健康に関する話題F

◆抗老化(アンチエイジング)について◆

老化のメカニズム
おおかたの生物は酸素を使ってエネルギーを産生しますが、そのことは生物自体が酸素毒(=酸化ストレス)に曝されていることを意味します。このような酸化ストレス障害に対して生物は二つの方法で対処しています。
@細胞の交替、と、A代謝回転です。しかし、細胞の交替や代謝回転によっても死を免れることができないのは、細胞のリニューアルよりも障害の蓄積のほうが勝り、老化過程がゆっくりではあるものの着実に進むためと考えられます。

老化に関する学説のうち「フリーラジカル説」は有力な説です。生物は細胞内のミトコンドリアで酸素を使ってエネルギーの素になるATPを産生しますが、ミトコンドリアからは活性酸素が漏れてくるところがあります。細胞には活性酸素を消去するメカニズムが備わってはいますが、すべての活性酸素を処理しきれずに酸化ストレスによる生体構成成分が障害を受けるという考え方です。

酸化ストレスが主な原因となってDNAを含む細胞の全構成員が障害を受け続けると、神経系、内分泌系、循環器系、免疫系などの各生体システムが変調し、その結果、人生の後半は生命活動が低下(=老化)し、やがて破綻して死が訪れるものと考えられます。

アンチエイジングについて
老化とは、加齢に伴ってさまざまな生理機能が低下することをいいます。専門的には、@細胞死の進行、A内分泌系・中枢神経系・免疫系の機能低下、B環境適応能の低下などによって、全身の恒常性(ホメオスターシス)が損なわれていくこと、とされています。

あなたが初対面の相手の年齢を推測するときに、瞬間的に見るのは皮膚(肌)の状態ではないでしょうか?皮膚(肌)以外にも毛髪、姿勢、歩き方、歩くスピード・・・これらでその人の年齢を判断しますが、見た目の年齢と実際の年齢のギャップに愕然とした経験がありませんか?

私たちが普段「年齢」といっているのは、誕生の瞬間から今日までの実際の年齢=「暦年齢」ですが、人間にはもう一つ「身体年齢」という現在の体の状態を現す生物学的年齢があるのです(血管年齢とか肌年齢とか・・・)。暦年齢は変えようがありませんが、身体年齢は努力次第でコントロールが可能なのです。生活の仕方(生活習慣)で決まる年齢だからです。実際の年齢よりも若く見える人、老けて見える人がいるのは身体年齢の違いといえるわけです。

先ほどの肌(皮膚)についても、紫外線をカットする、肌への水分を補給する、室内の温度や湿度に気を配る、バランスを考えた食時をする等々で肌(皮膚)を若返らせることは可能なのです。

各組織・器官の老化
@どうして物忘れは起きるのか(脳の老化)・・・脳の老化には神経細胞の死とシナプス機能の劣化という二つの側面があります。頭を働かせるよい刺激が入ってこないとシナプスが退縮し、神経回路はさびれ、脳機能は低下します。アルツハイマー病、老年期認知症。

Aどうして息切れが起きるのか(心臓・肺の老化)・・・加齢とともに最大心拍数は減少し、最大酸素利用能は低下します。心肺機能の衰えには個人差があり、規則的な運動で予防可能となるのです。

Bどうして食欲がなくなるのか(肝臓・胃腸の老化)・・・慢性心肺疾患、悪性腫瘍、アルコール依存症、認知症などの病気が原因でなく、明らかな原因のない高齢者の食欲不振症は胃の運動障害が原因と考えられます。

Cどうして転びやすくなるのか(筋力・バランス能力の老化)・・・加齢にともなう活動量の低下によって足腰の筋力が低下したり、あるいは筋肉の反応性や平衡機能の老化によって身体のバランスをとる能力が鈍くなることで転倒しやすくなります。骨折、特に大腿骨骨折は寝たきりにつながります。

Dなぜ骨折しやすくなるのか(骨の老化)、・・・健康な骨は破壊と再生を繰り返していますが、カルシウム不足、運動不足、女性の場合の女性ホルモンの分泌停止などの理由から、骨の代謝バランスが崩れると骨は急速に弱くなっていきます。関節の老化による変形性膝関節症。

E歯がなくなると健康を損ねるのはなぜか(歯の老化)・・・歯の喪失は全身の健康に悪影響を及ぼします。歯の喪失の原因は虫歯と歯槽膿漏です。咀嚼能力が衰えると栄養失調になります。

Fなぜ老眼や白内障になるのか(目の老化)・・・視力が低下するのは水晶体の調節力が減退するためです。水晶体に混濁が生じたものが白内障。

Gどうして耳が遠くなるのか(耳の老化)・・・老人性難聴は蝸牛の障害で、高周波数の音声を聞いたり、聞き分ける能力が低下します。糖尿病と認知症は難聴になりやすいといわれます。

Hどうしてカサカサした潤いのない皮膚になるのか(皮膚の老化)・・・日光に曝露される部位は紫外線による障害を受けた光老化を示すことになり、「シミ、シワ、皮膚がん」などの誘因となります。

I更年期がくるのはなぜか(ホルモンの老化)・・・女性ホルモンは性成熟期に分泌のピークを迎え、40歳後半で急に少なくなります。閉経すると卵巣の活動は低下し、女性ホルモンの分泌はピークの半分にまで低下するのです。更年期障害。

Jどうして老人はインフルエンザに弱いのか(免疫の老化)・・・加齢とともに免疫担当細胞の反応力、増殖力、産生力が鈍くなり、免疫の働きは総じて弱くなります。

Kなぜ中年になると太るのか(生活習慣病と老化)・・・おもな生活習慣病には高血圧症、糖尿病、高脂血症、痛風、骨粗鬆症などがありますが、肥満は骨粗鬆症を除く残りの4つと深い関わりがあり、カギをにぎっているのが「インスリン抵抗性」です。

老化度チェック(抗加齢ドッグ)〜
@血管の動脈硬化・・・頚動脈エコー検査、頚動脈最大肥厚、血圧脈波検査、眼底検査、ICAM-1
A血液の老化度・・・コレステロール、中性脂肪
B活性酸素・抗酸化力・・・8OHdG
Cホルモンバランス・・・成長ホルモン、フリーテストステロン、エストラジオール、DHEA-8
D免疫バランス・・・NK細胞活性、インターロイキン6(IL-6)
E内臓チェック・・・血液一般、肝機能、腎機能、糖尿病、胃炎・胃潰瘍、貧血など

参考図書:老化のことを正しく知る本(東京都老人総合研究所・中経出版)、抗加齢医学入門(米井嘉一著・慶應義塾大学出版会)、老化判定&アンチエイジング(東海大学ライフケアセンター編・PHP)他