健康に関する話題G

◆低体温が招くさまざまな障害◆

低体温になる原因は?

体温は健康状態を知るうえで、とても重要なファクターです。たとえば風邪を引いたとき、ごく一般的には37度程度であれば微熱なので市販の風邪薬を飲んで済ませ、38度まで上がると病院に行って診察を受けた方がいい、と考えられているようです。しかし、単純に体温で微熱なのか発熱なのか、正しい判断はできません。なぜなら、平熱が36.5度の人にとって37度は微熱であっても、平熱が35.8度の人には発熱の危険性があるからです。普段から自分の平熱を知っておくことは、健康管理するうえでとても大切なことです。

いま、平熱が36度を下回る低体温児が増えています。学童だけではなく、30歳以下の若い人でも、平均体温とされる36.5度ある人は少なく、ほとんどの人が36.0度前後しかなく、なかには35.0度未満の人もざらにいます。低体温は放っておくと、さまざまな病気を招くとても危険な状態です。肌荒れ、便秘、冷え症、生理痛、生理不順、歯周病、胃潰瘍、潰瘍性大腸炎、糖尿病、間質性肺炎、喘息、アトピー、花粉症、肝炎、骨粗鬆症、メニエール病、パーキンソン病、認知症、膠原病、がんなどあらゆる病気、難病も低体温によって発症・悪化する可能性・危険性を秘めています。

健康な人の平熱は36.8度±0.34度つまり36.5度〜37.1度の間が健康体の体温です。だるさやつらさなど病的な自覚症状がなければ37度は健康な体温なのです。人間の体内には、栄養素を分解してエネルギーに変える数々の酵素が存在しています。その酵素の活動が一番活発になる温度が、本来人間の平熱であるべき36.5度なのです。体が冷えると細胞のミトコンドリアの活動ができなくなり、新陳代謝がうまくいかなくなり全身で不調が起こります。

では、なぜ「低体温」になってしまうのでしょうか?そもそもの原因は「ストレス」です。私たちの体にはストレスに対処し、健康を保つための機能が備わっています。一つは「自律神経のバランス」です。もう一つは、「ホルモンのバランス」です。この二つの機能が働くことで、私たちの体はさまざまなストレスから身を守っているのです。自律神経のバランスが崩れると、血液の流れが悪くなり、血流障害から低体温になります。ホルモンバランスが崩れると、細胞の回復が遅くなり、細胞自体のエネルギーが低下するので、やはり低体温になります。

体温が1度下がるだけで、とても大きなダメージがあります。体温が1度下がると免疫力は37%低下します。細菌やウイルスから体を守れなくなったり、免疫の誤作動により自分自身を破壊する病気を引き起こしたりします。また低体温は体内を酸化させ、老化スピードを促進させます。がん細胞は35度台の低体温のとき最も活発に増殖することもわかっています。逆に体温が1度上がると免疫力も上がるということになります。この1度の違いには雲泥の差があるのです。 

参考図書:体温を上げると健康になる(斉藤真嗣著・サンマーク出版)、(株)ラピー資料他

冷え症について

真夏でも手足の先が氷のように冷たい、上半身はのぼせるのに下半身は冷える、背中や腰などが冷える・・・このように外気温がそれほど低くないのに、体の特定の部位だけが冷たく不快に感じる状態を“冷え症”といいます。

本来、人間をはじめ哺乳動物などは体温を一定に保つことのできる動物で、周りの温度にあわせて、なんとか体温を調整し維持できる調整機能が備わっています。しかし、この体温調整機能が何らかのトラブルにより働かないことで冷え症は引き起こされるのです。

@体温調節機能が弱っている
寒い、暑いと感じるのは、皮膚が外気と自分自身の温度を感じて、その情報を脳に伝達するからです。今日の社会では空調が行き届いており、夏は寒く、冬は暑い状態になっています。そんな場所を出たり入ったり繰り返すことで、調整機能が鈍くなったり、おかしくなってしまうことがあります。

A自律神経が弱っている
悩み事やストレスなど心身の緊張が続くと、自律神経のバランスも崩れて、さまざまな症状を引き起こす原因となります。体温調整にも関わっているので、冷え症にも大きく影響を与えます。

B血液の流れが悪い
血液が流れるには力が要ります。送り出すには心臓の力、逆に戻すには筋肉の力が必要です。外気が寒いと熱を逃がさないようにと血管は収縮しますから、さらに血流は悪くなります。低血圧の人は、ポンプの力も弱く、血液が元の状態に戻るまでに時間がかかります。

C血が足りない(貧血)
貧血になるとヘモグロビンがつくられなくなり、細胞は酸欠の状態になります。栄養の燃焼が不完全になりエネルギーがつくられず、全身を効率的に暖められずに体温の低下につながります。

冷え症は病気ではなく体質の問題です。しかし、放置すると膀胱や腎臓の病気を惹起したり、生理不順や不妊症の原因にもなります。

冷え症に使う漢方薬は、当帰芍薬散、当帰四逆加呉茱萸生姜湯、真武湯、桂枝加朮附湯、八味地黄丸、人参湯、四君子湯、六君子湯、大建中湯、苓姜朮甘湯、桂枝湯、桂枝茯苓丸、桃核承気湯、加味逍遥散、五積散などを勝情に応じて用います。

参考図書:きょうの健康シリーズ「冷え症で悩む人に」(NHK出版)、日水製薬資料他