気になる病気の話G

◆目の病気◆〜加齢黄斑変性症

眼球を正面から見ると、黒目の中心には瞳孔が、瞳孔のまわりには虹彩があり瞳孔を拡大したり、縮小したり目に入る光の量を調節する働きがあります。目に入ってきた光は角膜で屈折させてから水晶体に届きます。水晶体でピント調整された光は、硝子体を経て網膜で像を結びます。網膜にはたくさんの視細胞があり、視神経が網目のようにはりめぐらされています。網膜に光が届くと視細胞がものの色や形を感じとります。視細胞が感じとった映像の情報は、視神経を通って大脳へと伝えられ、現像(認識)されます。

目の代表的な病気には、白内障、緑内障、網膜剥離、ぶどう膜炎、流行性角結膜炎、虹彩毛様体炎、中心性脈絡網膜症、角膜炎、後部硝子体剥離、加齢黄斑変性症などがあります。

◎加齢黄斑変性症とは?

加齢黄斑変性症は欧米では非常に多く見られる疾患で、成人(特に50歳以上)の中途失明原因の第一位の眼疾患です。病名が示す通り加齢(老化)が原因となっている病気で、加齢以外の原因は明らかにされていませんが、喫煙は危険因子の一つとされています。加齢黄斑変性における失明は「社会的失明」と呼ばれます。視野の中心の視力は失われるものの、光を全く感じられなくなるわけではありません。

日本においても、高齢化や食生活の欧米化が進み患者数が増加しています。患者数は男性の方が多く、年齢が高くなるにつれて増加し、また両目に発症する割合が高くなってきます。

黄斑という部位は網膜の中心部にあり、ものを見る上でとても重要な役割をしています。ものの形、大きさ、色、立体、距離など光の情報の大半を識別しています。黄斑がきちんと機能することで良好な視力を保っているのです。年齢とともにこの部分に異常が生じるのが「加齢黄斑変性症」です。また黄斑の中心部には中心窩という部分があると視力の低下がさらに深刻になります。



加齢黄斑変性症は、脈絡膜から発生する新生血管(脈絡膜新生血管)の有無で「浸出型」と「萎縮型」に分類されます。
浸出型」は新生血管型、ウエットタイプとも呼ばれます。脈絡膜に新生血管が発生し、出血することにより網膜が傷害されて起こるタイプです。進行が早く、急激に視力が低下してきます。とても脆く弱い新生血管が発生することが原因で、出血や血液中の成分が漏れ出すことによって視力が大幅に悪化します。やや男性に多く、紫外線や喫煙は発症リスクを上げると考えられています。
萎縮型」は、非浸出型、ドライタイプとも呼ばれます。網膜の細胞が加齢により変性し、老廃物が蓄積して栄養不足に陥ります。その結果、徐々に萎縮していきます。進行が緩やかで、視力はあまり落ちません。そのために気づかない人もいますが、時間の経過とともに新生血管が発生し「浸出型」に移行することもあります。

ものを見ようとする部分だけ暗く抜けて見えにくい、ものがゆがむ、小さく見えるといった症状があり、進行すると急激に見えにくくなります。
@変視症・・・見たい分部がゆがんで見えます。初期症状
A視力低下・・・全体的にものがぼやけて見えます。進行期の症状
Bコントラスト閾値の低下・・・全体的にものが不鮮明に見えます。進行期の症状
C中心暗点・・・見たい部分が黒くなって見えます。進行期の症状

「萎縮型」には、有効な治療法はありません。
「浸出型」にはいくつかの治療法が行われていますが、いずれも新生血管への対処を目的とするもので確実な治療法はまだ見つかっていません。

先ずは予防が第一です。活性酸素などによる酸化ストレスの関与も考えられていますので、バランスのとれた食生活をしましょう。強い紫外線のもとで過ごすときにも十分な注意が必要です。喫煙者は禁煙しましょう。

脈絡網膜症や黄斑部浮腫などには、五苓散、苓桂朮甘湯、越婢加朮湯などの漢方薬が使われています。

参考図書:「加齢黄斑変性・・・加齢者に多く見られる眼疾患」(ノバルティスファーマ(株)の小冊子)、症状からわかるじゃらだの病気(瀬在幸安監修・法研)他