「あなた…」
「ウ〜ン…」
「あなたっ!」
「ワアァ!ビックリした」
「何をそんなに驚いているんですか?ずいぶんとうなされていましたけど」
「なんだかヘンな夢を見てねえ。自分の言おうとすることを違う人が先に言っちゃうんだよ」
「それは、あなたが頭にフタをしていないからですよ」
「フタ?」
「それよりもあなた。あすこのベランダの方、懲りずにまた出てきましたわよ」
「ああ、ホントだ。また望遠耳かあ」
「きっと、この先のことが気になって仕方がないのね。解ったところで誰にも止められやしないのですけどね。ウフフッ…」
「それって、何のことだ?」
「まあ、あなたったら!ウフッ…」
ということで、気になるのでまた望遠耳で街で交わされる怪しい会話に耳を傾けてみようと思うのですが、なんだかウフギ屋の奥さんは何かを知っているような、いないような。謎めいておるのです。
それでは、前回の「scanned」の続きで望遠耳なのです。(いきなりここを読む人は、先に前回を読んだ方が良いでしょう。)
「はい!現場の人気女子アナ、ウッチーこと内屁端(ウチヘバタ)でーす!みなさん、ここがどこだかわかりますかあ?ここは今問題になっているカマボコなのにアブラ粘土を販売している会社の前なのです。ここに実際に売られているカマボコがあるのですが、このように表には『カマボコ』と書かれているのに、開けてみるとこうしてグニャっとした感じでアブラ粘土が出てくるのです。あっ、ちょうど今、社員と思われる方が出てきましたので、ウッチーが突撃インタビューしてみたいと思いまーす。すいませーん。ちょっとお話を聞かせてもらってもいいですかあ?」
「私はこの会社とはもう何の関わりもないんで、何も言えません。スイマセンが失礼します」
「なんと、突撃インタビューを断られてしまいました。しかし、この建物から出て来たたのに会社と関係がないなんてことは考えられません!会社の建物から出てくる人は社員でないといけないのです。会社の建物から社員以外の人が出てきたら、これは明らかに偽装です。こんなことが許されて良いのでしょうか?…あっ、ここでまた別の人が出てきました。今度こそ話を聞いてみたいと思いまーす。すいませーん。ちょっとお話を…」
「今はそれどころじゃないんですよ。早く行かないと大変な事になりますから。話なら後からボクを追いかけてくる人に聞いてください」
「これは一体どうなっているのでしょうか?またしてもインタビューを断られてしまいました。ウッチー、クヤシーって感じです!」
「おーい!待ってくれー。辞めないでくれよ!」
「また誰か出てきました。今度こそ話を聞いてみたいと思いまーす。すいませーん。ちょっとお話を聞かせてもらえませんかあ?」
「何だねキミは?今はそれどころじゃないんだよ。社員が二人もいなくなったら会社じゃなくなっちゃうよ、おーい!」
「これはどういうことでしょうか?それよりもあなたは、会社の建物から社員以外の人が出てくるという偽装問題についてはどう思っているんですかあ?」
「なんだ、それは?そんなことは別に問題じゃないだろ?私は忙しいからもう行くぞ。おーい!待ってくれー!…」
「ホントにダイジョブなのか?」
「ダイジョブだよ。ここがイケてるクラブに違いないんだから。それじゃあ呼び鈴を押してみるぞ」
「ちょっと待って。もしも違ったらどうするんだよ?」
「何を怖じ気づいてるんだキミは?そんなの決まってるだろ。もしも違ってたら『ごめんなさい、間違えました』で良いじゃないか」
「まあ、そうなんだけどねえ。なんだかイヤな予感がするんだけど」
「そんなこと気にしてるといつまでたってもイケてる感じにならないぞ。それじゃあ、押してみるぞ」
「ハーリハーリハーリハ〜!」
「うわっ、ビックリした!」
「なんか、ボクらが呼び鈴を押そうとしてるのに気付いてるんじゃないか?」
「そんなことはないだろう。ボクは今ので確信したよ。ここがまさにイケてるクラブに違いないよ」
「その確信はどこから来るんだよ?」
「まあ、なんていうか、野性的な直感というかな。とにかく呼び鈴を押さない限り何が起こるのかは…」
「ハーリハーリハーリホ〜!ハーリハーリハーリホ〜!」
「ウワアアァァァ!」
「何これ、アブラ粘土?」
「そんなワケないじゃ〜ん。クッキーの生地だよぉ」
「ウフフッ…。ウフフフッ…。あなた…。あなた!」
「ん?!なんだ?」
「迷ってらっしゃる」
「何を?」
「あすこはきっと高気圧と低気圧がぶつかる場所」
「何のことだか解らないけど」
「あなたは、ピンクのカマボコに意味があると思います?」
「ピンクの?ああ、あれは紅白でめでたいから…」
「ピンクのカマボコには妖しい魅力がありますものねえ。あなた」
「うん…」
「外側のピンクの部分が上手くはがせたら良いのですけれど…。あなたは心配じゃございません?」
「何が?」
「夏が来ないで、また冬が来るとしたら。あなたはどうするんですか?」
「それはないだろう」
「もう!あなたったら!」
「何で怒るんだ?」
「もう、知りません!」
「はい、いいですかみなさん。それではこのあいだの復習から始めましょうか。○○君。このあいだ習ったことを言ってみなさい」
「はい、先生。名前が似ていても中身が違うことがあります!」
「うん。なかなか良いですねえ。アブラゼミとアブラ虫の例えがあったらもっと良かったですよ。それでは今日は名前が違っても似ているものを勉強していきたいと思います。まずは、カマボコとアブラ粘土について考えてみましょうか」
「ちょっと!○○の奥さん!」
「あら、△△の奥さんじゃないの。どうしたのよ」
「なんだか□□の奥さんが最近ヘンだったじゃない」
「そうよねえ。ちょっと恐いわよねえ」
「そうなのよ。あれのせいですごいことになってるって話よ」
「そうなの!?うちなんかこのあいだのあれで、主人が大変だったのよ。もういい加減にして欲しいわねえ」
「ホントよねえ」
「大変だー!ちょっとお巡りさん。来てくださいよ!」
「…私は警官ではなくて…ザ・ガードマンだ…」
「どうでも良いですけど、さっきあそこの家で凄いもの見ちゃったんですよ!」
「…ほう、凄いものとは?」
「呼び鈴を押そうとしたら、中からヘンな声が聞こえてきて、それから中からもの凄い顔の人が…」
「それはこんな顔じゃなかったかな?」
「ウワアアァァァ!」
「はい。再び現場のウッチーでーす!ついに先ほどの会社の方に話を聞くことが出来そうです。それでは早速聞いてみましょう。あなたは一体誰なんですかあ?」
「誰って!?さっきも言ったように、部長の□□です」
「□□さん。今回の偽装事件はカマボコがアブラ粘土になっている事件と関わりがあるのでしょうか?」
「偽装事件とは何のことだか解りませんし、カマボコがアブラ粘土になっていることは事件ではないと認識しています」
「そんなことはありません。会社のビルから会社と関係のないひとが出てきたんですよ。これは立派な偽装事件です」
「何を言っているのか解りませんが、カマボコがカマボコ3.0に移り変わる過渡期にはカマボコがアブラ粘土になることもあり得るのです。でも袋にはちゃんと『カマボコ』と書いてあるのだから、これは間違いなく『カマボコ』ということなのです」
「それでは偽装事件の説明になっていません。ウッチーは会社のビルから社員以外の人が出てくるという偽装についての説明を求めているのです」
「あなたもヘンなところにこだわるねえ。そんなことではハーリハリになれませんよ」
「何ですかそれは?」
「あなたは幸せになりたくないのですか?」
「ウッチーはいつでも幸せでーす」
「それは悲しいことですよ。そんな人こそ、本当の幸せに気付く必要があるのです。ハーリハーリハーリハ〜!」
「ハーリハーリハーリハ〜!何ですかそれは?」
「全ては『いにしえより来る魔法使い』が解決してくださる。そして大いなるモヤモヤの時代は終わりを告げるのです。あなたのような悲しい人間も皆、己の過ちに気付いて悔い改めることでしょう」
「テメー、適当なこと言ってるとはり倒すぞ!この…」
「おい、ビックリしちゃったよー。Web2.0ってメールできんだぜ!」
「へえ…、そうなんだあ」
「なんか、恥ずかしいことを言ってしまう人って、声がでかいよなあ」
「なんだそれ?」
「まあ、ちょっと思っただけなんだけどね」
「それよりもこの街はどうなってるんだろうねえ」
「ホントだねえ。怪しい家からカマボコおばさんが出てきたと思ったら、近くにいた警備員もカマボコ男だったんだから。ホントにこの街はおかしな街だよ」
「というか、毎回ここへ来ようと言うのはキミなんだぞ。どうしてこんなヘンな街に来たがるんだよ?」
「ボクはそんなことは言ってないよ。キミこそ、ここに来れば何かがある!っていつも言ってるじゃないか」
「そうじゃなくて、これまでこの街では色々あったなあ、と言っただけだよ。どうでもいいけど、そろそろ行かないか?こんな街にいても少しもイケてる感じにはなれないよ」
「まあ、それもそうだけどね」
「おい、そこの望遠耳!」
「あれっ?あなたは『友達の知り合いだけが知っている魔法使い』ですか?」
「なんだそれは?私はいにしえより来る魔法使い。幸せと災いの使いだ」
「なんだか、そっくりだから解りませんでしたよ」
「それよりも、私は□□の家に行かなくてはいけないのだが、どうしても辿り着けないのだよ。キミはその望遠耳でこの辺で起こっていることを把握しているはずだから聞いてみるんだが、□□の家はどこにあるんだ?」
「そういわれても、望遠耳では正確な場所は解りませんよ。多分あっちの方だとは思いますけど。それよりも、これはどういうことなんですか?なんだかあなたが来ると世界が変わるとか言ってましたけど」
「それはとんだ思い違いなんだよ。□□は私の『しあわせの石』を盗んで幸せになれると思いこんでいるみたいだな。でも、あの石には『しあわせの石』と書かれているが、実は災いの石。名前と中身が違うことはよくあることだよ」
「それは良くないことなんですか?」
「世界中のカマボコがアブラ粘土になって、人間がカマボコになることを喜ぶのは野良犬や野良猫ぐらいじゃないか?その意味では『しあわせの石』で間違いではないが、人間にとっては災いの石でしかない」
「なんだか良く解りませんが、あなたはそれを止めてくれるんですね?」
「何を言っているんだ。私はただ自分のものを取り返しに行くだけだ。さらばだ」
「うわぁ!」
「何ですか、あなた?ビックリするじゃありませんか」
「なんだか恐ろしい夢を見たんだよ」
「ウフフッ。あなたったら。居眠りばかりしていると現実と夢の区別がつかなくなりますわよ。ウフフッ」
「夢と現実の区別ぐらいはできるさ。恐ろしい夢から覚めたら、隣にはこうしてキミがいるんだから」
「あらいやだ。あたしはカマボコと一緒に暮らしてなんかいませんわよ」
「えっ?」
「私はウフギ屋の女将。カマボコを夫にした覚えはありません?」
「何を言っているんだ?」
「ウフフッ…。あなたは魚がカマボコにされる気持ちが解ります?」
「さあ…?魚になったことはないからねえ」
「天ぷらにしたら美味しいかも知れませんわね。ウフフフッ…」
「何を?」
「でもうちはウフギ屋だから出来ませんね。ウフフッ…。ウフフフッ…」
「ちょっと、待ってくださいよ。一人だけ会社辞めるなんてずるいですよ」
「うわっ、なんだよ。キミも会社辞めたのか?」
「もう無理矢理辞めてしまいましたよ。さっきまで社長に追い回されて大変だったんですから」
「それよりも、オレはキミと関わりたくないんだ」
「何ですかそれは。ひどいですよ」
「そうじゃなくて、キミはずっと□□部長の隣の席だっただろ?」
「そうですよ」
「それで、□□部長ともよく喋ってただろ?」
「まあ、そうですけど」
「だからだよ」
「それじゃあ、説明になってませんよ」
「つまり、あれは感染するってことだよ。キミも感染している疑いがあるから、あまり近づかないでくれ」
「何でそんなことを言うんですか!人を病気みたいに…。あれ?なんだか爪の先がカマボコみたいになってるんですけど。これって…」
「やっぱりオレの思ったとおりだ。オレはキミを置いて遠くに逃げるからな。悪く思うなよ。今ならまだ飛行機にも普通に乗れるはずなんだ」
「そんなこと言っても無理ですよ。あなたも髪の毛がカマボコになっていますよ」
「何だって?!」
「あなただって一緒ですよ。私の隣に座っていたのはあなたなんですから。あなただけ助かるなんてあり得ませんよ」
「なんということだ…!」
「ねえねえ、ちょっと!あれってレオ様じゃない?」
「なに、レオ様って?」
「ちょっと、レオ様もしらないの?ディカプリオのことよ!」
「ホントにぃ!すご〜ぃ!」
「あれ?でもよく見たらカマボコだった」
「何だカマボコかぁ…」
「ハーリハーリハーリハ〜!カマボコ3.0で幸せになりたいものは私についてくるが良い。ハーリハーリハーリホ〜!」
「はい、そういうことでみなさんはもうわかりましたね。似ているからといって、それが同じ物だという保証はないのです」
「先生!質問ですけど、エナリとレオ様は似てないと思うのですが、どうして似ているものになっているのですか?」
「何ですかそれは…」
「(ハーリハーリハーリホ〜!)」
「なんだか、隣の教室がうるさいですねえ。それよりも、先生はそんなことは言っていませんよ。そのレオ様とかいうのはなんですか?先生が言ったのは里芋と山芋のことではなかったですか?」
「違うよ、先生。ジャガイモとエナリだよ」
「違うよ!サツマイモとレオ様だよ!」
「はいはい、静かに!もう授業時間が終わっていますから、これは次までの宿題にしましょう。今日の給食はエナリの煮っ転がしですよ!」
「はーい、再びウッチーで〜す!ここは先ほどの偽装社員がいる会社と同じ街にある小学校でーす。この小学校で奇妙な出来事が起きているのです。なんと、授業をしていた生徒や教師達が突然ハーリハーリハーリハ〜!というかけ声とともに大行進を始めたのです。ウッチーは先ほどの□□部長の件となにか関連があるのではないかと睨んでいるのです。ここに小学校の生徒の一人がいるので話を聞いてみたいと思いまーす。ボク、お名前は?」
「○○です」
「何年生かな?」
「小学四年生です」
「○○君はこの件に関してどう思いますかあ?」
「えーと、授業中に突然ヘンな声が聞こえてきて恐いなあ、と思いました」
「そうですかあ。それは恐かったですねえ。○○君はどうしてみんなと一緒に大行進をしないのかなあ?」
「お母さんから□□君と遊んじゃダメって言われているからです」
「どうして□□君と遊んじゃダメなのかなあ?」
「そこはプライベートなことなのでノーコメントです」
「なんだ、この生意気なク○ガキは!」
「おかしいなあ、この辺のはずなんだけど」
「だから、さっきの道で曲がった方が良かったんだよ」
「あの道はどう考えても違うだろ。駅はこっちに決まってるんだよ」
「決まってる、っていってもないものはないぜ。だいたい、ちょっと前にいた駅なのに戻れないってどういうことだよ」
「ハーリハーリハーリハ〜!」
「なんだあの集団は?」
「なんだか気持ち悪いな」
「それよりも見てみろよ。あいつらみんなカマボコになってるぞ」
「うわあ、ホントだ!」
「ハーリハーリハーリホ〜!」
「はーい。再びウッチーで〜す!ハーリハーリハーリハ〜!なんだか楽しくなってきたのでウッチーも大行進に加わってみたいと思いまーす!ハーリハーリハーリハ〜!どうやらウッチーの体に異変が起きて次第にカマボコ化している気もしまーす!ハーリハーリハーリハー!」
「おい、望遠耳!」
「あれ、今度は『友達の知り合いだけが知っている魔法使い』ですか?」
「そうだが。今度は、ってなんだ?」
「さっきは『いにしえより来る魔法使い』が来たんですよ」
「そうなのか。まあ、そんなことはどうでもいい。キミはちょっとした代償と引き替えに世界を救ってみたくはないか?」
「何ですかそれは?ちょっとした代償が気になるのでやめておきますよ」
「なんだ、つまらない男だなあ」
「そんなことを言われても、ここで私はあまり目立ってはいけないのですから。それよりもこの状況は何なんですか?みんながカマボコになっているみたいですけど」
「それは『しあわせの石』のせいだと思っておけば、だいたい合っている」
「適当だなあ」
「モヤモヤとスッキリの使いがモヤモヤさせてやったのさ。さらばだ」
「あら、行っちゃった」
「ウナッ…。ウナナナッ…」
「なんだい、そのヘンな笑い方は?」
「あら、あなた起きていらしたの?ウナナッ…。あなたはどう思います?」
「何が?」
「あたしがこの家を出て、ウナギ屋を始めたら、あなたはどうします?」
「そんなことを言わないでくれよ。ボクはキミがいなければ…」
「ウナナナッ…。冗談ですわよ。ウナナッ…。あたしはもうすでにウナギ屋の女将」
「えっ?」
「どう考えてもドジョウとうなぎは違う生き物」
「まあ、そうだねえ…」
「でも世界がカマボコになってしまったら、きっとウナギもドジョウもカマボコになるんですね」
「うん…」
「天ぷらにしたところで、全てがカマボコ。あなたはこれが何を意味しているのかわかって?」
「それは…なんだろう?」
「ウキャキャキャキャ!」
「ウワァァ!」
「これマジやばいっすよ。リアルにやばいっすよ。みんながカマボコになってるのに、なんでオレだけ若者のままなんだ?っていうかチョーやばいっすよ」
「ハーリハーリハーリハ〜!」
「ハーリハーリハーリハ〜!」
「ハーリハーリハーリホ〜!」
「ハーリハーリハーリホ〜!」
「ねえねえ、ちょっと。あれってカマボコじゃない?」
「ホントだ。すご〜ぃ!」
「ちょっと行ってみようよ!」
「行きましょ!行きましょ!」
「ハーリハーリハーリハ〜!」
「ハーリハーリハーリハ〜!」
「ハーリハーリハーリホ〜!」
「ハーリハーリハーリホ〜!」
「なんだか、この街でカマボコじゃないのはオレ達だけじゃないか?」
「そんな気もするけどね。でもあそこの若者はまだ大丈夫みたいだぞ」
「おい、そこの若者。一体この街はどうなってるんだ?」
「なんだよ、おっさん。若者って呼ばれるの、チョー感じ悪いっす」
「なんだそれ?」
「っていうか、みんなカマボコだからオレもカマボコりてえ!とか思ってんのに、なんかオレだけ若者って感じ?マジ、キレそうっす!」
「この人はこの人でおかしな感じだな」
「そうだね」
「ハーリハーリハーリハ〜!」
「ハーリハーリハーリハ〜!」
「ハーリハーリハーリホ〜!」
「ハーリハーリハーリホ〜!」
「おい、□□!私の『しあわせの石』を返してもらおうか」
「おお、皆のもの!ついに『いにしえより来る魔法使い』が姿を現したぞ。ハーリハーリハーリハ〜!」
「ハーリハーリハーリハ〜!」
「どうでも良いのだが、キミ達がその呪いの言葉を大声で唱えていると、世の中の人間が次々にカマボコになっていくのに気付いていないのか?」
「それはいにしえより伝わる話の中で言われていることです。我々が『しあわせの石』を持って幸せの呪文を唱えれば『いにしえより来る魔法使い』が現れて我々を人間的苦しみから救ってくれるのです」
「私には何の話だかさっぱりわからないが、とにかく私の『しあわせの石』を返してくれ。それは『災いの石』だぞ」
「おお、やはり予言のとおり『いにしえより来る魔法使い』は我々を試しておられるのだ。ここで『しあわせの石』を渡してしまえば、我々が幸せを望む気持ちが足りないということで、我々は救われない。ここはみんなで幸せの呪文を唱えるのです!全員でカマボコになって人間的な苦しみから逃れるのです!ハーリハーリハーリハ〜!」
「ハーリハーリハーリハ〜!」
「ハーリハーリハーリホ〜!」
「ハーリハーリハーリホ〜!」
「おいおい、そんなことをしたら、世界中がカマボコになってしまうぞ。早く石を返せ!」
「なあ、知ってる?」
「知らないよ」
「そうじゃなくてさ。世の中の人間が、ボクらを除いて全員カマボコになったとしたら、ボクらはイケてる感じになるのかなあ?」
「ボクらの他に人間が誰もいないとなれば、そうとも言えるけどね。それと同時にイケてない感じでもあるとは思うぞ。どっちにしろオレ達しかいないんだから」
「そういわれてみればそうだなあ。良く分かんないけど」
「納得したのかしてないのか、良く分かんない返事だなあ」
「まあ、世の中の99%はそんな話ばかりだよ」
「何で急に悟ったようなことを言ってるんだよ」
「まあ、例えばの話だよ」
「何の例えにもなってないよ!」
「おい、そこのイケてない二人!」
「何ですか?」
「私は『友達の知り合いだけが知っている魔法使い』だ。キミ達、ちょっとした代償と引き替えにイケてる感じになってみたくはないか?」
「えっ!?ホントですか?やりますよ!」
「おい、ちょっと待てよ!せめてどんな代償なのか聞いてみてからにしろよ」
「というか、もう遅いです。やりますよ、って言ってしまったからにはやってください」
「でも、オレはやりますよ、って言ってませんよ」
「どうせキミ達は二人とも似たもの同士なんだから、一人が言えば二人が言ったも同然」
「それは滅茶苦茶だ!」
「結局イケてる感じになれるんなら、それでもんくはないでしょ?」
「まあ、それはそうかもしれないけど。ホントに『ちょっとした』代償なんだろうね」
「まあ、今ここで起きていることに比べたら大したことはないと思いますよ」
「つまり、カマボコ人間になるよりはマシなことということだな」
「じゃあ、やってみようか?」
「そうしようか」
「そうですか、それは良かった!」
「あなた…」
「…う〜ん…」
「あなた…」
「…うー、ウナギ…」
「あなた!」
「ウワァァァ!」
「どうしたんですか、あなた?よっぽど恐い夢をみていらしたのね」
「キミ、さっきウナナッ、って笑わなかった?」
「何なんですかそれ?笑ってしまいますわよ。ウププッ…」
「ウププッ、って。まさかキミ、この家を出てウプギ屋に行くなんて言わないだろうね?」
「ウプギ屋って何なんですか?あたしはウフギ屋の女将ですよ。あなたったら。ウポポッ…。ウポポポポッ…」
「ウポポッ!?…今度はウポギ屋か?」
「もう、何を言っているのか全然解りませんわよ、あなた。ウピピピピピィ!」
「ウワァァァ!」
「つまり、ボクらがここに書いてある呪文を順番に唱えたら良いんですね?」
「そのとおり。簡単だろ?」
「だけど、どうして『友達の知り合いだけが知っている魔法使い』さんが自分でやらないんだ?」
「それは私が『友達の知り合いだけが知っている魔法使い』だからだよ」
「それは説明になってないよ」
「だったら、私が『スッキリとモヤモヤの使い』だからだよ」
「それなら、なんとなく理解出来るな。良く分かんないけど」
「またそれかよ」
「まあ、良いじゃないか。それよりも早くやってしまおうよ。これでボク達もイケてる感じになるんだから」
「そうだな、それじゃあやるぞ」
「うん」
「ハイリハイリフレハイリホー!」
「ホッホー!」
「ハイリハイリフレーホッホー!」
「ウワァ!なんだあれは?」
「巨人が現れたぞ!」
「ハーリハーリハーリホ〜!みなさーん!ウッチーで〜す!ただ今、人類のために幸せの呪文を唱えていたのですが、思わぬ展開になりました。誰かが唱えた呪いの呪文によって巨人が呼び出されたようでーす。ウッチー、ビツクリ!」
「おお『いにしえより来る魔法使い』よ。どうしてこのようなことが?」
「それは知りませんよ。早く私の石を返せ!この□□め」
「先ほど現れた巨人がこちらにやって来ました。何か言いたいことがあるようです。ウッチーが突撃インタビューしてみたいと思いま〜す!あの、巨人さん何しに来たんですかあ?」
「大きくなれよ」
「なんてことだ!?巨人の言葉で『しあわせの石』の力が失われていく!」
「だからそれは『しあわせの石』じゃないんだって。早く返せ!」
「なあ、知ってる?」
「知らないよ!」
「そうじゃなくて、ボクらのおかげでカマボコ人間達が元の姿に戻っていくぞ」
「あっ、ホントだ!これって凄いことなんじゃないか?」
「そうだな。ボクらは世界を救ったヒーローだぜ!イケてるどころの話じゃないな!」
「ついにやったな!」
「ハーリハーリハーリハ〜!どうしてだ?どうしてみんな元の姿に戻るんだ?」
「これでわかっただろう?人間は『しあわせの石』で幸せになることは出来ないんだよ。それに『人間的苦しみ』と『カマボコ的苦しみ』のどちらが辛いかおまえにはわかっているのか?□□よ」
「それは…?どっちだろ?」
「そんな感じだよ。大いなるモヤモヤは終わることなく続くのだ!さらばだ□□!もう二度とこのような過ちは犯すでないぞ」
「なあ、知ってる?」
「何がだよ?」
「そうじゃなくてさ。ボクらさっきの呪文を唱えたら体がハンバーグになってるんだけど」
「ウワッ、ホントだ!これってまさか『ちょっとした代償』ってことか?」
「これじゃあちょっとどころじゃないよ。しかもハンバーグじゃ全然イケてないじゃん!」
「どうすんだよ?」
「知らないよ!」
「ウフフ…。ウフフフッ…。あなた」
「なんだ?」
「もうイヤな夢は見ないんですか?」
「なんだそれは?」
「まあ、あなたったら!ウフフフッ…。今年も夏が来そうですわね」
「うん。もうそろそろだねえ」
「今年はいつもよりもっとモヤモヤしていただかないと。ねえ、あなた」
「モヤモヤするのかい?」
「あらいやだ!あなたはモヤモヤしないとおっしゃるワケ?」
「えっ?いや、違うけど」
「あなたがモヤモヤしないであたしはどうやってモヤモヤすれば良いのですか?」
「わかったよ。ボクはキミの望みどおりモヤモヤするよ」
「もう!勝手にモヤモヤしていれば良いのですのよ!プイッ!」
「…」
こんなことで、世界は救われたのか?というかこんなオチのためにコーナーを2回分も使って長々と話を続けてきたのか?
まあ、結果はどうでもいいのです。この望遠耳シリーズは過程の方に重点を置いて読んでもらうものなのです。といっても「過程の方」にもなにもないですが。とにかく楽しかったらそれで良いのです。
ちなみに、『いにしえより来る魔法使い』やカマボコ人間の唱えていたあれと、最後の唱えた者がハンバーグになってしまうあれですが、わからない人のために楽しいインターネット(YouTube)へリンクしておきます。
Cab Calloway - Minnie The Moocher
丸大ハンバーグ CM
ちなみに、どちらも「呪い」とか「災い」とかとは関係ありません。そんな雰囲気だということです。(ってどんな雰囲気だ?)
ということで、ひどい望遠耳でしたが、実はGoldバージョンにはまったく違う結末が書かれています。上級者の方は読んでみると良いかも知れません。次回はあんな雰囲気の大特集かも知れません。