生薬の話F

◆霊芝(れいし)◆

日本では霊芝は医薬品として認められていません。霊芝という薬草の名が最初に出てくるのは「抱朴子」という晋の時代の本です。秦の始皇帝が神仙術者である徐福に命じて仙人になるための仙薬を探し求めさせたことは有名な話ですが、徐福は日本にも探しにきていますが仙薬の一つに霊芝も含まれていただろうといわれています。

霊芝はサルノコシカケ科マンネンタケ類の全株を乾燥したもので、[味]は甘・淡、[性]は温、薬理作用は滋補強壮・解毒収斂・消積となっています。中国の「漢薬の臨床応用」の中では、臨床応用としては、@動脈硬化症・高血圧症・脳卒中など、A各種のがんに、B重症筋無力症に、C頭のふらつき・不眠などの症状を伴う神経衰弱に、D胃潰瘍・消化不良などに、E各種キノコ類の中毒に、となっています。

また、中国最古の薬草書「神農本草経」には上薬(毒がなく服み続けても害がなく、寿命を延ばすもの)として収載されています。神農本草経には青芝・赤芝・黄芝・白芝・黒芝・紫芝の6種類の霊芝があげられています。明の時代の薬草の本に霊芝が、大変有効な薬草であることが書かれていることから、1960年代の末から北京中医薬研究所などで研究が開始されました。

わが国では、日本書紀・続日本紀・続日本後紀などに霊芝のことが書かれています。江戸時代には瑞草と呼ばれていました。1937年頃から京都大学で研究が進められ、1971年に原木に種箘を摂取する人工栽培化で量産に成功し、まぼろしの霊薬であったものが、一般にも買い求めることが可能になりました。

それにともない、薬理研究も活発化し、多くの臨床例が報告されるようになりましたが、はじめに記載したように霊芝は日本では医薬品として認められていないので健康食品となります。

参考図書:漢薬の臨床応用(医歯薬出版)、健康・栄養食品事典(東洋医学舎)、霊芝久保道徳研究室・三一書房)ほか


◆刺五加(しごか)◆

刺五加は高麗人参や田七人参と同じウコギ科の落葉潅木で、ロシアではエレウテロコック(命の根)、中国では刺五加・五加皮、日本ではエゾウコギと呼ばれています。
五加皮は去風湿薬に分類され、[味]は辛、[性]は温、[帰経]は肝・腎経です。薬理作用は、去風湿・補肝腎・強筋骨、「漢薬の臨床応用」によれば臨床応用として、@関節リウマチ、A軽症の水腫・乏尿、B筋肉・骨の発育不良の小児などに用います。

ロシア(旧ソ連)や中国では刺五加の研究が盛んで、有効成分はエレウテロサイドA〜Gと名づけられた7種類のトリテルペイド(サポニン、リグニンなど)とされています。特にエレウテロサイドEは、生体防御物質のベータ・エンドロフィンを増やし、免疫細胞の増殖や活性化を促すため、免疫機能が向上し、疲れやストレスへの抵抗力が高まるとされています。ロシアや中国で判明した効能は、@疲労回復・強壮、A自利愈神経失調、B性機能の回復、C循環器疾患、D抗がん効果、E糖尿病・慢性気管支炎などです。ハルピン第一病院ではインポテンツ改善効果が報告されています。

最近、日本でも三重大学、徳島大学、札幌偉大、筑波大学などで研究が始まっています@抗疲労・運動機能の向上、A末梢血液循環改善、B過酸化脂質生成抑制効果、C抗ストレス効果、D中枢神経系への作用、E抗ヒスタミン作用などが発表されています。

日本では医薬品として認められていないので健康食品となります。

参考図書:漢薬の臨床応用(医歯薬出版)、健康・栄養食品事典(東洋医学舎)、エゾウコギの驚くべき効用(人間の科学社)ほか