生薬のお話D
◆大蒜(たいさん)◆
ユリ科ニンニクの地下鱗茎です。日本薬局方には収載されていません。
[味]は辛、[性]は温、[帰経]は胃・大腸経で、中医学では、駆虫薬に分類されています。
中医学での薬理作用は殺虫・解毒・消癰で、@抗菌、A抗トリコモナス、B抗真菌の作用があり、臨床応用としては、細菌性下痢の軽症やアメーバ赤痢の軽症に用います。
近代漢方薬ハンドブックによる効能には、@外用薬としてオデキに使う、Aお灸の補助薬とする、B下痢につかう、C新陳代謝を盛んにする、DビタミンB1がアノイリナーゼで分解されるのを防ぐと書かれています。
1990年からアメリカ国立がんセンターが中心になって進めているプロジェクトの中に、身近な野菜や果物、香辛料のがん予防効果を研究し、食生活への応用を目指している「デザイナーフーズ計画」というのがありますが、そこではニンニク(大蒜)はがん予防の可能性が一番高いところにランクされています。
大蒜を使った医療用漢方薬はありません。
一般用OTC薬にオキソピン、オキソピンZがあります。
参考図書:漢薬の臨床応用(中山医学院編・神戸中医学研究会訳・医歯薬出版)、近代漢方薬ハンドブック(高橋良忠著・薬局新聞社)他
◆菟絲子(としし)◆
ヒルガオ科ハマネナシカズラの成熟種子を乾燥したものです。
[味]は辛・甘、[性]は平、[帰経]は肝・腎経で、中医学では、補養薬に分類されています。主成分は、菟絲子配糖体、amylase、ビタミンA類の物質です。
中医学での薬理作用は、補腎益精、明目、止瀉、安胎で、臨床応用として@腎虚で体の衰弱している者に用いる、A食欲不振、泥状便、下痢などの脾腎陽虚のあるとき、B腎陽虚による妊娠中の下腹部痛など(流産の前兆)に、C眼科に使用(肝腎不足による視力障害、飛蚊症)となっています。
近代漢方薬ハンドブックによれば、ホルモン不足からの苦情を去るとあります。
菟絲子を使用した医療用漢方薬はありません。
一般用OTC薬にマレビガーカプセル(禿鶏散)、活命参があります。「医心方」の房内記にはたくさん記載されているそうです。
参考図書:漢薬の臨床応用(中山医学院編・神戸中医学研究会訳・医歯薬出版)、近代漢方薬ハンドブック(高橋良忠著・薬局新聞社)他