健康に関する話題J
◆活性酸素と病気について◆

私たちは呼吸によって空気中から酸素を取り入れ生命活動を営んでいます。酸素は私たちが生きていくために欠かせない大切なものです。ところが、この酸素がちょっとしたキッカケで「活性酸素」というものに変身します。この活性酸素こそがさまざまな病気や老化現象を起こす真犯人ではないかと考えられています。

活性酸素とは呼吸をすることによって空気中から取り入れられた酸素が体内で変質したもので、動脈硬化を原因とする心臓病、脳卒中、あるいは糖尿病、肥満、高脂血症などの生活習慣病、がん、老化まであらゆる病気のもとになっている毒性物質なのです。

健康な時でも、私たちが呼吸をしている酸素の2〜3%は活性酸素になっています。吸い込んだ酸素で食物を燃やしてエネルギーをつくる過程で活性酸素が発生するためです。
体内ではさまざまな仕組みで活性酸素が発生します
@ATP(アデノシン三リン酸・・・エネルギー物質)をつくる際に活性酸素が発生
A白血球が外敵から体を守るための武器として活性酸素を生成
B体内の代謝酵素による活性酸素生成・・・新陳代謝の副産物
C虚血あるいは虚血・再還流による活性酸素の生成
Dウイルス感染による活性酸素の生成
E医薬品による活性酸素の生成
Fさまざまな環境因子による活性酸素の生成・・・放射線、紫外線、環境汚染、細菌など

一般に活性酸素とフリーラジカルは混同されているようです。活性酸素にはフリーラジカルとそうでないものがあります。スーパーオキシド(O2・−)とヒドロキシラジカル(HO)はフリーラジカルであり、過酸化水素(H2O2)と一重項酸素(1O2)はフリーラジカルとはいいません。活性酸素は大気中に含まれる酸素分子(3O2)が、より反応性の高い化合物に変化したものの総称です。フリーラジカルは一つあるいはそれ以上の不対電子をもつ原子または分子とされています。

肺から取り込んだ酸素は赤血球中のヘモグロビンにより全身の細胞に運び込まれ、細胞中のミトコンドリアで酸素は糖質から電子を奪い、スーパーオキシド ⇒ 過酸化水素 ⇒ ヒドロキシラジカルを経て水になります。この過程をミトコンドリア電子伝達系といい、食事で摂った糖質がアデノシン三リン酸(ATP)というエネルギー物質に変わります。活性酸素が最も多く発生する場所はミトコンドリアなのです。

しかしすべての活性酸素が水になるわけではなく、余った活性酸素は細胞に損傷を与えます。それを防ぐために各組織には、抗酸化物質と呼ばれる活性酸素を消去する酵素が存在します。カタラーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、グルタチオンペルオキシダーゼなどです。体内に備わっている酵素だけでなくビタミンC、ビタミンE、βカロテン、フラボノイド、コエンザイムQ10(CoQ10)などもミトコンドリアの外で抗酸化物質として働きます。

このように人間の体には酸化防止システムが備わっていますが、このシステムも大量の活性酸素が発生したときにはカバーしきれません。さらに40歳を過ぎるとシステムも老朽化し、活性酸素に抵抗できなくなってきます。

活性酸素は私たちの日常の生体活動の中で発生するほか、紫外線や大気汚染などさまざまな条件の下でも発生します。活性酸素の発生源として排気ガス、加工食品、殺虫剤、レントゲンなども原因となります。

活性酸素が細胞に侵入することによって、私たちの体の細胞膜や遺伝子DNAが傷つけられ、細胞の機能が低下します。その結果、老化が促進されたり、さまざまな病気が引き起こされるのです。ウイルスによる感染症以外の病気のうち、90%がこの活性酸素によるものといわれています。慢性疲労症候群(CFS)、線維筋痛症などもフリーラジカルが原因といわれています。

活性酸素・フリーラジカルの関与する変性と病気
・老化
・動脈硬化(脳卒中・心疾患)
・皮膚の変性・・・しみ、しわ
・脳神経・・・パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、外傷性てんかんなど
・眼疾患・・・糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、白内障など
・呼吸器・・・気管支喘息、喫煙による気道傷害、成人呼吸器窮迫症候群など
・循環器・・・虚血性不整脈、心筋梗塞、高血圧など
・消化器・・・急性胃粘膜障害、胃潰瘍、虚血性大腸炎、慢性膵炎、脂肪肝など
・腎臓・・・・・腎不全、尿毒症など
・糖尿病(肥満)
・アレルギー、リウマチ性疾患(免疫不全、関節リウマチ、膠原病、全身性エリテマトーデス)
・発がん
・後天性免疫不全症候群(AIDS)

参考図書:活性酸素の話(永田親義樗・講談社)、酸化ストレスから身体をまもる(嵯峨井勝著・岩波書店)、活性酸素・フリーラジカルのすべて(吉川敏一・河野雅弘・野原一子著・丸善)、ミトコンドリアのちから(瀬名秀明・太田成男著・新潮文庫)ほか