引については、その取引金額が3,000円以上の場合であること(特定商取引9@三、特定商取引令6) 2 業者の書面交付義務 訪問販売業者は、契約の申込みおよび締結の段階で契約条件を明確にした書面の交付義務があります(特定商取引4)。この書面は、クーリング・オフ期間の起算点として重要な意味がありますので、書面が交付されない場合はもちろん、書面が交付されても記載事項に不備がある場合は、書面の交付がないものとして契約から8日を経過してもクーリング・オフの権利を行使することができます(既に工事が完了していてもクーリング・オフの妨げになりません。)。 3 クーリング・オフの行使方法 クーリング・オフの意思表示は、後日の紛争を防止するため書面(内容証明郵便)で行ってください。クーリング・オフの通知は書面を発信したときに効力が生じますので、業者への到達が8日間を過ぎていても構いません。通知には、特に形式はありませんが、契約日、商品名、価格等で契約内容を特定し、契約を解除する旨を記載してください。なお、クーリング・オフには契約解除の理由を記載する必要はありません。 4 クーリング・オフの効果 クーリング・オフには、次の効果があり、消費者に不利な特約が記載されていても無効です。 訪問販売業者は、損害賠償、違約金、既に得た利益の対価は請求できません(特定商取引10)。 引取り、返還に要する費用は業者が負担することになります(特定商取引9C)。 5 結 論 ご質問の場合、クーリング・オフの要件を満たしていれば、張替え工事が完成していても、業者に代金を支払う必要はありませんし、代金支払済みの場合は返還請求をすることができます。また、工事業者に対して、原状回復に必要な措置を無償でなすよう請求することもできます。 Q105 震災後の屋根瓦補修工事に関するトラブルと注意点 @ 自宅を尋ねてきた工事業者から地震で壊れた瓦屋根等の補修の点検無料といわれて頼んだら、技術料を請求されました。支払わなければならないのでしょうか。 A 被災した家屋の屋根瓦を修理しようと思っていますが、業者の見積りが高すぎると思われます。どのような点に注意して工事を頼んだらよいでしょうか。 A @ 技術料を請求されても代金を支払う法的義務はありません。 A 契約の前後を通じて解説のとおり注意点がありますが、即時に決断しないことが大切です。 解 説 1 点検無料と言われたのに技術料を請求された場合 震災後の混乱時に乗じた悪質業者の手口がどんどん巧妙になっています。屋根や外壁のリフォームについては、特に国の決めた業者資格を必要としませんので、誰でも参入できます。特に訪問によるリフォームの場合、「キャンペーン期間中」とか「屋根の無料診断」とか「地震診断」という名目で勧めることが多いようですので注意してください。 しかし、被害を受けて消費者相談センターに相談しても、結局、示談になって半額程度で折り合うケースが多いようです。悪徳業者の方は、最初からそれが狙いですので、屋根工事に限らず無料相談や半額サービスなどというセールス手法を看板にしている話にはのらない方が安全です。 ご質問では、そもそも技術料がかかる説明を受けておらず、契約もしていないので請求されても支払う法的義務はありません。 請負工事に関するトラブルや紛争が発生した場合、まずは、当事者で十分に話し合うことが重要ですが、当事者のみでは必ずしも円滑な解決が図られないことがあります。 業者が強行に請求してきた場合、裁判所に訴えを提起することも考えられますが、裁判外紛争処理機関として、建設工事紛争審査会に相談するのも1つの解決方法です。 同一業者により同種の被害が多発している可能性もありますので、消費者センターや国民生活センターへ相談事例を照会することによって、立証手段を確保できる可能性もあります。 2 家屋を修理する際の注意点 住宅リフォームに関する苦情相談のうち、屋根のリフォーム、外壁のリフォームへの苦情が上位を占めており、そのほとんどは悪質な業者によるものとされています。そこで、次のような事項に注意して契約に臨めばよいかと思われます。 (1) 契約前の注意点 @ 訪問販売では、できるだけ契約しないこと。 A 工事を依頼するかどうかは、手間と時間をかけて十分検討すること。 B 業者の説明を鵜呑みにしないこと。 C その業者が全日本瓦工事業連盟等の団体の加盟店か確認すること(全瓦連;http://www.yane.or.jp/index.html) (2) 契約時の注意点 @ 複数の会社から詳細な見積りをとり、見積書の提出を渋るような業者とは契約しないこと。 A 必ず改修計画図(書)と工程表の提出を求めること。 B 保証期間を確認すること。 契約時に工事業者と交渉して、保証期間を契約書の中に書き込むことが大切です。民法637条では、屋根工事等の請負工事について、瑕疵担保責任期間を1年間と定めていますので、2年目以降どれくらいの期間を保証してくれるのかによって、業者の信頼性を判断する材料とすることができます。 (3) 契約後の注意点 @ 訪問販売の場合、工事が開始した後でも、クーリングオフ期間内であれば解約できること(特定商取引9)。 A 工事が完了しても、契約どおりの工事がされているかを確認するまでは、代金を全額支払わないこと。 アドバイス 安心できる業者を選択するための1つの判断基準として、「住宅リフォーム推進協議会」(http://www.j-reform.com/)が定めた「住宅リフォーム事業者倫理憲章」に基づいた適切な事業者行動をとることに同意した業者を、「リフォネット」(http://www.refonet.jp/)で検索できます。 Q106震災後に頼んでもいない商品が送られてきた場合(ネガティブ・オプション、送付け商法) @ 震災で死亡した夫が生前に注文したような形で遺族のもとに商品が送られてきました。その後、自宅に商品を置いておきましたが、気になって中身を確認したところ「1週間以内に返品されない場合は、購入したものとみなす。」等と書かれた手紙が挟まっていました。業者に購入代金を支払わなければならないのでしょうか。 A また、業者から商品が代金引換で送られてきた場合はどうしたらよいのでしょうか。 A@ 商品を受け取り、業者が指定する期間内に返品しなかったとしても、そのことのみで売買契約は成立しません。仮に「1週間以内に返品されない場合は、購入したものとみなす。」等と書かれていても買取義務、商品返送義務もありません。 商品の送付があった日から起算して14日、または、販売業者に商品の引取りを請求した日から起算して7日が経過するまで(特定商取引59@)、使用せずに自己の財産と同一の注意を持って保管しておけばよく(民659類推)、上記のいずれかの期間経過後であれば商品を自由に処分して構いません。 A 差出人の氏名・住所表示が明示されていなければ、受取りを拒否すべきです。差出人の氏名・住所表示が明示されていても、心当たりがなければ受取りを拒絶すべきです。 解 説 1 民法上の法律関係 ご質問は、注文を受けていないのに、販売業者が一方的に商品を送りつけるなどして代金を請求するネガティブ・オプションと呼ばれる商法です。 商品を一方的に送りつけられても、それだけでは売買契約の申込みに過ぎず、消費者が承諾または承諾の意思を実現する行為(民526A)をなさない限り売買契約は成立しません。 したがって、消費者に代金支払義務は発生しませんが、手元にある商品の所有権は販売業者にありますので、勝手に処分することはできず、保管しておく必要があります。 2 特定商取引法による解決 しかし、このような状態に置かれた者が対応に苦慮するのは望ましくないため、特定商取引法59条1項は、商品の送付があった日から起算して14日、販売業者に商品の引取りを請求した場合は、請求日から起算して7日が経過したときは、販売業者は商品の返還を請求できないと規定し、いずれかの期間経過後に、送付を受けた者に商品の自由な処分を認めました。 したがって、送付された商品を上記期間内に使用・消費したとき(梱包を解いただけではあたらない)は、購入を承諾したことになりますが、上記期間経過後に使用・消費しても購入したことにはなりません。 同法の対象となる商品は無限定です。また、「送付」手段も限定されていませんので、留守中に商品を置いていった場合も含まれます。ただし、「その商品の送付を受けたもののために商行為となる売買契約の申込み」については、適用されません(特定商取引59A)。 商品が送られた後、業者から電話によって購入を勧められて承諾した場合は、「電話勧誘販売」に該当するので、業者は書面交付義務を負い(特定商取引18・19)、消費者はクーリング・オフができます(特定商取引24@)。 3 代金を支払った場合 亡くなった夫が注文していなかったことを知って代金を支払ったときは、販売業者の売買契約の申込みに対する承認となります。 しかし、亡くなった夫が注文していなかったことを知らずに代金を支払った場合や、他の家族が注文したものだと誤解して内容物を確認しないまま郵便局員に代金を支払った場合は、申込みに対する承諾とならず、非債弁済として販売業者に支払った代金の返還を請求することができます(民705)。 Q107 震災後に必要のない浄水器を購入してしまった場合(点検商法) 水道局の職員のような制服を着た人が自宅にきて、震災によって水道管が破損し水道水が汚染されているといわれたので、浄水器を購入しました。しかし、後で近所の人に聞いたところ、水道管は破損していないことが分かりました。浄水器のお金を返してもらえますか。このような業者は処罰されないのですか。 A 特定商取引法によるクーリング・オフ、消費者契約法による契約取消し、錯誤による契約無効、詐欺による契約取消し、不法行為に基づく損害賠償等によって代金の返還を求めていくことが考えられます。 解 説 1 クーリング・オフによる解約 浄水器は特定商取引法2条4項の指定商品です(特定商取引令別表第1四十二)ので、購入者は、法定の記載事項を記載した売買契約書を交付された日から起算して8日以内であれば無条件で解約でき、書面の交付を受けなかったり、記載事項に不備があれば8日間が過ぎても契約を解約して代金の返還を求めることができます。また、業者に対して浄水器の取外しと引取りを無償で求めることができます(特定商取引9)。 2 消費者契約法による取消し 消費者契約法4条1項1号は、事業者が「不実の告知(重要事項について事実と異なることを告げること)」をしたときは、契約を取り消すことができると規定しています。 「震災によって水道管が破損し水道水が汚染されている」と事実と異なることを告げられた場合も、重要事項について事実と異なることを告げられたと考えることができます。この取消しは、クーリングオフの期間を経過した後でも行使することができます。ただし、誤りに気付いてから6か月間取消権を行使しない場合や契約締結時から5年経過すると取消権は消滅します(消費契約7@)。 3 改正特定商取引法による取消し 平成16年に特定商取引法の一部が改正され、販売業者が、契約の締結を勧誘するに際し、「契約の締結を必要とする事情に関する事項」(特定商取引6@六)、顧客等の「判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの」(特定商取引6@七)について不実の告知をすることを禁止し、これに違反したときは、契約を取り消すことができることになりました(特定商取引9の2@)。 ご質問では、「水道管の破損」につき不実の告知をしていると考えることができますので、上記取消事由にあたり、契約を取り消すことができます。ただし、不実の告知に気付いたときから6か月間取消権を行使しない場合や契約締結時から5年経過すると取消権は時効により消滅します(特定商取引9の2C)。 4 錯誤無効、詐欺取消し 「震災によって水道管が破損し水道水が汚染されている」と告げられたため浄水器を購入したのであり、契約の要素となる動機に錯誤があるといえますので、購入者は錯誤により契約の無効を主張し代金の返還を求めることができます(民95)。 また、業者は、虚偽の事実を告げて浄水器を購入させている点は、相手方を積極的に騙しており、欺罔による詐欺にあたりますから契約を取り消して代金の返還を求めることができます(民96)。 5 不法行為に基づく損害賠償請求 販売者の行為は、対等な当事者間の取引などと比べ、消費者の震災時の不安、情報知識不足等につけこんだ違法性の高い行為ですから、販売会社、販売員に対して不法行為に基づく損害賠償を請求することができるといえます(民709・715)。 6 刑事責任の追及 (1) 書面交付義務違反で100万円以下の罰金(特定商取引4・5・72一)。 (2) 不実の告知違反で2年以下の懲役または300万円以下の罰金、またはこれを併科(特定商取引6・70一)。 (3) 条例違反による処罰例 東京都迷惑防止条例の押売行為(同条例6@三)に該当すれば、50万円以下の罰金または拘留もしくは科料(同条例8C)。 神奈川県迷惑防止条例の押売行為(同条例5)に該当すれば、50万円以下の罰金または拘留もしくは科料(同条例11A)。 Q108 高齢者を狙った震災後の悪徳商法 震災後、認知症の症状が進んできた高齢の父の家に突然業者が訪問し、震災によって建物の基礎部分が壊れていないか無料点検するといわれて、床下を点検してもらったところ、その後、高額な床下工事の契約をさせられて業者が工事を行っていきました。どうしたらよいでしょうか。 A 特定商取引法によるクーリング・オフ、消費者契約法による契約取消し、錯誤による契約無効、詐欺による契約取消し、公序良俗違反による契約無効等によって代金の返還を求めていくことが考えられます。 解 説 建設業を営むには、建設業法で国土交通省か都道府県知事の許可を得なければならず、違反した場合の罰則規定もあります。しかし、500万円未満の「軽微な建設工事」なら許可は不要なので(建設令1の2@)、実際には「素人業者」の参入が多く見受けられるため、震災時に限らずトラブルが多発しています。そこで、本問では、次のような方法が考えられます。 1 クーリング・オフ 自宅訪問による家屋の床下工事は特定商取引法の指定役務に該当します(特定商取引2C、特定商取引令別表3)。したがって、一定期間は無条件で契約申込みの撤回ができるクーリング・オフの主張がもっとも簡易です(特定商取引9)。 また、特定商取引法には高齢者などの判断能力の低下に乗じて契約を締結させる行為を特に禁止しており(特定商取引7三、特定商取引規7二)、違反した場合は罰則の対象となり(特定商取引70)、行政監督の対象となっています(特定商取引7・8・66)ので、交渉において有利な条件を引き出す根拠となります。 2 改正特定商取引法による取消し 平成16年に特定商取引法の一部が改正され、販売業者が、契約の締結を勧誘するに際し、「契約の締結を必要とする事情に関する事項」(特定商取引6@六)、顧客等の「判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの」(特定商取引6@七)について不実の告知をすることを禁止し、これに違反したときは、契約を取り消すことができることになりました(特定商取引9の2)。 ご質問でも、上記のような不実の告知が認められる場合には、上記取消事由にあたり、契約を取り消すことができます。 3 消費者契約法による取消し 事業者の勧誘方法に不実告知、断定的判断の提供、不利益事実の不告知、事業者の不当な勧誘により騙され、あるいは困惑して契約を締結した事情があれば、契約を取り消すことができます(消費契約4)。(Q107の解説2を参照してください。) 4 契約の不成立 法律上は高齢者というだけでは、未成年者のように行為無能力取消し(民5)というような特有の保護は受けられませんが、ご質問においては、「認知症の症状が進行してきた」という事情がありますので、高齢者が契約内容について全く理解していなかったようなケースでは、そもそも契約意思の合致がないことを理由に契約の不成立を主張することができます。 5 意思無能力による無効 高齢者が自分の行為および結果を認識し、これに従って意思を決定することができる能力すらないほど認知症が進行していれば(大体7歳程度の精神能力)、意思無能力者のなした法律行為として無効を主張することができます。しかし、裁判上、意思無能力の立証は困難を伴い、判例上も厳格に判断されています。 したがって、本問においても、高齢者が独立して生計を営んでいる程度の能力があれば、意思無能力を理由に契約の無効を主張することは難しいといえます。 6 錯誤無効、詐欺取消し 錯誤無効、詐欺取消しについては、Q107の解説4を参照してください。 7 公序良俗違反による無効(民90) 公序良俗に反するか否かは、契約内容どおりの効力を認めることが著しく社会正義に反するか否かで個別具体的に判断されます。 本問においても、震災後の混乱時に高齢者の無知や窮迫性に乗じて、必要のない高額な床下工事を行うなどの暴利行為は公序良俗に反する可能性が高いといえます。 第5章 営業に関する問題 1 金融取引 Q109 地震時の手形交換所の特例と最終処理 地震があった場合、手形交換所の取引停止処分に何らかの特例がありますか。また、債務免除はありますか。 A 不渡処分や取引停止処分の猶予がありますが、債務免除はありませんから、許された猶予期間内に不渡処分を受けないようにする必要があります。 解 説 1 不渡処分と銀行取引停止処分 この相談者が会社であるとして、解説します。 会社が振り出した手形・小切手は会社の当座預金が枯渇しておれば決済できずに、手形交換所から不渡処分を受けます。 続いて、6か月の間に2度目の不渡処分を受ければ、手形交換所は会社を2年間の銀行取引停止処分にします。 銀行取引停止処分を受ければ、銀行は会社に対し貸付けもしませんし、当座取引もしませんから、通常会社は倒産したといわれます。つまり、会社は銀行から貸付けを受けられませんし、手形・小切手を使うこともできず、経済活動ができないからです。 こうした会社倒産の事態を避けるため、会社は全力を費やすことになります。 2 地震による特別措置(不渡処分の猶予) 例えば9月1日に発生した地震のために当座預金が枯渇したのであれば、それを銀行に届けます。すると、通常は不渡手形に「資金不足」という付箋が付けられて返されるところ、その付箋の「資金不足」に追加して「なお、9.1地震による」という「なお書」を付けられますと、不渡処分の前提となる「不渡報告」が猶予されます。これが「不渡処分の猶予」という特別措置です。 こうした猶予の期間は地震や被害の規模に応じたものになるはずです(手形交換所規則による対応)。基本となる法律上の根拠は手形法54条および77条と小切手法47条です。 現行の「東京手形交換所規則」(昭和46年実施)59条1項には「手形交換所は、…地震等の災害…緊急事態が発生した場合には、ただちに必要な措置をとり、理事会に報告しなければならない。」となっています。 <参 照> 全国銀行協会ホームページ http://www.zenginkyo.or.jp/ 3 不渡処分・銀行取引停止処分猶予後の処理 まず、不渡処分が猶予されるだけで、債務免除されているわけではないことです(どこにも債務免除されるという法律はありません。)。 (1) 不渡手形の再交換制度 猶予された不渡処分を免れる方法は、速やかに、いったん不渡りになった手形について決済金を準備することが必要です。その後、「不渡手形の再交換制度」(阪神・淡路大震災でとられました。)を利用します。手続は次のとおりです。 @ 振出人(為替手形の引受人)において、いったん不渡りになった手形について決済資金が準備できた場合は、その旨を速やかに取引銀行および手形の所持人に連絡する。 A 連絡を受けた手形所持人は、いったん不渡りになった手形を再度銀行に持ち込み、銀行に@の連絡があった旨を説明する。 B 手形を持ち込まれた銀行は、振出人の取引銀行に連絡し、 事実関係を確認する。 C 銀行間において、手形決済資金が準備できたことを確認できた場合は、手形を再度、手形交換所を通じて交換呈示して、手形を決済する。 D 銀行および手形交換所において、手形が決済された事実が確認できるので不渡処分はなされない。 (2) 不渡処分猶予後の送金 この不渡手形の再交換制度に代えて、不渡処分猶予後、速やかに、その手形などの振出人が手形・小切手の所持人に送金することも考えられます。別途、送金すれば、後日、不渡処分を受けることはありません。なお、振出人が別途送金した事実を銀行に知らせておかないと、銀行には別途送金した事実が分からないまま、後日、不渡処分する可能性があります。別途、送金があった場合は、所持人および振出人双方から関係銀行への連絡を速やかに行ってください。 不渡処分猶予後の送金よりも不渡手形の再交換制度の方法が確実であり、後者の方法をお勧めします。 4 振出人において決済資金を準備できない場合 上記の不渡手形の再交換制度の場合、不幸にして、後日になっても、振出人らが手形・小切手を決済する資力がなければ、不渡処分・銀行取引停止処分は確定してしまいます。手形・小切手の所持人は、振出人らに対する訴訟・強制執行などによる回収・遡求権の行使などを検討することになります。 アドバイス 手形交換所の特例を使う一方、日頃の取引上の実績や信頼関係を生かすことです。正面からお願いすることが第一の心がけでしょう。 Q110 手形決済ができない場合 工場が地震で倒壊して電子部品の生産ができなくなり、1か月2,000万円あて(3か月分の振出手形)の手形決済の目途がこの先全く立ちません。工場さえ再築すれば、3か月分の9,000万円の救済資金と工場再築の資金(5,000万円)、それに従業員10名に賃金3か月分(1,000万円)、合計1億5,000万円の資金が必要になりますが、経営は続けられます。会社を倒産させずにすむ方法はありませんか。 A 手形決済について、天災の場合は手形交換所の特例で1か月程度の期間延伸ができますし、手形債権者の支払猶予をしてもらえることがあります。また、法的処置としては、民事再生手続をとることが考えられます。 解 説 1 被災による場合の手形決済 手形法54条(小切手法47条)に不可抗力による期間の伸長があります。また、手形交換所規則により天災地変などの場合は特例が定められています。全国銀行協会連合会作成の当座勘定規定ひな型(昭和49年4月全国銀行協会連合会制定)の25条(手形交換所規則による取扱い)の2項には「関係ある手形交換所で災害、事変等のやむを得ない事由により緊急措置が取られている場合には、7条(手形、小切手の支払い)の1項にかかわらず、呈示期間を経過した手形についても当座勘定から支払うことができる等、その緊急措置に従って処理するものとします。」となっています。 2 手形決済の期間の伸長 手形決済は、手形交換所の特例で1か月程度の期間伸長はできると思います。しかし、1か月の手形が救われたとしてもその後の2か月分の手形全部が決済できる目途が立たないので、いずれは手形不渡りとなり銀行取引停止という事態になります。 そこで、3か月分の資金、合計1億5,000万円の資金が必要になります。あなたの会社は売上げの回収金が少なくとも1億5,000万円ぐらいは見込まれますので、その1億5,000万円を手形決済に回さず、工場再築の再建資金に回すことが第一でしょう。 こうした考え方は、都合のよい話にも聞こえますが、会社が倒産してもその原因にやむを得ない理由があり、その障害になっている理由が克服できる可能性があれば会社を再建することができます。 ご質問の場合、地震という天災ですから債権者の同情も得られ、会社が再建する積極的姿勢を示せば、手形債権者は支払の猶予をしてくれることもあります。 3 民事再生手続 法的な処置を考える場合、早急に債権債務の数字を出し再建計画を立て、民事再生手続をとることが考えられます。 (1) 申立てにかかる費用 民事再生手続を行う場合、申立ての費用が必要となります。さらに、弁護士に依頼する費用も必要です。費用が不足の場合は、個人経営ならば法律扶助協会(平成18年10月から日本司法支援センター:法テラスへ移行)で法律扶助を受けて費用立替えをお願いすることも可能です。法人ならば商工会議所の窓口で相談してみてください。また、こういう外枠のほかに次の@〜Cが重要になります。 @ 会社の債権債務の確定 地震当日現在での債権債務を明らかにする必要があります。 日頃からの帳簿類が残っていればよいですが、帳簿などがない場合は困難性が増大します(帳簿が行方不明あるいは焼失など)。しかし、取引先が地震の影響がない場合は取引先から取引内容の数字を聞く方法があります。取引先が少なければ数字を把握しやすいので、障害は取り除かれる場合が多いでしょう。取引先と連絡がとれて債権債務関係も判明し、支払を猶予してもらう方向をお願いすることになります。 A 売掛金の額 会社の売掛金が幾らあるかが大問題で、多ければ多いほど会社の再建には明るさが出てきます。例えば売掛金が9,000万円あれば、この回収をお願いすることになります。 B 会社の売却可能な資産 会社の資産で売却可能なものが幾らあるかです。例えば売却可能な資産が6,000万円あるとしますと、それが不動産の場合には、早急に売却の方向の手配をする必要があります。 こうした要素を総合的に考慮して、立上がり資金の1億5,000万円の目途を立てます。 C 会社の債務額の確定 会社にとっての最大の問題点である借入金や未払の買掛金の債務額です。例えばこれが合計2億円あるとすれば、単純計算をして、 2億円−1億5,000万円=5,000万円 (2) 再建案の検討 以上のような問題点を克服して、いよいよ再建案(民事再生法では「再生計画」)の検討となります。簡潔にいえば、債権者にお願いして債務免除や分割延払いや利息免除等々の債権者の犠牲を前提に再建案を立てます。上記の計算によれば、5,000万円を債務免除してもらうなり、一部3,000万円債務免除で2,000万円を5年の分割払といった再建案を立てることになります。 (3) 従業員の協力 また、どうしても資金繰りが厳しくなります。その際には、従業員の協力を得る必要があります。最後は給与の遅配、賃金カット等々の協力を得られて会社債権者の理解を得られることにもなります。震災だからという同情の外、会社再建にあたっても真摯な経営努力が必要にもなります。 (4) 債権者の同意 再建案に関して、最終段階では債権者の同意が必要になります。同意の得られる再建案を提出する必要があります。債権者の同意は債権(会社からみれば債務)を持っている債権者の過半数の同意と議決権者の総額の2分の1以上の議決権を有する者の同意の双方が必要となります(民再172の3)。このように、多数決で再建案の同意を得られれば、裁判所の手続は進みます。1人の反対で再建ができないということはありません。 4 任意整理 民事再生の手続の中心的な部分を解説しましたが、その他の方法として任意整理(私的整理)手続もあります。民事再生手続は裁判所に申し立てて行う手続で多数決で再建案が認められます。会社更生手続と同様に会社を立ち直らせる手続では同じで、経営者が交代しませんが(民再38)、交代するのが会社更生手続である(会社更生72・32・99以下)と一般的にはいえます。 そうした手続を経なくても、当事者間の話合いで上記の民事再生的な手続ができるのなら、被災者は弁護士に依頼して、私的な会社再建計画を進めることもできます。上記の例でいえば、工場の一部が倒壊したものの肝心な部分は被害が少なかったとか、売掛金が多くあったとか、取引先が少なくて長年の取引で理解を得られて再建に協力を申し出られているとかといった場合です。ただ多数決というわけにはいかず全員の同意が必要です。 アドバイス 日頃から会社経理の帳票類をコンピュータで管理しているのなら、そのバックアップをとっておくとか、重要な帳簿は耐火性の金庫に毎日しまっておくとか、顧問弁護士に日常的な経営について説明しておくとかが重要になります。 Q111 通帳、カードの紛失 被災によって預金通帳とカード、印鑑まで埋まってしまいました。預金を引き出したいのですが、どのようにすればよいのでしょうか。 A 金融機関は、預金通帳やカードを紛失した場合でも、本人であることが確認できれば、払戻しに応じることになっています。また、届出の印鑑がない場合でも払戻しに応じてもらえます。 解 説 1 預金の払戻しについての取扱い 預金の払戻しについて、金融機関(銀行、郵便局、信用金庫、労働金庫など)からみれば、次の問題点があります。 @ あなたが、どこの誰であるか証明することができるか(預金者の同一性の証明) A あなたの預金残高が幾らか証明できるか(預金残高の証明) 2 預金者の同一性の証明 (1) 運転免許証、保険証などの証明書 金融機関の担当者に顔見知りがいるのならよいのですが、通常は、運転免許証、国民健康保険被保険者証など、自分を証明するものが必要になってきます。そのほか、身分証明書とか社員証明書など職場の証明書がありますが、上記2つに比べるとその証明する力が小さいことになります。 仮に、銀行のカードだけが残っていたとなれば、それなりの効果はありますが、カードの名義人と同一人物であることを証明する必要があります。その際、あなたの住所・生年月日・男女の別といったことが、ポイントとなります。また、暗証番号とか、届出の印影とか、預金口座の申込書の筆跡とか、いろいろ本人の確認に役立つものがありますが、それらは皆、それなりの証明しかできませんから、後は、窓口担当者とあなたとのやりとりでどこまで迫ることができるかという問題になります。さらに、金融機関の非常時の社会的責任をどこまで受け入れて危険な行為をしてくれるかにかかってきます。 その際に参考となるのは次の2つの裁判例です。「預金通帳とは異なる氏名が記載された払戻請求書による預金払戻しについて、氏名の誤記を訂正させたものの諸々の不審事由がありながら免許証や身分証明書の提示を求めるなど本人確認の措置をとらないで払戻しに応じた場合、銀行の窓口担当者に過失がある(東京地裁平成11年4月22日判決(金法1549号32頁))」というものがあります。さらに、「銀行の預金払戻担当者が預金者本人と異なる者が払戻しを請求していると認識した場合には、通帳や届出印を確認しただけでは足りず、身分証明書の提示を求め、生年月日・電話番号などの個人情報を尋ねるなどして、払戻請求者の正当な受領権限を確認すべきであり、これを怠ったときは過失があるというべきである(東京地裁平成14年2月19日判決(判タ1099号217頁))」というものもあります。以上の裁判例は、平常時のときのものですが、震災時において、これらの場合の本人確認の手続については少しは基準が銀行側に甘く見られることになるでしょう。 (2) 罹災証明書 この点について、地方自治体の発行する「罹災証明書」がかなりの威力をもつことになります。罹災証明書には、住所・氏名・生年月日等が記載されていますから、その持参者が本人であることは、かなりの証明となります。かなりの証明というのは、罹災証明書の発行についても前記のような問題があるからです。 銀行側も、預金払戻請求があれば、これに応ずる義務がありますから、持参者が預金者と同一人物であるかの確認をします。あまり堅苦しいことをしていると金融機関の社会的使命が損なわれるため、銀行はある程度危険を覚悟で払出しに応じてくれるはずです。 財務省の銀行局長通達で罹災証明書の呈示やその他実情に則する簡易な確認方法による払戻請求に応じるように指導しています(昭30・12・23付蔵銀2599大蔵(財務)省銀行局長通達)。 他人が自分の預金を引き出すこともあり、銀行側としては、本人以外の人に預金を支払うこともあり得るわけで、これはカードのデータが盗まれて引き下ろされるケースと同様の問題が生じますが、最終的には、銀行側が本人であるとの認識する過程に落ち度がなければ、銀行側の取扱いは預金払戻しについては免責されることになります(債権の準占有者への弁済(民478))。 3 預金残高の証明 本人確認をして自分の口座番号が分かれば、あとは銀行のコンピュータが処理をしてくれます。しかし、銀行のコンピュータが動いているとは限りませんから、残高が幾らあるか自分が証明しなければならないこともあります。すべてが非常時ですから、銀行としては、残高を証明してもらえれば、非常時支払で例えば20万円までは臨時の取扱いで預金の引出しを認めるとかしてくれます。 郵便局の非常時の取扱いとして、阪神・淡路大震災のケースでは、郵便貯金の支払は20万円というように便宜的な取扱いがなされましたが、民営化されますと銀行並みの扱いとなると考えられます(郵便貯金31)。 残高を確認する方法としては、預金通帳とカードがあればよいのですが、ご質問では、その通帳もカードもないということですから、貯金の預金引出しの際に現金と一緒に出てきた「取引明細書」があり、その日付が直近のものであれば、かなりの残高証明の証拠になります。 アドバイス 大震災という非常時のことであり、いろいろな条件によって取扱いに差が出ます。金融機関のバックアップ体制がしっかり整っているところと、そうでないところとか、そのコンピュータの本体とオンラインが接続しているのか、銀行の窓口が罹災している場合とそうでない場合とか、本人が負傷して病院にいる場合と元気な場合とか、あるいは肝心の本人が死亡している場合でその相続人が預金を下ろしたい場合とか、さまざまなケースがありますが、基本を踏まえての応用となります。 Q112 小切手の発行と銀行の営業停止 銀行が地震のため営業していません。小切手を発行しても大丈夫でしょうか。 A 小切手の支払場所である銀行が営業していないということは、小切手受取人にとっては次の点で注意を要することになります。 解 説 小切手は、「振出日から10日以内」に支払場所に呈示する必要があります(小29@)。原則からいえば、この期間に銀行の営業が再開されていれば問題はありません。といっても受取人にとっては、1日も早い支払を望むことでしょうから、事前に受取人にこうした事情を伝えておく必要があります。 また、地震という特別の事情も考慮されます。 手形交換所は、地震に伴う特別措置として、呈示期間を経過した小切手(手形も同じ)についても地震の影響によるとの客観的な事情が認められれば小切手(手形)交換呈示を行います。 アドバイス 銀行も再開に努力することでしょう。それよりも、小切手の振出先によく事情を説明することです。 Q113 銀行の営業停止 銀行が地震のため営業をしていません。受取手形の割引も取立てもできません。どうしたらよいでしょうか。 A 銀行は遠からず再開されます。そこで、直ちに受取手形を持ち込み、自己振出の手形の不渡猶予処分を得て、最終決済に持ち込むことです。 解 説 1 手形割引ができない場合 「手形割引」ができないということそれ自身はあなた(会社)の都合より銀行の都合が優先しますから、困ったことになりますが、あなたが救われる道は狭くなります。割引ができない→支払手形決済資金が不足する→不渡処分→銀行取引停止処分と連鎖することになります。 Q109で説明した不渡処分・銀行取引停止処分猶予の制度が機能することで、息をつくことも可能だと考えられます。 2 銀行が営業していない場合 次に受取手形の取立てが銀行が営業していないことからできないということは、地震という特別の場合の救済措置として、Q112(銀行営業停止中の小切手の振出)のケースでみたとおり、手形の支払呈示が遅れたことについての救済は受けられます。 銀行が営業できていないため受取手形所定の呈示期間内に呈示できなかった場合の手形(小切手)の権利関係は次のようになります。 (1) 手形・小切手上の権利の種類 手形には、「振出人(為替手形では引受人)に対する手形金請求権」と「手形が不渡りになった場合の裏書人らに対する遡求権」が認められています(手43〜54・77)。 また、小切手には、「振出人に対する小切手金請求権」と「小切手不渡りの場合の振出人らに対する遡求権」が認められています(小39〜47)。 (2) 手形金請求権について 振出人または引受人に対する手形金請求権は、もともと所定期間内に呈示できなかった場合でも影響を受けません。呈示期間内に呈示できなかった場合でも、手形所持人は、振出人に手形金額を請求することができます。ただし、利息金は、「満期以降」ではなく、手形を呈示して請求した日の翌日から支払日まで年6分の割合の金額となります。 (3) 遡求権について 約束手形が不渡りになったとき、振出人ではない裏書人らに手形金を請求できる権利を遡求権といいますが、この権利を行使する要件として満期における支払拒絶が必要です。すなわち、手形所持人が支払呈示期間内に振出人に対して適法な支払のための呈示をしたが支払を拒絶されたという要件です。しかし、不可抗力によって所定の期間に呈示できない場合は、呈示期間から伸長されます(手54、小47)。地震があれば、そのことが不可抗力と認められますから、実際に呈示できるようになってから遅滞なく呈示することになります。 上記の呈示期間の伸長の場合は、手形・小切手の所持人は、遅滞なく裏書人らに対してその旨の通知をすべきとされています。この通知を怠っても遡求権自体は認められますが、事情によっては手形・小切手金額の全部または一部について裏書人らに請求できなくなることもあります。 (4) 遡求権が認められない場合の裏書人に対する対応 遡求権は、上記のとおり呈示可能となった時から遅滞なく呈示することが必要です。遅滞なく呈示しなかった場合は、裏書人らに請求することはできません。ただし、手形・小切手授受の直接の相手方に対しては、売買代金債権、請負代金債権、貸金債権などの原因関係上の権利を行使することが考えられます。 アドバイス 手形は現金ではなく、信用証券として銀行取引の中で決済されていくものですから、のんびりしたことは禁物です。 Q114 震災時の手形の支払呈示 大地震が発生した場合、手形などの支払呈示はどうなりますか。 A 大地震が発生した場合には、手形交換所により特別措置がとられます。 解 説 1 呈示に関する原則 手形は、支払を為すべき日(満期)または之に次ぐ2取引日内に支払場所に呈示することが必要です(手38)。また、小切手は、(振出日から)10日内に支払場所に呈示することが必要です(小29)。 2 呈示できなかったケース 阪神・淡路大震災のため、所定の期間内に支払場所に呈示できなかったケースは、次の3種類ではないかと思われます。 @ 取立委任・割引などにより既に銀行に持ち込まれていたが、震災により手形交換制度に支障が生じたため((1月17日〜1月23日)まで手形交換が行われなかった)、呈示できなかったケース A 震災により、手形・小切手が一時紛失したために、銀行への持込みが遅れ、呈示できなかったケース B 震災により、手形・小切手が焼失・滅失など完全に紛失したため、呈示できないケース 3 呈示に関する今回の特別措置 手形交換所では、震災に伴う特別措置として、呈示期間を経過した手形・小切手についても、地震の影響によるとの事情が認められれば手形交換呈示を行っています。前記@のケースは、既に上記特別措置において処理されています。上記Aのケースで、まだ銀行に持ち込んでいない手形がありましたら、呈示期間内に呈示できなかった事情を説明して至急、銀行に持ち込んでください。 適法な呈示になるという保証はありませんが、手形法54条、小切手法47条の趣旨に従い、円滑な決済ができるよう支払銀行側(手形債務者)と協議してもらってください。各手形交換所の加盟銀行は、配慮してくれるはずです。前記Bのケースでは、公示催告・除権決定を検討する必要があります(Q115を参照してください。)。 Q115 手形・手形帳の行方不明 地震によって受取手形と手形帳が行方不明となりました。この場合、どうしたらよいのでしょうか。 A@ 受取手形は公示催告手続・除権決定を得て、受取手形を無効にして、元の原因債権で支払を求めます。 A 手形帳は、将来不正な利用があった場合に防御するために、遺失届を警察に出しておき、遺失届の受理証明をもらい、銀行にも遺失届を出します。 解 説 受取手形と手形帳の取扱いが異なりますから、分けて答えます。 1 受取手形の場合 (1) 原 則 受取手形金の支払を受けるためには、法律上、受取手形を現に所持しており、支払と引換えに、受取手形の現物を振出人に交付する必要があります。また、受取手形を直接授受した当事者間には、売買代金債権、請負代金債権の請求権(原因関係上の債権)がありますが、これら原因関係上の債権についても、受取手形と引換えが求められます(これらのことは受取手形の場合でも小切手の場合も同様です。)。 (2) 公示催告および除権決定 このような場合、受取手形を喪失した人は、受取手形の遺失届を警察署に届けます(遺失1参照)。行方不明の受取手形が警察署に届け出られたときに備えます。その上で、非訟事件手続法第3編の規定に従って、簡易裁判所に、公示催告の申立て(非訟141)をし、除権決定を得た後に、受取手形なしに、振出人に受取手形金を請求することができるようになります(非訟160A)。(ここでも、受取手形の場合でも小切手の場合も同様です。) (3) 公示催告の申立てによる除権決定における注意事項 (2)に関連して注意すべき点を2つ挙げます。 @ 公示催告の申立てをしても、除権決定を受けても、受取手形債権の時効は中断しません。また、原因関係上の債権の時効も中断しません。ケースによっては、これらの手続に併せ、時効中断の手続が必要になります。なお、時効中断のためには、必ずしも受取手形の呈示を要しないとされています(最判昭38・1・30判時325・4、最判昭39・11・24判時398・29)。 時効中断の具体的手続について内容証明・配達証明郵便で、手形債権(できるだけ細かく特定する)と原因債権(これもできるだけ細かく特定する)の履行を債務者(一般的には約束手形の振出人)に請求することです。 A 除権決定を得ても、所定の呈示期間内に受取手形を支払のために呈示しなかった事実は残りますから、遡求権の行使はできないと解されます(最判平5・10・22判時1478・152参照)。 (しかし、ここで、救われる道としては手形法54条の存在です。本条では、不可抗力が満期から30日を超えて継続した場合は、手形を呈示しなくても、遡求権を行使できる旨定めています。地震が30日継続することは非常にまれでしょうが、余震が長期間継続したことなどの事情により地震による手形喪失が「不可抗力の継続」にあたれば、救われる道はなきにしもあらずです。仮にこの条文で救われるとすれば、遡求権の履行と手形の交付は引換えにする必要があり、法律上、除権決定を得る必要があり、また遡求権の時効中断措置も必要です。) (4) 念書差入れにより支払を受ける努力 以上が法律的に見た場合の説明ですが、いずれにしても、現実に支払を受けるまでには、相当期間を要し、その間、資金繰りに重大な影響を被る可能性があります。そこで、振出人から永年信用されているような場合には、「現在公示催告を申立て除権決定を受ける手続をしていますところ、仮に他に手形上の権利を主張する者が生じた場合には、その解決について当社が一切の責任を取ります」と念書(覚書)を差し入れて、除権決定を受ける前に支払を受けられるようお願いするのも経済的に困窮する事態を乗り切る方法です。 アドバイス 公示催告手続で除権決定が出るまでには約半年程度の期間と5万円前後の費用(申立て費用・官報公告費など。別に弁護士手数料。)がかかります。 この手続では、司法書士は代理人になれませんので、弁護士に委任することになります(司法書士法3条1項6号のイないしホのいずれにも該当しないため)。 ご質問の「行方不明」は「遺失」にあたりますが、火事で「焼失」の場合、「盗難」にあった場合にも、遺失の場合とほぼ同様ですが、焼失の場合は消防署から罹災届受理証明をとります。盗難の場合は警察署から盗難届受理証明をとります。 なお、公示催告手続規定は、昨今の法令の大改正で激しく動きました。当初は、「民事訴訟法」にあり、その後「公示催告及ビ仲裁手続ニ関スル法律」に移り、さらに「公示催告ニ関スル法律」を経て、現在は「非訟事件手続法」の中の一編(第3編)に落ち着きました。 2 手形帳の場合 手形帳の場合も小切手帳の場合も同様と考えてください。まず、警察に遺失届を出します(遺失1参照)。 遺失届の受理証明をもらいます。将来手形帳を悪用された場合に抗弁が出せるようにするためです。 銀行にも、警察と同時に手形帳の遺失届を出し、警察の遺失届の受理証明をもらった段階で、その写しを銀行に提出します。 遺失届の受理証明は大切にとっておいてください。 アドバイス 取引銀行は支払場所が取引銀行になっている統一手形様式の手形帳を必要枚数だけという限定で交付しています。番号や枚数は銀行に聞けば分かりますから、遺失届の際には会社に手形帳のデータ(手形の記番号)の手控えがないときは、銀行に尋ねてみてください。 「焼失」や「盗難」の場合も、前項(受取手形の場合)の「アドバイス」を参照してください。 2 商取引 Q116 リース物件の滅失 地震によってリース契約のコピー機が壊れてしまいました。契約はどうなりますか。 A 地震の場合には、コピー機が使えなくなったので、リース料金を支払わなくてもよいのではないかとお考えでしょうが、リース契約には特約条項(地震等の場合にも月々のリース分割金を支払う)があります。 解 説 1 リース物件が滅失した場合 リース物件が不可抗力により滅失した場合、双務契約であるリース契約は、リース業者が物件を使用収益させることができずに履行不能となり、その危険は物件を使用収益させる義務を負うリース業者が負担するのが原則です(民536の危険負担の債務者主義)。したがって、リース業者は、リース料の支払を求める権利を失います。また、賃貸借法理のもとでは、借主は滅失部分に応じたリース料の減額請求ができ、残存部分のみでは目的を達成することができないときには、解約できることになります(民611)。 2 危険負担免責の特約 ところが、リース契約では、民法の危険負担の条文の適用を特約でもって排除しているのが通常です。リース期間中、物件が不可抗力など双方の責に帰さない事由により滅失・毀損した場合、ユーザーには契約解約権はなく、原則として規定損害金を直ちに支払う義務を負うものとされています。 こうした特約があるのは、リース契約が金融であることに重点を置いているからです(ファイナンス・リースともいわれます。)。 こうした観点から、また、リース物件の一部がユーザーの責に帰さない事由により滅失・毀損したときでも、滅失部分に応じたリース料の減額請求はできず、残存部分のみではリースした目的を達成できないときでもユーザーに解約権は生じません。ただし、リース物件には、通常、リース業者により、動産総合保険がかけられているので地震保険も付保されている場合はまれですが、地震による保険金が支払われた場合には、ユーザーの規定損害金負担は軽減されることになります。 この危険負担免責の特約が、必ずしも当事者間の公平を著しく欠くものということにあたらない、として肯定する下級審の裁判例があります(大阪地判昭51・3・26判タ341・205以下)。 なお、リース業者に対し、新たな物件の提供を請求することはできません。 アドバイス 通常リース物件においては、日頃から縁のある業者がリース契約に関与していますから、非常事態において、新しい機材を新たにリースする場合などに、従前のリース代金との折合いをつけてくれるかもしれません。 Q117 株券の紛失 株券が地震で無くなりました。どうしたらよいでしょうか。 A 会社法223条で定める株券喪失登録の請求をします。具体的手続は法務省令である「会社法施行規則」47条(株券喪失登録請求)に定められています。 解 説 1 株券除権判決制度の廃止 従前の手続では「株券」の再発行を求めるためには、株券の無効を確認する必要から除権判決が必要だったところ、平成14年の商法改正により株券の除権判決制度は平成15年3月31日限りで廃止されました(なお、除権判決そのものは、平成17年4月1日から除権決定に改められました(非訟148)。)。 2 株券失効制度の新設 新たに株券失効制度が新設されました(改正商法(平成14年法律第44号))。この制度は、裁判所の判断を経なくて済むようになり株券発行会社(または名義書換代理人)が自らの責任と費用負担において株券を無効化することとされました。 その具体的内容は、株券の喪失者に対し一定の申出をさせ、これを一定の方法で情報公開して、当該株券の所持人に権利主張を促し、一定期間内に権利主張がなければ、株券を無効化するというものです(会社221〜228)。 この制度の下では、株券の無効を確定させ、株券を再発行をしてもらうためには、最低でも申請から1年以上はかかることに注意をする必要があります(会社228)。 3 会社法の下では株券不発行が原則 なお、付言すれば、平成18年5月1日施行の新「会社法」では、会社は原則としては株券を不発行とし、例外的に定款で株券の発行を定めれば株券が発行できるとしました(会社214)。 アドバイス これまで、手形等の有価証券として株券は扱われてきたものが、会社法では、株券は切り離されました。 Q118 ITインフラの破壊の影響 証券の売買をしたところで、地震に見舞われ、取引が成立したのか分かりませんし、仮に取引が成立していたとしても、現在はその支払の方法が分かりません。どうしたらよいのでしょう。 A 手形・小切手の決済に関する手形交換所による特別措置と同様な措置がとられるでしょう。 解 説 1 証券会社のバックアップ体制 大手証券会社は、平時でも証券取引所のシステム障害に見舞われたことから、関東が地震で機能不全となっても、取引に支障をきたさないように、自前の、同一取引データを、関西の地に第二基地をおいて、バックアップ体制をとることを計画しています。郵便貯金とか簡易保険もフェイルセーフ体制をとっています。(しかし、中小の証券会社はそのような体制はとっていません。) 2 クレジット会社の特別措置 クレジットカードの決済も通信網を使って銀行口座から引き落としていますから、地震により証券取引同様のネットワークシステムに支障により決済不全の事態が生じます。その連鎖で、信用情報に悪く影響が出るおそれがあります。しかし、これまた、手形・小切手の場合の手形交換所のような特別措置をとられるはずです。しかし、その最終的結末は決済する必要のあることに変わりません。このことも手形・小切手同様です。 3 株式の電子化 平成21年6月までには上場会社の株式は電子化(ペーパーレス)されます。このときに、株券を証券会社を通じて証券保管振替機構に預けていると、名義書換えできる一方、他人名義のままの株券をタンス預金にすると、ただの紙切れになります(社債、株式等の振替に関する法律128、株式等の取引に係る決済の合理化を図るための社債等の振替に関する法律等の一部を改正する法律(平成16年法律第88号)附則1)。 <参 照> 財団法人証券保管振替機構ホームページ http://www.jasdec.com/ 4 債権の電子化 さらに、平成20年までには、電子債権が法制化される流れとも聞いています(法務省が「電子登録債権法制に関する中間試案」を発表し、意見を募集しています。)。 <参 照> 電子政府の総合窓口 e-Govホームページ http://www.e-gov.go.jp/ すると、こうした債権の電子化をはじめ、これまでのネットワーク取引等々キーワードからも捉えられる社会のIT化の流れはあらゆる場面で進んでいますから、こといったん大地震に襲われるとその破壊的悪影響は関東大地震の比ではありません。東京直下型の大地震の場合は、日本経済も壊滅的打撃を受けることでしょう。こうした視点から、企業は「事業継続計画(BCP)」をとりつつあります。 こうした流れも、IT化と同様はなやかで、「危機管理」「ITリスク」「リスクマネージメント」という言葉で、様々な検討がなされています。 アドバイス パソコンのバックアップを週1回とることから初めて、日常的準備をする習慣をつけることにしましょう。そして大地震を日常の生活の場にとり込みましょう。 3 震災に起因する倒産 Q119 被災により債務の返済が困難になった場合@ 自宅のローンが相当額残っていますが、地震で自宅が全壊してしまいました。その上、勤務先も地震のため廃業することになり、現在収入が全くありません。 再就職をしたいのですが、自宅の倒壊でケガをしてしまい、治療中で就職活動を開始できる見通しも立っていません。 このような状態ではローンを返せません。どうしたらよいでしょうか。 A 借入先金融機関が救済措置を設けた場合、これを受けることも考えられますが、返済の見通しが全く立たない場合には、破産手続開始・免責許可の申立てをし、財産債務を清算することを考えるべきでしょう。 解 説 1 金融機関の救済措置 住宅ローンは、法律上は住宅購入という使い道とは切り離された単なる金銭の貸借にすぎず、建物が全壊してしまったからといって、当然に支払義務が消滅するものではありません。 ただ、地震の規模が広範で甚大な場合には、各金融機関において、一定期間の支払猶予など救済措置を設けるものと思われます。まずは、借入先の金融機関に相談して、救済措置を受けることで返済(と同時に生活の建直し)が可能かどうか検討してみてください(→第4章Q100参照)。 しかし、ご質問のように、地震で失業し、その上ケガをして復職の見込みすら立たない場合には、返済を前提とした金融機関の救済措置を受けることは難しいと考えられます。 このような場合には、破産・免責手続をとって、財産・債務を清算することを考えることも必要になってきます。 2 破産・免責手続 (1) 破産手続 破産手続とは、債務者が支払能力を欠くため、期限が到来している債務を一般的継続的に弁済できなくなった場合(支払不能といいます。(破2○11))に、債務者の財産を金銭化して(ただし、最低限生活に必要な財産は保有することが許されます。)、各債権者にその債権額に応じて配当する裁判上の手続をいいます。 個人債務者の場合は、配当して残った債務について、債務者の経済的更生を図るため、支払を免れさせる手続があります。これを免責手続といいます。 (2) 破産手続の流れ 個人債務者の場合、その人の住所などを管轄する地方裁判所に、破産手続開始の申立てをします(破4・5)。 破産手続開始の申立ては所定の事項を記載した申立書と債権者一覧表を提出して行います(破20)。 申立書には、債務者の収入および支出の状況、資産および負債の状況、支払不能に至った経緯などを記載し(破規13)、住民票の写しや資産、負債の状況を明らかにする書類を添付します(破規14B)。 添付書類としてどのような書類が必要かは、裁判所に必要書類の一覧表が備え置かれていることがありますので、それを参考にするか、各種法律相談でお聞きください。 なお、被災により支払不能になった場合には、その状況を明らかにするため罹災証明書があるとよいでしょう。 破産手続開始の申立てがなされ、債務者が支払不能であると認められるときは、裁判所は、破産手続開始の決定をします(破30)。 このとき、本来であれば、破産管財人が選任され(破31@)、債務者の資産と債務の確定、資産の換価、各債権者への配当が行われることになりますが、債務者の資産が少なく、破産手続の費用を賄えないような場合には、破産管財人は選任されず、破産手続開始決定と同時に破産手続は終了します(破216)。ただ、個人債務者で資産が少ない場合でも、事業者や不動産を所有している人の場合には、比較的低額の費用で管財人が選任され、簡易化された手続で換価、配当が行われる少額管財手続がとられる場合があります。 (3) 免責手続 個人債務者については、裁判所の許可により、配当後(または手続廃止後)残った債務の支払を免れさせる免責手続があります。 個人債務者が自ら破産手続開始の申立てをしたときは、同時に免責許可の申立てもしたものとみなされます(破248)。 免責は、債務者の経済的更生のため、債権者の損失の下に支払義務を消滅させる制度ですから、このような免責制度の趣旨にそぐわない人には免責は認められません。 例えば、@財産(配当原資)の隠匿・損壊・債権者に不利益な処分、A浪費や賭博による著しい財産の減少・債務の増加、B債権者を騙した借入、C帳簿の隠滅・偽造・変造などをすると、免責不許可の理由となります(破252@)。ただし、免責不許可事由があっても、諸事情を考慮して、裁判所が裁量で免責を許可する場合があります(破252A)。 支払不能に陥った理由がもっぱら地震による被災ということであれば、免責は許可されますし、万一免責不許可事由があっても、裁量免責が受けられる可能性はあるでしょう。 ただし、免責許可を受けられても、全ての債務の支払義務が免除されるわけではありません。 @税金、A破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権、B破産者が故意・重過失により加えた人の生命・身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権、C扶養料や婚姻費用分担の請求権、D破産者の使用人の給料、E破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった債権、F罰金などは免除されません(破253@)。 住宅ローンは非免責債権にあたりませんので、免責許可決定を得られれば、支払を免除されます。 (4) 破産の費用 破産手続開始の申立てには、裁判所に納める費用(手数料)がかかります。 裁判所によって多少変わりますが、同時廃止の場合、予納金と印紙・郵券代合わせて2万円程度で済むのに対し、管財人が選任される場合、少額管財の予納金は20万円程度、通常管財の予納金は最低で50万円程度、債務総額や債権者数が多くなると更に高額になります。 また、破産手続開始の申立てを弁護士に依頼する場合には、上記の裁判所に納める費用の他、弁護士に支払う報酬も必要になります。同時廃止が見込まれる事案であれば通常30万円程度と思われますが、管財事件になるような事案の場合50万円程度、難度によってはそれ以上になる場合もあると思われます。 ただ、大規模災害の被災者が破産手続開始の申立てをする場合には、弁護士によって、減額や分割払に応じてくれることも考えられますので、各弁護士に相談してみてください。 Q120 被災により債務の返済が困難になった場合A 自宅のローンとその他に借入れがあります。幸い地震で自宅が損傷するということはありませんでしたが、勤務先が大きな被害を受けて廃業することになってしまい、やむを得ず別の会社に再就職することになりました。 しかし、再就職ということで、給料が以前よりかなり安くなってしまったため、今までどおり返済をしていくことはとてもできません。 自宅を手放さずに、返済金額を少なくする方法はないでしょうか。 A 住宅資金貸付債権に関する特則を利用して、小規模個人再生手続あるいは給与所得者等再生手続をとることを検討してみてください。 解 説 1 破産手続の限界 (1) 自宅が損傷を免れた場合 Q119と同様に、地震により被災したためローンや借入れの返済が困難になった場合ですが、ご質問では自宅が損傷を免れており、これを手放さないで済ませることができないかが問題となっています。 このような場合には、Q119で解説した破産手続を選択することはできません。なぜなら、破産手続は、債務者の財産を金銭化して、各債権者にその債権額に応じて配当する手続であり、債務者が自宅を所有している場合には、金銭化して配当するため、自宅を手放さなければならなくなるからです。 (2) 自宅を手放さずに債務を整理する方法 自宅を手放さないで債務を整理する方法としては、各債権者と交渉して、支払方法や支払額を軽減してもらう任意整理という方法が考えられます。 しかし、この方法は、裁判所を使わず簡易・迅速・安価に行えるなどといった利点もありますが、各債権者と個別に合意をしなければならず、債権者が合意に応じない場合には、支払方法・額の軽減という目的を達成することができないという問題点があります。 このように破産手続にも任意整理にも限界がありますので、これを補う制度として、個人債務者について、住宅を保持しつつ債務整理が可能となる小規模個人再生手続・給与所得者等再生手続という制度が設けられています。 2 小規模個人再生手続・給与所得者等再生手続 (1) 民事再生手続 破産手続開始原因となる事実が発生するおそれがある債務者などについて、債務の減免や期限の猶予などを定めた再生計画を作成し、裁判所の認可を得て、この計画に従って返済を行っていく民事再生手続という制度があります。 この民事再生手続は、中小企業や個人事業者を念頭に制度設計されていますが、個人の零細事業者やサラリーマンにも利用できるよう、小規模個人再生手続・給与所得者等再生手続という簡易化された手続も設けられています。 (2) 小規模個人再生手続 ア 手続開始要件 個人である債務者が、@将来において継続的にまたは反復して収入を得る見込みがあること、A債務総額(住宅ローン債務額や担保の実行により回収される見込額、手続開始前の罰金等を除きます。)が5,000万円を超えないものであること、B債務者が小規模個人再生手続を行うことを裁判所(個人債務者の住所などを管轄する地方裁判所。民再5)に申述することが必要です(民再221@A)。 イ 小規模個人再生手続開始の申立て 通常は、破産手続と同様、申立書を作成して資産および負債の状況や支払不能のおそれが生ずるに至った事情などを記載し(民再規12・13)、資産、負債の状況を明らかにする書類等を添付します(民再規14)。 また、申立てにあたっては、所定の事項を記載した債権者一覧表を提出しなければなりません(民再221B)。 ウ 再生計画案の決議 手続が開始されると、再生計画案を作成することになります。 再生計画案による支払方法・額の変更は、原則として全債権者について平等でなければならず、支払方法は、@3か月に1回以上支払う分割払で、A弁済期間は原則3年(特別の事情がある場合は5年)でなければなりません(民再229@A)。また、悪意の不法行為に基づく損害賠償請求権や扶養料請求権などは、当該債権者の同意がなければ支払方法・額の変更をすることができません(民再229B)。 再生計画案は再生債権者の決議に付されますが、計画案に反対の債権者が議決権者総数の半数未満で、かつ、その議決権額が議決権総額の2分の1を超えなければ可決されます(民再230E)。 エ 再生計画の認可 再生計画案が可決されたときは、裁判所は、不認可事由がなければ認可決定をします。重要なのは、計画弁済総額が所定の最低弁済額に満たない場合、認可されないということです。 最低弁済額は、基準債権額(債権総額から住宅ローン債権、担保により回収される債権、民事再生法84条2項の債権を除いた額)が、@100万円以下の場合はその基準債権額、A100万円超500万円以下の場合は100万円、B500万円超1,500万円以下の場合は基準債権額の20%、C1,500万円超3,000万円以下の場合は300万円、D3,000万円超5,000万円以下の場合は基準債権額の10%とされています(民再231A三・四)。 なお、民事再生手続は、破産手続により資産の処分をしない代わりに将来にわたって返済を行う手続ですので、計画弁済総額は、破産手続による配当額以上であることが要求されます。そのため、再生計画の認可決定確定後に、計画弁済総額が破産手続による配当額を下回ることが判明した場合には、裁判所は、債権者の申立てにより、再生計画を取り消すことができることとされています(民再236)。 (3) 給与所得者等再生手続 ア 手続開始要件 小規模個人再生手続の開始要件に加え、債務者が給与またはこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者であって、かつ、その額の変動の幅が小さいと見込まれるものであることが必要です(民再239@)。 申立ての方法等は、小規模個人再生手続と同様です。 イ 再生計画案の決議不要 支払方法・額の変更の条件は、小規模個人再生手続と同様ですが、給与所得者等再生手続では、手続がより簡易化され、債権者の決議は必要とされていません。 ウ 再生計画の認可 小規模個人再生手続と同様の最低弁済額の要件が定められています。 これに加え、給与所得者等再生手続では、再生債務者は、過去2年間の平均収入額から、債務者と被扶養者の最低限度の生活を維持するために必要な1年分の費用額(政令により詳細に決められています。)を差し引いた額に2を乗じた額を弁済しなければならないという要件があり(可処分所得要件、民再241A七)、最低弁済額と比較して多い方の額を弁済しなければなりません。 また、小規模個人再生手続と同様、計画弁済総額が破産手続による配当額を下回ることが判明した場合は、再生計画が取り消される場合があります。 (4) 住宅資金貸付債権に関する特則 ア 住宅資金貸付債権に関する特則 民事再生法には、住宅ローン以外の債務を整理しながら住宅ローンの返済を続けることで、住宅を確保することを可能とする「住宅資金貸付債権に関する特則」が定められています(民再196〜206)。 この特則は、再生債務者が抱える住宅ローン債権のうち一定の要件を満たすものを「住宅資金貸付債権」とし、再生債務者が再生計画において「住宅資金貸付債権」について「住宅資金特別条項」を定めた場合に、住宅ローン融資時の返済計画を修正して返済を続けることを可能にするものです。 イ 住宅資金貸付債権 「住宅資金貸付債権」として、この特則が適用されるには一定の条件を満たすことが必要です。 概要は、@個人の再生債務者が所有し、A再生債務者自身が居住に使用している住宅について、Bその住宅の建築・購入・改良のために必要な借入をした債権で、C分割払の定めがあり、Dその債権について住宅に抵当権が設定されていることが必要です。 しかし、その住宅に、建築・購入・改良とは関係のない債務について抵当権が設定されている場合などには、この特則を利用することはできません。 ウ 住宅資金特別条項 この特則により、住宅ローンの返済計画を修正する住宅資金特別条項を定めることになります。ただし、この特則は、住宅ローンの支払を猶予するものにすぎず、利息、遅延損害金を含めて、住宅ローンの支払額そのものは減免されません。 修正の仕方は法に定められたものに限定され、例えば、将来のローンは当初の計画通り支払い、これに加えて遅滞している元本・利息・損害金を再生計画で定める弁済期間(最大5年)内に支払うといった修正が認められます。 (5) 小規模個人再生手続・給与所得者等再生手続の費用 ア 手数料 裁判所に納める手数料としては、予納金と郵券代合わせて2万円程度です。 ただし、裁判所が裁量により、債務や資産の調査、再生計画作成にあたっての勧告などを行う個人再生委員を選任する場合があり(民再223)、その場合には、さらに15〜30万円程度の予納金が必要となります。 イ 弁護士への依頼 弁護士に依頼する場合には、着手金として30万円から50万円程度が必要になると思われます。手続終了後の報酬は弁護士によって様々です。大規模災害の被災者の場合には、着手金、報酬金の減額・分割払に応じる弁護士もいると思われます。 3 ご質問について ご質問は、自宅を手放さずに返済金額を少なくしたいという相談で、住宅資金貸付債権に関する特則を利用した民事再生手続を検討すべき事案です。そして、この事例では再就職して将来継続的・反復的に収入を得る見込みもありそうですし、給与収入で変動の幅も小さいと思われますので、小規模個人再生手続、あるいは給与所得者等再生手続により、簡易な手続で(住宅ローン以外の債務の)返済額を減少させることを考えるとよいでしょう。 第6章 雇用に関する問題 Q121 震災を理由とした採用内定の取消し 既に採用内定を出しているのですが、その後の震災により一部の事業所が損壊し採用内定者を実際に採用するのが困難な状況になりました。採用内定を取り消すことはできますか。 A 整理解雇に準じた厳しい要件を満たす必要がありますが、地震により企業規模縮小を余儀なくされた場合には、採用内定の取消しも客観的に合理的で社会通念上相当と是認される可能性が高いと思われます。 解 説 1 採用内定の法的意義 企業からの募集(申込みの誘引)に対し、労働者が応募したのは労働契約の申込みであり、これに対する企業からの採用内定通知は、同申込みに対する承諾であって、これにより試用労働契約が成立します。ただし、同契約は、始期付かつ解約権留保付とされます。つまり、採用内定通知書または誓約書に記載されている採用内定取消し事由が生じた場合は解約できるのです。 2 裁判例 このように採用内定が始期付解約権留保付労働契約の成立であるとすると、採用内定を取消しできるか否かは、留保解約権の行使の適法性の問題となります。 この点、最高裁判所は、留保解約権の行使が適法なのは「解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認できる場合に限られる」と判断しております(最判昭54・7・20判時938・3)。仮に採用内定通知書等に「震災」等を理由にした解約権が記載されていなくても同様です。 3 採用内定取消しの要件 さて、採用内定は労働契約の成立であると解する以上、その取消しに関し最高裁判所の厳しい判断は当然の帰結です。実質的には採用内定の取消しは解雇と同視あるいはそれに準ずるものと考えるべきものだからです。 もっとも、地震により企業規模縮小を余儀なくされた場合には、採用内定の取消しも客観的に合理的で社会通念上相当と是認される可能性が高いと思われます。しかし、震災に乗じて不必要な採用内定取消しは許されず、仮にそうでなくても整理解雇4要件に準ずるべきとの厳格な考え方もありますので、震災を理由とする採用内定の取消しも慎重に誠意を持って行う必要があります。例えば、被災地の営業所で採用勤務することが決まった内定者と被災地以外の営業所で採用勤務することが決まった内定者を比較すると、後者の内定取消しの方がより厳しくその有効性を判断されることになるでしょう。 なお、整理解雇4要件については、Q129を参照してください。 Q122 震災を理由とした労働者の欠勤 震災を理由に労働者が欠勤しています。欠勤をしていても給与を支払わなければならないのでしょうか。 A 解雇はできませんが、給与を支払う義務も原則としてありません。 解 説 1 震災が原因で欠勤する場合の解雇の可否 労働契約(雇用契約)は、労働者が労働を提供し使用者がその報酬(賃金)を与えることをその主たる内容とします(民623)。 震災が原因で労働者が欠勤する場合、労働者は前記労働提供義務を履行しないこと(履行不能)を意味しますが、震災は不可抗力であり労働者に過失はありませんから、労働者が労働契約上の債務不履行責任を負うことはありません。したがって、労働者が欠勤したとしても震災が原因であれば、使用者はその欠勤を理由に解雇することはできません。 2 震災が原因で労働者が欠勤する場合の給与支払義務の有無 しかしながら、他方で使用者に帰責事由のない履行不能の場合には、労働者は賃金請求権を有しませんので(民536)、使用者には労働者に給与を支払う義務もありません。 休業手当(労基26)も「使用者の責に帰すべき事由による休業」の場合にしか支払われませんので、震災という不可抗力の場合には支払われません。 もっとも、雇用調整助成金等の助成金を受けられる可能性もありますので、震災時には政府の動向にも注意が必要です。 Q123 震災を原因とした欠勤による労働者に対する不利益処分 私(労働者)は震災が原因で欠勤せざるを得ない状況です。欠勤により懲戒処分等の不利益処分を受けないか心配なのですが、いかがでしょうか。 A 震災を理由として欠勤したとしても、それを理由に不利益処分を受けることはありません。 解 説 1 懲戒処分の可否 懲戒処分が客観的に合理的な理由を欠き、または社会通念上相当として是認し得ない場合には懲戒権の濫用として同懲戒処分は無効です(最判昭58・9・16判時1093・135)。 2 人事としての降格の可否 また、人事権の行使としての降格については、相当の理由がなく労働者の不利益が大きければ、人事権の濫用として無効です。労働者に帰責事由のない震災が原因で欠勤せざるを得なかったにもかかわらず、同欠勤を理由に降格がなされれば、それは相当の理由がない降格といわざるを得ず、無効です。 3 人事としての配転命令、出向命令、転籍命令の可否 さらに、人事権の行使としての配転命令、出向命令、転籍命令についても、業務上の必要性があり、本人の職業上・生活上の不利益と比較考量して、それらの命令が人事権の濫用と認められる場合には、同命令は無効となります。したがって、降格同様、震災を原因とする欠勤を理由に配転命令、出向命令、転籍命令を出すことは許されず、同命令は無効と判断されます。 Q124 震災でケガをした労働者が休職扱いになった場合 私(労働者)は震災によりケガをし、3か月以上欠勤が続いており、今後も治療にどれだけの期間が必要か不明の状態です。先日会社から就業規則に則り今後は休職扱いとしさらに6か月間以上欠勤が続けば自然退職になると言われました。私は、会社の同方針に従わなければならないのでしょうか。 A 休職扱いそのものは受け入れざるを得ませんが、完治といえなくても一定程度治癒した場合には、会社に復職を求めることは可能です。 解 説 1 傷病休職 業務外の傷病による長期欠勤が一定期間に及んだときに行われる休職を傷病休職といい、質問上の休職扱いも傷病休職と捉えられます。傷病休職も休職期間内に傷病が治癒して復職できなければ退職を余儀なくされるわけですから、傷病休職制度は解雇猶予を意味しています。 2 解 雇 そして、解雇は、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効です(労基18の2)。ここに客観的に合理的な理由とは、その第一に労働者の労務提供の不能や労働能力または適格性の欠如・喪失が挙げられます。労務提供が不能であれば労働契約を継続しても無意味だからです。 3 休職期間後の退職 したがって、根拠となっている就業規則の内容が著しく不合理なものでない限り、休職期間後の退職も受け入れざるを得ません。もっとも、裁判所は、労働契約において職種が特定されていない場合は、原職復帰が困難な場合でも現実に配置可能な業務があれば、その業務に復帰させるべきだとし、復職を広く認める傾向にありますから(大阪地判平11・10・4労判771・25、大阪高判平14・6・19労判839・47)、場合によっては完全治癒していない状況でも復職を申し出ることをお勧めします。 Q125 震災のため給与の支払が困難な場合 震災により会社の資金繰りが悪化し、決まっている給料日に従業員に対し給与の支払をできそうにありません。どうしたらよいでしょうか。従業員一律の一時的な賃金の引下げは可能でしょうか。 A 給与の支払が遅れても労働基準法上の処罰を受けることはありませんが、遅延損害金を付して給与を支払う義務があります。従業員一律の賃下げも給与規程の合理的な変更であれば可能です。 解 説 1 賃金―毎月1回以上一定期日払の原則 賃金は毎月1回以上一定の期日を定めて支払わなければなりません(労基24A)。そして、同規定に違反した場合、30万円以下の罰金に処せられます(労基120)。しかしながら、法は不可能を強いるわけではありませんから、震災が原因であり社会通念上なすべき最善の努力をした場合には期待可能性がないものとして不処罰となるでしょう。もっとも金銭給付を目的とする債務の不履行については不可抗力を理由としてその遅延損害金の支払を免れることはできませんから(民419B)、遅延した間の商事法定利率である年6%の遅延損害金を付して給与を支払わなければなりません(商514)。 2 賃金の引下げ 賃金は、就業規則(給与規程や退職金規程等)で定められていることが多いため、賃金を引き下げるには、就業規則の変更が必要になる場合が多いでしょう。この点、最高裁判所は就業規則の変更によって、既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として許されないが、労働条件の集合的処理、特にその統一的かつ画一的な決定を建前とする就業規則の性質からいって、当該規則条項が合理的なものである限り、個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒否することは許されないとしています(最判平9・2・28判時1597・7)。 そして、「合理的」か否かは、変更の内容・程度と変更の必要性との比較考量を基本とし、変更との関連で行われた労働条件改善の有無・内容を十分に考慮に入れ、かつ変更の社会的相当性や労働組合との交渉経緯などをも勘案して判断されます。したがって、賃下げが全く不可能ということではありませんが(倒産するよりましなどといった意味において)、上記厳しい要件を満たさなければなりません。 3 退職金の支払遅延 なお、退職金については、その支払いを遅延した場合、年14.6パーセントの遅延損害金を支払わなければならないのが原則ですが、震災等天災地変その他やむを得ない事由による場合には、その事由の存する期間は同遅延損害金を支払わなくてもよいことになっています(賃確6)。 Q126 震災と給料支払の前倒し 私(労働者)は震災のため、まとまった金銭を臨時的に必要な状況になってしまいました。会社に対し今月の給与を前倒しして支払ってもらいたいのですが。 A 既往の労働に対する賃金に限り前倒しして支払を受けることができます。 解 説 使用者は、労働者が出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては、支払期日前でも、既往の労働に対する賃金を支払わなければなりません(労基25、労基規9)。これを賃金の非常時払といいますが、あくまでも「既往の労働に対する賃金」に限られますから、一月分全部は支払ってもらえません。なお、「非常の場合」とは、労働者の収入によって生計を維持する者が災害を受けた場合も含みます。 Q127 震災のため時間外労働や休日出勤を命じたい場合 震災のため人手を欠き出勤可能な従業員につき時間外労働および休日出勤を命じたいのですが。 A 行政官庁の事前許可ないし事後承認を条件に時間外労働および休日出勤を命じることはできます。ただし、割増賃金を支払う必要があります。 解 説 1 時間外労働、休日出勤 災害その他避けることのできない事由によって臨時の必要がある場合には、その必要な限度において時間外労働ないし休日出勤を命じることができます(労基33)。ただし、行政官庁(労働基準監督署)の事前許可ないし事後承認が必要です。もっとも、単なる業務の繁忙を理由とした命令の場合、事前許可、事後承認は得られません。急病、ボイラーの破裂その他人命または公益を保護する目的の命令の場合、事業の運営を不可能ならしめるような突発的な機械の故障の修理目的の命令の場合など、かなり限定されていますので、注意が必要です。 なお、労働基準法33条にいう時間外ないし休日とは法定(すなわち労働基準法上)のものであり、法定労働時間の範囲内での残業や法定外休日における労働は含まれません。 2 割増賃金 また、仮に時間外労働ないし休日出勤を命じた場合、その時間またはその日の労働については、通常の労働時間または労働日の賃金の計算額の2割5分以上の率(時間外労働および深夜労働の場合)ないしは3割5分以上の率(休日労働の場合)で計算した割増賃金を支払わなければなりません(労基37、労働基準法第37条第1項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令)。 Q128 一時帰休(レイオフ)を命じられた場合 使用者から震災を理由に一時帰休(レイオフ)を命じられました。会社からはその間給料が減額になるかまたは全く支給できないかもしれないと言われました。どうしたらよいでしょうか。生活が成り立たなくなるので、その間アルバイトをしたいのですが、就業規則上の兼職禁止条項に違反することになってしまうのでしょうか。 A 一時帰休がやむを得ないものであれば、同命令に従わざるを得ません。使用者に損害が生じるような態様でなければ、アルバイトをすることは問題ありません。 解 説 1 一時帰休 地震により事業所が損壊し操業停止になるなどやむを得ない事由がある場合には、使用者の労務受領遅滞にはあたらず、Q122同様、使用者に帰責事由のない労務提供義務の履行不能の場合として、労働者は賃金請求権を有しませんので(民536)、使用者は給料を支払う義務もないというのが原則です。もっとも、その際、一時帰休の必要性、労働者の受ける不利益の内容・程度等を考慮して、一時帰休命令がやむを得ないものか否かが判断されることになります(横浜地判平12・12・14労判802・27)。 もっとも、災害救助法や激甚災害法により失業給付(失業保険)が支給される可能性がありますし、労働者を一時帰休させる事業主に対して雇用調整助成金(大企業の場合、労働者の賃金の3分の2、中小企業の場合4分の3)が支給される可能性もありますので(雇保62@、雇保規102の3)、政府の動向にも注意が必要です。なお、失業給付の支給を受けることとすると、それまでの掛けた失業保険年数がゼロに戻ってしまいますので、その点にも注意をする必要があります。 2 兼職禁止違反 兼職禁止違反については、会社の職場秩序に影響せずかつ会社に対する労務の提供に格別の支障を生じさせない程度・態様の二重就職は禁止違反とはならず、したがって懲戒処分の対象にはなりません。一時帰休期間中であればそもそも支障の対象となる労務の提供が存在しませんしその間アルバイトをすることにより会社の職場秩序に影響が出るとも考えられませんので、その間のアルバイトも禁止違反とはなりません。ただ、例えば競業会社の役員への就任などは、一時帰休期間中であったとしても、顧客や他の従業員の移籍など会社の職場秩序等に大きな影響を及ぼし会社に損害を与える可能性が高いですから、禁止違反に該当し懲戒処分の対象となります(東京地判平3・4・8労判590・45)。 Q129 震災による会社の資金繰りが悪化した場合の労働者の解雇 震災により会社の資金繰りが悪化し、一部の従業員を解雇したいと考えているのですが。 A 整理解雇4要件を満たせば、解雇は可能です。 解 説 質問上の解雇は整理解雇(人員削減のための解雇)の1つと考えられます。整理解雇については、@人員削減の必要性(業績の悪化等)、A人員削減の手段として整理解雇を選択することの必要性(配転、出向、一時帰休、希望退職の募集等他の手段により解雇回避の努力を果たしているか)、B被解雇者の選定の妥当性(客観的合理的基準を公正に適用して被解雇者を選定しているか)、C手続の妥当性(労働組合・労働者と十分に話し合い、説明をしたか)を満たしているか検討し、総合的にその有効性が判断されます(長崎地大村支判昭50・12・24判時813・98、東京高判昭54・10・29判時948・111、東京地決平12・1・21労判782・23)。震災を理由とする解雇であっても、上記4要件を満たしているか十分に検討の上、実施すべきです。もっとも、震災という緊急事態ですから、上記4要件を充足する場合も多いのではないでしょうか。 なお、使用者は、労働者が業務上負傷し、または疾病にかかり療養のため休業する期間およびその後の30日間はその労働者を解雇できません(労基19@)。しかし、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合には、行政官庁の認定を受ければ、同期間中でも解雇は可能です(労基19@ただし書A)。 Q130 震災による会社の倒産した場合の労働者の解雇 震災により会社が倒産してしまいました。労働者の立場はどうなりますか。 A 震災に便乗した計画倒産などでなければ、解雇はやむを得ません。ただし、未払賃料等については一般債権に優先して弁済を受けることができますし、労働者健康福祉機構から立替払を受けることができます。 解 説 1 従業員の解雇 ここでは倒産法制の中でも破産法を念頭に置き説明します。 まず、会社(法人)は、破産手続開始の決定を受けると解散となり(民68@三、会社471五)、その後は破産手続による清算の目的の範囲内においてのみ破産手続き終了まで法人は存続します(破35)。清算業務に要する従業員は限られた人数でしょうから、多くの従業員が開始決定の前後に解雇されることになるでしょう(民631)。したがって、便乗倒産など不当な倒産でなければ、解雇そのものは受け入れざるを得ません。 2 未払賃金の処理 未払賃金については以下の処理がなされます。すなわち、まず破産手続開始前3か月間の給料は財団債権となります(破149@)。次に破産手続の終了前に退職した従業員の退職金は、退職前3月間の給料の総額(その総額が破産手続開始前3月間の給料の総額より少ない場合は、破産手続き開始前3月間の給料の総額)に相当する額も財団債権となります(破149A)。破産手続開始前に雇用関係から生じた賃金債権のその他の債権であって財団債権でないものは、一般先取特権のある債権として優先的破産債権となります(破98@)。 3 未払賃金の立替払 また、勤務していた会社が破産した場合、賃金の支払の確保等に関する法律により未払賃金の立替払を労働者健康福祉機構から受けられます。立替払の適用が受けられる事業主の要件は、労働者災害補償保険の適用事業の事業主で、1年以上の期間にわたって当該事業を行っていたものが、破産手続開始決定を受けた場合などです。立替払を受けられる労働者は、事業主の破産申立てがあった日の6か月前以降2年間に退職した者です(賃確令3)。立替払の対象となる賃金は、退職日の6か月前の日以後立替払の請求日の前日までの期間において支払期日が到来している定期給与および退職金であって、その総額が2万円以上のものであり、その額の80パーセントに相当する額が支給されます(ただし年齢に応じた上限額があり。)(賃確7、賃確令4)。会社を管轄する労働基準局に対する申請および同局による認定手続を経る必要があり、申請の際、身分証明書、会社の被災証明書、賃金台帳等の書類が必要ですから、具体的な手続は労働基準監督署等関係機関に問い合わせてください。 Q131 業務中に被災しケガをした場合 私(労働者)は、工場で勤務中被災し、工場が損壊したため、ケガをしてしまいました。労災保険の保険給付を受けることはできますか。私の勤務する会社は労災保険に加入せず保険料を支払っていなかったのですが。 A 原則として給付を受けられませんが、当該工場の構造、業務の具体的内容等諸般の事情によっては、給付を受けることが可能です。この場合、会社が労災保険の保険料を支払っていなくても労災保険の給付を受けることができます。 解 説 1 震災と業務災害 労災補償・保険における業務災害とは、「労働者の業務上の負傷、疫病、傷害又は死亡」をいいます(労災7)。「業務上」といえるためには、「業務起因性」および「業務遂行性」の双方が必要とされますが、具体的には「労働者が事業主の支配ないし管理下にある中で『労働者が労働契約に基づき事業主の支配化にあること』に伴う危険が現実化したものと経験則上認められること」をいいます。 この点、地震、台風など天災地変によって被災した場合には、当該被災は、事業主の支配下にあることの危険性が現実化したのではなく、天災地変こそがその原因ですから、原則として「業務起因性」および「業務遂行性」は認められず、保険給付を受けられないことになります。 しかし、例えば、トラック運転手が業務としてトラックを運転中地震に遭い、高速道路が崩壊したために被災したような場合、構造上の脆弱性が現実化したものと認め業務上とされるなど、実質的には業務起因性が広く解釈されています。したがって、ご質問においても工場の構造等がそもそも耐震性を備えていないような場合には、まさに構造上の脆弱性が現実化したものとして保険給付を受けられると思われます。他のケースにおいても、業務起因性を広く解することで給付可能性が認められる可能性がありますので、労働省や労働基準局などの動向に注視すべきです。 2 保険料未納企業の場合 労災保険は、原則として労働者を使用する全事業を適用事業としており(労災3)、事業主は、事業開始日から10日以内に保険関係成立届を所轄労働基準監督署長に提出し(労徴収4の2)、以後保険料を納付しなければなりませんが、この届けをせず保険料を納めていない事業主のもとでの労働災害についても、保険給付はなされます。この場合、事業主は未払保険料等を追徴される可能性があります。 Q132 通勤中に被災した場合 私(労働者)は、通勤の途中で震災に遭い、ケガをしてしまいました。労災保険等の補償は受けられるのでしょうか。 A 住居と就業の場所との間の往復等合理的な経路上において被災した場合には、労災保険の給付を受けられる余地があります。 解 説 労災保険の保険給付は、業務災害ばかりでなく通勤災害に関しても補償されることになっています。ここに通勤災害とは、「労働者の通勤による負傷、疫病、傷害又は死亡」のことをいい(労災7@二)、「通勤」とは、「就業に関し@住居と就業場所との間の往復、A就業場所から他の就業場所への移動、B@の往復に先行または後続する住居間の移動を、合理的な経路および方法により行うこと」をいいます(労災7A)。また、「就業に関し」とは、「業務に就くため、または終えたため」の意味です。したがって、@ないしBの移動経路を逸脱しあるいは中断した場合には、その後の移動は「通勤」とはいえず、その後の移動中において震災に遭ったとしても労災保険の保険給付を受けることはできません。また、例えば、帰宅途中で居酒屋に寄って会社とは関係のない知人と飲食中に被災したような場合には、移動行為と業務との間に密接な関連がありませんから、「就業に関し」とはいえず、労災保険の保険給付を受けられないことになります。ただし、移動経路の逸脱または中断が、日用品の購入、職業能力開発のための受講、選挙権の行使、病院での受診などの理由による必要最小限度のものである場合には、「通勤による」とみなされ、保険給付を受けることができます(労災7B、労災規8)。また、労働者が、残業はもちろんのこと会社の組合活動やサークル活動のため居残った場合でも、それが就業と帰宅との関連性を失われるほど長時間後でない限り、「就業に関し」といえ、保険給付を受けることはできます。 もちろん、自宅から取引先へ直接赴いて営業活動を行う場合や最後の用務先から自宅へ直接帰宅する場合にも、その取引先や用務先は「就業場所」とみなされ、保険給付を受けることができます。 なお、通勤災害においても、業務起因性や業務遂行性が問題になる余地がありますが、Q131を参照してください。 Q133 通勤中に被災し、救護活動中にケガをした場合 私(労働者)は、通勤中に震災に遭い、たまたま近くにいた住民が住居の下敷きになっていたため、これを助けようとしたところ、落下物によって私もケガをしてしまいました。労災保険の保険給付を受けることはできますか。 A 保険給付を受けられる余地はあるものと考えられます。 解 説 災害救助のため人命救助にあたった場合、通勤経路を中断したともいえ「通勤」とはいえず、あるいは災害救助は業務との関連性はなく「就業に関し」とはいえず、通勤災害と認定されない可能性があります(昭和49年9月26日基収第2881号)。 しかし、大震災の場合など何よりも人命救助が優先されるような緊急事態においては、通勤途中であっても善意でそれにあたったが故に、通勤災害とみなされないと考えるのはあまりにも不合理です。したがって、こうした通勤経路の中断の場合、「日常生活上必要な行為をやむを得ない事由により行うため最小限度のもの」として、補償を受けられるものと解するべきです(労災7B、労災規8)。 Q134 通勤中ないし業務中に被災し、労災保険の給付を受けられる場合の給付内容 私(労働者)は通勤中(業務中)に被災し、労災保険の適用を受けられることになりました。具体的にはどのような補償を受けられるのですか。 A 療養補償給付、休業補償給付、障害補償給付(障害が残った場合)、遺族補償給付(死亡した場合)、葬祭料(死亡した場合)、傷病補償年金、介護補償給付等が受けられます。 解 説 1 労災保険の補償内容 それぞれの具体的内容については厚生労働省のホームページ(http://www.mhlw.go.jp/)等をご覧ください。 なお、当初3日間の休業補償については、労災保険の対象外ですので、労働基準法上の規定に基づき使用者に対して補償を求めることになります。 2 請求の手続等 労災保険の保険給付は、被災労働者またはその遺族が労働基準監督署長に対し請求し、同署長が支給または不支給の決定を行います(労災12の8A、労災規1B)。同決定に不服がある場合には、各都道府県労働局内の労働者災害補償保険審査官に対し審査請求を、さらに同審査官の決定に不服がある場合、厚生労働省本省内の労働保険審査会に対し再審査請求をそれぞれ求めることができます(労災38、労審2の2・25)。同決定にも不服がある場合には、行政訴訟を提起することとなります(労災40)。 各補償請求権については、2年ないし5年の経過により時効消滅しますので、注意が必要です(労災42)。 第7章 税金に関する問題 Q135 被災者に対する租税の減免措置@ 被災者に対する税法上の減免措置について教えてください。例えば、所得税について減免措置はありますか。 A 「災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律」(以下、「災害減免法」といいます。)による減免、所得税法による雑損控除、資産損失の必要経費算入などの措置があります。 解 説 1 災害減免法に基づく減免措置 (1) 所得税の減免 災害によって住宅または家財に甚大な被害を受けた人は、その年分の合計所得金額(収入から経費を差し引いた額)に応じて、次の区分に従い所得税が減免されます(災害減免2)。 合計所得金額 免除の割合 500万円以下のとき 所得税の全部 750万円以下のとき 所得税の2分の1 1,000万円以下のとき 所得税の4分の1 1,000万円を超えるとき 免除されない (2) 補足説明 (1)にいう「甚大な被害」とは、災害により納税者自身または生計を一にする親族(合計所得金額が基礎控除額以下の者に限ります。)の所有する住宅または家財が受けた損害金額(保険等により補填された金額を除きます。)が、その住宅または家財の価額の2分の1以上であることをいいます(災害減免令1)。 また、「住宅」とは、納税者自身または生計を一にする親族が常時寝起きする家屋をいうものとされています。 (3) 給与、公的年金等の徴収猶予・還付 給与所得者または公的年金等の受給者で災害によって住宅または家財に甚大な被害を受け、かつ、その年分の合計所得金額の見込額が1,000万円以下の人に対しては、(1)の区分に従い、災害のあった日以後の給与所得または公的年金等について所得税の徴収が猶予され(源泉徴収されません。)、またはその年の1月1日から災害のあった日の前日までに源泉徴収された税額が還付されます(災害減免3AB)。 源泉徴収猶予、還付の適用を受ける場合には、支払者(会社等)を経由するなどして申請書を税務署長に提出しなければなりません(災害減免令4)。 源泉徴収猶予、還付の適用を受けた場合、災害のあった年分の確定申告をし、その年の実際の合計所得金額をもとに(1)の区分で減免される金額と猶予、還付を受けた額との清算をしなければなりません(災害減免3E)。 被災した給与所得者や公的年金等の受給者について、災害のあった年またはその翌年以後3年以内の各年に、その災害のあった日の現況によってその災害による雑損失の金額があるものと見積もられ、または雑損失の繰越控除を受けることができるものがあるときは(2参照)、その年またはその翌年以後3年以内の給与等について、必要な限度で源泉徴収の猶予が受けられます(災害減免3D)。 2 所得税法による雑損控除 (1) 雑損控除額 納税者または生計を一にする親族(合計所得金額が基礎控除額以下の者に限ります。)の所有する資産(ただし、生活に通常必要でない資産および被災事業用資産を除きます。)が災害によって損失を受けたときは、次の式で計算した額を雑損控除額として、その年分の合計所得金額から差し引くことが認められます(所税72)。 ア 損失の金額の中に、災害関連支出金額がない場合または5万円以下の場合 損失の金額−合計所得金額×0.1 イ 損失の金額中、災害関連支出金額が5万円を超える場合 損失の金額−(次の@・Aのうちいずれか低い金額) @合計所得金額×0.1 A損失の金額−(災害関連支出金額−5万円) ウ 損失の金額の全てが災害関連支出金額である場合 損失の金額−(次の@・Aのうちいずれか低い金額) @合計所得金額×0.1 A5万円 (2) 補足説明 (1)にいう「災害関連支出金額」とは、災害があった住宅家財等の取壊しまたは除去のために支出した費用等をいいます。 損失の金額のうち、保険金等によって補填されたものは除かれます。 給与所得者についても、確定申告をすることにより控除が認められます。 (3) 所得税法上の雑損控除と災害減免法による減免との関係 所得税法上の雑損控除と災害減免法による所得税の減免措置の両方の適用を受けることはできません。そこで、合計所得金額が1,000万円以下の被災者は、どちらか有利な方を選択することになります(合計所得金額が1,000万円を超える場合、災害減免法による減免はありません。)。 両者の差異 災害減免法の適用を選択する場合、考慮される損害は住宅および家財の損害(被災直前の時価を基準に算定します。この点は雑損控除についても同様です。)に限られますが、所得税そのものが4分の1から全額減免されます。なお、減免されるのは、災害を受けたその年分の所得税に限られます。 一方、雑損控除を選択する場合、生活に通常必要な資産一般に生じた損害が考慮されますが、所得税の何割かを減免するのではなく、合計所得金額からの控除を認め課税対象額を減少させることで税額が軽減されます。なお、災害を受けた年分の控除で控除しきれない場合には、翌年以降3年間の繰越控除が認められます(所税71)。 以上の差異を考慮して有利な方を選択することになりますが、詳しくは税理士や税務署などに相談するとよいでしょう。 3 資産損失の必要経費算入 事業用資産(棚卸資産、固定資産等)については、災害により損害を受けた場合、事業所得の計算にあたって、その損失額を必要経費に算入することが認められます(所税51)。 また、純損失(赤字)が生じた場合、被災事業用資産の損失額については、青色申告をしていない年分のものであっても、翌年以後3年間、合計所得金額からの繰越控除が認められます(所税70A)。 Q136 被災者に対する租税の減免措置A 被災者に対して、所得税以外の税金(法人税、相続税、贈与税等の国税、地方税を含みます。)について減免措置はありますか。 A 法人税については、@被災資産の評価損の損金算入、A災害損失金の繰越控除が認められます。 相続税・贈与税については、@申告期限前の被災であれば、財産の価額の算定にあたり、被災による損失額を控除することができ、A申告期限後の被災であれば、期限後に到来する納税額のうち、被災部分の額が免除されます。 酒税等については、滅失するなどした物について課せられた税額が、災害の日以後に納付すべき同種類の物に対する税額から控除されます。 また、地方税についても、国税と同じような措置が設けられています。 解 説 1 法人税の減免措置 所得税と同様、次のような措置を受けることができます。 (1) 被災資産の評価額の損金算入 所有する資産を評価減した場合には、原則としてその減額した金額を所得の計算上損金に算入することは認められていません(法税33@)。しかし、災害により著しく損傷したことにより棚卸資産・固定資産の価額がその帳簿価額を下回ることとなった場合に、評価替えをして帳簿価額を減額したときは、その減額した金額は、評価替え直前の帳簿価額と評価替えをした日の属する事業年度終了の日における価額(時価)との差額を限度として、損金に算入することが認められています(法税33A)。 (2) 災害損失金の繰越控除 ある事業年度開始の日前7年以内に開始した各事業年度において、災害により棚卸資産、固定資産および特定の繰延資産に生じた欠損金額は、その事業年度における所得の計算上損金に算入することが認められています(法税58)。 ここにいう欠損金額とは、@滅失、損壊、災害による価値の減少に伴い、その資産の帳簿価額を減額したことにより生じた損失額、A損壊等によりその資産を事業の用に供することが困難な場合に、災害等のやんだ日の翌日から1年を経過した日の前日までにその資産の原状回復のために支出した修繕費・障害物の除去費等の損失額をいいます(法税令116)。 2 相続税および贈与税の減免措置 災害減免法により、次の減免措置が設けられています。 災害により、相続・遺贈・贈与により取得した財産について、申告書の提出期限前に甚大な被害を受けたときは、申告する財産の価額算定にあたり、被害を受けた部分の価額を控除することが認められます(災害減免6)。 また、災害により、相続・遺贈・贈与により取得した財産について、申告書の提出期限後に甚大な被害を受けたときは、被害のあった日以後納付すべき相続税・贈与税の額(例えば延納許可を受けたため納期限が未到来のものなどであり、滞納中のものは除かれます。)のうち被害を受けた部分の額が免除されます(災害減免4)。 なお、ここで「甚大」とは、災害により被害を受けた部分の価額(保険金等による補填額を除きます。)が課税価格の計算の基礎となった財産の価額(債務控除後の価額)の10分の1以上である場合をいいます(災害減免令11@)。 3 酒税・たばこ税・揮発油税・地方道路税・石油ガス税・石油石炭税 これらの国税を課せられた物(酒等)が、災害により滅失したり本来の用途に供することができなくなったりした場合には、これらの物に課せられた税額が、当該税を納めた者が災害の日以後に納める同種類の物に対する税額から控除されます(災害減免7)。 4 自動車重量税 自動車の販売業者等が車検証の交付等を受ける目的で保管している自動車のうち、自動車重量税を納付したものの、災害による被害により使用が廃止されたものについては、納付された自動車重量税が還付されます(災害減免8)。 5 地方税 都道府県民税、市民税、固定資産税等の地方税についても、災害による被害を受けた場合には、国税と同様の減免措置が設けられています(例えば都府県民税における災害による損失金額の控除、地税34)。 また、大規模の災害が発生した場合には、被災地域の各地方自治体が、その責任と権限において、地方税の徴収につき、条例を制定してその災害の種類・規模等に応じた特別な措置を設けるものと思われます。 Q137 被災者に対する租税の緩和措置 被災者に対して、税法上、減免措置以外の救済はありませんか。 A 申告期限・納付期限の延長、納税の猶予、延滞税の免除などの措置が認められています。 解 説 1 申告期限・納付期限の延長措置 国税通則法により、災害その他やむを得ない理由によって、国税に関する各法律に基づく申告、申請その他書類の提出、納付等に関する期限までに、これらの行為をすることができないときは、その理由のやんだ日から2か月以内に限り、その期限が延長されます(国通11)。 期限の延長には、国税庁長官が延長を行う地域および期日を指定する場合と、国税庁長官、国税不服審判所長、国税局長、税務署長または税関長に申請をして、期日を指定してもらう場合とがあります。 参考までに、阪神・淡路大震災の際には、神戸市などの地域が指定され、その地域の納税者の国税について、個別の申請を要せずに確定申告などの申告・納付の期限が延長されました。期限の延長の通知は官報による告示等で行われました。 2 納税の猶予 災害により納税者がその財産に相当な損失を受けた場合には、その損失を受けた日以降1年以内に納付すべき国税があるときは、その災害がやんだ日から2か月以内に申請を行うことにより、法定納期限から1年の範囲内で、その国税の全部または一部の納税を猶予してもらうことができます(国通46@)。 また、既に納期限が到来している国税について、災害のため一時に納付することが困難な状態になったときは、申請により、納付能力の調査を受けた上、担保の提供を条件に1年の範囲内で納税を猶予してもらえる場合があります(国通46AD)。 猶予の期間は、被害のあった財産の損失状況等を勘案して具体的に決定されます。 納税の猶予については猶予期間の再延長を受けられる場合もありますが、合計2年を超えることはできません(国通46F)。 納税を猶予されると、その猶予期間内は、猶予された金額に相当する国税について、督促や滞納処分を受けることがなくなります。 また、猶予された国税について、既に滞納処分により差し押さえられた財産がある場合には、納税者の申請に基づき、事情に応じてその差押えを解除されることもあります(国通48A)。 3 延滞税の免除 納税の猶予を受けた場合には(前記2)、原則として、その猶予期間内の延滞税は全額が免除されます(国通63@)。 また、申告・納付期限が延長された場合には(前記1)、延長された期限が法定の期限となるので、延長された期間に対応する延滞税は課せられません(国通63A)。 第8章 環境に関する問題 Q138 建物解体時のアスベスト問題 アスベスト建材が使われている自己所有建物が震災により影響を受けています。全壊・半壊で解体が必要の場合、所有者としてどのようなことをしなければなりませんか。 また、解体までは必要ではなく、補修で使い続けられる場合には、どのようなことを守らなければなりませんか。 A 所有者は、解体工事を発注するにあたり、解体事業者がアスベストの対策措置ができなくなることのないよう、解体方法、費用等について配慮しなければなりません。 また、所有者は、補修して使用し続けるときも、一定の場合には、震災により飛散するようになった吹き付けアスベストの除去等をしなければなりません。 解 説 1 解体の場合 (1) アスベスト対策 建物の解体工事を行う事業者は、労働安全衛生法、同法に基づく石綿障害予防規則、大気汚染防止法、各自治体の条例等の規制を遵守しなければなりません。これは、震災時でも例外はありません。阪神・淡路大震災においても、事業者にいかにアスベスト対策をとらせるかが問題となりました。 ところが、アスベスト対策の作業は、手間も費用もかかります。しかし、建物所有者(発注者)は以下のとおり、アスベスト対策の作業を妨げることのないよう配慮しなければなりません。 (2) 石綿障害予防規則 建築物等の解体等の作業において、アスベスト対策の徹底を図るため、労働安全衛生法に基づく石綿障害予防規則が制定され、平成17年7月1日から施行されています。 同規則により、建物の解体工事を行う事業者は、アスベストの有無の事前調査を行い(石綿3)、作業計画を作成し(石綿4)、一定の場合届出も必要となります(石綿5)。 解体作業にあたっては、労働者に呼吸用保護具(防塵マスク)、作業衣等を使用させなければならず(石綿14)、石綿等を湿潤なものにしなければなりません(石綿13)。また、当該作業場所を他の作業場所から隔離したり、関係者以外の者の立ち入りを禁止したりしなければなりません(石綿6・7)。 これらの義務違反に対しては罰則が定められています(労安衛119等)。 これらのアスベスト対策に対し、建物所有者は、解体工事の発注に当たり、工事の請負人に対し、当該建物におけるアスベストの使用状況等(設計図面等)を通知するよう努めなければなりません(石綿8)。もっとも、設計図面等の情報を有していない場合まで通知を求める趣旨ではありません。 また、建物所有者(発注者)は、事業者がアスベストによる健康障害防止のため必要な措置を講ずることができなくなることのないよう、作業方法、費用または工期等について配慮しなければなりません(石綿9)。 なお、この石綿障害予防規則以外にも、大気汚染防止法18条の14および同規則16条の4、廃棄物処理法12条、12条の2、各自治体の条例(東京都環境確保条例など)などによる都道府県知事への届出等の規制があります。 (3) 上記配慮義務を守らなかった場合 建物所有者は、解体を発注するにあたり、上記のような努力義務ないし配慮義務を負いますが、これらに対する違反には罰則はありません。 しかし、震災の程度にもよりますが、建物所有者が、事業者が適切なアスベスト対策をとれないような契約条件(費用、工期など)を押しつけ、アスベスト飛散が発生したような場合、周辺住民から不法行為に基づく損害賠償責任を追及される可能性があります。 (4) 費用負担について もっとも、アスベスト対策には手間も費用もかかります。時には、総解体工事費の半分以上になることもあります。しかし、アスベスト対策を含む解体費用は、建物所有者が負担しなければなりません。もっとも、一定の条件のもと公費支給の制度があります。 被災者生活再建支援法により、解体等の費用として最大200万円が支給されます(被災再建3、被災再建令3@八、被災再建規9A一)。ただし、これには住宅の損壊程度、世帯人数、年収などの要件があります。 なお、阪神・淡路大震災においては、廃棄物処理法の特例として、個人や中小事業者などの倒壊家屋等の解体・撤去が、所有者の承諾のもとに市町村の災害廃棄物処理事業として公費で行われ、これには吹き付けアスベスト除去費も含まれていました。 2 補修の場合 (1) アスベスト対策 建物所有者は、建物を補修して使い続ける場合には、原則としてアスベスト対策をとる法律上の義務はありませんが、一定の場合にはアスベスト対策をとる必要があります。 (2) 石綿障害予防規則 まず、事業者は、その労働者を就業させる建築物に吹き付けられたアスベストが損傷、劣化等によりその粉じんを発散させ、労働者がその粉じんにばく露するおそれがあるときは、当該吹き付けアスベストの除去、封じ込め、囲い込み等の措置を講じなければなりません(石綿10@)。 また、事務所または工場の用に供される建築物の貸与者は、当該建築物の貸与を受けた2以上の事業者が共用する廊下の壁等に吹き付けられたアスベストが損傷、劣化等によりその粉じんを発散させ、労働者がその粉じんにばく露するおそれがあるときも、同様の措置を講じなければなりません(石綿10A)。 したがって、震災前には吹き付けアスベストが飛散していなくても、震災の影響により飛散するような状態になっている場合には、上記の対策をとらなければなりません。 第8章 環境に関する問題 Q139 工場等から有害物質が流出した場合 震災により、近隣の工場から有害物質が流出しました。どのような手段をとることが可能でしょうか。 A 損害賠償や汚染除去を求めていくことになりますが、不可抗力である等としてかかる請求が認められない可能性もあります。 解 説 1 損害賠償請求(不法行為責任) 有害物質の流出によって、汚染除去費用、健康被害等の損害が生じた場合には、工場を操業している会社等に対して不法行為に基づく損害賠償請求をし得るかが問題になります。 (1) 工作物責任 例えば、工場の建物が震災により損傷を受け、その結果有害物質が流出するといったケース等では、土地の工作物の所有者および占有者の不法行為責任(民717)が問題となります。これが肯定される場合には、一次的に占有者が損害賠償責任を負うことになりますが、占有者が損害の発生を防止するために必要な注意をしたときには、二次的に所有者が損害賠償責任を負うことになります。 工作物責任を問うためには、工作物の設置または保存に瑕疵、すなわち工作物がその種類に応じて通常備えているべき安全性を欠いていることが必要となります。この「通常備えているべき安全性」とは、通常想定される危険に対応した安全性をいい、異常な自然力(不可抗力)により生じた危険に対する安全性まで備えていることが要求されるものではありませんが、通常の規模の地震には耐え得ることが必要です(四宮和夫『事務管理・不当利得・不法行為(下)』737頁(青林書院、昭60)。通常想定される危険に対し安全であればよいとされた例として仙台地判昭56・5・8判時1007・30、売主の瑕疵担保責任の事例につき仙台地判平8・6・11判時1625・85。また、不可抗力の主張が排斥された例として神戸地判平10・6・16判タ1009・207)。 瑕疵があるとされる場合でも、地震という自然力との競合によって損害が生じた場合には、瑕疵と損害との間に因果関係があるかどうかが問題となります。 通常なら損傷が起こらないような程度の地震にもかかわらず損傷が発生したのであれば因果関係が肯定されることになるでしょうが、通常予想される規模を超えた地震により、瑕疵の有無にかかわらず同じような被害が生じる場合には因果関係は否定されるでしょう。また、瑕疵と自然力とが共同に作用して損害を発生させた場合、自然力によるリスクをまるまる工作物の所有者・占有者に負わせるのも公平に反するため、賠償額が減額されることもあり得ます(四宮前掲742頁。神戸地判平11・9・20判時1716・105、売主の瑕疵担保責任に関するものとして仙台高判平12・10・25判時1764・82)。 また、特別法には、事業者等に無過失責任を課しつつも、不可抗力があった場合には責任および損害について斟酌するとの規定もあります(水質汚濁19・20の2、原賠3@)。 (2) 通常の不法行為責任 工場での有害物質の管理に問題がある場合には、通常の不法行為責任(民709)も問題となり得ますが、工作物責任の場合と同じように、不可抗力であるとして過失、因果関係が否定されないか検討が必要となります。日本が地震多発国であることから地震発生自体は予見可能ですが、阪神・淡路大震災の規模の地震発生を具体的に予見することは困難であり過失がないとした裁判例(東京地判平11・6・22判タ1008・288)等も参考になりましょう。 2 汚染除去の請求 有害物質が隣地に流出した場合には、損害賠償請求にとどまらず汚染除去を求めることができるでしょうか。有害物質の流出を受けた隣地所有者としては、物権的請求権の行使により汚染除去を求めたいところですが、判例は、妨害の原因が不可抗力である場合には物権的請求権は生じないと解する立場をとっているようです(大判昭12・11・19民集16・1881)。 なお、特別法においては、有害物質について応急措置や行政への連絡が義務づけられていますので(水質汚濁14の2、毒劇16の2・22C、消防16の3)、地方自治体に相談して、汚染を除去するよう指導を求めるのがよいでしょう。 3 汚染被害が生じた場合の手続 損害賠償や汚染除去を求める場合の手続としては、裁判所を利用した民事調停や訴訟の提起が考えられます。しかし、震災直後の時点では司法機能が回復していない可能性もあり、緊急を要する場合には、まずは行政に働きかけて問題解決を図ることが多いでしょう。各都道府県や市町村には環境、公害対策の担当部署が設置されているので、まずそこに相談するのがよいでしょう。 また、公害紛争処理法に基づき、公害紛争の処理機関として公害等調停委員会と公害審査会が設置されています。公害等調整委員会は、重大事件、広域処理事件、県際事件(2以上の都道府県にまたがる事件)を扱うこととされ、あっせん、調停、仲裁、裁定の手続によって紛争解決を図っています。公害審査会は各都道府県に設置されており、公害等調整委員会が扱う紛争以外の紛争を管轄して、あっせん、調停、仲裁の手続を行っています。これらの手続を利用することで、訴訟に比して迅速かつ低廉な費用での解決を図ることができます。なお、これらの手続を利用するには、環境基本法2条3項にいう「公害」(事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下および悪臭によって、人の健康または生活環境に係る被害が生ずること)に関する紛争でなければならず、汚染等が「相当範囲にわたる」、すなわち人的、地域的に広がりがあることが必要となります。 第8章 環境に関する問題 Q140 倒壊した隣地建物の撤去 地震により隣の建物が倒壊し、自宅敷地部分に瓦礫が残ったままになっています。 自分で勝手に撤去してもよいでしょうか。また撤去費用はどちらが負担しなければならないでしょうか。 A 所有者の承諾を得ずに勝手に撤去してはいけません。費用負担については、地震により全くの不可抗力による倒壊の場合には隣地所有者に撤去費用を負担させることは難しいですが、隣家所有者に過失がある場合ないし必ずしも不可抗力による倒壊とはいえない場合には隣地所有者に撤去費用を負担させることができます。また、一定の範囲につき公費負担の制度もあります。 解 説 1 自身による撤去 当該瓦礫に財産的価値が残存しているか否かの判断は困難ですから、所有者の承諾を得ずに撤去・処分した場合、後に財産権侵害に基づく不法行為責任(民709)を問われる可能性があります(自力救済の禁止)。 したがって、財産的価値のない瓦礫だと思われても、原則として撤去の際には所有者の承諾を得るべきだと考えます。 なお、阪神・淡路大震災においては、下記のとおり、市町村が、@廃棄物処理法に基づく災害廃棄物処理事業として建物の解体および瓦礫の撤去を、A公共土木施設災害復旧事業の対象として道路上の倒壊建物の撤去を行っておりましたが、@については例外なく、Aについても可能な限り、所有者の承諾を得ていたようです。 2 費用負担 (1) 物権的請求権 瓦礫の撤去については、法律上、物権的請求権(本件においては所有権に基づく妨害排除請求権)が根拠となります。 ア 費用の負担 費用をどちらが負担するかについては、この物権的請求権の性格をどのように考えるかに関連するといわれています。すなわち、物権的請求権を行為請求権(物権のあるべき状態を回復するために相手方の積極的な行為を請求する権利)と考えるのであれば相手方負担となり、忍容請求権(物権侵害という状態を物権者自らが除去することを相手方に忍容させる権利)と考えるのであれば自己負担ということになります。 イ 判例、裁判例の動向 この点判例は、物権的請求権を行為請求権と考えているといわれていますが(大判昭5・10・31民集9・1009等)、他方、自然現象等の不可抗力によって妨害状態が発生した場合には、傍論ですが相手方に積極的行為義務はないとして、不可抗力の場合には特別の配慮をしています(大判昭7・11・9民集11・2277、大判昭12・11・19民集16・1881等)。 また、下級審裁判例を見てみますと、隣地の崩落の危険等が存する場合における妨害予防請求の事案が散見されますが、結論的としては判例と同じく請求を否定しております(東京高判昭58・3・17判タ497・117等。もっともこれらの裁判例は、「土地相隣関係の調整の立場」から民法223条、226条、229条、232条の規定を類推するといった手法を用い、共同の費用で予防措置を講ずべきだとの結論を導いておりますので、ストレートに不可抗力の場合に物権的請求権を否定しているのかは定かではありません)。 以上のとおり、判例および裁判例は、不可抗力の場合、理論面はさておき、相手方に費用を負担させることには消極的なように思われます。 したがって、ご質問においても、隣地建物所有者に撤去費用を負担させることは難しいと思われます。 ウ 学 説 なお、学説の状況ですが、詳述はしませんが、前記行為請求権説および忍容請求権説の他、責任説、行為請求権修正説、費用折半説等種々のものがあります。 (2) 損害賠償請求 自ら費用を支出して瓦礫を撤去した場合、物権的請求権とは別に、その費用を損害として倒壊建物所有者に対して賠償請求することも考えられます。 すなわち、民法709条は、故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う旨規定し、また同法717条は、土地の工作物の設置または保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じさせたときは、その占有者ないし所有者は損害を賠償しなければならないと規定しています。 したがって、例えば倒壊の原因が無理な増築にある場合等、隣家所有者に過失がある場合ないし必ずしも不可抗力による倒壊とはいえない場合には、これらの規定に基づき撤去費用を損害として賠償請求が可能だと思われます。 (3) 公費負担 ア 廃棄物の処理及び清掃に関する法律 従来、公費負担による撤去を直接規定する法律はありませんでしたので、その撤去費用は原則として、前記1、2に述べたように当事者のどちらかが負担することになっており、阪神・淡路大震災の際も、震災直後はこの原則に則っていました。 しかし、その後、廃棄物処理法の特例として、個人や中小事業者などの倒壊家屋等の解体・撤去を、災害廃棄物処理事業として、所有者の承諾の下に市町村の事業として行い、その費用の2分の1を国が補助する特別措置が講じられました(神戸市では平成7年1月29日から受付開始)。 したがって、阪神・淡路大震災においては、当事者が撤去費用を負担したという事態はあまりなかったようです。 イ 被災者生活再建支援法 また、阪神・淡路大震災後、被災者生活再建支援法が新たに成立し、施行されています。 同法は、自立した生活を開始するために必要な経費として、都道府県が世帯主に対し、住宅の解体、廃棄物の撤去、整地費用として、最大200万円を支給する旨規定しており(被災再建3、被災再建令3@八、被災再建規9A1)、全額ではありませんが撤去費用の公費負担が認められることになりました。 実際新潟県中越地震においては被災者生活再建支援法が適用され、これらの費用の支給がなされました。 ウ 廃棄物処理法の特例 新潟県中越地震においては被災者生活再建支援法が適用されましたが、他方、廃棄物処理法の特例の適用はありませんでした。 瓦礫の撤去に関しては両者で公費負担の額が異なってきますので、両者の適用関係をどのように考えるのかは今後の課題だと思われます。 3 その他 ご質問とは直接関係ありませんが、自宅の敷地以外の場所、例えば自宅前の道路に瓦礫があり通行の障害となっている場合、誰が撤去費用を負担するのかについて若干述べます。 この点についても、本来は、瓦礫の所有者が自己の責任において処理すべきものだと思われますが、他方、所有者任せでは道路の通行機能の早期回復は不可能ですから、道路管理者が対応せざるを得ず、よって以下のような法律上の手当てがあります。 まず、道路法68条1項が「道路管理者は、道路に関する非常災害のためやむを得ない必要がある場合においては、災害の現場において、必要な土地を一時使用し、又は土石、竹木その他の物件を使用し、収用し、若しくは処分することができる」と規定し、道路管理者によって瓦礫の処分が認められています。 また、道路上の瓦礫撤去を、公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法に基づく公共土木施設災害復旧事業の対象として行うことも可能です。 阪神・淡路大震災においては、地方公共団体が、道路上の倒壊建物の撤去を、公共土木施設災害復旧事業の対象として行いました。 第9章 支援を必要とする人に関する問題 1 高齢者、障害者への支援 Q141 地域防災計画 自治体は、地域防災計画を策定しなければならないということですが、どういうことを定めるものですか。 A 多岐にわたりますが、当該地域に係る防災に関し、防災上重要な施設の管理者の処理すべき事務または業務の大綱を定めるほか、防災施設の新設または改良や、防災のための調査研究、教育および訓練その他の災害予防、情報の収集および伝達、災害に関する予報または警報の発令および伝達、避難、消火、水防、救難、救助、衛生その他の災害応急対策ならびに災害復旧に関する事項別の計画や、これらの措置に要する労務、施設、設備、物資、資金等の整備、備蓄、調達、配分、輸送、通信等に関する計画などを定めることとなっています。 解 説 1 地域防災計画とは 地域防災計画は、災害対策基本法に基づき、都道府県、市町村の防災会議が地域の実情に即して作成する、災害対策全般にわたる基本的な計画です。 この計画は、国の防災基本計画、各種の指針を受けて、各自治体固有の条件を織り込んで定めるものです。 また、国の防災基本計画とは、災害対策基本法に基づき、中央防災会議により決定された防災に関する基本的な計画です。 2 地域防災計画では、どのようなことを定めるか 地域防災計画では、災害対策基本法40条、同42条に基づき、都道府県、市町村それぞれが、下記事項を定めることとされています。 @ 当該地域に係る防災に関し、防災上重要な施設の管理者の処理すべき事務または業務の大綱 A 当該地域に係る防災施設の新設または改良、防災のための調査研究、教育および訓練その他の災害予防、情報の収集および伝達、災害に関する予報または警報の発令および伝達、避難、消火、水防、救難、救助、衛生その他の災害応急対策ならびに災害復旧に関する事項別の計画 B 当該地域に係る災害に関する前号に掲げる措置に要する労務、施設、設備、物資、資金等の整備、備蓄、調達、配分、輸送、通信等に関する計画 C 前各号に掲げるもののほか、当該地域に係る防災に関し防災会議が必要と認める事項 3 具体的に地域防災計画は、どのようなことを定めているか 地域防災計画は、各自治体が独自に、国の防災基本計画等を受けて策定するものですが、具体的には、以下のような条項を定めています(参照 神戸市地域防災計画)。 I 予防計画 II 応救対応計画 1.防災活動計画 2.災害救助法の適用 3.情報収集・伝達・広報計画 4.広域連携・応援体制計画 5.救助・救急医療体制 6.地震火災対策 7.市民・企業の自主防災活動 8.避難計画 9.救援・救護対策 10.災害時要援護者・外国人への対応 11.遺体捜索・埋火葬計画 12.廃棄物処理計画 13.被災地安全確保対策 14.ライフライン復旧対策 15.災害時交通規制・緊急輸送対策 16.生活安定対策 17.ボランティア活動支援 18.二次災害の防止 III 災害復旧計画 アドバイス 地域防災計画は、上記のように網羅的な防災の指針を定めています。もっとも、各自治体により、規定内容は若干異なるところもあります。震災等の災害に備えて、住居地の地域防災計画を一読しておかれるとよいと思います。各自治体のホームページをご覧ください。 <参 照> 神戸市地域防災計画 神戸市ホームページ http://www.city.kobe.jp/cityoffice/02/040/keikaku/jishin/index_jishin.html Q142 地域防災計画における災害時要援護者への配慮 地域防災計画上、高齢者、障害者などの災害時要援護者について、どのような配慮がなされていますか。 A 高齢者、障害者などの災害時要援護者について、どのような配慮をするかについては、各自治体が決定することですが、国の災害対策基本計画では、災害時要援護者への施策として、指針を定めていますので、各自治体も、この指針に沿った地域防災基本計画の策定を行うことが望まれます。 解 説 1 国の災害対策基本計画における災害時要援護者への施策 災害時要援護者への施策として、国の災害対策基本計画の指針は、次のとおりです。 記 高齢者、障害者、外国人等の災害時要援護者に対しては、防災知識の普及、災害時の情報提供、避難誘導、救護・救済対策等の様々な面で配慮が必要であり、このため、平常時から地域において災害時要援護者を支援する体制が整備されるよう努めるとともに、平常時には、避難誘導はもとより、高齢者、障害者の避難場所での健康管理、応急仮設住宅への優先的入居等に努める。 2 地域防災計画における災害時要援護者への対応 地域防災計画中の災害時要援護者の対応の具体例(神戸市)をみると、次のようになっています。 I 災害時要援護者の認識 II 災害時要援護者等に関する情報の収集及び提供 1.要援護者支援本部の開設 2.相談窓口の開設 3. 災害情報の提供(例:文字情報、手話通訳、テレビ、ラジオでの繰り返しての情報提供) 4.観光客への広報 III 安否確認と福祉ニーズの把握 1.安否確認・所在の把握 民生委員児童委員による要援護者の安否確認、また、社会福祉施設の管理者による入所者・利用者の安全確保等を行う。 2.要援護者の実態調査 発災後2〜3日を目処に要援護者の健康状態、日常生活動作等の調査を行う。 3.高齢者、障害者の安全のための施策 IV 避難と避難所 1.防災福祉コミュニティの役割 2.避難所での留意事項 要援護者をできるだけ環境条件の良い場所へ避難させるように配慮。要援護者への災害情報の提供に配慮する。要援護者施設のバリアフリー化。避難所生活が困難な要援護者は、要援護者用避難所または適切な施設へ移動する。 V 緊急援護の実施 1.施設援護 避難所での生活が困難で、且つ、在宅介護も困難な要援護者について救急入院・緊急一時入所を実施する。また、在宅介護については、ホームヘルプサービス、入浴サービスの実施、介護、看護方法の随時指導、ボランティアによる援助等を実施する。 2.要援護者用避難所 VI 高齢者・障害者向地域型仮設住宅の提供 生活支援員の配置、入居者の生活相談や見守り、福祉事務所等関連機関との連絡調整を行うとともに、配食サービス等の在宅福祉サービスを提供する。 VII 仮設住宅地域等での見守り活動の推進 このように、現在、地域防災計画の中には、災害時要援護者への対策についても盛り込んでいる自治体が多くなっていますが、その内容は、各自治体によっても異なりますし、その計画がどれだけ履践されるかも、各自治体によって異なります。 アドバイス 急速に高齢化社会に突入しつつあるわが国では、高齢者を含む災害時要援護者への対策は、まさに緊喫の課題といえます。一般的な地域防災計画だけでなく、災害時要援護者への対策がどのようになっているか、住居地の地域防災計画を一度ご覧になってみてはいかがでしょうか。 <参 照> 神戸市地域防災計画 神戸市ホームページ http://www.city.kobe.jp/cityoffice/02/040/keikaku/jishin/index_jishin.html Q143 要援護者の個人情報の第三者提供 私どもは社会福祉協議会ですが、高齢者・障害者の親族の方の同意を得て、作成したこれら要援護者の住所、氏名、生年月日、健康保険証の番号、介護保険証の番号、既往歴、服薬状況等の医療情報を集積した情報を管理していますが、これらデータベースとなったものを、いざという時に備えて、協力してくれるボランティアの人など他に貸与することについて問題はないでしょうか。 A あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供できません。ただし、例外として人の生命・身体・財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難なときには、本人の同意を得なくても、個人データを第三者に提供することができます。 ご質問では、本人の同意を得ることが困難なときにあたりませんので、個人データを第三者に提供するには、あらかじめ本人の同意を得ておく必要があります。 解 説 1 社会福祉協議会は個人情報取扱事業者か 個人情報の保護に関する法律(平成17年4月1日全面施行)(いわゆる個人情報保護法)では、特定の個人を識別できる情報を「個人情報」としています(個人情報2@参照)。 本問の要援護者の氏名等は、特定の個人を識別できるので個人情報です。 また、特定の個人情報を検索できるように体系的に整理した情報の集合物を「個人情報データベース等」といいますが(個人情報2A、個人情報令1参照)、ご質問のデータベースは、コンピュータか目次や索引などによって特定の個人情報を容易に検索できるので個人情報データベース等にあたります。 そして、個人情報データベース等を事業の用に供している者を「個人情報取扱事業者」といいます(個人情報2B)。 ご質問では、社会福祉活動の推進を目的とした民間団体である社会福祉協議会が、上記個人情報データベース等を、同事業に利用しているので、同会は個人情報取扱事業者です(ただし、個人情報によって識別される個人の数の合計が過去6か月以内のいずれの日においても5,000を超えない者は除かれます。(個人情報2B五、個人情報令2))。 2 個人データの第三者提供の禁止と本人同意の必要性 個人情報取扱事業者は、原則として、あらかじめ本人の同意を得ないで個人データを第三者に提供することを禁止されています(個人情報23@)。 「個人データ」とは、個人情報データベース等に含まれている個人情報です(個人情報2C)。個人データの第三者提供が制限されるのは、本人の知らないところで個人データが第三者に移転されると、本人の予期しない目的で利用されたり、さらに別の第三者に転々と情報が移転されたりするおそれがあるからです。 ご質問の要援護者の住所、氏名等の情報は、個人データにあたりますから、あらかじめ本人の同意を得ないで、第三者に提供することは同法違反です。本人が成年被後見人である場合は、成年後見人の同意を得るべきです。 3 例外的に第三者提供が許容される場合 ただし、人の生命・身体・財産の保護のために個人データを第三者に提供することが必要なのに、本人の同意を得ることが困難な場合には、あらかじめ本人の同意を得なくても個人データを第三者に提供することができます(個人情報23@二)。例えば、「宿泊先の事故で意識不明となった本人について、ホテル側が家族の連絡先などの情報を医療機関に提供する場合」(小川登美夫編・著『個人情報保護法 ここがポイント!あなたの仕事の流れで理解する』106頁(日本経済新聞社、平17))などです。 4 ご質問のケースの場合 ご質問のケースでは、まだ、緊急事態が差し迫っているわけではありませんので、本人の同意を得ることが困難な緊急事態ではないと思います。 このような場合は、やはり原則どおり、本人にきちんと情報を共有する必要性があることを説明して、第三者提供に同意を得ておく必要があるでしょう。 なお、本人の同意を得ないで、ボランティア等の第三者に個人データを提供した場合、不法行為などの民事上の損害賠償責任(民709)などを負うこともありますので、ご注意ください。 Q144 倒壊した有料老人ホームからの入居保証金の返還 私は、入居保証金800万円も預託して、終身居住可能な有料老人ホームに入居しました。ところが、この度の地震により、建物が半壊し、倒壊の危険があるため、立入禁止となっています。 入居保証金を返してもらうことはできないのでしょうか。 この老人ホームを運営している会社が破産したらどうなるのでしょうか。 A 少なくとも、入居保証金の未経過分の部分については返還するよう求めましょう。 また、施設経営会社が破産した場合は、破産債権として一部の配当しか受けられないことがあります。入居者基金制度が利用できないかどうか調べる必要があります。 解 説 1 有料老人ホームの入居契約の内容 (1) 有料老人ホームとは ご質問のケースを考えるにあたり、まず、有料老人ホームの入居契約がどのようなものか、を考える必要があります。 有料老人ホームとは、「老人を入居させ、入浴、排せつ若しくは食事の介護、食事の提供又はその他の日常生活上必要な便宜であつて厚生労働省令で定めるもの(以下「介護等」という。)の供与(他に委託して供与をする場合及び将来において供与をすることを約する場合を含む。)をする事業を行う施設であつて、老人福祉施設、認知症対応型老人共同生活援助事業を行う住居その他厚生労働省令で定める施設でないものをいう。」(老福29@)とされています。 (2) 有料老人ホームの種類 現在、有料老人ホームは、介護や食事のサービスがついているかどうかなどで@介護付有料老人ホーム、A住宅型有料老人ホーム、B健康型有料老人ホームの3つの型に分類されています(平成14年7月18日老発0718003)。 (3) 有料老人ホームの入居契約の内容 有料老人ホームの入居契約は、これら居室施設で生活することおよびその生活にあたり上記のようなサービスの提供を受けることを目的とする契約です。 施設側は、利用者が、居室およびその付帯施設で生活できるようこれら施設を利用させることおよびその生活にあたり給食その他のサービスを提供する義務を負い、これに対し、利用者は入居一時金および利用料を支払う義務を負います。 2 地震による倒壊 (1) 施設を利用させる義務の履行不能による入居契約の終了 地震による施設の倒壊により、施設側は利用者に対し、施設を利用させる義務の履行が不可能となっています。 これは、地震という不可抗力で、施設側の責任に基づくものではありませんので、この利用契約に基づく施設側の義務の履行が不能となったことにより、契約自体が終了してしまいます(民536@)。 (2) 再築の要求はできるか 利用者としては、施設を建て直して再入居させてほしいところですが、入居契約の内容として、施設側に建て替えて再入居させる義務や再入居までの他の施設を提供する義務までは法的にはありません。 ただし、話合いにより、施設側がこのような要求に応ずる場合もありますので、話し合ってみる余地はあります。 3 入居一時金の返還要求 (1) 入居一時金の法的性格 では、再入居できない場合、入居一時金を返還してもらえるかというのがご質問の趣旨と思います。 入居一時金の法的性格は、一般的にいって、施設側が利用者から終身にわたって受領すべき家賃相当額、介護費用(介護保険対象外の費用)、食費・管理費等の全部または一部の前払金であると考えられています。 (2) どのような費用の前払か これら費用のうち、どのような費用の前払となっているかは、一時金の多寡や、一時金とは別に月々支払うものによっても異なりますので、一概にはいえませんが、通常は家賃相当額の前払であることの方が多いようです。 (3) 施設側に返還義務はあるか 「有料老人ホームの設置運営標準指導指針について」(平成14年7月18日老発0718003。平成18年3月31日老発0331002により改正。)(以下、「指針」といいます。)は、一時金方式(終身にわたって受領すべき家賃相当額の全部または一部を前払い金として一括して受領する方式)により受領する場合には、「一定期間内に死亡又は退去したときの入居月数に応じた返還金の算定方式を明らかにしておくとともに、一時金の返還債務を確実に履行すること。」や、「一時金のうち返還対象とならない部分の割合が適切であること」が必要であるとしています(指針9(1)ウ)。 前記指針が示されて以降の契約書には指針に従って、一時金の返還が明記されていますが(平成14年7月18日老発0718003 10(2)ア、(3)ア)、昔のものは明記されていないものも多いでしょう。契約書を再度ご確認下さい。 ただ、契約書に一時金の返還についての定めがなくとも、指針の考え方は参考になると思います。 (4) 返還してもらえる場合はどのような場合か ご質問のケースの場合、「死亡」または利用者側の責任に基づく「退去」ではありませんが、施設を利用しなくなるという点では同様と思われますので、少なくとも未経過分の利用料等に相当するものの返還請求に関しては前記指針の「死亡又は退去」と同様に考えてよいでしょう。 (5) 契約書で返還対象とならない部分が規定されている場合 ただ、契約書によっては、返還対象となる部分とならない部分とを分けて規定しているものもあります。 後者は、一種の入会金的性格をもつもので、前述のような利用料等の前払ではないものと解され、施設側が取得するものとしています。 (6) 消費者契約法の活用 しかし、一時金は一切返還しないという条項があったり、返還するとしても非返還対象分の割合が大きい場合は、消費者契約法9条、10条に基づきこのような条項は無効であると主張し、返還請求を試みるべきかと思います。 4 施設経営会社が破産した場合 (1) 一時金の返還請求権は破産債権 一時金の返還請求権が認められたとしても、施設経営会社が破産した場合には、一般的には、破産債権(破2D・97二)として、破産財団から一定割合の配当しか受けることができません。 (2) 入居者基金制度 ただ、これに対し、入居者基金制度とよばれる制度もあります。 これは、施設経営会社が社団法人全国有料老人ホーム協会の入居者基金制度に加入している場合には、施設経営会社が破産・民事再生手続の開始などにより倒産して、入居者が退去し契約解除した場合には、入居契約に基づく債務の不履行の損害賠償の予定として1人あたり500万円を支払うとする制度です。 (3) ご質問のケースの場合 ご質問のケースの場合は建物倒壊により居住ができなくなった場合で、施設経営会社の債務不履行によるものではありませんので、ストレートにこの入居者基金制度が使えるとはいえないかも知れません。 しかし、入居者保護のための制度ですので、この制度の利用の可否につき交渉してみてはいかがかと思います。 Q145 高齢者円滑入居賃貸住宅に登録した住宅の家賃債務保証制度 私は、今回の地震で今まで住んでいた借家が倒壊し、住むところがなくなりました。私は、60歳で、妻以外に身寄りはいません。高齢者の家賃債務を保証してくれる制度ができたということを聞きましたが、どのような制度でしょうか。 A 高齢者の方には、高齢者居住支援センターが賃貸住宅を借りた際の家賃債務の保証人となる制度があります。 また、障害者の方には、同様の家賃保証制度として障害者家賃債務保証制度があります。 いずれも、高齢者や障害者の方が賃貸住宅を借りやすくする制度です。 その他、高齢者の方には、自分の持ち家をバリアフリーの家にリフォームした際の借入金についての債務保証の制度もあります。 解 説 1 高齢者の居住の安定確保に関する法律の概要 (1) 高齢者の居住の安定確保に関する法律(以下、「高齢者居住安定法」といいます。)が、平成13年4月6日に公布され、平成13年10月1日に全面施行されています。 (2) この高齢者居住安定法は、高齢者の居住の安定の確保を図り、高齢者の福祉の増進に寄与するために各種の制度措置を規定しています。 (3) この法律で規定されているのは、@高齢者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度、A高齢者向け優良賃貸住宅の供給の促進、B地方公共団体等による高齢者向けの優良な賃貸住宅の促進、C終身建物賃貸借、Dバリアフリーリフォームに対する支援等、E高齢者住居支援センターの設置です。 2 高齢者居住支援センターによる家賃債務保証制度 (1) 高齢者居住支援センターは、高齢者円滑入居賃貸住宅の貸主と基本約定を締結し、高齢者の家賃債務の保証をすることができ(高齢者居住80一・11)、また、バリアフリーリフォームの融資についての債務保証等を行うことができます(高齢者居住80二・77)。 (2) 家賃債務保証制度の対象と保証料 @対象住宅 高齢者円滑入居賃貸住宅として事前に登録された民間の賃貸住宅 A入居対象者 登録住宅に入居するまたは入居している満60歳以上の高齢者、同居人についても配偶者を除き、原則60歳以上の親族 B保証の対象 滞納家賃(月額家賃の6か月分に相当する金額を限度とします。) C保証料 2年間の保証で月額家賃の35%を一括支払(入居者負担)。 3 障害者家賃債務保証制度 (1) 平成17年9月30日より障害者家賃債務保証制度が始まりました。この制度は障害者世帯の賃貸住宅入居の家賃債務を保証し賃貸住宅への障害者世帯の入居を支援する制度であり、概略は高齢者家賃債務保証制度と同様です。 この制度自体は、法律上定められたものではなく、高齢者居住支援センターである財団法人高齢者住宅財団が、独自の制度として行っているものです。 (2) 障害者家賃債務保証制度の対象 @対象住宅 障害者の入居を敬遠しないものとして財団と家賃債務保証制度の利用契約に関する基本約定を締結した賃貸住宅 A入居対象者 障害者基本法2条に規定する障害者でその障害の程度が次に該当する者が入居する賃貸住宅の借主 (i身体障害:1級〜4級 ii精神障害:1級または2級 iii知的障害:精神障害に準ずる) 4 まとめ 以上のように高齢者と障害者にとって、利便性の高い制度が創設されており、地震の被害にあった場合にも本制度の積極的な活用により、被災者の生活再建の一助となることが期待されます。 <参 照> 財団法人高齢者住宅財団ホームページ http://www.koujuuzai.or.jp/ Q146 避難先での介護保険の利用 私は、介護保険3の等級認定を受けていましたが、今回の地震で他の地域に一時避難することになりました。一時避難先の避難所、あるいは仮設住宅でも介護保険の給付を受けることができるでしょうか。 A 一時的に別市町村等に避難した場合でも、従前からお住まいの市町村等からの介護保険の給付を受けることができます。 解 説 1 介護保険制度とは 介護保険制度は、平成9年12月17日に公布された介護保険法に基づく制度であり、平成12年4月1日から施行されています。 この制度は、介護を必要とする状態になっても自立した生活ができるように社会保険のシステムを活用して高齢者の介護を社会全体で支えるものであり、年金保険、医療保険、雇用保険、労働災害保険に続く第5番目の社会保険です。 2 保険者、被保険者 保険者は、市町村および特別区(東京23区)です(以下、両者をまとめて「市町村等」といいます。)。ただし、保険者の事務・財政負担軽減のために国、都道府県等が市町村等を支援する仕組みもあります。 被保険者は、40歳以上の人が強制加入とされており、第1号被保険者(65歳以上の者)と第2号被保険者(40歳以上65歳未満の者で医療保険制度加入者)に区分されています(介保9)。 両者は、保険料の賦課・徴収方法と保険給付の対象範囲に相違があります。 3 保険給付の要件 介護保険の保険給付が認められるのは、要介護状態(寝たきりや認知症などで日常生活において常に介護が必要な状態)か要支援状態(常に介護が必要という状態ではないが家事や身支度等の日常生活に支援が必要な状態)の場合であり、前者の状態の人を要介護者、後者の状態の人を要支援者と呼びます(介保2@・7)。 この認定は、保険者である市町村等が行うことになっており、要介護認定、要支援認定といいます(介保19)。 要介護者は、全ての保険給付を受けることが可能ですが、要支援者は基本的に居宅サービスの利用だけで、施設サービスを利用することはできません。 4 保険給付の手続 保険給付を受けるためには、まず、被保険者は市町村等に対して要介護認定または要支援認定を申請し、市町村等は、申請者が要介護状態または要支援状態に該当するか否かについて判断する要介護認定を行います(介保27・32)。 保険給付の内容は、居宅サービスと施設サービスに分かれ、前者は、訪問介護、訪問看護、通所介護等12種類のサービスに分かれています。他方、後者は、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)や介護老人保健施設、介護療養型医療施設に入所または入院して、日常生活上の世話を受けたり機能訓練・医療等のサービスを受けることです(介保8)。 5 サービス提供機関 サービス提供機関は、職員配置や施設設備等の一定の指定基準を充足することにより都道府県知事の指定または許可を受けた機関が中心となっており、居宅サービスは「指定居宅サービス事業者」、施設サービスは「介護保険施設」と呼ばれます。 なお、上記指定基準を充足しない居宅事業者でも、一定の人員・設備等の基準を満たす事業者が提供するサービスの場合には、保険者の個別の判断により「基準該当居宅サービス」として保険給付の対象となることも可能です。 6 介護保険の加入等の要件 40歳以上の人は、被保険者として介護保険に強制加入となり、保険料を負担します。具体的には、@市町村等の区域内に住所を持つ65歳以上の者(第1号被保険者)、A市町村等の区域内に住所を持つ40歳以上65歳未満の医療保険加入者(第2号被保険者)です(介保9)。 介護保険の被保険者の資格取得については、次のいずれかに至った日から当該市町村等の介護保険の被保険者の資格を取得します(介保10)。 ア 医療保険加入者である住民が40歳に達したとき イ 40歳以上65歳未満の医療保険加入者または65歳以上の者が市町村等の住民になったとき ウ 40歳以上65歳未満の住民が医療保険加入者となったとき エ 市町村等の区域内に住所を有する者(医療保険加入者を除きます。)が65歳に達したとき 逆に、住所移転等により市町村等の住民でなくなった場合には、その日の翌日から、第2号被保険者が医療保険加入者でなくなった場合にはその日から被保険者の資格を喪失します(介保11)。 他の市町村からの転入による資格取得には届出が必要ですが、住民基本台帳法の転入届(介護保険の被保険者資格を有する旨の付記)があれば、介護保険の届出は不要とされています(介保12)。 7 ご質問のケースについて ご質問の内容は、一定の市町村等(以下、「給付市町村等」といいます。)で介護保険の保険給付を受けていた人が大震災により別の市町村等(以下、「別市町村等」といいます。)で避難所生活や仮設住宅生活を余儀なくされるに至った場合、従前の受給資格はどうなるか、移転先で介護保険の給付を受けるためにはどのような手続が必要かということです。 そもそも介護保険の保険給付は、基本的に住民票が基準となるので、給付市町村等に住民票がある方が大震災により一時的に別市町村等に避難した場合でも、給付市町村等から給付を受けられることになります。 新潟県中越地震の際には、地震に伴う住所の移動は一時的な避難ととらえ、いずれ給付市町村等に戻って来るという考えに基づいて上記のように給付市町村等による給付を前提としました。 ただし、家屋の倒壊等何らかの事情により給付市町村等に戻ることができない方に対しては、住民票を別市町村等へ移すことを勧めるという対応をしてきました。 住民票を給付市町村等から別市町村等に移動した場合には、前述の通り住民基本台帳法の転入届(介護保険の被保険者資格を有する旨の付記)をすることにより、当該地域での受給資格を取得することになります。 従前の居住地域における要介護認定または要支援認定の内容は、等級内容も含めて移転先の市町村等でも同じ認定内容で移行しますから、新しい居住市町村等で改めて要介護認定ないし要支援認定を受けるための手続が必要になるわけではありません。 Q147 年金担保貸付、災害支援制度 地震で家財道具が壊れ、全部使えなくなりました。新しく買い直すにもお金がありません。年金担保貸付という制度があると聞きましたが、どのような制度でしょうか。目的はどんなものでも貸付は受けられるのでしょうか。 また、年金証書が見あたらないのですが、紛失してしまった場合でも貸付けは受けられるのでしょうか。 その他、地震の際の特別な貸付制度はないのでしょうか。 A 年金担保貸付は、公的年金の受給者に対しその受給権を担保として低利で小口の資金を貸し付ける制度です。使途はギャンブルなどに使うというような場合はダメですが、その他は制限はありません。年金証書が必要ですので、紛失した場合は社会保険事務所などで再発行の手続をしてください。 その他、地震の際の特別な貸付制度としては、災害援護資金や生活福祉資金貸付があります。 その他、災害弔慰金・災害障害見舞金や被災者生活再建資金が支給される場合もありますので、こちらもご活用ください。 解 説 1 年金担保貸付制度 (1) 年金担保貸付制度とは 年金担保貸付制度とは、公的年金の受給者に対しその受給権を担保として低利で小口の資金を貸し付ける事業をいいます。 公的年金といってもその種類は様々ですが、厚生年金保険、船員保険、国民年金(老齢福祉年金を除きます。)、労災年金を対象とした年金担保貸付事業は、独立行政法人福祉医療機構で実施しており、恩給、共済年金、災害補償年金を対象とした年金担保貸付事業は、国民生活金融公庫(沖縄県にあっては、沖縄振興開発金融公庫)で実施しています。 逆に、これらの機関を除いて、年金受給権を担保とした貸付を行うことは、法律上禁止されています(独立行政福祉3・12@十二・十三・28、厚年41、船保27、国年24、労災12の5A、国民恩給参照。)。 (2) 独立行政法人福祉医療機構の年金担保貸付事業の概要 厚生年金保険、国民年金等の支払を受けている人で、各年金証書を所持している人のみが利用することができます。 融資金額は、@10万円〜250万円の範囲内A受けている年金額(年額)の1.2倍B1回あたりの返済額(2か月毎に受けている年金支給額の全額または1万円単位の定額)の12倍以内といった三要件を満たす額の範囲内です。 融資利率は、年金担保貸付2.2%(平成18年8月15日改定)労災年金担保貸付1.1%(平成18年8月15日改定)となっています。 また、連帯保証人が必要となりますが、信用保証機関である財団法人年金融資福祉サービス協会に保証料を支払うことにより、信用保証を利用することができます。 (財)年金融資福祉サービス協会の保証料率は、厚生年金・国民年金の場合15円90銭(対万円・月額)(平成18年4月1日改定)、労災年金の場合も同額となっています。 (3) 国民生活金融公庫の年金担保貸付事業の概要 恩給、共済年金、災害補償年金などを受けている人で、各年金証書を所持している人のみが利用することができます。 融資金額は、250万円以内、ただし、恩給や共済年金などの年額の3年分以内であることが必要です。 融資利率は、年1.6%(平成18年8月10日現在)となっています。また、連帯保証人が必要となります。 (4) 使途について 年金担保貸付の使途については、ギャンブルに使うといった公序良俗に反する使途の場合には融資はされないでしょうが、それ以外は特に限定されていません。 (5) 年金証書が必要 また、同貸付は年金受給権を担保とするものであり、受給権を証明するものとして年金証書が必要となるので、年金証書がない場合には、同貸付を利用することはできません。 年金証書を紛失した場合には、社会保険事務所などの関係機関に直ちに連絡をとり、年金証書の再発行の手続をする必要があります。 (6) 阪神・淡路大震災の際の緩和措置 なお、阪神・淡路大震災の際、独立行政法人福祉医療機構では融資条件の緩和措置(返済期間の延長)、追加融資がなされた等実績があり、災害被害の程度に応じて融資条件の検討を行っているとのことです。 2 災害支援制度 (1) 災害弔慰金・災害障害見舞金の支給 まず、貸付制度ではありませんが、弔慰金・見舞金制度があります。 これは、自然災害により死亡した者の遺族に対して災害弔慰金を、また精神もしくは身体に著しい障害を受けた者に対して災害障害見舞金を支給するという制度があります。 根拠法令は、災害弔慰金の支給等に関する法律(昭和48年法律第82号)になります。 支給要件等については、法律で詳しく決まっているわけではなく、各市区町村で、条例により規定されています。震災を含めて、自然災害に遭われた方は、まずは、住所地にある各市区町村役場に問い合わせをして、支給要件等を確認してください。法律上は、災害弔慰金の額は、死亡者1人あたり500万円を超えない範囲内、災害障害見舞金の額は、障害者1人あたり250万円を超えない範囲内とされています(災害弔慰金3B・8A)。 (2) 災害援護資金の貸付け 災害救助法が適用された自然災害により、世帯主が負傷を負いまたは家財等に相当程度の被害を受けた世帯に対し、生活の立直しに必要な資金として災害援護資金の貸付けを行う制度があります。 根拠法令は、上記(1)と同様に、災害弔慰金の支給等に関する法律になります。 これについても、各市区町村が条例により支給要件を決定しています。対象となる自然災害により、世帯主が負傷または家財等に被害を受けたいわゆる低所得世帯に対して、貸付けを行うものです。 詳しい支給要件等については、各市区町村役場に問い合わせをすべきですが、所得制限として、前年度所得が、1人世帯220万円、2人世帯430万円などといった形で、世帯の人数により所得制限が変わってきます(災害弔慰金10@、災害弔慰金令5)。 (3) 生活福祉資金貸付 低所得世帯等に対し、経済的自立と生活意欲の助長促進を図るため、都道府県社会福祉協議会が生活福祉資金の(災害援護資金・住宅資金)の貸付けを行う制度があります。 ただし、災害弔慰金の支給等に関する法律に基づく災害援護資金の貸付対象となる世帯は、原則として生活福祉資金の災害援護資金および住宅資金の貸付対象とならないので注意が必要です。 根拠法令は、生活福祉資金の貸付制度要綱(平成2年8月14日厚生省社第398号)になります。 (4) 被災者生活再建資金の支給 自然災害により、生活基盤に著しい被害を受けた者であって、経済的理由等によって自立して生活を再建することが困難な者に対して、被災者生活再建支援金を支給する制度があります。 この制度は、平成10年5月に交付された被災者生活再建支援法に基づくもので、生活必需品等の購入経費について、生活再建支援金(上限100万円)が支給されるものでしたが、平成16年3月の法改正により、居住関係経費を対象とする居住安定支援制度(上限200万円)が創設されたことにより、あわせて最高300万円の支援金が支給されるものです。 <参 照> 独立行政法人福祉医療機構ホームページ http://www.wam.go.jp/wam/gyoumu/nenkin/ 国民生活金融公庫ホームページ http://www.kokukin.go.jp/onkyuu/ 財団法人年金融資福祉サービス協会ホームページ http://www.nyfsk.or.jp/ Q148 災害時要援護者への支援 災害時要援護者支援について、法律で特別な規定がありますか。 A 災害対策基本法8条2項において、「国及び地方公共団体は、災害の発生を予防し、又は災害の拡大を防止するため」「実施に努めなければならない」事項として、「高齢者、障害者、乳幼児等特に配慮を要する者に対する防災上必要な措置に関する事項」を掲げています。また、「災害救助法による救助の程度、方法及び期間並びに実費弁償の基準」において、福祉避難所を設置することを想定した実費加算が認められ、福祉仮設住宅を応急仮設住宅として設置できることが認められています。 解 説 1 災害時要援護者 災害時要援護者とは、必要な情報を迅速かつ的確に把握し、災害から自らを守るために安全な場所に避難するなどの災害時の一連の行動をとるのに支援を要する人々をいうとされています。例えば高齢者、障害者、外国人、乳幼児、妊婦等が挙げられています。阪神・淡路大震災において死亡者の50%近くが65歳以上の高齢者であった(消防庁編『消防白書 平成12年版』(ぎょうせい、平12))など、大規模災害時において特に被害が大きい人々がいることが確認され、避難支援をはじめとする種々の施策の必要性が確認されました。 2 災害時要援護者の支援 そこで、平成7年7月には災害対策基本法34条に基づき中央防災会議において作成が義務化されている防災基本計画を修正し、高齢者、障害者、外国人等の災害時要援護者に対しては、防災知識の普及、災害時の情報提供、避難誘導、救護・救済対策等の様々な面で配慮が必要であり、このため、平常時から地域において災害時要援護者を支援する体制が整備されるよう努めるとともに、非常時には、避難誘導はもとより、高齢者、障害者の避難場所での健康管理、応急仮設住宅への優先的入居等に努めるとの規定が盛り込まれました。 3 高齢者、障害者に対する具体的支援方法 さらに、平成7年12月に災害対策基本法8条2項に、「高齢者、障害者、乳幼児等特に配慮を要する者に対する防災上必要な措置に関する事項」が追加され、国および地方公共団体は、災害の発生を予防し、または災害の拡大を防止するために実施に努めなければならないことが明記されました。 平成12年3月31日には「災害救助法による救助の程度、方法及び期間並びに実費弁償の基準」(平12・3・31厚労告144)が制定され、高齢者、障害者に対する支援方法が次のとおり、具体化しました。 (1) 避難所段階における施策 福祉避難所(高齢者、障害者等であって避難所の生活において特別な配慮を必要とするものを収容する避難所)の設置にあたり、実費加算が認められました(平12・3・31厚労告144 2@一ハ)。 (2) 仮設住宅段階における施策 福祉仮設住宅(老人居宅介護等事業者等を利用しやすい構造および設備を有し、高齢者であって日常の生活上特別な配慮を要する複数の者を収容する施設)を応急仮設住宅として設置することが認められました(平12・3・31厚労告144 2@二ニ)。 さらに、内閣府において、平成17年8月、災害時要援護者の避難対策に関する検討会が発足し、平成18年3月には「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」が発表されました。ガイドラインでは、情報伝達が困難な災害時要援護者に対する情報伝達体制の整備、災害時要援護者情報の共有の方式、災害時要援護者の避難支援計画の具体化、避難所における支援、ボランティア組織をはじめとする関係機関等の間の連携についての方策が提案されています。 Q149 災害時要援護者に対する避難情報 大規模災害が発生する危険が生じた場合や大規模災害が発生した場合に、避難が困難な高齢者、障害者等の要援護者に対し、危険を知らせて、避難をさせる必要があると思いますが、危険を知らせるための施策としては、具体的にどのようなものが考えられていますか。 A 災害対策基本法60条に定める通常の避難勧告(避難行動を開始すべき段階)や避難指示(危険が急迫している段階)に先だって、避難に時間がかかる高齢者や障害者ら要援護者のために発令し、いち早く安全な場所に逃げてもらうための情報である避難準備情報を行うこととなりました。 さらに、平成18年3月には、内閣府は「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」を発表し、情報伝達が困難な災害時要援護者に対する情報伝達体制の整備に関する方策が提案されています。 解 説 1 避難の指示等 災害対策基本法60条1項において、「災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において、人の生命又は身体を災害から保護し、その他災害の拡大を防止するため特に必要があると認めるときは、市町村長は、必要と認める地域の居住者、滞在者その他の者に対し、避難のための立退きを勧告し、及び急を要すると認めるときは、これらの者に対し、避難のための立退きを指示することができる」とされています。さらに、都道府県知事は、市町村がその全部または大部分の事務