生薬のお話E

◆鹿茸(ろくじょう)◆

シカ科ニホンジカ、マンシュウジカの雄の頭上の未骨化の細かい毛の生えた幼角を加工したもので、日本薬局方には収載されていません。

[味]は甘・鹹、[性]は温、[帰経]は肝・腎経です。中医学では、補養薬に分類され、主として腎陽虚に使います。補養薬の作用機序は、@副腎皮質機能の調節、Aエネルギー代謝の調整、糖代謝の合成の強化、B滋養強壮、C性腺機能の促進、D成長発育の促進、E抵抗力の増強などです。

鹿茸の薬理作用は、温腎補養・強筋骨・健胃・生殖補血で、@発育・成長の促進、A増血機能の促進、B強心、C子宮収縮などの作用があります。

中医学では臨床応用として、元陽を強力に補うときの主薬で、@生殖機能を興奮させる、A成長発育の促進に用いる、B高度の貧血(気血両虚)に用いる、C心不全に用いる、D神経衰弱や病後の衰弱に用いる、E腎陰虚の不正性器出血のほか皮膚の難治性潰瘍に使用されています。

近代漢方薬ハンドブックには、その効能は「強壮剤」で、精力がつき、体力もつき、増血もし、ホルモンの分泌も充分に行われ、内臓の虚弱やホルモン不足からくる手足の痛みやめまい、キツイ疲れに効くと書かれています。

鹿茸を使用した医療用漢方薬はありません。一般用OTC薬の霊鹿参、活命参、鹿茸大補湯、天好などに鹿茸が用いられています。

参考図書:漢薬の臨床応用(中山医学院編・神戸中医学研究会訳・医歯薬出版)、近代漢方薬ハンドブック(高橋良忠著・薬局新聞社)他

◆レイヨウカク(れい羊角)◆

ウシ科レイヨウの角ですが、日本薬局方には収載されていません。ワシントン条約で希少種に指定されています。

[味]は鹹、[性]は寒、[帰経]は肝経で、中医学では熄風鎮痙薬に分類され、内風に用いるとされます。

中医学での薬理作用は、清熱解毒・平肝熄風で、@解熱、A鎮静・抗痙攣作用があります。臨床応用としては、@熱性痙攣、A緑内障で見られる眼球の脹痛・頭がふらつく・頭痛・視力障害・悪心・嘔吐などの肝火上炎の症状に鎮静作用を利用します。

近代漢方薬ハンドブックには、その効能として「肝の亢ぶりを鎮める」とあり、肝臓が悪くて眼の病を起しているもの、肝が亢ぶってカンムシになって驚きやすいもの、四季の風邪を引いてこじれて肝部に苦情を出しているものを治したりすると書いてあります。

レイヨウカクを使った医療用漢方薬はありません。一般用OTC薬の、日水清心丸、牛黄清心元などに用いられています。

参考図書:漢薬の臨床応用(中山医学院編・神戸中医学研究会訳・医歯薬出版)、近代漢方薬ハンドブック(高橋良忠著・薬局新聞社)他