気になる病気のお話J

◆皮膚の病気◆〜帯状疱疹、掌跡膿疱症、尋常性乾癬

皮膚の表面には、2種類の小さな孔が配置されています。1つは毛の生える毛孔で、皮脂を分泌する皮脂腺が開口しています。もう1つは、汗腺から分泌される汗を出す汗孔です。皮膚の表面は常に、微量の汗と皮脂の膜に保護されています。

皮膚の断面は、表皮、真皮、皮下組織の3層から構成されています。表皮の表面を覆う角質層はケラチンという線維性たんぱく質でできていて、外部のさまざまな刺激から体を守っています。表皮の一番下の層は基底層で、ここには基底細胞とメラニンをつくる細胞があり、メラニンは紫外線の害から体を守る働きをしています。

真皮は主に膠原線維(コラーゲン)や弾力線維で構成されており、皮膚の張りや弾力を保つために役立っています。真皮には汗腺や皮脂腺、毛包があり、感覚や痛覚、温覚、冷覚などの知覚神経も分泌しています。皮下組織は主に脂肪細胞で構成され、エネルギーを蓄えたり、外部の衝撃から筋肉や内臓を守る役目をしています。

皮膚の代表的な病気には、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、疥癬、水虫、たむし、ヘルペス(単純性疱疹)、帯状疱疹、掌蹠膿疱症、乾癬、結節性紅斑、にきび、いぼ(疣贅)、日光過敏症などがありあます。

◎帯状疱疹とは?
帯状疱疹とは、水痘ウイルスつまり水ぼうそうのウイルスが再活性化することによって起こる病気です。子どものころ水ぼうそうに初めて感染したときは、喉や粘膜に感染し、高熱が出て、全身の皮膚に小さな水疱がたくさんできますが、やがて体内にウイルスをやっつける抗体ができて治り、再びかかることはありません。

しかしウイルスが消えたわけではありません。このウイルス(ヘルペスウイルス)は神経と親和性が高く、知覚神経の中に入り込んで移動し、神経の根元にある「神経節」に潜伏します。健康なときには強い免疫力で抑えられておとなしく眠っていますが、歳をとったり、病気や疲れ、ストレスなどで免疫力が低下したときに再活性化して増殖し、神経を伝わって皮膚に赤みを帯びた小水疱をつくります。

全身のどの神経にも出る可能性がありますが、知覚神経は体表をちょうど半周しているので、小水疱は右か左の片側性に帯のようにひろがるのが特徴です。最も多く現れる部位は、肋間神経が走る胸や脇腹、背中にかけてで、顔の三叉神経の部分や腕や足、お尻の部分に出ることもあります。

赤みがかった小水疱が出る4〜5日前に神経が傷害されるので、痛みやピリピリした痒みを自覚しますが、その痛みの強さは人によって異なるため見逃すことが多く、小水疱が出て初めて帯状疱疹とわかることが多いようです。

高齢者に多い病気ですが、近年は若い人でも発症し、まれに10歳未満での発症もあるそうです。すでに抗体を持っている人には感染することはありませんが、水痘のワクチンをしていない乳幼児や水ぼうそうにかかったことがない乳幼児などには感染する可能性があります。帯状疱疹は、人口10万人あたり年間300〜500人が発症するといわれています。

赤みがかった小水疱が出て、約1ヶ月もすると治療をしなくても自然に治癒しますが、3ヶ月もすると後遺症である「帯状疱疹後神経痛」に悩ませられる可能性が高くなります。神経が損傷を受けるのが原因と考えられ、痛みが長く激しく続くことになります。
そのつらい帯状疱疹後神経痛に悩まされないようにするには、帯状疱疹の発疹が出てから3日以内に治療を開始すれば、かなりの確率で避けることができますから、早期発見・早期治療がきわめて重要になります。

帯状疱疹は全身のどの知覚神経にも出る可能性があり、部位によっては障害を引き起こすこともあります。目におよぶと角膜が障害されて視力が低下し、耳周辺の場合には聴力障害や顔面麻痺が高率に起こっています。

治療は薬物療法で抗ウイルス薬が使われます。そのほか免疫力の低下が原因なので、免疫力の回復、体力の回復なども大切です。帯状疱疹後神経痛には、消炎鎮痛剤で痛みをとり、局所麻酔外用薬、消炎鎮痛剤外用薬、抗うつ薬などを併用したり、神経ブロックがなされています。

帯状疱疹に使う漢方薬には、水疱期には五苓散、越婢加朮湯などを、遷延期には桂姜棗草黄辛附湯、十全大補湯、黄耆建中湯などを、疼痛には竜胆瀉肝湯に麻黄附子細辛湯を、免疫低下には竜胆瀉肝湯に補中益気湯などを症状に応じて用います。

参考図書:看護のための最新医学講座・皮膚疾患(中山書店)、症状からわかるからだの病気(瀬在幸安監修・法研)他

     

◎掌蹠膿疱症とは?
掌蹠膿疱症とは、手のひらや足の裏に膿疱ができる病気です。膿疱だけでなく水疱や赤い斑点が混じり、かさぶたになって一部が剥げ落ちます。これらの症状が周期的に出たり引いたりします。主な病変は無菌性膿疱で難治性の経過をとります。細菌などがいるわけではなく、ほかの人には感染しません。

原因は不明で、溶連菌やスーパー抗原に対する免疫応答に異常があるという報告もあります。慢性扁桃炎や感冒などの上気道炎症状や虫歯、歯肉炎などの病巣感染や、歯科金属やアクセサリーなどの金属アレルギーが関係しているといわれていますが、まだはっきりとは分かっていません。これらの検査をしても2割ぐらいの人しか究明できず、残りは対症療法で経過を見ていくことになります。

治療は内服療法、外用療法、紫外線療法に大きく分けられます。内服療法は抗生物質、ビタミンA誘導体、抗アレルギー剤、ビタミンHなどを用います。外用療法にはステロイド、ビタミンD、サルチル酸などがあります。紫外線療法は掌蹠に紫外線をあてて症状を抑えます。
どれも特効薬というものではありません。

また、この病気の合併症に胸のあたりに関節痛が生じる胸肋関節痛があります。約10%に胸肋鎖骨関節、脊椎に関節炎を併発し、特に胸肋鎖骨骨化症を合併することが多く、その場合、上胸部の疼痛や運動制限が見られます。

女優の奈美悦子さんがテレビなどで「掌蹠膿疱症性骨関節炎」での闘病生活を明らかにして注目を浴びた病気です。掌蹠膿疱症の患者の69%が胸、背中、腰に激痛があり、痛みを訴えなかった31%の人もレントゲンでは骨に病変が見られたそうです。

生活習慣での改善点ですが、日常生活での制限は特にありません。ただし。この病気の発症には喫煙が関与しているといわれています。掌蹠膿疱症になった患者の約8割が喫煙をしています。

掌蹠膿疱症に使う漢方薬には、温清飲、三物黄ィ湯、十味敗毒湯、小柴胡湯加桔梗石膏などを症状に応じて用います。

参考図書:看護のための最新医学講座・皮膚科疾患(中山書店)他

◎尋常性乾癬とは?
乾癬とは、特有の鱗屑を特徴とした炎症性の角化症で、良性の非感染性疾患ですが、その病因は不明で、難治性で慢性の経過をとることが問題です。乾癬はいくつかの病型に分類されますが、その約90%以上が「尋常性乾癬」です。

家族内発症頻度が欧米では高率(20〜40%)なことから、遺伝的素因を基盤とし、何らかの環境因子が関与すると推定されています。日本では家族内発症頻度は5%前後で欧米に比べて低率です。免疫の異常が関係しているともいわれています。

乾癬は通常、痒みが少なく、くっきりとした赤い斑点があちこちにパラパラできます。肘、膝などが多く、頭、脇の下、陰部、下肢などにも見られます。人によって数や分布は大きく異なります。斑点に多量の白いフケのようなものがついているのが特徴です。これを無理に剥がすと出血します(アウシュピッツ現象)。また、爪などで掻きむしると新しい斑点ができます(ケブネル現象)。

大半は軽症ですが、ときには全身に広がったり、発熱や関節の痛みなどが起こることもあります。全身のどこにでもできますが。特に髪の毛の生えぎわ、膝、肘などによく見られます。まれにリウマチのような関節炎をともなう病型(関節症性乾癬)もあります。

完治はできないので、症状を抑えるための治療が中心になります。ステロイド軟膏や免疫抑制剤、ビタミンD軟膏などのほか紫外線照射などが行われています。

漢方薬は症状に応じて、通導散に桂枝茯苓丸や黄連解毒湯、温清飲、防風通聖散などを組み合わせて用います。

参考図書:看護のための最新医学講座・皮膚科疾患(中山書店)、症状からわかるからだの病気(瀬在幸安監修・法研)他