「世界に訴える憲法9条の危機」アピール
5月15日の日本ハーグ平和アピール運動の定例会で「世界に訴える憲法9条の危機」アピールを作成しました。
1999年5月のハーグ平和アピールの最終日に発表された「公正な世界秩序のための10の基本原則」の第一原則に取り上げられた「憲法9条の世界化」というテーマへの取り組みのひとつとして、有事法制の立法化が着々と進められている日本の状況を世界のNGOへ伝え、そして戦争の廃絶と云うハーグ平和アピールの目的の実現のための「憲法9条の世界化」への賛同を世界の市民社会に求めることが目的です(英文は現在作成中です)。もちろん、日本の市民社会へも「憲法9条の世界化」という取り組みに理解と参加を求めます。このアピール文はハーグ平和アピールの国際事務局などへ送付する予定です。
「世界に訴える憲法9条の危機」アピール
1999年5月にオランダのハーグで開催されたハーグ平和アピールの最終日に発表された「公正な世界秩序のための10の基本原則」の第1原則で「各国議会は、日本国憲法第9条のような、政府が戦争をすることを禁止する決議を採択すべきである」と日本の憲法9条が取り上げられました。約100カ国、9000人の世界の市民社会、政府の代表が集まったハーグ平和アピールでは21世紀を戦争のない世紀とすることを目標に戦争の廃絶と平和の文化の創造について真剣な討議が交わされました。その討議の結果としての10原則に取り上げられたことは、憲法9条が戦争を廃絶する非軍事平和思想の模範として世界の平和運動に関わる人々たちから認められたことを意味し、日本の平和運動に関わる人々にとって大きな喜びでもあり、また「憲法9条の世界化」という大きな目標を自覚しました。しかし、日本においては全く逆の事態が進行しています。
憲法第9条と自衛隊
第2次世界大戦の敗戦により連合国の占領下にあった1947年5月に、それまでの天皇主権の憲法に代えて新たに国民主権、平和主義、基本的人権の尊重の3つを柱とする日本国憲法が施行されました。このうちの平和主義を具体化するのが第2章第9条の「戦争放棄」です。
第二章 戦争の放棄
第九条
第一項 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
第二項 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
この日本国憲法の平和主義と戦争放棄の精神は、戦前の軍国主義の暴走によってアジア諸国への侵略を行ったという過去への反省、そして沖縄戦や本土への激しい空襲そし
て広島、長崎への原爆投下によって多くの一般市民が犠牲になったことによる戦争の惨禍を二度と繰り返したくないという思いの日本国民から広く支持されました。一方で、この第9条は日本の軍事的無力化という当時の米国の占領政策の側面もあったことは確かです。
ところが、朝鮮戦争の勃発と東西冷戦の到来によって米国は日本を「共産主義に対する防波堤」にすると方針を変更し、1950年に軍事組織である警察予備隊(現在の自衛隊)が創設されました。以降、自衛隊は増強を続け、2001年現在では兵力25万人、防衛支出は415億ドルで米国、ロシアに次いで世界第3位にまでなっています。これによって、日本は軍備の不保持を明記した憲法9条と世界有数の「軍隊」である
自衛隊の存在という矛盾を抱えてしまいました。日本政府は「自衛隊は第9条に言う戦力にはあたらない」と「憲法解釈」でなし崩しに自衛隊を既成事実化し、今では国民の多くがその存在を認めています。一方で、第9条の戦争放棄の理想に対しては日本国民の中に根強い支持があります。過去50年間、日本はこの論理的な矛盾とともにありました。
第9条によって日本国民の間に平和思想が根付き、日本の平和運動の理念はその徹底的な非武装平和思想が核となってきていました。また自衛隊が戦前の日本軍の様に無制限に拡大したり海外派兵を抑止してきた意義は大きく、戦後50年間、日本は米国と同盟関係にありながらも一度も直接、武力行使をすることはありませんでした。
有事法制−「普通の国」になろうとしている日本−日本には軍隊のある国なら必ずある有事法制(戦時法)がありません。これは憲法9条で交戦権を放棄しているために、戦時を想定する有事法制が憲法に違反する可能性があるからです。しかしながら、戦後50年を経て戦争の記憶が薄れ、現実に存在する自衛隊を「軍隊」
として認めて日本も他の国々と同じく(必要ならば)戦争ができる「普通の国」になるべきであるという意見が広まって来ています。そうした気運の中で9.11が起きました。日本政府は「テロ対策」の名のもとに米軍の軍事作戦を支援する諸法律を制定して、軍艦をインド洋へ派遣しました。そして、今年になって有事法制法案を国会へ提出することを決めました。この法案は他の国々の軍隊と同じように自衛隊が戦争をする法的な根拠をつくることが目的です。そして、この時期に有事法制の整備が進められるということは、近い将来起こりうるアジアにおける米軍の軍事行動に日本の自衛隊が参加することを意味していると、日本の平和運動に関わる人々は危惧しています。しかしながら、国会では与野党の大部分が有事法制の必要性を認めており、これが憲法9条に違反すると反対する議員はまだ少数です。そして、国民の多くにこの問題について関心をもってもらう必要があります。
9.11は日本にも大きな衝撃を与えました。そして、それは日本が戦争ができる「普通の国」として米軍のテロに対する報復戦争へ参加するという、戦争の廃絶を求め「憲法9条の世界化」を取り上げたハーグ平和アピールの願いとは全く逆の方向へと進んでいます。
憲法9条の世界化
日本はアジアにおける大国です。その日本はテロへの報復に対する軍事的な貢献ではなく、憲法9条の理念を元にする平和への貢献こそが世界から本当に必要とされていることです。
「公正な世界秩序のための10の基本原則」の第1原則で「各国議会は、日本国憲法第9条のような、政府が戦争をすることを禁止する決議を採択すべきである」とわたしたちハーグ平和アピールの参加者達は宣言しました。わたしたち日本の平和運動に関わる人々は21世紀を「戦争のない世紀」とするためには徹底的な非軍事平和思想を謳った日本の憲法第9条こそが世界の国々に取り上げられるべきであると確信します。9.11以降、世界はテロとそれに対する報復戦争の拡大へと動いています。既に多くの人々が命を落としました。暴力では何ごとも解決しないことを世界は知るべき時に来ています。今こそわたしたちは、「憲法9条の世界化」という第1原則に立ち返り、日本での有事立法に反対し、平和を願う全ての人々と協力して「戦争のない21世紀」をつくる決意です。