生薬のお話③

◆丹参(たんじん)◆

丹参は日本ではなじみが薄く、日本薬局方にも収載されていません。中医学では、丹参は活血薬に分類され、主として“血瘀(けつお)”に使用されます。血瘀(けつお)とは、病理的な原因によって生じた血流の停滞とそれに伴う一連の症候(疼痛、うっ血、黒ずみ)のことです。丹参が日本で知られるようになったのは、中国で丹参主成分の「冠心Ⅱ号方」が開発されてからのことです。

丹参はシソ科の中国産サルビアの根を乾燥したもので、[味]は苦、[性]は微寒、[帰経]は心・心包経です。中医学では「丹参」は活血薬に分類され、薬理作用は活血去痰、涼血・養血安神で、①血管拡張・血圧降下、②抗菌、臨床的には鎮静・精神安定・鎮痛などの作用があります。

中医学での臨床応用としては、①冠不全による疼痛、②月経困難・月経痛・産後の悪露停滞・瘀血(おけつ)による疼痛、③神経衰弱で動悸・不眠・煩燥・不安などの心血虚の症状、④慢性肝炎や肝硬変初期で肝脾腫大・肝機能障害のあるとき、⑤血栓性静脈炎、⑥高血圧症に、用いています。

丹参の主な作用として、
①血管を拡張し、血流を増やす作用
②血圧降下作用
③血栓形成を防ぐ作用
④血液粘度を下げる作用
⑤血管を若く保つ作用
⑥抗酸化作用
そのほか、乳酸代謝促進作用、肝細胞再生、鎮痛効果、抗炎症作用などが確認されています。

富山医科薬科大学和漢薬研究所の横澤隆子助教授が丹参の研究をされている過程で、①腎不全に抜きんでた効果がみられ、人工透析をくい止める期待が大であること、②強力な活性酸素・フリーラジカル消去作用があること、③生活習慣病、血管病の予防薬として糖尿病の合併症予防や肝臓や脳にも効果が期待できることを言明されています。

丹参を配合した医療用漢方薬はありません。
一般OTC薬には、ウチダ生薬製剤Ⅱ号方、丹心方、冠心調血飲などがあります。

*「お」という字は、“ヤマイダレ”に於と書きます。

参考図書:漢薬の臨床応用(中山医学院編・神戸中医学研究会訳・医歯薬出版)、脳と心臓の血管は丹参で蘇る(横澤隆子著・リヨン社)、血管力をつければ病気は治る(横澤隆子著・リヨン社)他